マイナビ福祉・介護のシゴト
介護士として働いていても、他の仕事で活かせるスキルが付かず不安です。

介護士として働いていても、他の仕事で活かせるスキルが付かず不安です。

【後藤 晴紀】介護の専門性は介助スキルだけにあらず!


本日のお悩み

介護士として働いていても、スキルがついてる気がしません。介助のスキルはつくが、それは他の仕事ではいかせないスキルです。まだ年齢も若く、介護を一生の仕事とは思っていません。

介護の専門性は介助スキルだけにあらず!

ご質問ありがとうございます!まだお若く、これからの「介護職」について不安を抱えているんですね。前向きに何かを得たいと考えている質問者さんのことを、私は素晴らしいと思います!介護職としての価値もお伝えしながら、実は他産業でも大いに活躍できる職種であるという事を理解していただけたらと思います。

まずは介護職のスキルについてですが、質問者さんが思われているスキルとは、入浴や排せつに関わる身体介護技術のスキルですね。もちろん、これについては介護職の技術的なスキルの一つであることは言うまでもありません。しかし、これをもって介護のスキルが高い、介護の専門性があるとは言えないのです。

身体介護技術以外の「専門性」とは?

私が思う介護の専門性とは、保健、医療、福祉、介護の知識や技術、経験を携え客観的に利用者さんを観るという事です。そしてアセスメントを行い、介護過程が立案できること。実践を通して、その支援が適切なのかを評価し、再アセスメントをして実践する。これら一連のPDCAのサイクルを実践していく事で次に活かす為の経験を積み重ねていきます。

また、私が介護過程に盛り込む内容として重要視していることは、利用者さんが様々な理由から今では諦めてしまっているかもしれない想いを引き出し、夢や希望を叶える支援です。『あの人に会いたい』『もう一度あそこの場所に行きたい』『あれが食べたい』等です。その方の精神状態が今どの程度のレベルにあるのか推し量りながら、言葉の掛け方、言葉の選び方、配慮の仕方、その方に活かせる資源、タイミング等、事細かな注意が必要となります。本当に求めている事は何なのか、真意を察しながら利用者さんと向き合う。私自身も思い悩むことが沢山あります。
これは対人援助技術と呼ばれるスキルで、一朝一夕で身につくものではありません。先ほど述べた身体的な介護技術はもちろんの事、知識や経験、実践から学び、得ていくものだと考えています。

学びを深めるには

ただし、現場で得られる知識は限界もあり、限定的である場合も多いですよね。ご自分の知識を高めようとする場合、外部研修への参加や、参考書で得ていくご自身の努力が必要となります。私も介護支援専門員や社会福祉士といった資格を取得してきましたが、その全てが介護福祉士に活きる学びであったと感じています。学びを深めていく過程で出会った仲間たちも私の宝物になっています。
積極的に知識や情報を得ていくことで、視野も変わっていきますよ!

いかがですか?
質問者さんが考えていたスキルと少しイメージが違いませんか?

今は超高齢化社会。この時代において、私たちの経験と知識、技術は多くの産業が注目しているところでもあります。実際に私も、大手自動車メーカーのデザイナーから社内コンペ用の福祉車両のアドバイスをしてもらいたいと依頼を頂いたことがあります。これまでの経験や知識は、他産業にとっては目からうろこの情報のようですよ!私たちの可能性はまだまだこれからということです。

他の産業でも活かせるアセスメント力

別の視点からもお話をすると、私は介護職員の『人間力』にも注目しています。この人間力は、介護職だけでなく多くの産業で求められている力だと感じています。他のサービス業においても、このアセスメント能力と対人援助能力、行動力と人間力は高く評価されることでしょう。

例えば、ホテル業界で高い評価を受けているリゾートホテルでも、利用されるお客様について徹底的に情報を集め、スタッフ間で共有しています。その結果、どのようなサプライズをご用意したらお客様が喜ばれるか、さりげない心遣いとは何かを、徹底的に追及しています。私たちのアセスメントに似ていますよね!このように、私は介護福祉士の心遣いとスキルは大いに役立つと考えていたりしています。その他にも、この対人援助能力は営業職にも役立てることができると思いますし、質問者さんが日々提供している身体介助のスキルも、多くの産業で役立てることができます。

その他には、介護職員に対して身体介助の講習をするという仕事や、一般企業に介護技術指導の講師として依頼されるケースも多く、私たちの技術を社会が必要としている事の高さであると感じています。活躍の場は多岐に渡るという事ですね!

さいごに

まだまだお若いとの事。さすが元介護職員と言われるほど、たくさんの知識や技術、経験を是非身に着けていってくださいね!その高い能力が、介護業界で活かされることを願いたいところですが、他産業で活躍する介護職員もまた誇らしいものです!

介護職で磨かれる『人間力』は必ず社会をより豊かに、より良くできると確信しています。その為にも介助技術だけにとらわれず、介護福祉士としての専門性を高めていってくださいね。未来が鮮明に見えてくると思います!

求人を探す

マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東】
【北陸・東海・甲信越】
【関西】
【中四国・九州・沖縄】

この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

関連する投稿


サービス担当者会議の進行のコツは?スムーズな進行のためにすべきこと

サービス担当者会議の進行のコツは?スムーズな進行のためにすべきこと

サービス担当者会議で、話の長い人がいる、話が脱線してしまう等 進行に悩むケアマネさんからのお悩みに専門家が回答します!スムーズな進行のためにすべきことを確認してみましょう。【解説者/専門家:脇 健仁】


【介護職の転職】仕事に慣れなくて辛いときはウィルビーイングを意識しよう

【介護職の転職】仕事に慣れなくて辛いときはウィルビーイングを意識しよう

介護福祉業界で働く方は優しい方が多いゆえ、我慢をし続けたり、相手の幸せのために自己犠牲をしたりする方も多いのではないでしょうか。対象者の「幸せ」はもちろんですが、ご自身の「幸せ」についてもしっかりと向き合い「ウェルビーイング」な働き方を意識しましょう。【執筆者:大庭 欣二】


希望しない自立支援。「やりたくない人」への接し方とは?専門家が解説

希望しない自立支援。「やりたくない人」への接し方とは?専門家が解説

自立支援をしても拒否する利用者さんへの接し方とは?心が近づく共通点を探すために、まずは介護士とご利用者の価値観のすり合わせを行うようにしましょう。【執筆者:羽吹さゆり/介護福祉⼠、介護⽀援専⾨員、介護技術指導員、⽇本語教員、社会科教員、介護職員実務者教員、社会福祉主事任⽤】


介護職員 平均月給6,000円相当引き上げへ、専門家の見解は?

介護職員 平均月給6,000円相当引き上げへ、専門家の見解は?

2024年2月から介護職員に対し、1人あたり平均月給6,000円の賃上げを実施するというニュースを皆さんも耳にしたかと思います。 今回の施策に対して、なぜこのような施策を実施することになったのかという施策の背景と、施策に対する見解を伊藤先生にお伺いしました。


仕事を教えてもらえない…先輩によってやり方が違う…こんな時どうする?

仕事を教えてもらえない…先輩によってやり方が違う…こんな時どうする?

転職してはじめて介護職になりましたが、なかなか忙しいとのことで、介護技術を教えてもらえません…。研修もなく、先輩によってやりかたが違う部分もあり何が正解なのか、これでいいのか不安です…。などよくあるお悩みの対処方法を専門家が解説します。【執筆者:専門家/大庭 欣二・羽吹 さゆり・後藤 晴紀】


最新の投稿


【最新!2024年】わかりやすく介護報酬改定の全体像を専門家が解説!

【最新!2024年】わかりやすく介護報酬改定の全体像を専門家が解説!

報酬改定について苦手意識のある方は多いのではないでしょうか。とはいえ、介護に関わる皆さんが報酬改正の意図をしっかり理解し、行動を変えることは介護業界の未来にとって大きな一歩となります。法改正がどのように変わったか?を理解するために「なぜ変わったか?」をまずは押さえていきましょう。【執筆者:伊藤 浩一】


第108話 盛り付けで/ほっこり介護マンガ

第108話 盛り付けで/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


【介護事業の経営難はなぜ?】介護職員や経営者に求められる対策とは

【介護事業の経営難はなぜ?】介護職員や経営者に求められる対策とは

介護事業者の倒産数が過去最多となったというニュース。超高齢社会の日本においてなぜ、倒産数が増えてしまったのでしょうか。 今後、事業所が生き残るために必要なことを専門家が解説します。 【解説者:後藤 晴紀/介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・潜水士】


第107話 おやつ/ほっこり介護マンガ

第107話 おやつ/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


精神保健福祉士(PSW)とは?仕事内容や資格の取得方法、勤務先について解説

精神保健福祉士(PSW)とは?仕事内容や資格の取得方法、勤務先について解説

精神障害者の支援に特化した専門職である精神保健福祉士。メンタルの不調を抱える人が増えるなかで、ニーズが高まるといわれています。仕事内容や資格の取得方法、勤務先など、精神保健福祉士に関する基礎知識を解説します。【ささえるラボ編集部】


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】