本日のお悩み
利用者様の排泄介助についての悩みがあります。
排泄介助の基礎とポイントについて教えてください。
今、私が働いている施設では、トイレでは排泄が出来ないと判断されたご利用者様は、紙おむつを利用し、排泄をベッド上で行うことになってしまいます。
その際に2名での介助等の検討はしておりません。
また入院で尿道留置カテーテルが挿入されてしまうと「病院で言われたから」等の理由で
自排尿ある方も見直しがされず、最後まで留置したままになってしまうことがあります。
ご利用者様の生活のことを考えると少しでもより良く改善していきたいです。
アドバイスをいただけますと幸いです。
排泄ケアのお悩み。もっと心地の良い支援を行うには?排泄の不都合を取り除くポイントを解説します。
執筆者
ご相談ありがとうございます。
今の施設でのケアについて、きっとご質問者様も悩みながら働かれているのではないかと感じました。
もっと心地よい支援ができるのでは?と思って下さっていることが伝わってきます。
排泄の不都合は、その方の生活の質に直結しますし、私達の仕事のやりがいや負担感にも影響するものですよね。
排泄介助の基礎を確認しつつ、ポイントを絞ってご相談への回答をさせていただきます。
トイレでの排泄か?ベッド上での排泄か?ケアの場所を選ぶとき
ご質問者様の施設では、「トイレが出来ないと判断されれば紙おむつで排泄はベッド上で行う」とありますが、その基準がどこに設定されているかが、今回のお悩みを紐解く鍵になります。
そこが曖昧なまま、これまでの勘や、根拠が薄い慣習で決定されていると、ご質問者様のように悩まれる方が多くなってきます。
このような時に活用できるのが、排泄のADLをチェックする方法の一つ「MOCKY式ADLフローチャート」です。
こころとからだのDASUケアLAB®ブログ
もともとは運動機能から見たフローチャートで、その人に必要な用品とプランに位置づけるべき最小限の事項を表したものです。
「座ることができるかどうか」からスタートし
「歩行・移動」「移乗・立ち座り」「衣服の上げ下ろし」の状況に応じて、
排泄の場所が「トイレ」「ベッドサイド」「ベッド上」に分類されます。
働いている職員の方のそれぞれの頭の中だけではなく、皆が一緒に見て話ができるツールを参考に、ケアの方針を話し合う機会が持てると、ご質問者様のように疑問を抱いている他の方も意見が出しやすくなります。
施設でそのような機会を持つことをお勧めします。
■なぜトイレでの排泄が必要なのか
ここでケアの根本に戻り「なぜトイレでの排泄が求められるのか」を整理したいと思います。
排泄障害のある方に対して、漏れるからと言ってトイレでの排泄をあきらめ、おむつを使用してしまうと、本人やご家族、介護者のQOLを脅かしてしまうことに繋がることは、きっと皆さんご承知のことと思います。
それは具体的にはどのようなことかというと、下記のようなことです。
・膀胱内に出しきれない尿が残ることで尿路感染のリスクが高まる
・排便も重力の力を借りれず、直腸肛門角が出しやすい角度にならないことで排便にも影響がある
そうなると、可能であれば避けたい入院によってのリロケーションダメージが起こったり、下剤を使っての排便となってしまったりすることが予測でき、便が水様便になる可能性があります。
おむつからの水様便の外漏れ対応で、もっと排泄介助の時間や精神的負荷が高まっていく・・・
そんな悪循環につながりやすくなります。
チームで話し合う時に、この前提は共有して認識を一致させることがポイントです。
■「排泄支援用具や介護技術を工夫すればその動作が可能か」を確認しましょう
その前提の上で、具体的にケアを考えていくにはどうするか?
分かりやすい考え方をお伝えします。
一連の排泄動作には、大きく分けて9つの動作があります。
該当の利用者さんは一体どの部分ができないのかをアセスメントすることで、その部分の介助を考えていく、非常にシンプルな考え方が「動作」から考えていく排泄ケアです。
NPO法人 日本コンチネンス協会
例えば、前傾姿勢保持用具を使えば、一人介助でもトイレ介助ができる場合があります。
衣服を変えるだけでズボンの上げ下げが楽になり、トイレ誘導・自立排泄ができる場合もあります。
この部分の考察をしないと「尿失禁を繰り返すのでベッド上でおむつ」という判断になりかねません。
おむつを使用される方は「寝たまま」の対応となる方です。
寝たままの対応となるのは、
・腰をあげることが難しい方
・意思疎通が困難な方 など
ご自分でできる動作がほとんどないような方です。
またおむつを使う場合、排泄物の肌への付着を最小限にすることがとても大切で、尿意や便意の訴えがあるかどうかによって使用するアイテムが変化します。
■注意したいのは「尿道留置カテーテルは自排尿がある方は不適応」ということ
上記の基礎を押さえつつ、ご質問の中で気になるのが「尿道留置カテーテル」の扱いです。
尿道留置カテーテルは、不要になったら直ちに抜去することが最重要項目です。
適応としては
①残尿があり、腎盂腎炎などの疾患で尿路の確保が必要な場合
②全身状態が悪く排尿が困難な場合
③間欠導尿が不可能な場合
⑤自尿があっても残尿が多くある場合 などが挙げられます。
自排尿がある場合には早期に抜去すること。
「出せない」時にカテーテルを使用すること。
上記の認識を揃えられることをお勧めします。
2016年度の診療報酬改定で「排尿自立指導料」、2018年度の介護報酬改定で「排せつ支援加算」が創設され、適切な排尿管理・ケアによる効果も報告されている背景もあります。
ご質問者様も懸念しているように、こちらは早めにチームで抜去の時期を決めるなど、カンファレンスを持つことをお勧めします。
最後に
可能な限り本人の残存能力を活かした排泄ケアは生活全体のADL維持・改善につながり、介助側にとっても長期的な介護負担を軽減します。
ご質問者様の素晴らしい視点は、チーム全体に好循環を生み出します。
まずは、同じような想いを持った方が一人でもいないか、協力者を探すことから始めてください。
そして、今回ご紹介したツールを使って、良い方向に向かえることを願っております。
また、何かありましたら、ご相談くださいね。
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士