本日のお悩み
利用者様のご家族からクレームがあり、始末書を書かなくてはなりません。
始末書にはどんなことを書いたらいいでしょうか。書き方を教えてください。
「始末書」「事故報告書」への理解を一緒に深めましょう。
始末書。できたら書きたくないですよね。
私も過去の社会人経験の中で、数回書いたことが有ります。とても苦い思い出です。
■始末書とは?
まず、始末書とは何なのか。これから説明しましょう。
始末書とは、業務上のトラブルやミス、クレームなどを起こした時や就業規則違反を犯した時に、
当事者が謝罪と反省を示し、再発防止を誓約する文書のことです。
顛末書とは?
似たような言葉で「顛末書」というものがあります。混同されがちなので、この言葉の説明もしておきます。
顛末書は、事象がおきた経緯経過を説明するために作成する文書で、謝罪や反省を記す必要はありません。どのような経緯で、なぜ起こったのかを記す報告書のようなものと理解してください。
事故報告書との違いは?
では、介護や福祉の現場のケースで考えてみましょう。
私たちは事故が起きた時や起こりそうになった時に、事故報告書やヒヤリハット報告書を書きますよね。
これらは、職場内でリスクを共有し、事故の再発を防ぐものですので、提出したからと言って、懲戒処分を受けるわけではありません。
一方、始末書は単に提出するだけでなく、多くの場合は法人における懲戒処分の1つとなります。
つまり、顛末書や事故報告書よりも重たいものであるという理解をし、文書を書き、提出する必要があります。
■始末書はどんな時に提出を求められる?
始末書は、どのような時に提出を求められるのでしょうか。
例えば、
・同じようなミスが繰り返され、同じような事故を起こした場合
・ご利用者やご家族から苦情やクレームが数度あり、明らかに職員に非が認められる案件の場合
・利用者に対し、意図的に虐待などを行った場合
このようなケースが想定されます。
つまり、相当に重篤な場合に提出を求められるという理解をしていただいてよいと思います。
法人も簡単に「懲戒処分」をするわけではないですからね。
今回のご相談のクレームの内容が分からないですが、法人にとって、重篤なクレームであり、謝罪と反省を示してもらう必要があるという判断であったと推察できます。
■始末書の書き方と、その内容
次に、ご相談にある「始末書の書き方」について、ご説明します。
法人で、始末書の書式が定められている場合は、それに沿って、記入してください。
指定の書式が無い場合は、手書きやwordなどは自由ですが、一言上司に相談するとよいでしょうね。
ただし、署名と捺印は必ず行うようにしてください。
始末書に盛り込むべき内容は?
盛り込むべき内容は、
・起こしたトラブルやミス、クレームの内容
・その経緯と解決方法
・謝罪と反省、再発防止の誓約
の3つは必ず入れてください。
出来るだけ具体的に、正確に、そして言い訳がましくならないようにすることも大事です。
■自分は本当に始末書を書くべきか?も見極めましょう。
以上、始末書についての説明を記しましたが、介護の経営者や管理者の中には、始末書への理解が薄く、簡単に「始末書を提出しなさい!」と、強要される方もいます。
本当に自分が書くべきであるか、提出すべきであるかの見極めも必要です。
自分自身に非が無いのに始末書を書く必要はありません(部下の不祥事に対し、監督責任で求められることはありますが)。
提出する際は、「始末書」が、「懲戒処分」になり得ることをしっかりと理解し、納得したうえで、提出するようにしてください。
では、事故報告書とは?
出来ることなら、書きたくないな~と多くの方が思っている「事故報告書」。
実は、この事故報告書の扱い方や活かし方が、その事業所のサービス提供の質にも大きく影響し、利用者さんやその家族、地域における評判も変わってきます。
それだけ大事な「事故報告書」のことをもう少し掘り下げたいと思います。
■事故報告書の目的と、書かなければいけない理由とは
事故報告書について、「職場内でリスクを共有し、事故の再発を防ぐものですので、提出したからと言って、懲戒処分を受けるわけではありません。」と前述しました。
実は、ここが大きなポイントなのです。
事故報告書の目的① 職場内でリスクを共有し、事故の再発を防ぐ
事故報告書を「書かせる職員」と「書かされる職員」。(ここでは、敢えてこのような表現を使いました。)
このような意識のもとで、事故報告書が存在しているところは、私は「良質なサービス」が提供されていない「労働環境が良くない」事業所であると考えます。
「職場内でリスクを共有し、事故の再発を防ぐ」という前向きな目的を持つ事故報告書に対し、「反省的なこと」「謝罪的なこと」「懲罰的なこと」を目的としている介護事業所が多く存在しているのが現状です。
事故報告書には、そのような感情を一切入れないことが大切です。
事故報告書の目的② 事故後のトラブルへの備え
事故報告書を書く、もう一つの目的は「事故後のトラブルへの備え」という意味合いもあります。事業所や自分自身を守るためのものでもあるのです。
それらの目的をしっかりと理解すると、「事故報告書」への向き合い方は全く異なってくると思います。
「何か起きた時に、書くのが当たりまえ。それが利用者さんや自分たちのためなのだ。」と皆さんが自然に思えるようになりたいですね。
■事故報告書作成の注意点とポイント3つ
これらの事故報告書を書く目的を踏まえると、おのずと書くポイントは定まってきます。
大切な3つのポイントを順に説明いたします。
①事実だけを端的に書く
その際は5W1Hを意識してください。つまり、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」を漏らさずに記入してください。
読んだ方が、その情景を思い浮かべることができれば、再発予防に役立ちますよね。写真や簡単なイラストを添えるのも効果的です。
②主観を入れず、客観的に書く
前述したように、自分の主観や感情をそこに込めないことです。
事故報告書で大切なのは、誰もが理解できる記録であることです。
「体温が高めで」ではなく、「37.8度」。
「少量の出血」ではなく、「直径3㎝程度の出血」。
「とても痛そう」ではなく「涙を流し、痛がられる」
というように、客観的に具体的に記載してください。
③できるだけすぐに、時間をかけずに書く
事故が起きた時は誰もが冷静でなくなり、感情的になるものです。
事故の処理が落ち着いたら、自分を冷静にさせるためにもなるべく早い段階で、記憶が曖昧にならないうちに、事故を客観的に捉えながら、落ち着いて事故報告書に向かってください。事実だけを振り返っていると、感情が抑えられ、冷静に分析ができます。その分析が次の事故予防に活きるはずです。
事故報告書は「利用者情報」「事故の概要」「事故発生時の対応」「原因分析」「再発防止策」を事実に基づき書くだけですから、時間をかける必要はありません。
「懲罰」のように、時間外に残されて「書かされる」なんてもっての外。勤務時間内に時間をかけずに書いてください。
事故報告書をポジティブに変換!
以上、事故報告書について、掘り下げてみました。
ネガティブに捉えられがちな事故報告書を、より良い介護のためのポジティブなものに変換されると、「書かせる」「書かされる」意識もなくなり、事故を原因に「指導」されたり、「退職」したりもなくなると思います。
ちょっとした考え方の変換です。
是非とも、事故報告書を次に活かす、みんなに活かすものへと変えていってください。
福岡福祉向上委員会 代表