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認知症の母でも入れる施設とは?施設選択のポイントを専門家が解説

認知症の母でも入れる施設とは?施設選択のポイントを専門家が解説

母を自宅で介護していましたが、認知症が重くなっているよう…認知症の母でも入れる施設はありますか?施設選択のポイントを専門家が解説します。 【執筆者:伊藤 浩一(介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員)】


本日のお悩み

母を自宅で介護していましたが、認知症が重くなっているようで、これ以上は厳しいと感じるようになりました。もちろん、一緒に暮らしたい気持ちはありますが…認知症の母でも入れる施設はありますか?

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グループホームの存在意義と選び方

解説者/専門家

この記事は、伊藤さんが執筆しました♪
資格:介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

<経歴> 茨城県介護福祉士会副会長| 特別養護老人ホームもくせい施設長| いばらき中央福祉専門学校学校長代行| NPO法人 ちいきの学校 理事| 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント| <プロフィール> 介護福祉士として8年の現場を経験後、33歳で特別養護老人ホームの施設長に就任。現在まで、4カ所の特養の施設長を経験。また、介護福祉士養成校の経営に携わる観点から福祉人材の確保定着をライフワークと位置づけ「茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクト(いばふく)」を法人の垣根を超えて横展開している。 令和元年にNPO法人ちいきの学校を設立。元気なシニアが中心となって多世代が笑顔で暮らす新しいちいきをつくることにもチャレンジしている。 20年で培った現場経験と教員経験、管理者経験を生かして、認知症ケアから組織やチームマネジメントの悩みなど幅広く対応する。

ご質問ありがとうございます。
認知症のお母様をご自宅で介護されているとのこと。
詳しい状況がわからないので、想像にはなってしまいますが、「一緒に暮らしたい気持ちはあります」との文面からお母様を想い、「できる限り住み慣れた環境での生活を」と一生懸命に介護されてきたことが伝わってきます。

認知症の方の施設選択のポイントを解説いたします。
お役立ていただけますと幸いです。

まずは認知症の度合いを把握しましょう

このご質問のポイントとなるのは、まずお母様の認知症の度合いだと思います。

厚生労働省では、認知症の度合いを計る基準として「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準(以下、日常生活自立度)」を定めており、日常生活自立度は、ⅠからMの5ランクに分類されます。
※細分化されたものを加えると9ランク

*認知症高齢者の日常生活自立度*
●ランクⅠ
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している状況です。

●ランクⅡ
日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状況です。
具体的には、たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等(家庭外)、または、服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等(家庭内)の状況が考えられます。

●ランクⅢ
日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする状況です。
具体的には、着替え、食事、排便・排尿が上手にできない、時間がかかる。
やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行動等になります。

●ランクⅣ
日常生活に支障を来すような症状・行動(具体例はランクⅢと同様)や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状況です。

●ランクM
著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状況です。

出典:厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度

上記、5ランクを紹介しましたが、お母様の症状・行動はどのランクに該当するでしょうか?
「これ以上、自宅での生活は厳しい」とのことですから、ランクⅡからⅢであると想像いたします。

次に要介護認定の有無を確認しましょう

次のポイントは、お母様が要介護認定を受けていらっしゃるかどうかです。
介護施設を利用するには、要介護認定を受けていることが必要です。

*要介護認定とは*
介護が必要かどうか、またはどの程度介護が必要かを要支援1から要介護度5までの7段階で認定する仕組み

お住まいの市町村より認定調査員が伺い、お母様の状況を調査し、介護認定審査会にて介護度が決定されます。お母様の場合、認知症の日常生活自立度ランクⅡ以上が想定できる為、要介護度1以上の介護度が予測されます。

施設のご提案として、グループホームはいかがでしょうか?

ここまでの推察からお母様の入居が想定できる施設のご提案として、グループホームはいかがでしょうか?

グループホームとは

認知症(急性を除く)の高齢者に対して、共同生活住居で、家庭的な環境と地域住民との交流の下、入浴・排せつ・食事等の介護などの日常生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じ自立した日常生活を営めるようにする施設で、要支援2から入居が可能です。

出典:厚生労働省「認知症対応型共同生活介護

●ポイント! グループホームは認知症に特化している

1施設当たりの共同生活住居は3ユニットまで。
また1ユニットの定員は5人以上9人以下との規定があります。
ですが、比較的2ユニット18人程度で運営している施設が多いようです。
このように1ユニットの定員が少ないのは同ユニットの入居者が家族のように過ごせるよう配慮しているためです。

また、認知症の方は、中核症状である記憶障害、判断力の低下等により情報処理力も低下するため、広いホールではなく家庭のリビングに近い環境で過ごせる人数(=グループ)が適当であるため、ユニットの人数を規定しているということになります。

そして、グループホームの管理者は、3年以上認知症の介護従事経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了したものが常勤専従でいることも条件となっています。

これが、グループホームが認知症に特化している所以と言えますね。 ちなみに厚生労働省の定める研修は、都道府県が運営しており、現場実習もあるなどしっかりしたものとなっていますよ。

グループホームを選ぶ際のポイント

グループホームは、月額およそ15万〜20万の費用負担が必要です。
ご質問者さんがこの金額をどのように捉えるか次第ではありますが、決して安価ではないですよね。

グループホームは、令和4年厚生労働省調べにおいて、日本全国に14,079事業所あるそうです。
価格やサービスに納得して施設選びをするために、どうやってグループホームを選ぶかが重要になります。下記に施設選びにおける3つのポイントをお伝えします。

*グループホームを選ぶポイント*
1.お母様が生活してきたご自宅の環境に近いかどうか?
2.家庭的な雰囲気を有しているかどうか?
3.地域社会と連携を図っているかどうか?

お母様が生活してきたご自宅の環境に近いかどうか?

・お部屋や生活環境が住み慣れた自宅の雰囲気に近い
・使い慣れた洋服、家具、小物などを持参することを勧めてくれる
そんな、グループホームはおすすめです。

なぜなら、人間の生活の上で、リラックスすることはとても重要だからです。
また認知症の方は、前述した記憶障害などにより、私たちよりも緊張状態で生活しているため、特にリラックスできるかどうかを重要視する必要があります。

例えばですが、ご質問者さんは、外泊先のホテルなどでも特に違和感なく過ごせるタイプですか?
私は、お恥ずかしながら外泊先のホテルで用意されている部屋着ではリラックスできないので、必ず自宅でいつも着ている部屋着を持参しています。

慣れない場所でリラックスするためには自分が普段から好んでいる、または、使い慣れている洋服や物、家具を身近に置いておくことが効果的だと言われています。

また、外泊先から自宅に帰ったときは「やっぱり自宅がよい」とホッとすることはないでしょうか?
少しでもお部屋や生活環境が住み慣れた自宅の雰囲気に近いと、認知症の方もグループホームに慣れやすくなるでしょう。

家庭的な雰囲気を有しているかどうか?

グループホームは家です。
病院とは違い、「家具やしつらえ」など、一般家庭でも用いられているような雰囲気であることが大切です。

私がこのポイントを確認する際は、生花や観葉植物があるかに着目します。


商業施設では、生きている植物を手入れすることは難しいため、人工植物がインテリアとして置いてあることがほとんどです。
しかし、一般家庭では、特に高齢になると生のお花や観葉植物を趣味として、自宅に置く方がほとんどです。生きた植物からリラクゼーション効果を得るフラワーセラピーというアプローチもあるようです。
このような点に着目できていればポイントが高いグループホームと言えるでしょう。

また、意外と重要なポイントに照明があります。何がポイントかといいますと「明るすぎない」ということです。

商業施設ではいつ行っても煌々と白色の照明が明るく施設内を照らしています。なぜかと言いますと商品に照明が当たってなければ目につかないし、購買意欲も掻き立てられないからです。
しかし、グループホームは家です。
明るい白色の照明よりも暖色の間接照明が適しています。認知症の方は、情報処理力が低下していますので、明るすぎて目から入る情報が多いことはかえって疲れや不安感を与えることとなります。

地域社会と連携を図っているかどうか?

グループホームは、地域密着型サービスに位置付けられています。 そのため、「地域に密着しよう!」とそのグループホームが意識的に取り組んでいるかという点は、大切なポイントです。

WHO(世界保健機関)は、健康を「体が健やか」「心が安らか(康)」「社会参加」の3つと定義しています。そして、実は最後の「社会参加」が最も重要です。
*伊藤先生の実体験*

先日、古民家を活用し、認知症当事者の皆様と地域の高齢者の皆様が共同で昼食をつくるイベントを開催いたしました。その際、このイベントを知った近所のグループホームの管理者さんが入居者の方を連れてきてくださったんです。
参加した入居者の方は「久々に外へ出て地域の皆さんとお話ができて楽しかった。また参加したい。」との感想をお話ししてくださいました。

いまのご時世から、感染症対策を行うことは、もちろん大切です。
しかし、ご自身に置き換えて考えてみてください。
もし、ご自身がご利用者の立場になったときに、
「この家は食事もお風呂も医療サポートも整っているから、ずっと中にいてね」と言われてしまったら、どう思うでしょうか?「ああ、良かった」とは思いませんよね。
社会参加は、健康に生きるためにとても大切な要素なのです。

上記を踏まえまして、施設選択をする際は、お母様がグループホームに入居することをゴールにするのではなく、「グループホームを家として地域社会にどう参加し続けられるのか?」という視点を持って、施設選択をしていただければと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?

認知症の方の施設種別選択のポイントとしては、「認知症の度合い」「要介護認定」を前段として、入れる施設を考える。
そして、認知症に特化した施設として「グループホーム」があること、「グループホーム選びのポイント」とは?を記載させていただきました。

ただ、もっとも大切にしてほしいのは、「ご本人がどうされたいか?」です。
ご質問者さんは、お母様の想いにしっかり寄り添っていらっしゃることが想像できます。よい施設が見つかるといいですね。
ご参考になれば幸いです。
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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

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