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入浴拒否の利用者さん。どうすれば、入浴していただける?

入浴拒否の利用者さん。どうすれば、入浴していただける?

デイサービスで、勤務中。認知症で入浴拒否の利用者がいる場合、どうすれば入浴していただくことが出来るのでしょうか?お悩みに専門家が回答します。 【回答者:後藤 晴紀】


入浴拒否の利用者さん。どうすれば、入浴していただける?

入浴介助 入浴拒否

本日のお悩み

デイサービスで働いています。認知症で入浴拒否の利用者がいます。どうすれば、入浴していただくことが出来るのでしょうか?アドバイスお願いいたします。
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執筆者

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

デイサービスをご利用された際に、入浴をしたくないとおっしゃるご利用者へのご案内の方法ですね!

入りたくないと申し出られてしまうと、その後なんて声を掛ければ良いのか、分からなくなってしまいますよね……。
全て同じ対応で解決することはなく、ご利用者それぞれに対応が変わってくると思いますし、同じご利用者でも、その日の体調やご気分によって対応が変わったりするかと思います。
ご質問者さんも、利用者さんに気持ちよく入浴していただきたいという気持ちから、質問を寄せてくださったのだと思います。

いくつかのポイントや、対応の方法の一例として、ご質問者さんの引き出しの数を増やせるように回答させていただきます!

入浴拒否の対応のポイント

ご家族への説明と同意を得て、情報収集をしましょう

デイサービスを利用いただく目的として、サービス内容に「入浴支援」が明記されているかと思います。
また、ご家庭で入浴が困難な状況の方は、ご家族の要望として「入浴目的」というサービス内容が位置付けられている方も少なくないでしょう。

そのような居宅サービス計画書に基づいた通所介護計画では、入浴することを目的としたサービス提供となりますが、今回の事例のように、入浴拒否があればうまくサービス提供に結びつかない状況があります。

このような「入浴目的」などの利用の場合は、まずは初めにサービスご利用前に入浴が困難な状況が予測できることがないかを確認する必要があります。
入浴困難が予測できる場合には、ご家族に対して説明をし同意を得ることが大切となります。


なぜかと言いますと、ご家族の気持ちとしては、「専門家に任せたため、すぐにこの問題が解決される=入浴は問題ないだろう」と思われるご家族もいらっしゃるかためです。
私たち専門職は、ご家族の思いや、ご本人の状況に対して、最大限に応えるケアを提供していきますが、「最初からできる」訳ではないということを事前に伝えておく必要があるということですね。

ご家族とのミスコミュニケーションを防ぐために、「入浴をしていただく為には、どのような段階や関り方があり、そのためにはどのような情報が必要なのか?」を丁寧に説明し、ご理解をいただいたうえで必要な情報収集していく作業へと移るのがよいと思います。

情報収集をすることが質の高いケアに繋がる

ご本人の情報については、これまでの嗜好や成育歴など様々な情報が必要となります。
情報を集めるためには、
・ご家族やケアマネジャーからの情報
・他の介護保険事業所の情報 などから、
ご家庭での様子を教えていただくのが良いと思います。

そのような情報を基に、ご本人の気持ちが入浴へ向くような関りをしていくのがよいでしょう。

仮に、このご家族への説明と同意を行わずに、デイサービスの上司や先輩やケアマネジャーが介護職員に対して、「サービス内容に位置づけられているのだから、利用時は必ず入浴させてほしい。ご家族から苦情が入ってしまう。」などと伝えたとします。

適切な手順を踏まずに、情報が不足した介護職員に入浴介助の業務だけを押し付けてしまうようなことがあれば、その介護職員は、なんとしてでもサービス利用時の入浴を死守しようとしてしまうでしょう。

これが入浴支援の呪縛となります。
必ず入れなければならないという介護職員の思いから、ご利用者の思いは、「拒否」という一言で片づけられ、半ば強引に衣類を脱がされ、浴槽へ入れられてしまう状況となってしまう可能性もあります。

そんな不適切な行為を受けたご利用者は、「この場所は嫌な場所だ」と、負の感情の記憶が強化され、信頼関係が構築できなくなるばかりか、行動・心理症状が悪化しかねない状態になってしまします。

こうなれば、不適切なケアとして、ご利用者本人も介護職員も苦痛と負担でしかなくなってしまうのです。
しっかりと説明と同意を行ったうえで、ケアを行うようにしましょう。

入浴拒否の理由を探る

「入浴をしなければいけない」という呪縛から介護職員を解き放つためには、「ご家族への説明と同意」そして、「情報収集が必要」というお話をさせていただきました。
しかし、これだけではご利用者が気持ちよく入浴をできるようになるとは言い難いです。

次に大切なこととしては、具体的に気持ちよく入浴していただくための関り方を持つことです!

この対応は、認知症の有無は関係ありませんよね。
誰でも入浴をしたいと思っていない時に「入浴しましょう!」と言われても「しません!!」ということは、当然のことだと思います。

すなわち、この「入浴を拒否する」行動には、必ずその方なりの理由が存在すると思います。

では、その時のご利用者の気持ちはどのような気持ちでしょうか?
なぜ入りたくないのでしょうか?

① 裸を見られるのが恥ずかしい

② スタッフの手を煩わせたくない

③ 面倒くさい

④ 単純に気分が乗らない

⑤ お風呂が嫌い

⑥ よくわからないけど、不安

⑦ 他にやらないといけないことがある

まずはその方が入浴を断る理由を探るところから始めましょう!
理由を探ることで、かかわり方に工夫できる点が見つかるかもしれません。
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気持ちの切り替えをサポートする

例えば、そもそも、⑤お風呂が嫌いな方に、
「気持ちいいですよ!お風呂に入りましょう!」と言っても、その方の場合は入りたいとは思わないと思います。

「〇〇さん、お風呂はあまり好きではなかったですよね?先にサッと入れるように用意したので、お身体だけ洗って今日は終わりにしませんか♪」

このような声かけの方が、ご本人の気持ちを切り替えられるかもしれません。

このお声掛けのポイントは、

・名前を呼ぶことで、ご利用者の事を知っている事を伝える。
(私のこと、わかってるわね!と思っていただく。)

・簡単に済ませられる事を伝える。また、その方のためにお風呂の用意をしたことを感じていただく。
(特別感を演出!)

・入浴中は、ご本人から「気持ちが良い」を言葉でたくさん引き出しましょう。
(旅行や温泉での思い出話を伺ったり、ご本人が好きな湯の温度設定を見つけたり、背中を洗う強さ、髪の毛を洗う強さを個別に最適にしていきましょう。入浴はご本人とゆっくり関われる絶好の機会です。)

この様なポイントから、少しずつ入浴に対する拒否感が和らいで、徐々に入浴をしてくださる様になるかもしれません。
ご本人に「楽しい、うれしい、気持ちいい」をたくさん感じていただき、正の感情を高めて頂きたいですね!

ご本人にとって、より良いタイミングでお声掛けを行う

お風呂が嫌いという以外の理由を考えてみたときに、人はいくつになっても、裸を見られるのは嫌ですし、他人の手を借りるのは抵抗があると思います。

入浴の時間を少しでも、楽しくポジティブな時間にしたいと思う反面、それでも、日によっては体調の変化もあったり、大きく気分が乗らないことがあったりすることも当然です。

そんな日はやむなしです!
ご利用者の体調や気分、ペースに合わせていきましょう!

上記の対応以外にも、屋外活動をしていただいたり、一緒に散歩をしたりと、ご本人のそばで本人の発言や表情に注意を払っていただきたいと思います。
ご本人にとって、より良いタイミングで声がけを行うことが入浴をポジティブな機会にできると思います!

このようなかかわり方を継続することで、成功する時や失敗をする時が出てきます。

失敗してしまい入浴できなかった際には、時間をずらして再チャレンジ!
それでもダメなら、スタッフ間で情報を共有し、次回利用時に再チャレンジ!

かかわりを持つことを諦めないでくださいね。
「なぜ入浴いただけたのか?」「なぜ入浴いただけなかったのか?」の振り返りをすることが大切だと思います。

まとめ:専門職としての成長の機会に

上記では振り返りを行うことの重要性に触れましたが、 介護職員側の「入浴していただけたときの対応」や「入浴していただけなかったときの対応」は、丁寧に記録に残すようにしましょう。
例えば、
・介護職員がどのような言葉を選んで声をかけたのか?
・表情は意識していたのか?
・どのような場面だったのか?
・時間は何時ごろだったのか? などを記録に残すことで、様々な情報が溜まっていきます。

この「入浴をしていただく」という目標に対して、情報の収集と統合、担当者会議やケース会議などで様々な検討がされていき、より良いサービスに繋がっていきます。
これが専門職としての介護過程の立案にも繋がっていくことになるでしょう。

そして、多くを学ばせていただける機会となります。
介護職員としてより強くなるための貴重な時間となるはずです!

恐らく、材料が溜まるころには、入浴ができる日も少しずつ増えていることにも気づけるかと思います。
失敗事例からも、成功事例からもたくさんの学びを得て、専門職としての引き出しを増やしていっていただきたいと思います。

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

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