■執筆者
ささえるラボ編集部です。 福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします! 「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。
そこで今回は、介護職の主な仕事内容、施設の種類による仕事内容の違い、給料事情、仕事の魅力など、介護職の仕事に関する基礎知識を徹底解説。「未経験からでもチャレンジできるの?」という疑問にも答えます。
介護職の主な仕事内容
高齢者介護施設で介護業務にあたる職員は、介護職や介護士と呼ばれますが、訪問介護事業所の介護職は、ホームヘルパーと呼ばれています。また、障がい者施設で利用者の支援や介護にあたる介護職は、生活支援員と呼ばれるのが一般的です。
■身体介護:利用者の体に直接触れる介助サービス
介護職が身体介護を行うには、原則として介護職員初任者研修(以下、初任者研修)以上の資格が必要とされています。ただし、介護現場で資格を持つ介護職の指導のもとで介護助手として働く場合は、無資格者でも身体介護を行うことができます。
身体介護は、介護職の体への負担が大きいので、多くの介護現場では、最小限の力で介助を行うための介護技術である「ボディメカニクス」が活用されています。次に、具体的な身体介護の仕事内容をあげます。
■移動・移乗介助
居室からトイレ、居室から別室などへの移動を介助するのが移動介助、ベッドから車椅子、車椅子からベッド、車椅子からトイレの便座などへの乗り移りをサポートするのが移乗介護です。移動・移乗介助を行う際には、介護職は利用者が転倒しないように細心の注意を払わなければなりません。
■食事介助
高齢になると、嚥下機能(食べ物を飲み込む機能)の低下により、食べ物が食堂ではなく気管に入る「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなります。食事介助を行う際には、誤嚥を起こさないように、様子をよく見ながら、利用者が食べるペースに合わせる必要があります。
■排泄介助
排泄は自分でできるものの一人でトイレに行くのが難しい場合は、トイレまでの移動をサポートします。おむつが必要な利用者であれば、介護職が衣服の着脱からおむつ交換、清拭までを行います。
利用者のなかには、介護職に排泄を介助してもらうことに羞恥心やストレスを感じる人や、介護職に対して申し訳なさを感じる人もいます。利用者の気持ちを想像しながら、精神的な負担が最小限になるように配慮することが大切です。
■入浴介助
浴槽での入浴時には、電動リフトやストレッチャーといった機械を使う場合もあります。電動リフトは座ったままで入浴できるイス型の機械で、ストレッチャーは寝た状態で入浴できるベッドのような形の機械です。
入浴前には、利用者の体温や血圧などを測って健康状態をチェックする必要があります。利用者の体調がすぐれない場合は、シャワーだけにする、体を拭くだけにするなど、別の方法で体を清潔にします。また、冬場に脱衣所や浴室の気温が冷えていると、血圧が急激に上がってヒートショックを起こすことがあるので、入浴前にエアコンを使う、浴室の壁や床にお湯をかけるといった方法で気温を上げておく必要があります。
■更衣介助
着替えをしている姿がほかの利用者や職員に見えないように、カーテンを閉める、タオルをかけるといったプライバシーへの配慮を忘れないようにしましょう。
■整容介助
■服薬介助
ただし、包装されたシートから薬を取り出すこと、薬の一包化(用法が同じ薬を一つの袋にまとめること)などの医療行為に該当する行為は、介護職にはできません。医療行為が必要になる場合は、看護師や医師に相談しましょう。
■口腔ケア
■生活援助:日常生活をサポートするサービス
■介護記録・支援記録の作成
介護記録や支援記録は、主に、職員間の情報共有やケアプランの作成、利用者の家族への報告のために作成されます。ほかに、トラブルがあったときに職員を守るために法的証拠を残すという目的もあります。
■レクリエーションの企画・実施
レクリエーション当日には、担当の介護職がやり方やルールを説明したうえで、安全に十分に配慮し、参加者全員が楽しめるように声かけをしながら進めていきます。
■リハビリテーション(リハビリ)の補助
リハビリのメニューを考えて実施するのは理学療法士や作業療法士などの資格を持つリハビリ専門職ですが、介護職も、リハビリに使う機械の準備や片付けのほか、準備体操や訓練でリハビリ専門職の補助をすることがあります。
■健康チェック・メンタルケア
バイタルチェックのほか、日常的に利用者に接するなかで、その表情や行動をよく見て、異変のサインがないかをチェックすることも大切です。異常や心配な様子に気づいたときには、看護師に知らせる、医療機関に連絡するといった対応をする必要があります。
また、介護職は、利用者の体調はもちろん、精神面にも気を配る必要があります。もし普段と比べて元気がない、ふさいでいるといった様子が見られたら、声をかけて話を聞いて、ほかの職員とも連携しながら悩みや不安を軽減できる方法がないかを探ります。
施設の種類別の仕事内容
■特別養護老人ホーム(特養)
自分では歩行が難しく、常時介護が必要な利用者が多いため、介護職の仕事は、入浴介助や排泄介助、移乗介助といった体を使った身体介護が中心です。また、シフト(交代)制の勤務形態が一般的で、夜勤があるのも特徴です。特別養護老人ホーム(特養)での仕事には、身体的負担が大きい反面、基本的な介護スキルやチームワークがしっかり身につくというメリットがあります。
■有料老人ホーム
■介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)における介護職の主な仕事は、身体介護や日常生活の支援のほか、病院に通院する際の同行、リハビリの補助などです。利用者の身体機能の回復をサポートする施設なので、医療職やリハビリ職などと連携しながら働くことが求められます。介護職にとっては、基本的な介護業務はもちろん、リハビリに関する知識、他職種も含めたチームワークの経験も積める職場といえます。
■グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームでの介護職の仕事は、食事介助や入浴介助などの身体介護、掃除や洗濯、買い物代行などの生活援助が中心です。小規模な施設なので、アットホームな雰囲気で利用者との距離が近いのが特徴です。一人ひとりに寄り添ってじっくりとケアに取り組みたい人や、認知症に関する知識や認知症の人に対応するスキルを身につけたい人に適した職場です。
■通所介護施設(デイサービス)
利用者の要介護度が低く夜勤がないのが特徴で、特別養護老人ホーム(特養)のような入居型施設と比べると、介護職の身体的負担は大きくありません。レクリエーションに関わる機会が多いので、レクリエーションの企画・進行が好きな人、得意な人に適した職場といえます。
■就労移行支援事業所
就労移行支援事業所で働く生活支援員は、生活習慣を整えるためのアドバイスや健康管理の指導をしたり、就労に向けた生活面の悩み相談に対応したりと、主に生活に関するサポートを行います。なお、就労移行支援事業所では、生活支援員のほかに、利用者に合った就職先探しや就職後の定着のための支援をする就労支援員、主に職業訓練や生産活動の指導を担当する職業指導員といった職種も働いています。
■訪問介護事業所
ホームヘルパーは、利用者の自宅を訪問して、食事介助や排泄介助、入浴介助などの身体介護を行うほか、掃除や洗濯、調理、買い物の代行など、利用者が必要としている生活援助を行います。利用者が医療機関を受診する際には、通院に付き添うこともあります。
ホームヘルパーは、利用者の自宅に一人で訪問して身体介護にあたることがほとんどです。そのため、訪問介護事業所での勤務を希望する場合、基本的には初任者研修以上の資格が求められます。
■居宅介護事業所(ホームヘルプ)
なお、居宅介護とよく似た言葉に居宅介護支援がありますが、この2つは全く異なるサービス形態です。居宅介護が障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つであるのに対し、居宅介護支援は、介護保険法に基づく介護保険サービスです。
居宅介護支援事業所はケアマネジャーが常駐する事業所で、介護が必要な高齢者やその家族からの介護保険サービスに関する相談を受けつけ、その人の要介護度や心身の状態に合ったケアプランを作成し、適した介護サービス事業者につなぐ役割を担っています。
■サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サ高住は介護施設ではなく住宅なので、介護サービスは提供されていません。介護を必要とする入居者は、個別に外部の介護サービスを利用します。サ高住に勤務する介護職の仕事は、見回りや安否の確認、買い物の代行といった日常生活のサポートが中心です。
■医療機関
医療機関には要介護度の高い患者の割合が少なく、レクリエーションやイベントがないため、特別養護老人ホーム(特養)のような入居型施設と比べると身体的な負担は少ないでしょう。一方、他職種と関わる機会は入居型施設より多く、なかでも看護師との連携は欠かせません。
介護職の給料事情
■介護職の平均給与額
出典:厚生労働省 令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果
■介護職の給与は今後どうなる?
その後も、新たな補助金や加算制度といった介護職の賃上げにつながる施策は続々と打ち出されています。こうした国による取り組みの影響で、介護職の平均給与額は年々上昇傾向にあります。国は介護ニーズの高まりに合わせて取り組みを強化していく姿勢を見せているため、介護職の平均給与額は、今後さらに上がっていく可能性が高いでしょう。
介護職の1日のスケジュール
■入居型施設(日勤)の場合
■入居型施設(夜勤)の場合
■通所型施設の場合
■訪問介護事業所の場合
介護の仕事の魅力
2.性別・年齢に関係なく働ける
3.ライフスタイルに合わせて働ける
4.やる気次第でキャリアアップできる
5.社会に貢献できる
6.失業のリスクが低い
7.今後、待遇が改善される見込みがある
■1.やりがいがある
利用者が機能訓練を重ねた結果、今までできなかったことができるようになった瞬間に立ち会えることもあります。そのほか、現場経験を重ねるほどスキルが高まることにやりがいを感じる介護職も少なくありません。
■2.性別・年齢に関係なく働ける
ほかの業界では、年齢を重ねると転職活動で不利になる場合もありますが、介護職の場合、何歳でも転職先に困ることは少ないでしょう。たとえ40代以上で未経験でも、やる気さえあればチャレンジは可能です。
また、もともと男性よりも女性の割合が多い福祉・介護業界では、女性だから昇進しにくい、管理職になりにくいということはほとんどなく、女性が活躍しやすい職場といえます。かといって、男性が働きにくい職場かというと、そんなことはありません。男性の利用者のなかには、同性の介助を希望する人も少なくないため、どの職場でも男性の介護職は歓迎される傾向があります。
■3.ライフスタイルに合わせて働ける
また、介護職は、正規職員のほか、パート、アルバイト、派遣、夜勤専従など、幅広い働き方を選ぶことができます。職場によっては、短時間の勤務や週に数回だけの勤務も可能です。将来、結婚や出産などでライフスタイルが変化しても、勤務形態を変更したり、違うサービス形態の施設・事業所に転職したりすることで、介護の仕事を続けることができるでしょう。
■4.やる気次第でキャリアアップできる
昇進すると責任は増しますが、多くの場合、給与もアップします。また、資格手当てを支給する施設・事業所も多いため、特に役職につかなくても、上位資格をとれば給与が上がることがあります。
■5.社会に貢献できる
さらに、介護の仕事が高齢者の孤独・孤立、介護を担う家族の負担増といった社会課題の解消にもつながっていることを意識すると、自分が社会に貢献しているという実感をより強く感じられるでしょう。
■6.失業のリスクが低い
介護職として前向きに仕事に取り組んでスキルを磨きながらキャリアを積んでいけば、将来、職を失うリスクは低いでしょう。たとえ一度退職しても、復帰したいと思えば、比較的早く新しい職場も見つかるはずです。
■7.今後、待遇が改善される見込みがある
また、加算制度には、キャリアパスの整備や職場環境の改善を目的とした要件が定められています。そのため施設・事業所が加算を取得することで、賃金アップとともに、介護職にとってより働きやすい職場環境に近づく仕組みになっています。
介護の仕事の大変なところ
2.人手不足の施設が多い
3.施設によっては夜勤がある
4.人間関係の悩みが生じがち
■1.身体的な負担が大きい
基本的には、体力に自信がある人でないと続けられない仕事といえるでしょう。若いうちはとくに無理をしているとは感じなかった人でも、年齢を重ねるにつれて身体介護がつらくなる場合や、長年体に負担をかけ続けた結果、腰痛が悪化する場合があるようです。
とはいえ、福祉・介護業界にはさまざまなサービス形態の施設・事業所があります。どんなサービス形態でも、ある程度の体力は求められますが、自分の体力やライフスタイルに合わせて、要介護度の低い利用者中心の施設や夜勤のない施設を選ぶこともできます。
また、若いうちは介護現場で経験を重ねて、年齢を重ねてからは、介護経験を活かしてケアマネジャーや相談員といったデスクワーク中心の職種にキャリアチェンジするという道もあります。
■2.人手不足の施設が多い
人手不足の職場では、職員一人あたりの業務量が多い、希望通りに休みがとりにくいといった問題が生じがちです。
■3.施設によっては夜勤がある
なかには、夜勤の日だけ昼夜が逆転するために生活リズムが崩れてしまい、寝つきが悪い、不眠といった睡眠トラブルに悩む介護職もいます。夜勤が苦手な人は、通所介護施設(デイサービス)や夜間対応をしていない訪問介護事業所など、夜勤のない施設・事業所で働くのも選択肢の一つです。
■4.人間関係の悩みが生じがち
職場の人間関係で悩むことが多い人は、訪問介護事業所に転職すると、悩みを軽減できることがあります。ホームヘルパーは利用者の一人で業務にあたることが多く、ほかの介護職と密接に関わる機会が少ないためです。
介護職に向いている人の特徴
介護職に向いている人の特徴は以下の通りです。
2.些細な変化に気づくことができる
3.相手の立場や気持ちを想像できる
4.気持ちの切り替えが得意
5.協調性がある人
■1.人と関わることが好き
また、利用者の家族に利用者の様子を報告する機会や、相談を受ける機会も少なくありません。基本的に、人と関わることが好きで、コミュニケーション力のある人に向いている仕事といえます。
介護スキルを備えていても、人と関わるのが苦手な人にはあまり向いていないかもしれません。
■2.些細な変化に気づくことができる
また、利用者の周辺や施設内に、転倒やケガにつながりそうな箇所があれば、事前に家具の位置を変える、業者への修繕を管理者に依頼するといった対応も必要です。普段から周囲の人や状況の些細な変化に敏感で、状況に合わせて臨機応変な判断ができる人は介護職向きといえるでしょう。
■3.相手の立場や気持ちを想像できる
利用者の自尊心を尊重することは、介護の基本です。特に認知症の方に接するときは、症状や行動の特性を理解したうえで、否定したり急かしたりせず、共感を示すことが重要とされています。相手の気持ちを想像しながら、寄り添ったケアや前向きで温かい言葉がけができる人こそ、介護職に向いています。
■4.気持ちの切り替えが得意
そのような状況で気分が落ち込むのは仕方ないことですが、ストレスやネガティブな気持ちを長く引きずりすぎてしまう人には、介護職はあまり向いていないかもしれません。仕事が終わった後や休みの日には気持ちを切り替えて、趣味や遊びを楽しんでうまくストレスを発散できる人ほど、介護の仕事を続けやすいでしょう。
■5.協調性がある人
自分の意見を積極的に発することも大切ですが、相手の意見にも耳を傾けなければなりません。チームワークのなかでは、ときには、ほかのメンバーのやり方やペースに合わせなければならないこともあります。周囲の人と積極的にコミュニケーションをとりながら協力し合って業務を進められる人は、介護職としてもうまくやっていけるでしょう。
介護職が取得したい資格
■1.介護職員初任者研修
初任者研修の目的は、基本的な介護の知識・技術と、それを実践する際の考え方のプロセスを身につけることです。研修を実施しているのは、都道府県が指定した全国のスクール(専門学校)や社会福祉法人などです。初任者研修には、とくに受験要件が設けられていないため、誰でも受けることができます。介護職のほか、家族の介護に役立てるために取得する人も少なくありません。
■2.介護福祉士実務者研修
研修のカリキュラムには、コミュニケーション技術や生活支援技術、認知症や障がいの理解といった介護業務に必要な項目のほか、「たん吸引」や「経管栄養」などの知識と技術を学ぶ医療的ケアも含まれます。研修の時間数は計450時間ですが、初任者研修を修了していると、130時間分の科目の受講が免除されます。 なお、後述する介護福祉士の国家試験を実務経験ルートで受ける場合、受験要件として、3年以上の実務経験のほかに、実務者研修修了の資格が求められます。
■3.介護福祉士
介護福祉士の国家試験には、受験要件が設けられています。介護福祉士になるまでのルートは、主に以下の3つです。
▼介護福祉士受験要件
介護福祉士の国家試験は、毎年1~2月に、社会福祉振興・試験センター(以下、試験センター)が実施しています。試験の概要や詳しいルートは、試験センターの介護福祉士国家試験のページでご確認ください。
介護職のキャリアパス
なかには介護福祉士の資格をとった後、ケアマネジャー(介護支援専門員)試験を受けて資格を取得し、居宅介護支援事業所や介護施設のケアマネジャーになる人もいます。ケアマネジャー(介護支援専門員)試験の受験資格を得るには、介護福祉士や看護師、社会福祉士などの国家資格が必要な職種または生活相談員や支援相談員などとして5年以上の実務を経験する必要があります。
未経験・無資格から介護職になるには?
■未経験・無資格可の施設で働く
入職後、介護助手として働きながら初任者研修の資格を目指すこともできます。職場に受験費用の全額または一部を補助する資格支援制度がある場合もあります、入職前に確認をし、ぜひ利用しましょう。
■初任者研修を修了してから職場を探す
初任者研修の資格があると、最初から介護助手ではなく介護職として働けるため、給与が高くなるのが一般的です。また、初任者研修以上の資格がないと働けない訪問介護事業所や、資格のある介護職を募集している施設・事業所にも応募できるようになるため、転職先の選択肢が広がります。
まとめ:仕事内容を理解し、自分にあった介護の仕事を見つけましょう!
この記事を読んで、介護の仕事に興味を持った人、自分に向いているかもしれないと感じた人は、介護施設・事業所を転職先の選択肢の一つとして検討し、自身のキャリアパスやライフスタイルにあった働き方を見つけていきましょう。
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