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正しい食事介助のポイントとは?安全な姿勢、準備や手順、注意点を確認しよう

正しい食事介助のポイントとは?安全な姿勢、準備や手順、注意点を確認しよう

【2024年4月更新】自力で食事をとることが難しくなった高齢者には、食事介助を行う必要があります。要介護者が安全に食事を楽しめるよう、介護者が工夫しながら正しい方法で介助することが大切です。基本の食事介助の姿勢や手順、注意点、スプーンの入れ方など、食事介助のポイントを紹介します。施設での研修の際、マニュアルとしてもご利用いただけます。【コラム:後藤晴紀】


目次

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食事は人間にとって身体機能を維持するうえで欠かせない行為です。また、要介護者にとって「おいしい」と感じながら楽しく食事をとることは、人生を豊かにすることにも繋がります。

一方で、高齢になるにつれて身体的機能の衰えや認知機能の衰えが原因で1人で食事をすることが難しくなる人も多くいます。
今回は、要介護者が安全かつ楽しく食事がとれるよう食事をするときの基本の姿勢や手順、スプーンの入れ方、注意点など、食事介助のポイントを紹介します。

食事介助のポイントと注意点

1.利用者への挨拶で関係性構築
2.事前準備でスムーズな食事を
3.要介護者を正しい姿勢
4.食事中は介護者の座る位置、食べさせる方法に工夫を
5.食後のケアも大切

1.利用者への挨拶で関係性構築

まずは自分の名前を伝え、挨拶をします。どんな人が対応するのかを相手が把握することで安心感を持って食事ができるようになります。利用者との関係性によっては自己紹介を加えると良いでしょう。

2.事前準備でスムーズな食事を

■食事に集中しやすい環境を整える

食事前には意識や体調の確認、手洗い、排泄を済ませ、テレビを消すなど食事に集中しやすい環境を整えます。
食事を食べたいと思える雰囲気づくりも大切です。

■口の中を清潔にする

口の中が汚れていると、食事中に誤嚥した場合に細菌が体内に入って、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
予防のため、歯みがきやうがいなどで口の中を清潔にしておきましょう。

■盛り付けは食欲が湧くように

ごはんを手前左、汁物を手前右、主菜(肉や魚)は右奥、副菜は左奥になるように配置します。
必要に応じて、スプーンや自助具も用意しましょう。

※地域の習慣によって異なる場合があります。

このときに、食事がおいしく食べられる温度かどうかもあわせて確認しておきましょう。

■食事の内容や献立の説明をする

食事をする楽しみを感じてもらうため、旬の食材や味付けなどの説明をしましょう。 視覚障害がある利用者の場合、食器の位置を時計の文字盤に例える「クロックポジション」も有効です。

3.要介護者を正しい姿勢に

■いすに座る場合の正しい姿勢

・いすに深く腰掛けてもらう
・足の裏が床にしっかりついているか確認する
・股関節と膝関節が90度になっているか確認する
・おへそのあたりにテーブルの高さを合わせる
・顎が引ける、やや前かがみの姿勢が取れることを確認する

■ベッドで食事をする際の正しい姿勢

・利用者にリラックスした姿勢をとってもらう
・麻痺などがある場合、身体が傾かないようにする
・背もたれを30度以上にギャッジアップする(利用者の状態に合わせて適宜対応します)
・ベッドの折れ目に腰が合っているか、ひざは軽く曲げた状態になっているか確認する
・顎が引ける姿勢になっているか確認する
・足の裏にクッションを置くなど、足の裏がずり下がらないようにする

■車いすのまま食事をする場合の正しい姿勢

本来、食事をする時はいすへ移乗したほうが望ましいですが、車いすのまま食事をする場合はフットサポートなどで両足の裏が床につくようにします。

※車いすに乗ると、体は自然に少し後ろに傾きます。これは食事の姿勢(やや前傾姿勢)とは逆になるため、真逆の姿勢と言えるでしょう。

4.食事中は介護者の座る位置、食べさせる方法に工夫を

■介護者が隣に座る

介護者は必ず座って介助しましょう。
立ったままで食事介助を行うと、要介護者のあごが上がって食べ物を飲み込みにくくなり、誤嚥のリスクが高まります。

要介護者と同じ目の高さで介助することで、のどの動きや表情を確認しやすくなるのも利点です。座る位置は、要介護者の隣が基本です。
対面だと、見張られている感じがして落ち着かない場合があるので避けましょう。

また、例外として片麻痺がある場合は麻痺側に食事が多くたまるので麻痺側に座るようにしましょう。

■食事前に飲み物を促す

食べ物の通りをスムーズにしたり、胃液の分泌を促進したりすることができるので、飲み物で口腔内と食道を湿らせるとよいでしょう。

■スプーンや箸は下から運ぶ

スプーンや箸を要介護者の口に運ぶ際は、必ず下から運ぶようにします。
詳しい手順は以下の通りです。
1.口に対してやや斜め下からスプーンを入れる
2.舌の中央にスプーンを置く
3.唇を閉じてもらい、上唇に沿って水平に近いやや斜め上に引き抜く

■適量を口に入れる

一口分の量が多いと、むせたり窒息したりする危険があります。かといって少なすぎても、嚥下反射が起きにくくなり、ちゃんと飲み込めないことがあります。

適量は人によって異なりますが、ティースプーン1杯程度を目安にするといいでしょう。

■バランスに気をつける

要介護者が飽きないよう、ごはん、おかず、味噌汁などを交互にバランスよく口に運ぶのが基本です。ただし、食べたい順番は人それぞれなので、できる限り本人の希望に合わせるようにしましょう。
口の中が乾くと飲み込みにくくなるので、途中、お茶や水などで適度に水分を補給することも必要です。

■急かさず、ゆっくり進める

誤嚥を防ぐことや食事を楽しんでもらうためにもペースは大切です。ペース配分を行う上で以下の4点を意識しましょう。

1.要介護者ののどの動きを見て、飲み込んだのを確認してから次の一口を運ぶ
2.「ゆっくり食べましょうね」などの声掛けをし急がなくていいんだと安心して食べられる環境をつくる
3.無理に完食させるのではなく、食べられない原因を探ることから始める
4.要介護者の要求を受け入れすぎると栄養が偏ったりすることもあるので気持ちと健康状態のどちらにも配慮し柔軟に対応する

5.食後のケアも大切

食後は、入れ歯を外して手入れをする、口内をゆすぐ、歯を磨くなど、要介護者の状態に合わせた口腔ケアを行います。

食事をとった後にすぐに寝てしまうと、食べ物が逆流するおそれがあるので、食後しばらくは座った姿勢のままで休んでもらうようにしましょう。
食事や水分の摂取量、食欲の程度などを記録することも、介護者の重要な役目です。

コラム:食事介助において大切なスプーンの入れ方をより詳しく~専門家の方に聞いてみました!~

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

ここでは、食事の際のスプーンの入れ方について解説します。
その前に、口の中でどのようにして食べ物が飲み込まれるのかというメカニズムを知っておく必要があります。ご本人の口腔機能がどの程度の状態なのかによって、スプーンの入れ方も変わってきます。

1.先行期:食べ物を見つけ口腔内に入れる

食物を見つけ、見る、嗅ぐなど五感によって食べられるものであるかどうかを判断し、口に運んで口唇で取り込むまでの一連の動作を指します。

ポイント

これからお口の中へ食べ物を運びますよという事を認識していただかなくてはいけません。
声掛けと、スプーンに乗っている食べ物を目視していただきましょう。弱視や全盲の方には、丁寧に声掛けをしながら口元まで運び、唇にスプーンを触れさせることも有効です。
声掛けは忘れずに!!

2.準備期:食べ物を咀嚼し食塊にする

食塊を形成するため、口に入れた食物を咀嚼します。
舌は食物を上あごに押し付け、かたさや温度、味など、その食事がどのような食事なのか確認します。やわらかければ、そのまま舌と上あごで押しつぶし、舌の上で食塊を形成します。

噛む必要があるなと認識した場合に、舌を使って奥歯へと送って咀嚼します。また、大きな食物はまず前歯で砕いたのち、舌の上から奥歯に移していき、舌と頬によって奥歯で粉砕されます。

そうして、ペースト状や極刻み状になった食べ物は舌の上に集められ、飲み込める量の塊を作ります。この過程を「食塊形成」といいます。

ポイント(常食、きざみ食のスプーンの入れ方)

『極刻み』や『ペースト』状の食事形態は、ご本人の噛む能力や、飲み込む能力に合わせて形態を選択しているため、食事形態によって口の中へスプーンを入れる方法が少し変わってきます。

●常食
かむ力や舌の力、飲み込む力が十分にある方です。そのため、スプーンをお口と並行に差し入れ、そのまま引き出す形で十分に咀嚼が出来ると思います。

●きざみ食
常食の方よりも、かむ力や飲み込む力が弱くなっている方です。特に、口の中に食べ物が入って来た際に、舌で上あごに押し付ける力が弱まっている方が多いでしょう。スプーンを引き抜く際、前歯の後ろ側に押し付けながら引き抜くイメージでスプーンを抜いてみてください。そうすることで、ご本人のお口の中で食塊が形成しやすくなると思います。

3.口腔期:食塊をまとめ、飲み込む準備をする

舌運動によって、食塊を口腔から咽頭に送り込む時期です。
口腔期以後は、意識しなくても反射的に行われる運動です。
このとき、口唇は閉じて、舌の前方は上あごの前歯の付け根に押し当てられます。こうすることで、喉の奥に送り込みやすくなるんですね。

ポイント(極刻み、ペーストのスプーンの入れ方)

●極刻み
この食事形態の方は、口腔内の力がかなり衰えています。その為、そのまま飲み込んでも問題が無いほどに刻んであります。私たちでいうところの、噛み終えた状態に近いでしょう。
そのまま喉の奥に送り込みやすいように、スプーンは舌の中央に差し入れ、舌の中央に食事が乗るようにしてください。お口の中に運ぶ量は、一回で飲み込める量となることがお分かりいただけると思います。
上あごに押し付ける力が残っている場合には、前歯の後ろ側に押し付けながら引き抜くイメージでスプーンを抜いてみましょう。その際、口の中に食べ物が残っている場合、舌の上で食塊が形成できず喉の奥に送り込む力が無い状態だと思われます。飲み込みやすいように、舌の中央に乗せてあげるようにしてくださいね。

●ペースト
かむ力も、飲み込む力も弱まってしまっています。食塊も形成できない状態ですので、スプーンは舌の中央に差し入れ、舌の中央に食事が乗るようにしてください。こうすることで、舌で喉の奥に運び、飲み込むだけになります。

4.咽頭期:食塊を咽頭に送り込み嚥下する

5.食道期:嚥下した食べ物を胃へ送る

4・5については、飲み込んだ後の反射となりますので、詳しい説明は省かせていただきます。

事業所に歯科医や歯科衛生士さんの訪問がある場合には、管理栄養士さんや、看護職員さんも含めてご相談されるのが良いと思います。

まとめ:要介護者に寄り添った食事介助で、食事を楽しい時間に

体が自由に動かせなくなり、趣味や外出の機会が減った高齢者にとって、食事は貴重な楽しみの時間です。
毎日の食事を心からおいしいと感じながら味わうことが、生きがいを生み、身体機能の維持にもつながります。

要介護者が食事を楽しめるかどうか、食べる機能を長く維持できるかどうかは、介護者の食事介助のやり方にかかっています。

体の状態や食への意欲、好み、習慣は人によって違うので、その人に合わせたサポートをすることも重要です。
基本の知識とスキルを身につけたうえで、積極的にコミュニケーションをとりながら、要介護者に寄り添った正しく安全な食事介助を心がけましょう。

【最後に】マンガで簡単まとめ♪

食事介助のコツ①

食事介助のコツ②

マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)

食事介助の動画はこちら

【食事介助編】全力応援!介護の現場チャンネル | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/59

介助技術を楽しく学べる動画「全力応援!介護の現場チャンネル」食事介助編です。

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