本日のお悩み
介護士として働いていても、スキルがついてる気がしません。介助のスキルはつくが、それは他の仕事ではいかせないスキルです。まだ年齢も若く、介護を一生の仕事とは思っていません。
介護の専門性は介助スキルだけにあらず!
ご質問ありがとうございます!まだお若く、これからの「介護職」について不安を抱えているんですね。前向きに何かを得たいと考えている質問者さんのことを、私は素晴らしいと思います!介護職としての価値もお伝えしながら、実は他産業でも大いに活躍できる職種であるという事を理解していただけたらと思います。
まずは介護職のスキルについてですが、質問者さんが思われているスキルとは、入浴や排せつに関わる身体介護技術のスキルですね。もちろん、これについては介護職の技術的なスキルの一つであることは言うまでもありません。しかし、これをもって介護のスキルが高い、介護の専門性があるとは言えないのです。
■身体介護技術以外の「専門性」とは?
私が思う介護の専門性とは、保健、医療、福祉、介護の知識や技術、経験を携え客観的に利用者さんを観るという事です。そしてアセスメントを行い、介護過程が立案できること。実践を通して、その支援が適切なのかを評価し、再アセスメントをして実践する。これら一連のPDCAのサイクルを実践していく事で次に活かす為の経験を積み重ねていきます。
また、私が介護過程に盛り込む内容として重要視していることは、利用者さんが様々な理由から今では諦めてしまっているかもしれない想いを引き出し、夢や希望を叶える支援です。『あの人に会いたい』『もう一度あそこの場所に行きたい』『あれが食べたい』等です。その方の精神状態が今どの程度のレベルにあるのか推し量りながら、言葉の掛け方、言葉の選び方、配慮の仕方、その方に活かせる資源、タイミング等、事細かな注意が必要となります。本当に求めている事は何なのか、真意を察しながら利用者さんと向き合う。私自身も思い悩むことが沢山あります。
これは対人援助技術と呼ばれるスキルで、一朝一夕で身につくものではありません。先ほど述べた身体的な介護技術はもちろんの事、知識や経験、実践から学び、得ていくものだと考えています。
■学びを深めるには
ただし、現場で得られる知識は限界もあり、限定的である場合も多いですよね。ご自分の知識を高めようとする場合、外部研修への参加や、参考書で得ていくご自身の努力が必要となります。私も介護支援専門員や社会福祉士といった資格を取得してきましたが、その全てが介護福祉士に活きる学びであったと感じています。学びを深めていく過程で出会った仲間たちも私の宝物になっています。
積極的に知識や情報を得ていくことで、視野も変わっていきますよ!
いかがですか?
質問者さんが考えていたスキルと少しイメージが違いませんか?
今は超高齢化社会。この時代において、私たちの経験と知識、技術は多くの産業が注目しているところでもあります。実際に私も、大手自動車メーカーのデザイナーから社内コンペ用の福祉車両のアドバイスをしてもらいたいと依頼を頂いたことがあります。これまでの経験や知識は、他産業にとっては目からうろこの情報のようですよ!私たちの可能性はまだまだこれからということです。
■他の産業でも活かせるアセスメント力
別の視点からもお話をすると、私は介護職員の『人間力』にも注目しています。この人間力は、介護職だけでなく多くの産業で求められている力だと感じています。他のサービス業においても、このアセスメント能力と対人援助能力、行動力と人間力は高く評価されることでしょう。
例えば、ホテル業界で高い評価を受けているリゾートホテルでも、利用されるお客様について徹底的に情報を集め、スタッフ間で共有しています。その結果、どのようなサプライズをご用意したらお客様が喜ばれるか、さりげない心遣いとは何かを、徹底的に追及しています。私たちのアセスメントに似ていますよね!このように、私は介護福祉士の心遣いとスキルは大いに役立つと考えていたりしています。その他にも、この対人援助能力は営業職にも役立てることができると思いますし、質問者さんが日々提供している身体介助のスキルも、多くの産業で役立てることができます。
その他には、介護職員に対して身体介助の講習をするという仕事や、一般企業に介護技術指導の講師として依頼されるケースも多く、私たちの技術を社会が必要としている事の高さであると感じています。活躍の場は多岐に渡るという事ですね!
■さいごに
まだまだお若いとの事。さすが元介護職員と言われるほど、たくさんの知識や技術、経験を是非身に着けていってくださいね!その高い能力が、介護業界で活かされることを願いたいところですが、他産業で活躍する介護職員もまた誇らしいものです!
介護職で磨かれる『人間力』は必ず社会をより豊かに、より良くできると確信しています。その為にも介助技術だけにとらわれず、介護福祉士としての専門性を高めていってくださいね。未来が鮮明に見えてくると思います!
・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士