介護職の転職で面接官の「質問はありますか」という逆質問の返し方
■執筆者
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転職面接では、面接の最後に採用担当者から「何か質問はありますか」と聞かれることがあります。「ありません」と答えてしまいそうになるかもしれませんが、それは非常にもったいないことです。じつは質問を求められたときこそアピールのチャンス。質問を返すだけでも熱意を伝えることができ、内容によってはその事業所の状況もわかります。
「何か質問はありますか」という採用担当者の問いかけに応えて応募者から質問を返すことを「逆質問」といいます。特にどのような逆質問が効果的なのかを、例を見ながら考えてみましょう。
採用担当者が逆質問をさせる3つの理由
そもそも、なぜ採用担当者は、介護職の面接で応募者に「何か質問はありますか」という質問をするのでしょうか。その理由について解説します。
■ミスマッチを防ぐため
採用担当者は、応募者の逆質問の内容で、相手がその事業所に合う人材なのかどうかをチェックしようと考えています。また、採用担当者は、優秀で事業所にマッチする人材を見つけて採用したいだけではなく、応募者の側にも心から「この事業所で働きたい」と感じて入職してほしいと願っています。
たとえば応募者ができれば夜勤を避けたいと思っているのに、勤務体制を詳しく確認する機会がないまま夜勤がある事業所に入職すれば、早期離職につながるかもしれません。
逆質問によって応募者が勤務体制や業務内容に関する細かな疑問を解消して、納得したうえで入職してくれれば、採用側はミスマッチを未然に防ぐことができます。応募者にとっても、質問内容によっては事業所の状況を知ることができ、入職を希望する複数の事業所のなかでどの事業所が自分に合うかを判断する材料になります。
■やる気の有無を確かめるため
採用担当者には、応募者に質問させることで、「本当に仕事への意欲があるかどうかを確かめたい」という意図もあります。採用担当者は、応募者に意欲があれば、業務内容に関して知りたいことや入職までに準備しておくべきことなど、何らかの質問があるはずだと考えています。
裏を返せば、よほど的はずれな質問でなければ、業務に関する質問をするだけでも仕事への意欲や真剣さをアピールできます。
■コミュニケーション力を見るため
逆質問は、応募者のコミュニケーション力のレベルを確認するテストでもあります。面接で話した内容を踏まえて、的確かつ簡潔な質問を返す能力が求められるからです。相手に配慮しながら柔軟に言葉を選ぶことも大切です。逆に、何を言っているのかよくわからないまとまりのない質問をすると、コミュニケーション力に欠けると評価される可能性があります。
逆質問はアピールのチャンス
面接官による「質問はありますか」という問いに対して、どのように返せばよいかわからず、つい「ありません」と返してしまう人もいるでしょう。あるいは、的はずれな質問をして失敗したくないと考えて質問はないと答える人もいるかもしれません。
しかし、先述の通り、採用担当者には逆質問でやる気の有無を確認したいという意図もあるため、全く質問がなければ、やる気がないとみなされる可能性があります。少しくらい的はずれな質問をしてしまったとしても、面接で十分にアピールできていれば、逆質問の内容だけで評価が下がることはまずありません。
逆質問は面接での最後のアピールチャンスであり、ミスマッチを未然に防ぐことができるメリットもあります。いざ「質問はありますか」と聞かれたときに何も思い浮かばないという事態にならないように、事前に逆質問の内容を考えておくとよいでしょう。面接中に疑問が解消される可能性もあるので、複数の逆質問を用意したうえで、面接の内容に応じて適宜、変更やアレンジを加えられるとベストです。
効果的な逆質問とは? 4つのタイプ別に例文を紹介!
では、実際に面接の終盤で「何か質問はありますか」と聞かれたら、どんな逆質問をすればいいのでしょうか。逆質問の内容は、いくつかのパターンに分けられます。ここでは、4タイプの逆質問の例文とポイントを紹介します。
■業務内容についての逆質問
■1日の業務スケジュールについて
入職後の働き方をイメージしたいので、1日の業務スケジュールを大まかに教えてください。
介護施設での1日の業務の流れは、事業所によって少しずつ異なります。逆質問で確認しておくと、入職後の業務内容をイメージできるのはもちろん、その事業所の特徴もつかめるかもしれません。さらに業務に関心を持つ姿勢もアピールできます。
ただし、あまりに細かい部分まで説明するのは採用担当者にとっては負担が大きいので、必ず例文のように「大まかに」「大体でかまいませんので」といった一言を加えましょう。
■レクリエーションの企画等について
前職でレクリエーションを企画する機会が多かったので、今後も担当できればと考えています。貴事業所ならではのレクリエーションやイベントがあれば教えてください。
利用者の機能訓練を目的としたゲームや体操などのレクリエーションの開催は、入居型の介護施設や通所介護(デイサービス)では必須の業務です。例文のように逆質問をすると、その事業所のレクリエーションに対する姿勢を知ることができます。レクリエーションに力を入れている事業所に入職したいと思っているのであれば、逆質問への採用担当者の回答が判断材料になるでしょう。
多くの事業所では、利用者に満足してもらい、効果的に機能維持・改善につなげるため、ユニークで魅力あるレクリエーションを企画したいと考えています。企画・開催に前向きに関わろうとする姿勢を見せれば、採用の可能性が高まるかもしれません。
■入浴介助の頻度や体制について
入浴介助の頻度と介助時の体制について教えてください。
入浴介助は、身体介護のなかでも特に力を要する業務です。入浴の頻度や介助時につく職員の人数は、その事業所の業務のハードさを判断する目安の一つになります。
介護施設での入浴の頻度は、介護保険法で最低週2回は行うようにと定められています。そのため一般的には週2回が基本ですが、事業所によっては週に2回以上入浴を行うところもあります。入浴介助時の担当職員の人数は、入浴に1~2人、衣服の着脱に1~2人が一般的です。ただし、利用者の体の状態や入浴機器の有無で負担の度合いは異なります。
入浴介助の経験がある人なら、「頻度は週に◯回、一般浴の場合は◯人、機械浴の場合は◯人です」といった採用担当者の回答を聞けば、過去の職場と比較して負担の度合いをイメージできるでしょう。
■職場環境を確認する逆質問
■職員数や人員配置について
貴事業所の人員配置(利用者と職員それぞれの人数)を教えてください。また、ITを活用した見守りロボットなどの導入の有無も教えてください。
介護保険法では、介護施設では利用者3人に対して1人以上の職員を配置しなければならないという人員配置基準が定められています。事業所によっては、「利用者3人に対して1.5人の職員を配置している」というように、基準よりも多くの職員の配置しているところもあります。
また利用者用のベットに離床センサーが設置されていたり、見守りロボットなどIoT技術が活用したりして、職員の負担を軽減しつつ、利用者の快適性を高める工夫がされている施設もあります。
このような事業所では、職員の作業負担が比較的少なく、働きやすい環境であると考えることも可能です。複数の転職先の候補がある場合は、このように利用者と職員の割合を見て、第一希望を決めるという方法もおすすめです。
■スタッフの勤続年数について
長く勤めたいと思ってているのですが、3年以上勤務しているスタッフはどれくらいいますか。
長く働いている職員がどの程度いるかを聞くのも、職場環境の良し悪しを確認する一つの方法です。もし長く働いている職員がたくさんいれば、それだけ働きやすい環境であると考えられるからです。また、指導を受けられる人的環境が整っている可能性も高くなります。
■夜勤の体制について
夜勤は何人体制ですか。
入居型施設で勤務する介護職は、月に数回は夜勤を担当するのが一般的です。夜勤の人数体制は施設によって異なります。1人体制と2人体制の施設が多く見られますが、どちらがよいかは一概には言えません。夜勤中は利用者の急変時の対応のように、重要な判断を迫られることがあります。仮にそのような対応に不安がある人は、2人体制、あるいはそれ以上の人数体制の施設であれば安心して働くことができるでしょう。
一方、急変時の対応にある程度慣れているという場合は、1人夜勤のほうがむしろ働きやすいかもしれません。ほかの職員の仕事の進め方に左右されず自分のペースで仕事ができるため、人間関係のストレスが生じにくくなると考えられます。
なお、収入アップのために早く夜勤に入りたいと思っている場合は、夜勤対応を任されるまでの期間を聞いておくのもよいでしょう。さらに逆質問の際に「早めに夜勤に入りたい」と伝えておくことで、早く夜勤に入れるように手配をしてもらえる可能性もあります。
■キャリアやスキルアップに関する逆質問
■研修について
施設内外の研修を受ける機会はありますか。
介護施設のなかには、職員向けに研修制度を設けているところもあります。そのような事業所に勤務すれば、介護の知識や技術を高める機会に多く恵まれるでしょう。
研修制度の内容は事業所によってさまざまで、内部で多種の研修や講座が受けられるところもあれば、外部の研修を受ける際に、出勤扱いにしてくれたり補助金を出してくれたりするところもあります。
もし勤務先に研修制度がない場合、研修を受けたいときには自費で有給休暇を使って外部研修を受けることになるかもしれません。特にまだキャリアが浅く勉強の必要性を感じている人はぜひ聞いておきたい質問です。また、質問時に積極的に研修を受けたいという意思を伝えることで、向上心や学習意欲のアピールにもなります。
■資格取得支援について
介護職として経験を積みながら、介護福祉士の資格にチャレンジしたいと思っています。貴事業所では、資格取得のための支援制度はありますか。
介護関連の資格は多く、取得すればスキルアップにつながります。職員のスキルアップは事業所にとっても望ましいので、介護職の資格取得に補助を出すなどの形でサポートしてくれる事業所も少なくありません。働きながら資格を取りたいと考えている人は、補助があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
■将来取得したい資格や研修について
喀痰吸引等研修を受講したいと考えていますが、利用者のなかで吸引や経管栄養が必要な方はいますか。
高齢の利用者のなかには、病気や筋力の衰えによって、自力で痰を出せなくなり、器具での吸引を要する人や、口から食事を取れなくなって、チューブで胃に栄養を送る必要がある人がいます。痰の吸引や経管栄養は医療行為ですが、喀痰吸引等研修を修了していると、介護職であってもそれらの行為が実施できるようになります。
研修を修了している職員がいると、看護師の負担軽減や夜間帯の医療面強化が図れるため、事業所としても採用するメリットがあります。今はまだ研修を受けていなくても、そのうち受講したいと考えている場合は、逆質問でその旨を伝えるとよいでしょう。採用に有利になるかもしれません。
■入職前の準備についての逆質問
入職後に備えて今から準備したいのですが、勉強しておいたほうがよいことはありますか。
特に未経験者やキャリアの浅い人におすすめの逆質問です。身につけているスキルや知識は少なくても、例文のような質問で学習する姿勢を見せることで、介護職への適性とやる気をアピールできます。採用担当者が質問に応えて参考資料や勉強方法をアドバイスしてくれれば、入職後にスムーズに仕事を覚えられるというメリットもあります。
こんな質問は避けよう! NGな逆質問の例
逆質問をしないよりはしたほうがよいのは確かですが、興味があるからといって何を聞いてもOKというわけではありません。質問内容によっては、評価が下がる可能性もあります。ここからは、NGな逆質問の例を紹介します。
■ホームページに載っている情報
- 貴事業所の運営理念を教えてください。
- 貴事業所の規模(利用者数・従業員数)はどれくらいですか。
運営理念、規模といった基本情報は、ほとんどの場合、事業所のホームページに明記されています。そんな基本情報について面接でわざわざ質問すると、その事業所への関心が低いと判断されかねません。
運営理念について聞きたい場合は「ホームページで貴事業所の運営理念を拝読しました。理念の一つに『生きる喜びにつながる食事』を掲げておられますが、食事作りでは具体的にどんな工夫をされているのですか」というように、理念に目を通したことが伝わるような質問をしましょう。
■待遇や福利厚生に関するストレートすぎる質問
- ◯年勤務した場合、給料はいくらアップしますか。
- 夏休みは必ず希望した時期に取れますか。
待遇や福利厚生も気になるところですが、面接では控えたほうが無難です。特に例文のように自分の都合を前面に出してストレートに聞くと、自分本位な人という印象を持たれかねません。業務内容より待遇や福利厚生が気になるのかとあまりよく思わない担当者もいるでしょう。どうしても聞きたい場合は、自分勝手な印象にならないように表現を工夫することが大切です。
たとえば例文1であれば「業務上の成果や実績はどのように昇給に反映されるのでしょうか」、例文2は「長期休暇の時期は決まっていますか。希望を出して交代で休みを取る仕組みでしょうか」というように、事業所の制度や就業規則の確認という形にするのもよいでしょう。細かい条件については、内定後に改めて確認することも可能です。
まとめ:チャンスを活かしてやる気をアピール
採用担当者からの「質問はありますか」という問いかけは、必ずあると言っても過言ではありません。この問いかけに効果的な質問を返すことができれば、やる気のアピールに加えて事業所の状況や業務内容を知ることができ、入職後のミスマッチを未然に防ぐことができます。今回挙げた例を参考に積極的に逆質問をして、あなたにぴったりな事業所への転職を成功させましょう。
コラム:面接官は、逆質問をどう使っている?専門家に聞いてみました!
執筆者
採用面接って、緊張しますよね。
初めて会う方で、しかも何だか偉そうな方で、更に複数の方々が自分の目の前に座っていたら、緊張するのはやむをえないないと思います。
面接官もそこは察していて、最初に緊張をほぐす質問をしたりして、求職者がいつも通りのリラックスした状態をつくろうとします。
■面接官が逆質問をする意図は?
逆質問をするのは、比較的面接の最後のシーンではないかと思います。
それは、会話のキャッチボールが繰り返され、リラックスした状態において、求職者がどのような質問をするか、何にフォーカスを当てようとしているのかを知りたくて、「最後に何かお尋ねしたいことはないですか。」という投げかけをするわけです。
そのような投げ掛けがあった際は、ぜひとも知りたいことを質問してみてください。
質問をすることにより、「積極的な姿勢」「当法人への興味」「求職者のこだわり」などを面接官は感じることとなります。
■質問したいことがない場合はどうする?
もちろん質問が無い場合もあると思います。人によっては早くこの場を立ち去りたいくらいに緊張している場合もあるでしょう。
質問を無理にひねり出す必要もないし、質問が無いからと言って心証が悪くなることもありません。
今まで私が数多くの採用面接をしてきた経験では、私も必ず逆質問をしますが、最後に求職者から質問を受ける割合は半分にも届かないくらいです。
ですから、逆質問をしないことで、評価が下がるということはないので、ご安心ください。
■面接官は、逆質問を通してどんなところを見ているのか?
事前によく調べてから質問すれば、心証をよくすることも可能
ただし、この最後の逆質問において、面接官の心証を大きく上げることも可能です。
事前に法人のホームページやSNSでの投稿などをチェックし、その内容について掘り下げた質問をする方、「メモを見ながら、質問をしてもよいですか」と確認を取り、ご自身が準備していたメモ帳を見ながら質問をする方もいます。
すると面接官は、「本気で当法人にて働こうと思っているな」とか「几帳面でしっかりした求職者だな」という印象を抱くことに繋がるのです。
求職者を比較する上での指標になることも
求人の状況にもよりますが、複数の求職者から採用する方を選ぶ場合は、やはり求職者を比較し、選択するわけです。
そのときには、面接官が抱いた印象も大きく左右することも、面接官も「人」であるので、十分に考えられます。ましてや逆質問の場面は採用面接の最終版なので、余計に印象が強く残るということもあります。
■まとめ ありのままの自分を表現しよう
以上、逆質問について、私の経験に基づく、私なりの考え方をお伝えしました。
簡単にまとめると、逆質問をしなくても、評価は下がらないが、逆質問をすることで好印象を面接官に与えることも多々あるということです。
かといって、必要以上に背伸びをし過ぎる必要ありません。ありのままの自分自身を知ってもらうことが、自分に合った職場で末永く働き続けるポイントだと思います。
そのような機会があるときは、まずは面接先に入る前に深呼吸。リラックスして臨みましょう。
すると、最後に逆質問をする気持ちのゆとりができるかもしれませんね。
ささえるラボ編集部です。
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