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認知症の人向けのレクリエーション26選! 効果や押さえておきたいポイントも解説

認知症の人向けのレクリエーション26選! 効果や押さえておきたいポイントも解説

レクリエーションは認知症の人にも好影響をもたらしますが、実施する際には認知症の人に適した内容を考える必要があります。認知症の人へのレクリエーションの効果や押さえたいポイント、具体的なレクリエーションのアイデアを紹介します。 【執筆者:ささえるラボ編集部】


目次

認知症の人向けのレクリエーション26選! 効果や押さえておきたいポイントも解説

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ささえるラボ編集部

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介護施設では、利用者の楽しみや機能訓練のために、さまざまなレクリエーションが行われています。
もちろん、認知症によって脳の機能が低下している人にも、レクリエーションは好影響をもたらします。ただし、担当の介護職がレクリエーションの目的や効果をきちんと理解したうえで、認知症の人に適したレクリエーションを企画・実施することが大切です。

そこで今回は、レクリエーションを実施する目的や認知症の人への効果、押さえておきたいポイントや注意点とともに、認知症の人向けのレクリエーションのアイデアを紹介します。

高齢者向けレクリエーションの目的

介護施設で実施されている高齢者向けのレクリエーションには、主に、次のような目的があります。

*高齢者向けレクリエーションの目的*
・脳の活性化
・運動機能の維持・向上
・コミュニケーションの機会を作る
・楽しみをもたらし、QOLを向上させる

脳の活性化

レクリエーションには、体操やゲーム、脳トレ、手遊び、工作などさまざまな種類があります。

レクリエーションを通して集中的に見聞きして考えたり、手先を動かしたりすることで、利用者の五感が刺激され、脳の活性化につながります。思考力や認知力などの脳の機能を維持・向上させることも目的の一つです。

運動機能の維持・向上

高齢になって足腰が弱ってくると、外出して体を動かす機会が減るため、ますます運動機能が低下してしまいます。

そこで介護施設では、利用者の運動不足を防ぎ、運動機能を維持・向上するため、レクリエーションとして体操や簡単なスポーツ、体を動かすゲームなどを実施しています。適度に体を動かすことで血行がよくなり、生活リズムが整って快眠や食欲増進につながるといったメリットもあります。

コミュニケーションの機会を作る

レクリエーションには、他者とのコミュニケーションの機会を設けるという目的もあります。
特にチームワークが必要とされる集団レクリエーションは、施設のほかの利用者や施設の職員など、幅広い他者と交流する機会になります。

楽しみをもたらし、QOLを向上させる

利用者に楽しみや生きがいをもたらすことも、レクリエーションの重要な目的です。ほかの利用者やスタッフと関わりながら楽しく過ごすことで、生活に張りが生まれて精神が安定し、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながります。

ただ、症状の程度にもよりますが、認知症の人向けのレクリエーションでは、運動機能の向上や脳の活性化を重視しすぎると、参加者に大きな負担やストレスがかかることがあります。そのため、機能訓練よりもコミュニケーションの機会や楽しみをもたらすことが優先されます。

ゲームや脳トレを企画する場合は、動きが単純で簡単なものを選ぶのが基本です。

認知症の主な症状

認知症の人へのレクリエーションの効果やレクリエーションを企画する際のポイントを知る前に、まずは認知症の主な症状を確認しておきましょう。
認知症とは、「アルツハイマー型認知症」をはじめとする脳の病気により脳の認知機能が低下して、日常生活に支障をきたす状態を指します。

具体的な症状としては、体験したことや過去に記憶していたことを忘れてしまう「記憶障害」、時間や日にち、自分が今いる場所などがわからなくなる「見当識障害」のほか、理解力や判断力の低下といった症状があらわれます。これらの脳の変化によってあらわれる症状を「中核症状」といいます。

さらに人によっては、暴言や徘徊、不安、憂うつ、不眠、怒りっぽくなる、物盗られ妄想、幻視・幻聴といった行動・心理症状(BPSD)といわれる症状が起こることもあります。行動・心理症状(BPSD)は、中核症状の影響に加え、環境要因、心理的要因、身体的要因などが相互に絡み合って生じると考えられています。

認知症の人へのレクリエーションの効果

認知症の利用者のなかには、記憶障害や見当識障害といった症状によって自信をなくしている方がいらっしゃる可能性があります。ゲームや競技、工作などで「できた」「うまくいった」という達成感を味わうことが、そういった方の自信を取り戻すきっかけになります。

また対象者の方がもともと興味を持っていて得意としている趣味の活動や料理なども、自信につながるでしょう。

行動・心理症状(BPSD)で気分が落ち込んでいる人も、仲間と交流しながらレクリエーションを楽しむことでリラックスし、不安感や孤独感が軽減されるでしょう。
また、利用者の心身の状態に合わせて適度な運動や脳トレを取り入れると、運動機能や脳機能の維持につながるほか、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。

レクリエーションを企画する際に押さえたいポイント

続いて、認知症の人向けにレクリエーションを企画・考案する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

*高齢者向けレクリエーションの目的*
・余裕のある時間設定にする
・適度な難易度にする
・利用者の興味に合わせた内容にする
・利用者の生活歴を考慮する
・人とのつながりが持てる内容にする

余裕のある時間設定にする

認知症の人は長時間集中するのが難しいので、時間のかかるレクリエーションは避けましょう。レクリエーション当日は、参加者の体調や様子を確認しながら、適度に休憩を挟む必要があります。

厳密な時間設定が必要なゲームや競技は避け、参加者のペースに合わせながら進行できる企画を立案しましょう。

適度な難易度にする

認知症の人が自信を取り戻すきっかけになることはレクリエーションの大きなメリットですが、難易度が高すぎると、参加者が自信を失ってしまい、逆効果になります。

かといってあまりに簡単だと、単調すぎて途中で参加者が飽きてしまう場合があります。
また、認知症の人は、脳の認知機能が低下していても、プライドや感情はしっかり残っているので、子ども扱いされていると感じて気分を害する人もいるかもしれません。難しすぎず、簡単すぎない適度な難易度のレクリエーションを企画しましょう。

利用者の興味に合わせた内容にする

興味のない企画に参加するのは誰にとっても気が進まないものですが、理解力や集中力が低下している認知症の人にとっては、大きな負担になります。

普段から利用者と積極的にコミュニケーションを取って、会話や生活の様子などから、その人がどんなことに興味があり、どんなときに楽しいと感じるのかを汲み取って企画に反映させましょう。

利用者の生活歴を考慮する

得意なことや特技を活かせるレクリエーションは、認知症の利用者に自信や達成感をもたらします。利用者のこれまでの人生や生活歴に目を向けて、長年従事していた仕事や家事、スポーツなどをレクリエーションに取り入れるとよいでしょう。
また、特技を通して昔の出来事を思い出すことは、脳の活性化や精神面の安定にもつながります。

人とのつながりが持てる内容にする

他者とのコミュニケーションは、精神的な安定や充足感をもたらすためにも、さらに認知症の進行を防ぐ意味でも欠かせません。
ただし、認知症の進行レベルによっては複数の人とコミュニケーションをとりづらい場合もあるので、参加者の症状に合わせた内容にする必要があります。

言葉を交わすのが難しい場合は、仲間と同じ空間にいるだけでも楽しめるような企画にすると、会話が成立しなくても人とのつながりを感じられるでしょう。

レクリエーションの種類

高齢者向けのレクリエーションにはさまざまな種類があり、主に次の3つに大きく分けることができます。

集団レクリエーション

大人数の利用者を集めて行われるレクリエーションです。高齢者介護施設で実施されているレクリエーションのほとんどは、集団レクリエーションといえます。
集団レクリエーションは、さらに、体を動かす運動レクリエーション、頭を使う脳トレゲーム、合唱や音楽鑑賞などの音楽レクリエーション、工作や絵画などの創作レクリエーション、散歩やお花見などの外出レクリエーションなどに分けることができます。運動レクリエーションや脳トレでは、グループに分かれて競い合うこともあります。

集団レクリエーションの大きなメリットは、仲間とのコミュニケーションが楽しめることです。ただし、参加者の認知機能や能力に差がある場合、担当の介護職が状況に応じて手助けやフォローをする必要があります。

個別レクリエーション

一人または少人数で行うレクリエーションのことです。将棋や手芸、折り紙、塗り絵などを個別に行います。利用者一人ひとりの興味や要望に合わせやすいのが特徴です。自分のペースで楽しめるため、認知症が進行して集団レクリエーションへの参加が難しくなった人や集団行動が苦手な人にも適しています。

個別レクリエーションの場合、ほかの利用者との関わりはありませんが、担当の介護職が積極的に関わることで、コミュニケーションの機会にもなります。

基礎生活レクリエーション

特別にレクリエーションの時間を設けるのではなく、日常生活のなかで利用者が楽しさや心地よさを感じられる時間を作るのが、基礎生活レクリエーションです。たとえば、入浴や食事のときに好きな音楽をかける、居室や共用部分に花を飾るといった工夫が考えられます。

認知症が重度になって個別レクリエーションも難しくなった人や終末期に差し掛かった人にも実施できるレクリエーションです。

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

ここからは、認知症の人におすすめのレクリエーションのアイデアを紹介します。レクリエーションを企画する際の参考にしてください。

回想法

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

回想法とは、1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法の一種です。介護施設でケアやレクリエーションとして実施する場合、昔撮った写真や流行した音楽、家庭内で使っていた生活用品などを手がかりに、介護職が利用者に質問をして、会話を引き出していくという方法で行われます。

回想法には、昔のことを思い出して言葉にすることで脳が活性化し、自信を取り戻すきっかけになるなど、精神の安定につながる効果があるといわれています。認知症の人は最近のことより昔のことをよく覚えている傾向があるので、認知症の人向けのレクリエーションとしても適しています。

回想法には一対一で行う個人回想法と5~6人程度のグループで行うグループ回想法があります。特にグループ回想法には、ほかの仲間の話を聞くことで刺激を受け、話題が広がる、仲間意識が生まれて関係性が深まるといったメリットもあります。

参加する利用者がグループでの交流に抵抗がない場合はグループ回想法、仲間とのコミュニケーションが苦手な場合は個別回想法というように、参加者の性格や心身の状態に合わせて準備するとよいでしょう。

体操・体を動かすゲーム

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

認知症の症状が進んで身の回りのことができなくなってくると、運動不足になりがちです。
その状況が継続するとさらに身体機能や筋力が低下するという悪循環に陥ってしまいます。身体機能を維持するためには、体操や体を動かすゲームといった適度な運動が効果的です。

また、適度な運動は、運動不足による血行不良や便秘などの不調の改善にもつながります。さらに、食欲が増して快眠につながるため、生活リズムが整う効果も期待できます。

具体例6つ

1*棒サッカー*
ゴールを目指して棒でボールを打ち合う簡単なサッカーゲームです。
11人ずつの2チームに分かれて、イスに向き合って座った状態で行い、得点を競い合うのが基本ルールです。ルールが簡単で、座ったままで楽しめるため、認知症の人や車椅子の人でもできるスポーツとして親しまれています。

施設でレクリエーションとして実施する場合は、参加人数や参加者の体の状態に合わせてアレンジしましょう。
2*風船バレー*
イスに座った状態で風船を使って行うバレーボールです。円陣を組んでトスを続けるだけでも楽しめますが、ネットを用意して、2~3人ずつのチームで対戦する形式にしてもよいでしょう。
3*足で輪投げ*
新聞紙やホースなどで作った輪を用意し、複数のペットボトルを床に並べます。参加者にはイスに座った状態で、ペットボトルを目がけて足で輪投げをしてもらいます。2~3人のチーム対抗にして、得点(成功した回数)を競い合うのもよいでしょう。
対象は下半身が動かせる人に限られますが、楽しみながら下肢の運動機能のトレーニングができるレクリエーションです。転倒しないように、すぐそばで職員が付き添って実施しましょう。
4*リズム体操*
音楽に合わせて体を動かすダンスのような体操です。
好みに合う音楽を選んだり、座ってできる内容にしたりと、参加者が楽しめるように工夫しましょう。
5*ラジオ体操*
ラジオ体操は多くの人に親しまれているため、音楽を聴けば自然に体が動く人もいるかもしれません。イスに座った状態でもできるので、幅広い要介護度の利用者が参加できます。
6*ウォーキング(散歩)*
道具などを用意する必要がないウォーキングは、介護職の負担が少なく、気軽に実施できる運動レクリエーションです。血行改善など身体面によい影響があるのはもちろんですが、歩きながら自然の美しさや季節の変化を楽しめるため、気分をリフレッシュできます。
認知症の人向けのレクリエーションとして実施する場合は、担当の介護職がしっかりと付き添い、会話をしながら歩くとよいでしょう。

手を使う遊び

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

手を使った遊びは、適度な難易度の脳トレになるうえ、体全体を使った運動が難しい人も座ったままで楽しめます。特別な道具がなくてもできるのも魅力です。

具体例3つ

1*後出しじゃんけん*
じゃんけんのルールを活かしたゲームです。まず担当の介護職が参加者の前に立ち、「あいこを出してください」「勝ってください」「負けてください」と指示をします。その後「じゃんけんぽん」と言いながらグー・チョキ・パーのいずれかを出します。
ワンテンポ遅れて参加者も「ぽん」の掛け声とともに、指示に沿ってグー・チョキ・パーのいずれかを出します。「あいこ」が一番易しく、「勝つ」または「負ける」パターンはより難しいので、参加者の認知機能の程度に合わせて加減しましょう。
2*指折り体操*
「1、2、3……」と声を出しながら、指を折り曲げたり伸ばしたりする体操です。手を開いた状態で親指から順番に曲げていく、握った状態で小指から順番に伸ばしていくといったように、さまざまなバリエーションが考えられます。音楽に合わせて行うのもよいでしょう。
3*グーチョキパー体操*
グー・チョキ・パーの形に手と指を動かす体操です。指折り体操と同じく、グー・チョキ・パーの順に両手で同じ形を出す、片方の手でグー、もう片方の手でチョキを出し、グーとチョキを入れ替えていくなど、さまざまなバリエーションがあるので、参加者に合わせて難易度を調整できます。

音楽活動

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

音楽を活用したレクリエーションは、楽しみや生きがいにつながるだけでなく、ストレス解消や脳の刺激にもなります。昔の歌謡曲を聴いたり歌ったりすると、曲が流行った頃を思い出すことで脳が活性化されるといった、回想法と同様の効果が得られることもあります。

具体例4つ

1*カラオケ大会*
歌っている人も聴いている人もいっしょに盛り上がれるカラオケは、介護施設では人気のあるレクリエーションです。年齢層や好みも考慮して、できるだけ多くの参加者が知っている曲を用意することがポイントです。 最近は幅広い年齢の高齢者が介護施設を利用しているので、選曲が童謡や古い演歌ばかりだと楽しめない人もいます。人気のテレビ番組の主題歌など、テンポがよく歌いやすい最近の曲を何曲か加えてもよいでしょう。
2*曲の続きを歌うゲーム*
担当の介護職が曲の最初の部分だけを歌い、レクリエーションの参加者に続きを歌ってもらいます。参加者の多くが知っていそうな童謡などを選ぶのがコツです。認知症で最近の出来事を忘れやすくなっている人でも、昔よく歌っていた童謡や有名な曲ならしっかり覚えていることが多く、すらすらと歌えると自信につながります。

施設でレクリエーションとして実施する場合は、参加人数や参加者の体の状態に合わせてアレンジしましょう。
3*楽器演奏*
認知症の利用者のなかには、ピアノやギター、三味線などの楽器の演奏ができる人や過去によく演奏していたという人もいるでしょう。個別レクリエーションとして、その人の得意な楽器の演奏を取り入れると、自信を取り戻すきっかけになり、生活に張り合いが生まれます。
4*音楽鑑賞*
歌うことや演奏が難しい利用者が多い場合は、音楽鑑賞会を開くとよいでしょう。音楽を聴くだけでも、脳の活性化や情緒の安定につながりますし、曲について語り合うなどことで交流が生まれることもあります。 アマチュアの演奏家や近隣の学校の音楽サークルの生徒に来てもらって生演奏を披露してもらう、レコードやCDを再生するなど、さまざまな方法があります。曲を聴きながら、要所要所で曲に合わせて手拍子を取ってもらったり、手遊びを取り入れたりすると、より一体感を楽しんでもらえます。

手作業・工作

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

手を動かして何かを作ったり作業をしたりするレクリエーションには、脳を刺激し、活性化する効果があります。また、できあがったときに達成感が得られる点も、認知症の人が自信を取り戻すきっかけになります。完成品が残るため、後で話題にしやすいというメリットもあります。

具体例4つ

1*折り紙*
誰もが一度は遊んだことのある折り紙は、気軽に取り入れやすいレクリエーションです。豊富なバリエーションのなかから、季節や参加者に合わせたモチーフを選ぶことができます。みんなで教え合い、会話を楽しみながら折ることで、コミュニケーションも活性化されます。
2*手芸*
布のバッグやハンカチに季節のモチーフを刺繍する、ポーチやティッシュケースを作るなど、アイデア次第で魅力的なレクリエーションになります。特に高齢の女性には手芸経験がある人が多いので、受けがよいかもしれません。昔を思い出しながら特技を発揮することは、自信につながります。完成品を家族に贈るのもよいでしょう。
3*工作*
厚紙や牛乳パックなどを材料に、小物入れやしおりなど、日常的に使える小物を作るのがおすすめです。クリスマスリースやお正月のしめ縄など、季節の飾りを作るのもよいでしょう。
4*塗り絵*
手芸や工作が苦手な人でも楽しめるのが塗り絵です。といっても、色鉛筆で色を塗っていくのは指先や頭を使う作業なので、参加者に合った難易度の絵柄を選べば、適度な機能訓練になります。参加者の好きな趣味に関わるもの、季節の風物など、複数の塗り絵を用意しておくと、選ぶ楽しみもあり、興味を持ってもらいやすいでしょう。
ただし、子どもっぽい絵柄だと参加者のプライドを傷つける場合があるので、線はシンプルでも大人っぽいテイストの絵柄を選びましょう。塗り終わった後の作品を絵ハガキやカレンダーにするのも、参加者に喜ばれやすいアイデアです。

アート活動

創作や芸術作品に触れることも、五感を刺激し、脳を活性化させます。感性豊かでアートが好きな人にとっては生きがいになるでしょう。

具体例3つ

1*ちぎり絵*
色紙や和紙をちぎって下絵に少しずつ貼っていくことで、味のある絵を完成させていきます。簡単にできて、参加者がそれぞれのセンスや個性を発揮できるレクリエーションです。
2*俳句*
創作活動のなかでは、俳句もおすすめです。俳句は「5・7・5」の17語で詠むのが基本ルールです。担当者が特定の季語を指定してルール通り季語を使った句を詠んでもらうのも一つの方法ですが、季語を決めずに自由に詠んでもらってもかまいません。グループ内で作った俳句を発表し、感想を話し合うことで、仲間との関係も深まります。
3*絵画鑑賞*
利用者が自ら創作するのが難しい場合は、絵画などのアート鑑賞をレクリエーションとして企画しましょう。施設の共用スペースなどにアート作品を展示するほか、美術館に出かけるのもよいかもしれません。最近では、認知症の人が家族や介護職とともにアート鑑賞をして感想を語り合う「アートリップ」という美術鑑賞プログラムも注目されています。

料理や家事

グループで協力し合いながら家事をすることもレクリエーションになります。特に料理には複数の工程があり、各工程の難易度によって役割分担ができるので、認知症の人にも適しています。調理が難しい人には盛り付けや片付けなどの簡単な工程を任せ、料理経験が豊富で得意な人には包丁や火を使った調理を担当してもらいましょう。
料理ができた後にみんなでコミュニケーションをとりながら食べる楽しみがあるのも、料理レクリエーションの魅力です。

園芸

介護施設の庭などで植物や野菜を栽培し、利用者に世話をしてもらう園芸レクリエーションもアイデアの一つです。

日の当たる屋外で体を動かして水まきや草取り、収穫などの園芸作業をすると、身体機能の訓練になるうえ、心が安らぐ、ストレス発散につながるといった精神面の効果も期待できます。

世話をした植物が育って、季節ごとに美しい花を咲かせるのを見ることは、利用者にとっては日々の楽しみの一つになるでしょう。
野菜を栽培して職員と利用者がいっしょに収穫し、料理レクリエーションや施設の食事に使うのもよいでしょう。

マッサージやセラピー

認知症の人向けのレクリエーションのアイデア

マッサージやセラピー(薬や手術などによらない療法)を、レクリエーションとして取り入れている施設も少なくありません。認知症の人は症状によってストレスを抱えがちなので、マッサージやセラピーを受けることでストレスが緩和され、QOLの向上につながります。

具体例3つ

1*アロマセラピー(ハンドマッサージ)*
植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使って、心身のリラックスやリフレッシュなどを促すためのセラピーです。
介護の現場では、就寝前や憩いの時間などに紙やカップに入れたお湯に垂らす、ディフューザー(室内に香りを広げる器具)を使うといった方法で、利用者に香りを楽しんでもらうとよいでしょう。そのほか、アロマオイルを使ってハンドマッサージをするのも一つの方法です。
ただし、参加者の体の状態や既往歴によっては使ってはいけない精油もあるため、アロマに関する専門知識が求められます。レクリエーションとして実施する際には、外部から専門家に来てもらうか、アロマの知識のある職員が担当するようにしましょう。
2*アニマルセラピー*
犬や猫などの小動物と触れ合ったり、いっしょに散歩をしたりすることで癒しをもたらすセラピーです。介護施設でレクリエーションとして実施する場合は、外部のアニマルセラピー専門の団体などに、ワクチン接種や衛生管理を受けている動物を連れてきてもらうのが一般的です。
動物が好きな人には、元気が出る、笑顔が増えるなど、精神面で大きな影響をもたらしますが、動物が苦手な人やアレルギーがある人を無理に参加させないようにしなければなりません。事前にきちんと聞き取りやリサーチをしてから実施しましょう。
3*メイクセラピー*
主に女性の利用者を対象としたセラピーで、プロのメイクセラピストがメイクやネイル、ハンドケアを行います。メイクセラピストが指導しながら、利用者自身にメイクをしてもらう場合もあります。外見が変化することで気分が明るくなり、QOLが向上するほか、認知症の行動・心理症状(BPSD)の改善にもつながると考えられています。
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認知症の人にレクリエーションを実施するときの注意点

認知症の人にレクリエーションを実施する際には、さまざまな配慮が必要です。以下に具体的な注意点を紹介します。

認知機能が同レベルの人同士で行う

同じ認知症の人でも、症状の進行度によって認知機能の程度やできることの範囲が大きく異なります。レクリエーションを実施するときには、認知機能や要介護度が近い人を集めて、少人数のグループで実施すると、難易度の設定がしやすく、不測の事態にもスムーズに対応できます。

毎回同じメンバーで行う

認知症の人は、変化に対応するのが苦手なので、毎回メンバーを変えると混乱して不安やストレスを感じやすくなります。グループの参加者はもちろん、担当の職員も毎回できる限り同じメンバーにしましょう。

簡単なルールにして、わかりやすく説明する

認知症の人は複雑なルールを理解して覚えるのが苦手なので、ゲームや球技などを実施する場合は、なるべくシンプルなルールを設定しましょう。レクリエーションを始める前に、簡単で具体的な言葉を使って、短い文章でわかりやすく説明することも大切です。

参加者がルールや段取りの説明を理解できず、なかなか動作に移れないときは、職員が目の前でやって見せるとうまくできることもあります。ルールを理解している人でも、最初からその通りに動くのは難しいので、レクリエーション中も職員が声をかけながら手助けしましょう。

臨機応変に対応する

認知症の人を対象としたレクリエーションでは、あらかじめ決めた内容や予定時間にこだわりすぎる必要はありません。参加者が飽きたり疲れたりしないように15分に一度程度の休憩を挟むのが基本ですが、参加者が集中している場合は中断せずに続けてもよいでしょう。

逆に、休憩の時間が来ていなくても、参加者が疲れている様子なら休憩を入れる、早めに終了するなど、その場の状況に合わせて臨機応変に対応しましょう。

安全面に配慮する

認知症の人は、周囲の状況によって混乱しやすく、急に立ち上がる、暴れるといった予期しない行動を取ることもあります。そのため、安全面には十分に配慮しなければなりません。

レクリエーションを実施する際には、参加者全員に目を配り、不測の事態が起こればすぐに対応できるように、十分な人数の職員を配置する必要があります。医療職やリハビリ職などとも連携し、事前に参加者の心身の状態や認知機能について意見やアドバイスを聞いておくとよいでしょう。

もしレクリエーションを実施する会場にケガや転倒の原因になりそうな物があれば、別の場所に移動させておきます。また、実施中は参加者の様子をよく観察し、体調が悪そうな人には無理をさせないようにしましょう。

職員が楽しそうな姿を見せる

認知症になると、言葉を理解する能力は低下してきますが、その分、人の感情の動きや場の雰囲気を感じ取る力が強まる傾向があります。

レクリエーション実施中に、担当の職員たちが緊張してピリピリしていると、参加者もその雰囲気を敏感に感じ取って不安になるかもしれません。認知症の人に楽しんでもらうためには、担当の職員自身がリラックスして、楽しそうな笑顔で参加者に接することが大切です。

写真や動画などの記録を残す

認知症の人は、せっかく仲間や担当の職員と楽しい時間を過ごしても、記憶障害によって体験したことを忘れてしまう場合があります。

手芸や工作なら創作した作品が残りますが、体験して楽しむイベント系のレクリエーションの場合は、記録を残しておかないと、あとで話題にしづらくなります。時間が経っても家族や仲間と思い出を振り返ることができるように、動画や写真を多めに撮っておくとよいでしょう。

認知症の人によくあるレクリエーション中のトラブルと対処法

認知症の人向けのレクリエーションでは、思わぬトラブルが起こることもあります。以下に、よくあるトラブルとその対処方法について解説します。

大声を出す

認知症の人のなかには、感情のコントロールがうまくできない人もいます。そのため不安を感じると、感情が高ぶって大声を出してしまうこともあります。
そんなときは決して叱ったり咎めたりせず、対応する職員や場所を変えてみるのが基本です。担当外の職員がいったんレクリエーション会場から連れ出し、落ち着くまで別室で話を聞きながら待つのも一つの方法です。

途中で席を立つ・関係のない話を始める

認知症の人は、記憶力や集中力が低下しているため、レクリエーションの途中で席を立ってしまうことや、急に関係のない話を始めることもあります。
認知症の人は傷つきやすく、否定されるとかえって不安や混乱が深まってしまうので、「勝手に席を立たないでください」「関係ない話をしないでください」と厳しい言葉で注意するのは控えましょう。

席を立って歩き出した場合は、職員が見守りながらついて歩き、どうしたいのかを尋ねてじっくり話を聞きましょう。関係のない話を始めた場合も、まずは遮らずに話を聞くことが大切です。そのうえで、レクリエーションに意識が向くような声かけをして、スムーズに参加できるように手助けするとよいでしょう。

道具を口や服の中に入れる

認知症が進行すると、食べ物とそうでない物の区別がつかなくなり、何でも口に運んでしまう「異食行動」という行動・心理症状(BPSD)が出る場合があります。

参加者のなかに異食行動が見られる人がいる場合、レクリエーションに使う道具や備品を口に入れるおそれがあるため、口に入るサイズの道具を使わないようにするのが基本です。

事前に危険性を把握できなかった場合や、レクリエーション中に急に異食行動が出てしまった場合には、慌てて大声で注意したり無理に止めたりせず、やさしく声をかけて口から出すように誘導しましょう。

また、認知症の人のなかには収集癖がある人も少なくなく、道具をポケットや服の中に入れて持って帰ってしまうこともあります。道具類はレクリエーション終了後にきちんと回収し、数が全部揃っているかどうかをチェックしましょう。

まとめ:参加者の意志を尊重し、楽しんでもらうことを大切に

施設で認知症の人向けのレクリエーションを行うことの最も重要な目的は、利用者が自信を取り戻すことやQOLを向上させることです。

ルールや形式、事前に決めた予定などにこだわりすぎず、楽しんでもらうことを優先しましょう。認知症の人は予期せぬ言動をすることもありますが、慌てずに適切に対応するには、担当の介護職が認知症の人の症状やよくある言動を理解しておくことが大切です。

また、基本的なことですが、利用者がどうしてもレクリエーションに興味を持ってくれないときや体調が悪そうなときに、参加を無理強いするのは禁物です。利用者自身の意思を尊重することを忘れないようにしましょう。
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報酬改定について苦手意識のある方は多いのではないでしょうか。とはいえ、介護に関わる皆さんが報酬改正の意図をしっかり理解し、行動を変えることは介護業界の未来にとって大きな一歩となります。法改正がどのように変わったか?を理解するために「なぜ変わったか?」をまずは押さえていきましょう。【執筆者:伊藤 浩一】


第108話 盛り付けで/ほっこり介護マンガ

第108話 盛り付けで/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


【介護事業の経営難はなぜ?】介護職員や経営者に求められる対策とは

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介護事業者の倒産数が過去最多となったというニュース。超高齢社会の日本においてなぜ、倒産数が増えてしまったのでしょうか。 今後、事業所が生き残るために必要なことを専門家が解説します。 【解説者:後藤 晴紀/介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・潜水士】


第107話 おやつ/ほっこり介護マンガ

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「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


精神保健福祉士(PSW)とは?仕事内容や資格の取得方法、勤務先について解説

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精神障害者の支援に特化した専門職である精神保健福祉士。メンタルの不調を抱える人が増えるなかで、ニーズが高まるといわれています。仕事内容や資格の取得方法、勤務先など、精神保健福祉士に関する基礎知識を解説します。【ささえるラボ編集部】


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