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ささえるラボ編集部です。 福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします! 「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。
もちろん、認知症によって脳の機能が低下している人にも、レクリエーションは好影響をもたらすことが期待できます。ただし、担当の介護職がレクリエーションの目的や効果をきちんと理解したうえで、認知症の人に適したレクリエーションを企画・実施することが大切です。
そこで今回は、レクリエーションを実施する目的や認知症の人への効果、押さえておきたいポイントや注意点とともに、認知症の人向けのレクリエーションのアイデアを紹介します。
高齢者向けレクリエーションの目的
・運動機能の維持・向上
・コミュニケーションの機会を作る
・楽しみをもたらし、QOLを向上させる
■脳の活性化
レクリエーションを通して集中的に見聞きして考えたり、手先を動かしたりすることで、利用者の五感が刺激され、脳の活性化につながります。思考力や認知力などの脳の機能を維持・向上させることも目的の一つです。
■運動機能の維持・向上
そこで介護施設では、利用者の運動不足を防ぎ、運動機能を維持・向上するため、レクリエーションとして体操や簡単なスポーツ、体を動かすゲームなどを実施しています。適度に体を動かすことで血行がよくなり、生活リズムが整って快眠や食欲増進につながるといったメリットもあります。
■コミュニケーションの機会を作る
特にチームワークが必要とされる集団レクリエーションは、施設のほかの利用者や施設の職員など、幅広い他者と交流する機会になります。
■楽しみをもたらし、QOLを向上させる
ただ、症状の程度にもよりますが、認知症の人向けのレクリエーションでは、運動機能の向上や脳の活性化を重視しすぎると、参加者に大きな負担やストレスがかかることがあります。そのため、機能訓練よりもコミュニケーションの機会や楽しみをもたらすことが優先されます。
ゲームや脳トレを企画する場合は、動きが単純で簡単なものを選ぶのが基本です。
認知症の主な症状
認知症とは、「アルツハイマー型認知症」をはじめとする脳の病気により脳の認知機能が低下して、日常生活に支障をきたす状態を指します。
具体的な症状としては、体験したことや過去に記憶していたことを忘れてしまう「記憶障害」、時間や日にち、自分が今いる場所などがわからなくなる「見当識障害」のほか、理解力や判断力の低下といった症状があらわれます。これらの脳の変化によってあらわれる症状を「中核症状」といいます。
さらに人によっては、暴言や徘徊、不安、憂うつ、不眠、怒りっぽくなる、物盗られ妄想、幻視・幻聴といった行動・心理症状(BPSD)といわれる症状が起こることもあります。行動・心理症状(BPSD)は、中核症状の影響に加え、環境要因、心理的要因、身体的要因などが相互に絡み合って生じると考えられています。
認知症の人へのレクリエーションの効果
また対象者の方がもともと興味を持っていて得意としている趣味の活動や料理なども、自信につながるでしょう。
行動・心理症状(BPSD)で気分が落ち込んでいる人も、仲間と交流しながらレクリエーションを楽しむことでリラックスし、不安感や孤独感が軽減されるでしょう。
また、利用者の心身の状態に合わせて適度な運動や脳トレを取り入れると、運動機能や脳機能の維持につながるほか、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。
認知症の人向けのレクリエーションを企画する際に押さえたいポイント
・適度な難易度にする
・利用者の興味に合わせた内容にする
・利用者の生活歴を考慮する
・人とのつながりが持てる内容にする
■余裕のある時間設定にする
厳密な時間設定が必要なゲームや競技は避け、参加者のペースに合わせながら進行できる企画を立案しましょう。
■適度な難易度にする
一方で、あまりに簡単だと、単調すぎて途中で参加者が飽きてしまう場合があります。
また、認知症の人は、脳の認知機能が低下していても、プライドや感情はしっかり残っているので、子ども扱いされていると感じて気分を害する人もいるかもしれません。難しすぎず、簡単すぎない適度な難易度のレクリエーションを企画しましょう。
■利用者の興味に合わせた内容にする
普段から利用者と積極的にコミュニケーションを取って、会話や生活の様子などから、その人がどんなことに興味があり、どんなときに楽しいと感じるのかを汲み取って企画に反映させましょう。
■利用者の生活歴を考慮する
利用者のこれまでの人生や生活歴に目を向けて、長年従事していた仕事や家事、スポーツなどをレクリエーションに取り入れるとよいでしょう。
また、特技を通して昔の出来事を思い出すことは、脳の活性化や精神面の安定も期待できます。
■人とのつながりが持てる内容にする
ただし、認知症の進行レベルによっては複数の人とコミュニケーションをとりづらい場合もあるので、参加者の症状に合わせた内容にする必要があります。
言葉を交わすのが難しい場合は、仲間と同じ空間にいるだけでも楽しめるような企画にすると、会話が成立しなくても人とのつながりを感じられるでしょう。
高齢者向けレクリエーションの種類
高齢者向けのレクリエーションにはさまざまな種類があり、主に次の3つに大きく分けることができます。
■集団レクリエーション
集団レクリエーションは、さらに、体を動かす運動レクリエーション、頭を使う脳トレゲーム、合唱や音楽鑑賞などの音楽レクリエーション、工作や絵画などの創作レクリエーション、散歩やお花見などの外出レクリエーションなどに分けることができます。運動レクリエーションや脳トレでは、グループに分かれて競い合うこともあります。
集団レクリエーションの大きなメリットは、仲間とのコミュニケーションが楽しめることです。ただし、参加者の認知機能や能力に差がある場合、担当の介護職が状況に応じて手助けやフォローをする必要があります。
■個別レクリエーション
個別レクリエーションの場合、他の利用者さんとの関わりはありませんが、担当の介護職が積極的に関わることで、コミュニケーションの機会にもなります。
■基礎生活レクリエーション
認知症が重度になって個別レクリエーションも難しくなった人や終末期に差し掛かった人にも実施できるレクリエーションです。
認知症の人向けのレクリエーションのアイデアと具体例26選
ここからは、認知症の人におすすめのレクリエーションのアイデアを紹介します。レクリエーションを企画する際の参考にしてください。
■回想法
回想法には、昔のことを思い出して言葉にすることで脳が活性化し、自信を取り戻すきっかけになるなど、精神の安定につながる効果があるといわれています。認知症の人は最近のことより昔のことをよく覚えている傾向があるので、認知症の人向けのレクリエーションとしても適しています。
回想法には一対一で行う個人回想法と5~6人程度のグループで行うグループ回想法があります。特にグループ回想法には、ほかの仲間の話を聞くことで刺激を受け、話題が広がる、仲間意識が生まれて関係性が深まるといったメリットもあります。
参加する利用者がグループでの交流に抵抗がない場合はグループ回想法、仲間とのコミュニケーションが苦手な場合は個別回想法というように、参加者の性格や心身の状態に合わせて準備するとよいでしょう。
■体操・体を動かすゲーム6選
その状況が継続するとさらに身体機能や筋力が低下するという悪循環に陥ってしまいます。身体機能を維持するためには、体操や体を動かすゲームといった適度な運動が効果的です。
また、適度な運動は、運動不足による血行不良や便秘などの不調の改善にもつながります。さらに、食欲が増して快眠につながるため、生活リズムが整う効果も期待できます。
■1:棒サッカー
11人ずつの2チームに分かれて、イスに向き合って座った状態で行い、得点を競い合うのが基本ルールです。ルールが簡単で、座ったままで楽しめるため、認知症の人や車椅子の人でもできるスポーツとして親しまれています。
施設でレクリエーションとして実施する場合は、参加人数や参加者の体の状態に合わせてアレンジしましょう。
■2:風船バレー
■3:足で輪投げ
対象は下半身が動かせる人に限られますが、楽しみながら下肢の運動機能のトレーニングができるレクリエーションです。転倒しないように、すぐそばで職員が付き添って実施しましょう。
■4:リズム体操
好みに合う音楽を選んだり、座ってできる内容にしたりと、参加者が楽しめるように工夫しましょう。
■5:ラジオ体操
■6:ウォーキング(散歩)
認知症の人向けのレクリエーションとして実施する場合は、担当の介護職がしっかりと付き添い、会話をしながら歩くとよいでしょう。
■手を使う遊び3選
手を使った遊びは、適度な難易度の脳トレになるうえ、体全体を使った運動が難しい人も座ったままで楽しめます。特別な道具がなくてもできるのも魅力です。
■1:後出しじゃんけん
ワンテンポ遅れて参加者も「ぽん」の掛け声とともに、指示に沿ってグー・チョキ・パーのいずれかを出します。「あいこ」が一番易しく、「勝つ」または「負ける」パターンはより難しいので、参加者の認知機能の程度に合わせて加減しましょう。
■2:指折り体操
■3:グーチョキパー体操
■音楽活動4選
音楽を活用したレクリエーションは、楽しみや生きがいにつながるだけでなく、ストレス解消や脳の刺激にもなります。昔の歌謡曲を聴いたり歌ったりすると、曲が流行った頃を思い出すことで脳が活性化されるといった、回想法と同様の効果が得られることが期待できます。
■1:カラオケ大会
最近は幅広い年齢の高齢者が介護施設を利用しているので、選曲が童謡や古い演歌ばかりだと楽しめない人もいます。人気のテレビ番組の主題歌など、テンポがよく歌いやすい最近の曲を何曲か加えてもよいでしょう。
■2:曲の続きを歌うゲーム
参加者の多くが知っていそうな童謡などを選ぶのがコツです。認知症で最近の出来事を忘れやすくなっている人でも、昔よく歌っていた童謡や有名な曲ならしっかり覚えていることが多く、すらすらと歌えると自信につながります。
施設でレクリエーションとして実施する場合は、参加人数や参加者の体の状態に合わせてアレンジしましょう。
■3:楽器演奏
■4:音楽鑑賞
音楽を聴くだけでも、脳の活性化や情緒の安定につながりますし、曲について語り合うなどことで交流が生まれることもあります。 アマチュアの演奏家や近隣の学校の音楽サークルの生徒に来てもらって生演奏を披露してもらう、レコードやCDを再生するなど、さまざまな方法があります。
曲を聴きながら、要所要所で曲に合わせて手拍子を取ってもらったり、手遊びを取り入れたりすると、より一体感を楽しんでもらえます。
■手作業・工作4選
手を動かして何かを作ったり作業をしたりするレクリエーションには、脳を刺激し、活性化する効果が期待できます。また、できあがったときに達成感が得られる点も、認知症の人が自信を取り戻すきっかけになります。完成品が残るため、後で話題にしやすいというメリットもあります。
■1:折り紙
豊富なバリエーションのなかから、季節や参加者に合わせたモチーフを選ぶことができます。みんなで教え合い、会話を楽しみながら折ることで、コミュニケーションも活性化されます。
■2:手芸
■3:工作
■4:塗り絵
しかし、色鉛筆で色を塗っていくのは指先や頭を使う作業なので、参加者に合った難易度の絵柄を選べば、適度な機能訓練になります。参加者の好きな趣味に関わるもの、季節の風物など、複数の塗り絵を用意しておくと、選ぶ楽しみもあり、興味を持ってもらいやすいでしょう。
ただし、子どもっぽい絵柄だと参加者のプライドを傷つける場合があるので、線はシンプルでも大人っぽいテイストの絵柄を選びましょう。塗り終わった後の作品を絵ハガキやカレンダーにするのも、参加者に喜ばれやすいアイデアです。
■アート活動3選
創作や芸術作品に触れることも、五感を刺激し、脳を活性化させます。感性豊かでアートが好きな人にとっては生きがいになるでしょう。
■1:ちぎり絵
■2:俳句
グループ内で作った俳句を発表し、感想を話し合うことで、仲間との関係も深まります。
■3:絵画鑑賞
■料理や家事
料理ができた後にみんなでコミュニケーションをとりながら食べる楽しみがあるのも、料理レクリエーションの魅力です。
■園芸
日の当たる屋外で体を動かして水まきや草取り、収穫などの園芸作業をすると、身体機能の訓練になるうえ、心が安らぐ、ストレス発散につながるといった精神面の効果も期待できます。
世話をした植物が育って、季節ごとに美しい花を咲かせるのを見ることは、利用者にとっては日々の楽しみの1つになるでしょう。
野菜を栽培して職員と利用者がいっしょに収穫し、料理レクリエーションや施設の食事に使うのもよいでしょう。
■マッサージやセラピー3選
マッサージやセラピー(薬や手術などによらない療法)を、レクリエーションとして取り入れている施設も少なくありません。認知症の人は症状によってストレスを抱えがちなので、マッサージやセラピーを受けることでストレスが緩和され、QOLの向上につながります。
■1:アロマセラピー(ハンドマッサージ)
介護の現場では、就寝前や憩いの時間などに紙やカップに入れたお湯に垂らす、ディフューザー(室内に香りを広げる器具)を使うといった方法で、利用者に香りを楽しんでもらうとよいでしょう。そのほか、アロマオイルを使ってハンドマッサージをするのも一つの方法です。
ただし、参加者の体の状態や既往歴によっては使ってはいけない精油もあるため、アロマに関する専門知識が求められます。レクリエーションとして実施する際には、外部から専門家に来てもらうか、アロマの知識のある職員が担当するようにしましょう。
■2:アニマルセラピー
動物が好きな人には、元気が出る、笑顔が増えるなど、精神面で大きな影響をもたらしますが、動物が苦手な人やアレルギーがある人を無理に参加させないようにしなければなりません。事前にきちんと聞き取りやリサーチをしてから実施しましょう。
■3:メイクセラピー
メイクセラピストが指導しながら、利用者自身にメイクをしてもらう場合もあります。外見が変化することで気分が明るくなり、QOLが向上するほか、認知症の行動・心理症状(BPSD)の改善にもつながると考えられています。
認知症の人にレクリエーションを実施するときの注意点
認知症の人にレクリエーションを実施する際には、さまざまな配慮が必要です。以下に具体的な注意点を紹介します。
■認知機能が同レベルの人同士で行う
■毎回同じメンバーで行う
■簡単なルールにして、わかりやすく説明する
参加者がルールや段取りの説明を理解できず、なかなか動作に移れないときは、職員が目の前でやって見せるとうまくできることもあります。ルールを理解している人でも、最初からその通りに動くのは難しいので、レクリエーション中も職員が声をかけながら手助けしましょう。
■臨機応変に対応する
逆に、休憩の時間が来ていなくても、参加者が疲れている様子なら休憩を入れる、早めに終了するなど、その場の状況に合わせて臨機応変に対応しましょう。
■安全面に配慮する
レクリエーションを実施する際には、参加者全員に目を配り、不測の事態が起こればすぐに対応できるように、十分な人数の職員を配置する必要があります。医療職やリハビリ職などとも連携し、事前に参加者の心身の状態や認知機能について意見やアドバイスを聞いておくとよいでしょう。
もしレクリエーションを実施する会場にケガや転倒の原因になりそうな物があれば、別の場所に移動させておきます。また、実施中は参加者の様子をよく観察し、体調が悪そうな人には無理をさせないようにしましょう。
■職員が楽しそうな姿を見せる
>レクリエーション実施中に、担当の職員たちが緊張してピリピリしていると、参加者もその雰囲気を敏感に感じ取って不安になるかもしれません。認知症の人に楽しんでもらうためには、担当の職員自身がリラックスして、楽しそうな笑顔で参加者に接することが大切です。
■写真や動画などの記録を残す
手芸や工作なら創作した作品が残りますが、体験して楽しむイベント系のレクリエーションの場合は、記録を残しておかないと、あとで話題にしづらくなります。時間が経っても家族や仲間と思い出を振り返ることができるように、動画や写真を多めに撮っておくとよいでしょう。
認知症の人によくあるレクリエーション中のトラブルと対処法
認知症の人向けのレクリエーションでは、思わぬトラブルが起こることもあります。以下に、よくあるトラブルとその対処方法について解説します。
■大声を出す
そんなときは決して叱ったり咎めたりせず、対応する職員や場所を変えてみるのが基本です。担当外の職員がいったんレクリエーション会場から連れ出し、落ち着くまで別室で話を聞きながら待つのも1つの方法です。
■途中で席を立つ・関係のない話を始める
認知症の人は傷つきやすく、否定されるとかえって不安や混乱が深まってしまうので、「勝手に席を立たないでください」「関係ない話をしないでください」と厳しい言葉で注意するのは控えましょう。
席を立って歩き出した場合は、職員が見守りながらついて歩き、どうしたいのかを尋ねてじっくり話を聞きましょう。関係のない話を始めた場合も、まずは遮らずに話を聞くことが大切です。そのうえで、レクリエーションに意識が向くような声かけをして、スムーズに参加できるように手助けするとよいでしょう。
■道具を口や服の中に入れる
参加者のなかに異食行動が見られる人がいる場合、レクリエーションに使う道具や備品を口に入れるおそれがあるため、口に入るサイズの道具を使わないようにするのが基本です。
事前に危険性を把握できなかった場合や、レクリエーション中に急に異食行動が出てしまった場合には、慌てて大声で注意したり無理に止めたりせず、やさしく声をかけて口から出すように誘導しましょう。
また、認知症の人のなかには収集癖がある人も少なくなく、道具をポケットや服の中に入れて持って帰ってしまうこともあります。道具類はレクリエーション終了後にきちんと回収し、数が全部揃っているかどうかをチェックしましょう。
■被害妄想になる
この症状は、レクリエーション中にも起こる可能性があり、誰かにレクリエーションの道具をとられた、悪口を言われた、暴力を振るわれたなどと主張する可能性があります。
その際は、妄想であったとしても否定せずに本人の話を聞き、共感することを意識しましょう。
その場で聞くことが難しい場合は別室などで落ち着いて対応するのも1つの手でしょう。
出典:厚生労働省 「精神病床における認知症入院患 者に関する調査」について
まとめ:参加者の意志を尊重し、楽しんでもらうことを大切に
ルールや形式、事前に決めた予定などにこだわりすぎず、楽しんでもらうことを優先しましょう。認知症の人は予期せぬ言動をすることもありますが、慌てずに適切に対応するには、担当の介護職が認知症の人の症状やよくある言動を理解しておくことが大切です。
また、基本的なことですが、利用者がどうしてもレクリエーションに興味を持ってくれないときや体調が悪そうなときに、参加を無理強いするのは禁物です。利用者自身の意思を尊重することを忘れないようにしましょう。
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