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ヒートショックや鬱も 冬の高齢者介護で気を付けるべきこと

ヒートショックや鬱も 冬の高齢者介護で気を付けるべきこと

高齢者にとって様々なリスクが潜む季節に、高齢者介護やケアにおいて注意すべきことを解説します。自宅や高齢者施設でするべき対策とは? 【執筆者:専門家/大関 美里】


冬到来!高齢介護においては、より気を引き締めて対策を

ヒートショックや鬱や感染症|冬の高齢者介護で気を付けること

執筆者/専門家

大関 美里

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/13

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 ▶プロフィール 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。排泄の不都合があっても『大丈夫。』 そう言い合える社会を目指して、単なる身体からの排泄支援だけでなく、自分の心をどう出すかを新たな価値観で伝えるため「DASUケア」を提唱。 介護施設の現場同行とセミナーから、より良い出し方を伝える活動に挑戦中。

2024年は暖冬傾向と予想されていますが、エリアによっては寒気の影響で、一時的な大雪などが発生する低気圧の通過が多くなる見込みとのことです。

いよいよ冬本番のこれからの季節にむけて、ストーブや加湿器を準備したり…と、私も「寒さ対策」を講じているところです。
日頃から高齢者の介護をされているは、より気を引き締めて対策を取られていることでしょう。
今回は改めて、リスクの高い「ヒートショック」を中心に、ほかにも冬の時期に潜むリスクとその対策について、ご紹介します。
高齢のご家族と生活されている方も、取り入れられるポイントもございますので、お役立てください。

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特にリスクの高いヒートショックには十分に注意しましょう

      ヒートショックとその危険性とは

      部屋・トイレ・浴室などの気温差によって、急激な血圧変動が原因となり、
      脳卒中や心筋梗塞などを引き起こし、最悪の場合は死に至るケースがある

厚労省の人口動態統計(2021年)によると、自宅・居住施設での浴槽で溺死した65歳以上の高齢者は4,750人となっており、これは、交通事故死者数の2倍の数だそうです。
高齢介護に従事されている方にとっては、ヒートショックに対して、特に気をつけていると思いますが、その危険性に対して、高齢者自身には十分に認知されていないのではないかと感じています。

参考:消費者庁ウェブサイト「無理せず対策 高齢者不慮の事故

このヒートショックを避けるためには、適切な室内温度の維持が必要です。でも、過度な節電意識で暖房器具の使用を控えたり、「冬は寒いのが当たり前だ」と厚着だけでしのいだり、となかなか対策が困難なケースが見受けられます。
その理由には、現状の室温が自身に健康被害をもたらすリスクを過小評価していることもありますが、温度や湿度を認知できていない(できにくい)事も大いに挙げられます。

高齢者がなぜヒートショックが起こりやすくなるのか

寒い気候では高齢者の体温調節が難しくなります。というのも、高齢になると体温を維持する機能が低下するためです。低体温症のリスクが高まると、深刻な健康問題を引き起こす可能性が高くなるため注意が必要です。高齢者の体温調節が難しくなる主な理由は下記の3つです。

1.体温調節中枢の変化:
高齢になると、体温を調節する中枢である視床下部の働きが低下します。これにより、体温の変動への対応が鈍くなり、外部の気温変化に適切に反応できなくなります。

2.皮膚の変化:
高齢者の皮膚は薄くなり、皮下脂肪や血管の密度が減少します。これにより、体温を保つための保護層が薄くなり、体感温度が低下しやすくなります。

3.代謝の低下:
代謝の低下にて、体内でのエネルギー生成が減少します。代謝が低下すると体温を維持するためのエネルギーが不足しやすくなります。

ヒートショックへの対策とは

その上で、すぐにできる対応方法は下記です。

・各部屋の温度管理を適切に行い、体感ではなく温度計で室温を見てもらう。
・十分な暖房、断熱性のあるものを提供する。
・適切な衣服を着用することで体温を保つ。
・適度な運動の機会をもつことで身体を温める。
・浴槽から急に立ち上がらないように伝える。
・浴室内の温度を上げておく。

また、在宅で生活する高齢者にとっては、その家屋の断熱性能にもよって異なりますが、特に冬季の浴室や脱衣室、トイレの温度は一度チェックされることをお勧めします。

生理学、医学分野では血圧や湯温、室温の関係を検討した研究によると、浴室、脱衣室、トイレの温度は最低は17度以上とされ、20度以上は必要とされています。
そして湯温は41度以下、入出浴における収縮期血圧の変動幅は±10mmHg以内が望ましいとされていますので、指標とされてください。

ほかにも、高齢者が冬に注意したいこととその対策

その他、寒い時期に注意したいこととその対応方法は下記の3点です。

風邪や感染症のリスク

寒い季節は風邪やインフルエンザなどの感染症が流行しやすい時期です。高齢者の免疫力が低下しているため、感染症にかかりやすく、重症化する可能性があります。

対応方法は下記です。
・腸内環境を整え免疫力を高めること
・適切な手洗いやうがいを徹底し、感染リスクを減らすこと
・外出時には人混みを避けるなどの注意を払いましょう

季節性のうつ病や孤独感

寒い季節になると日照時間が減少し、季節性のうつ病が増える傾向があります。また、外出が億劫になり家に閉じこもりがちになり、孤独感を感じやすくなります。

対応方法は下記です。
・日中、十分な日光を浴びるよう外出や窓際での過ごし方を促すこと
・コミュニケーションを大切にし、高齢者の孤独感を軽減するための支援を提供すること
・趣味や興味が持てる活動を提供し、精神的な健康を促進すること

栄養・水分摂取不足

寒い時期には食欲が減退し、栄養不足に陥りやすくなります。栄養不足は免疫力の低下や健康問題を引き起こす可能性があります。また、寒いと感じても、室内の乾燥や暖房によって水分は失われています。
頻繁にトイレに行きたくない、失禁の恐れなどから水分摂取を控える方もいます。トイレまでの移動や環境を整備し、本人のネックになっていることを見つけ出してアプローチしていきましょう。

対応方法は下記です。
・栄養価の高い食事を提供し、バランスの取れた食事を心がけること
・高齢者の食事制限や好みに合わせた食事を準備すること
・栄養補助食品の使用を検討すること
・水分は身体を冷やさないよう常温以上の温度のものを取りましょう
・こまめに水分を摂れるように、コップに注いでおくなどの工夫をしてみましょう

さいごに

上記の点に気をつけながら、寒い時期を乗り越え、春を楽しみに待てるようにサポートできると良いかと思います。
もちろん、個々の高齢者の状況や健康状態に応じて、適切な対策を講じることが重要です。
室温の管理や正しい服装、水分補給などを常に意識し、健康リスクを最小限に抑え、お互いが安心して過ごしていけるように色々なものを活用していきましょう。

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