そのイメージってホント?!介護業界のイメージと実態を紹介
「給料が低いイメージがある」「残業が多いのでは…?」など様々な印象があるのではないでしょうか。しかし、介護業界は高齢化という需要の高まりと共に、従事している人々の環境も変化を遂げています。
よくある介護業界のイメージとその実態について、現状を解説します!
■介護職・ヘルパーの給料が上がらないってホント?
ー 介護業界の給与水準は年々上昇している
業界の給与基準が上昇している大きな理由としては、国が介護職員をはじめ、介護業界に従事している方の処遇改善を目的に賃上げ施策を行っているためです。
2024年の介護報酬改定では、3種類あった処遇改善加算は「介護職員等処遇改善加算」として、1本化されました。
そのお金を施設や事業所の裁量で、介護職員などの賃金に上乗せして支給していく仕組みです。
そのため、引き続き介護職員などへの処遇改善の取り組みは国としても実施していくと考えられます。
■離職率が高いってホント?
ー 介護業界の離職率は年々下がっている
しかし、実は介護職の離職率は年々下がっています。また他のサービス業と比較しても、変わらないもしくは低い水準となっているのです。
また、産業全体の15.0%や他のサービス業である宿泊業・飲食サービス業の26.8%、教育・学習支援業の15.2%と比較しても介護業界の14.4%は低い数字であるとわかります。(いずれも令和4年のデータ※)
※出典:厚生労働省 -令和4年雇用動向調査結果の概況-
ー 離職率が下がったのは、処遇改善加算を得るために職場環境を良くする取り組みをしなければならなかったから
前述した「処遇改善加算」を事業所が取得するためには、「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つの算定要件をクリアする必要があります。
それぞれの要件を簡単に説明しますと、
月額賃金改善要件とは月給をアップしてベースアップしましょうという要件
職場環境等要件とは職員のキャリアアップを支援する体制を作ることや、ICTの活用など介護の質を高めるための生産性向上への取り組みを行うことなどが定められている要件です。※
つまり、事業所がより多くの追加報酬を得るには、これらの要件をクリアしていく必要があるのです。 多くの処遇改善加算を得るためには、介護業界で働く方の職場環境をより良くしていかなければならないということになりますね。
またこの要件が定められ、明文化されたことで、職場環境を良くするために何をすれば良いかが明確になりアクションプランがわかりやすくなったのではないかと考えられます。
上記は、2024年の報酬改定での処遇改善加算の算定要件となりますが、それ以前からも上記の前身となる取り組みが実施されていました。
これらの要件を素直に事業所が取り組んだことで、処遇改善加算も追加加算となり、従業員が離職することなく続けてくれるという好循環が生まれたと言えます。
※出典:厚生労働省 【事業者向けリーフレット】介護現場における賃上げ促進税制活用リーフレット
■とにかく大変でやりがいを感じにくいってホント?
ー 半分以上の職員がやりがいに対して満足している
つまり不満に感じている方は、少ないと言うことができます。※
では、介護業界における満足度の高さは何が要因となっているのでしょうか?
※出典:介護労働安定センター 令和4年度介護労働実態調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」
ー 仕事に不満を感じにくい理由とは?
2.ライフスタイルにあわせた働き方ができる
3.無資格・未経験でも意欲や能力に応じたキャリアアップができる
4.ICT化が進み以前より業務の負担軽減が行われている
1.利用者やご家族に対してや社会への貢献度が大きい
また、昨今では住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける「地域包括ケアシステム」の実現を国として推進をしています。そのため、介護業界という括りのみではなく、医療や地域との連携もしながら社会貢献できる職業となっていると言えるでしょう。
2.ライフスタイルにあわせた働き方ができる
「子育てをしながら夜勤は難しい」「年齢を重ね力仕事は厳しい」などそれぞれのライフステージにおいて希望の働き方も変わっていくと思います。
そのようなライフステージの変化があっても、様々な働き方ができるため自分にあった働き方で従事できるのは、介護業界での仕事のメリットと言えます。
施設や職種に関する説明は、後述しますので、詳しく知りたい方はご確認ください。
3.無資格・未経験でも意欲や能力に応じたキャリアアップができる
そのため、介護業界では未経験から働き始める人も増えていて、手に職をつけたいと考えている人には適した職業であると言えます。
4.ICT化が進み以前より業務の負担軽減が行われている
利用者さんの移乗などで力仕事というイメージがある方もいらっしゃるかと思いますが、介護ロボットの利用をすることでその負担を軽減できたり、睡眠時の利用者さんの状況をセンサーで見守ることで夜間の見回りの負担軽減ができたり、ご利用者さんにとっても夜間の入眠阻害にならず日中の過ごしやすさにも繋がっていたりします。
また、利用者さんのバイタルチェックをした情報はICTを利用することでスムーズに記録ができ、それらの情報がその後のアセスメントに利用できることから質の高いケアへ繋げていくことができます。
上記の通り、介護ロボットやICTの活用によって業務改善を行うことで介護の質の向上や職員の身体の負担に繋がっています。
介護業界で働く場合の課題とその対応策
しかし、まだ課題として残っていることもあります。ここでは介護業界の課題とその対応策について説明します。
1.慢性的な人手不足
2.サービス業であるからこその人間関係の難しさ
■1.慢性的な人手不足
これらの大きな要因として、介護業界の需要と供給のバランスが崩れていることが挙げられます。
また、日本は65歳以上の人口が総人口の21%以上を占める超高齢社会です。一方で1人の女性が出産する子どもの数の指標となる合計特殊出生率は2023年に過去最低の1.20を突破しており、高齢者は増えているのに、子どもは減っている状況です。
これらが進行していくと、介護を必要としている高齢者の数に対して、介護業界で働く人の数がさらに足りなくなっていきます。
そこで、国としても外国人労働者の動員を推進したり、処遇の改善を図ったりと介護業界で働く人を増やす取り組みや介護ロボットの開発・普及の促進など生産性の向上にむけた取り組みを行っています。
単に人手不足と聞くと、マイナスなイメージになりかねませんが、国としても多くの取り組みを行っているため、今後も待遇や働きやすさがプラスの方向に向かっていくと期待できるでしょう。
※出典:介護労働安定センター 令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について
■2.サービス業であるからこその人間関係の難しさ
・関わる人の数が多い、かつ機会も多い
・年次が幅広く、価値観や考え方が異なる場合がある
・忙しく、心に余裕がなくなるときがある etc.
上記はあくまで、一例であり人間関係の問題が発生する理由は様々です。
従事している方の年次の幅が広いことや「利用者さんのためにという価値観」も多様であったりすることが想像できます。また、「忙しく余裕がなくなる」という点に関しては、他の業界でも起こりうることですが、人と協力する必要がある状況が多いのが業界の特徴であると考えられます。
つまり、介護業界の人間関係が難しいと言われる理由は、単に他の業界より関わる人の幅も機会も多いと考えるのが良いでしょう。
ここでは介護職が悩みがちな人間関係の事例と解決策を紹介します。
事例1:年上の先輩と考え方が合わない、怖い
特に、介護の現場では年上の方が「上司」という関係性ではなく、同じ現場で働く「同僚」であるケースも多くあるでしょう。さらに、正社員で入職した場合、年上のパート・アルバイトの方に指示を出したり、年上の部下ができたりすることもあります。
「仕事だけの関係だから」「こんな先輩にはならないようにしよう(反面教師)」などと割り切ることができれば多少のことは問題にはならないですが、年上の方との関係性は、そんなに簡単には進まないこともあるでしょう。
・関係性に悩んでいる相手よりさらに上の上司に相談をする
・厚生労働省や市区町村が開いている相談窓口に連絡をする
・職場や配属の変更を申し出る
第三者に相談をすることを検討してみましょう。あまりにもストレスになるようであれば、無理にそこに留まる必要はないこともあります。異動や転職も可能です。ご自身が安心して働ける環境を探すのも1つの策だと言えます。
ただ前提として、人と関わることが好きな方が集まっているのが介護業界です。そういった意味では、安心して一歩踏み出していただければと思います。
事例2:後輩の育成が思うように進まない
後輩との関係に悩んだ際に考え、振り返っていただきたいことは大きく分けて2つです。
1つは、「先輩としての自分を見直す」こと。もう1つは「後輩の立場に立って考えてみる」ことです。
まず、「先輩としての自分を見直す」ことについてです。見直すポイントとしては4点あります。
・自分のできることを相手にとっても当たり前にできることと思い込んでいないか
・否定ばかりでなく承認の機会を設けているか
・日頃対話ができているか(話しかけづらい雰囲気を出していないか)
・後輩ができるようになったことを振り返る機会を設けているか
思うように行動してくれないとなると、どうしても相手を責めたくなりがちですが、自分自身のかかわり方などもこの機会に振り返ってみるとよいでしょう。
次に、「後輩の立場に立って考えてみる」ことのポイントです。
・後輩が学生時代の周囲の環境を想像する
→年々ハラスメント防止の対策も厳しくなり自分たちが学生の頃より上下関係などは厳しくなくなっているかもしれません
・後輩はどのようなキャリアプランやライフスタイルを望んでいるか
・後輩はどのような状況で喜ぶのか(承認の機会を探る)
自分自身を取り囲む環境と、後輩を囲む環境は全く異なっているということを理解する必要があります。
また、新しい職場で緊張し思うように意見を述べることができていない可能性もあるので、後輩の心理的安全性を保ちつつ、対話をする機会を設けていきましょう。
事例3:利用者さんとの関係性に悩んでいる
では、実際に利用者さんとの関係性で悩んだ際はどのような対応をすればよいのでしょうか。
・上司や同僚に相談をしてみる
・利用者さんの行動背景を考えてみる
・(暴力の場合)状況を記録し上司に報告、今後の対応策を検討する
・事業所の窓口や厚生労働省の窓口などに相談する
利用者さんの視点も大切にしつつ、何より介護業界に従事する自身のことを大切にしていきましょう。
また、暴力暴言などについては、令和3年度の介護報酬改定により全介護サービスにおけるカスタマーハラスメント対策の強化が求められていて、事業所や施設も今まで以上に対策には力を入れているはずです。
1人で抱え込まず周囲に相談することを忘れないようにしてください。
多種多様な介護職のキャリア
しかし、介護業界の仕事は施設や職種、資格の有無などで選択できるキャリアに幅があります。
ご自身のライフステージにあった働き方ができる環境を見つけやすいでしょう。
■働く場所ってどんなとこ?
■入所・居住型 ー ご利用者に生活の場を提供する施設やホーム
・夜勤で働きたい人
→24時間体制なので、夜勤のシフトに入ることができます
・よりご利用者さん一人ひとりに親身に介護をしたい人
→基本的に同じ顔ぶれの利用者さんであるため、より親身に関係性を築けます
・体力、精神力に自信がある人
→シフトが不規則になることや四六時中ご利用者さんといることになるので体力、精神力のタフさが求められます
■通所型 ー ご利用者が通って介護サービスを受ける
・ライフワークバランスを崩したくない人
→日帰りのため夜勤がない、日曜が休みの施設もあります
・レクリエーションなど楽しむことが好きな人
→レクリエーションやイベントの企画があるので、創造力を活かすこともできます
■訪問型 ー ご利用者さんの自宅に訪問し介護サービスを提供する
1日中ではなく、午前の訪問だけ、午後の訪問だけという働き方ができるのが特徴です。
・子育て中などライフスタイルにあわせた働き方をしたい人
・ご利用者さん一人ひとりと向き合いたい人
→施設と異なり、ほかにご利用者やスタッフはいないためより密に目の前にいるご利用者さんやその生活に向き合いケアを行うことができます
■どんな職種があるの?
ここに載っているもの以外にも様々な職種があるので、求人を見るなかで自身の希望と合うものを探していきましょう。
■介護職員(施設介護員)
また、介護職員と似たものとして「介護助手」という職種があります。
介護助手は身体介護以外の清掃や備品の整理整頓、食事の配膳などを行います。パートタイムで働く人が多いですが、施設によっては初任者研修の費用を負担してくれる場合があるので、介護助手から介護職員を目指して働く人はこのような援助がある事業所や施設を探すのが良いでしょう。
■訪問介護員
訪問介護では一般的に1人での訪問が多いため、生活援助従事者研修や介護職員初任者研修といった介護に関する基礎知識を学べる研修を修了している必要があります。
さらに、自宅への訪問を伴う職種であるため、普通自動車免許をもっていると選考において有利に進むこともあります。
また、利用者宅間の移動で要する時間は労働時間に含まれることになっているので、施設にも念のため確認しましょう。(※自分の家から利用者さんの自宅に向かうのは出勤扱いで、通勤時間にみなされます)
■管理職・マネジメント職
有料老人ホームやデイサービスでは資格要件が定められていない場合がほとんどなので、他業界から転職をしてきて施設長や管理者になる人もいます。
■事務関係職
一般企業の事務職と異なる点としては介護報酬請求業務を行う点が挙げられます。
介護事務になるためには、一般的な事務業務のスキルはもちろん、介護報酬や介護保険に関する知識も求められます。
体力的な負担が少ないことや未経験・無資格からでもなることができるという点で、常に人気のある職種です。
事業所によっては介護職と兼任する場合があるので求人を探す際は必ず確認してください。
■どんな資格があるの?
しかし、できる業務の幅を広げたい、職位をあげてキャリアアップしたい、給料をアップしたい、職種を変えてキャリアチェンジしたいなどと考えている方は、資格の取得を目指すことが大切でしょう。事業所によって資格取得に対する支援体制が異なるので事業所を探す際は、自身の望むキャリアパスを支援してくれるかどうか見てみるのもよいと思います。
また、介護福祉士を取得したあとも、認定介護福祉士の取得を目指したり、相談援助をおこなえる職種を目指したり、管理職を目指したりと様々な選択肢があります。自身のライフスタイルや目指すキャリアパスに応じて選択できるのが介護業界の強みです。
■介護職のキャリア例
介護業界で活かせる経験と強み、性格や特徴
これらを参考に自身の経験に落とし込んで考えてみると面接対策や、入職後に自分に適した環境で働くことができると思います。
■経験と強み
経験1:営業職
介護業界においても、利用者さんとのコミュニケーションや一緒に働く職員さんとの連携が重要となります。また、伝えたいことを簡潔かつ明確に話せるのも営業職経験者の強みであると言えます。
経験2:飲食、ホテル業界
サービス業ではお客様とのコミュニケーションが求められるため、対話力が身についています。また、お客様に対する礼儀やマナーなどのスキル、そして思いやりの気持ちは介護業界においても利用者さんにより心地よく過ごしてもらえる環境づくりに貢献できると思います。
経験3:教育業界、保育士、幼稚園教諭
また、保育士や幼稚園教諭として勤めていた人は、レクリエーションで人をどのように楽しませるかといったスキルも身につけているため介護施設でもその力を活かせます。
■性格や特徴
タイプ1:人と関わるのが好きな人
人と関わることが好きな人であれば、円滑に業務を進めることができるでしょう。
タイプ2:健康で体力に自信がある人
もちろん、夜勤をしない働き方ができる事業所や職種もあるので不安があるから介護業界で働けないということではありません。自分に合った働き方をしましょう。
タイプ3:真面目で自分の仕事に責任をもって取り組める人
目の前にいる利用者さんのため、利用者さんのご家族のためと誰かのために真剣に向き合い責任をもって取り組める人が適しています。
タイプ4:視野が広い人
物が置きっぱなしで危ない、あの利用者さんたち何かトラブルが起きそうなど早めに気づくことは事故やトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
タイプ5:人や社会に貢献したい人
「誰かのために、社会のために」を就職や転職の軸としている人にはおすすめの業界です。
まとめ:介護業界と共に成長しませんか?
また、様々なキャリア形成を行うことができるのでライフプランとの両立も可能です。成長し続ける介護業界でぜひ一緒に活躍してみませんか?
介護業界に興味を持った方は求人なども見てみてください!より働くイメージが湧くと思います。
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