第32回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(介護過程)
■問題1
介護過程の目的に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.利用者の価値観を変える。
2.利用者の療養上の世話をする。
3.利用者の経済的負担を軽減する。
4.利用者の望んでいる、よりよい生活を実現する。
5.利用者の生活習慣を改善する。
■解答
4.利用者の望んでいる、よりよい生活を実現する。
■解説
1.(×)利用者の価値観を尊重することが大切です。
2.(×)療養上の世話や診療の補助は、看護師の役割です。
3.(×)利用者の経済的負担の軽減は基本的には望ましいことですが、介護過程の目的とはいえません。
4.(○)介護過程とは、利用者が望むより良い生活を実現するために必要な思考・実践の過程です。利用者の情報や意向を細かく分析することで真の介護ニーズを明確にし、それに基づいて介護プランを計画・実践する必要があります。
5.(×)利用者の生活習慣を継続できるよう支援することが適切です。
■問題2
介護計画の作成に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.抽出されたニーズを踏まえて目標を設定する。
2.内容が明確であれば支援方法の記載は省略する。
3.支援方法は「~させる」と使役文で記載する。
4.利用者の正しい理解を促すために専門用語を用いる。
5.計画の見直しの時期は決めない。
■解答
1.抽出されたニーズを踏まえて目標を設定する。
■解説
1.(○)介護計画では、利用者が望む生活を実現できるよう、本人の状態や要望に合わせて目標を設定します。
2.(×)チームで統一した介護を実践するためには、具体的な支援方法を記載する必要があります。
3.(×)使役文は使用せず、利用者を主語として「~する」と記載します。
4.(×)できるだけ専門用語を使わず、利用者や家族が読んでも分かりやすい表現で記載することが適切です。
5.(×)利用者の状況に変化があった場合は臨時的な対応も必要となりますが、介護計画の見直しの時期は原則として計画立案時に設定します。
■問題3
次の事例を読んで答えなさい。
〔事 例〕
Cさん(75歳、男性、要介護1)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症した。2か月前から在宅復帰を目的として介護老人保健施設に入所している。次女は遠方から時々面会に来ているが、長女とは音信不通の状態が続いている。
Cさんは現在、右片麻痺で歩行には杖(つえ)を使用している。担当の理学療法士から、「レクリエーションには積極的に参加するなど意欲はあるが、歩行状態が思うように改善しないと悩んでいた」との報告があった。
その後、歩行訓練やレクリエーションに参加しなくなり、居室のベッドで寝て過ごすことが多くなった。また、時々尿失禁をするようになった。
Cさんは、「自宅に帰りたいのに、このまま車いすになったらどうしよう」と担当の介護福祉職に打ち明けた。
Cさんの介護過程の展開に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.長女から入所前の情報を収集する。
2.現状を再アセスメントし、生活課題を抽出する。
3.自宅に戻った後の介護計画を立案する。
4.尿失禁に対応する介護計画の実施を優先する。
5.介護計画の最終的な評価は理学療法士が担当する。
■解答
2.現状を再アセスメントし、生活課題を抽出する。
■解説
1.(×)長女とは音信不通の状態が続いており、入所前の情報を収集することは困難です。また、入所前の情報は入所初期に収集すべき情報であることからも不適切です。
2.(○)Cさんは入所初期と比べて意欲や活動性が低下し、尿失禁を起こすなど状態に変化がみられます。これらについてアセスメントを行い、現在の生活課題を抽出することが最も適切です。
3.(×)自宅に戻った後の介護計画ではなく、現在入所している介護老人保健施設内での生活を支援する介護計画を立案する必要があります。
4.(×)尿失禁のみに着目した介護計画を実施する前に、優先順位の高い課題を検討する必要があります。そのためにも、変化の原因をアセスメントすることが最優先事項となります。
5.(×)介護計画の実践や評価は、介護福祉職が行います。
■問題4
次の事例を読んで答えなさい。
〔事 例〕
Cさん(75歳、男性、要介護1)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症した。2か月前から在宅復帰を目的として介護老人保健施設に入所している。次女は遠方から時々面会に来ているが、長女とは音信不通の状態が続いている。
Cさんは現在、右片麻痺で歩行には杖(つえ)を使用している。担当の理学療法士から、「レクリエーションには積極的に参加するなど意欲はあるが、歩行状態が思うように改善しないと悩んでいた」との報告があった。
その後、歩行訓練やレクリエーションに参加しなくなり、居室のベッドで寝て過ごすことが多くなった。また、時々尿失禁をするようになった。
Cさんは、「自宅に帰りたいのに、このまま車いすになったらどうしよう」と担当の介護福祉職に打ち明けた。
次の記述のうち、Cさんの短期目標として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.車いすの使用方法を理解する。
2.居室のベッドで安静に過ごす。
3.次女との同居を実現する。
4.今まで以上に、意欲的に歩行訓練に取り組む。
5.居室を出てレクリエーションに参加する。
■解答
5.居室を出てレクリエーションに参加する。
■解説
1.(×)Cさんは杖歩行で移動できるため、車いすを使用する必要はありません。
2.(×)ベッドでの安静が長期間にわたると、体力の低下により歩行状態が悪化する可能性があります。
3.(×)Cさんは在宅復帰を希望しているため、遠方に住む次女との同居を短期目標として設定することは不適切です。
4.(×)歩行状態が思うように改善しないことから、意欲的に歩行訓練に取り組むことができなくなっています。視野を広げて比較的容易に実現できる短期目標を立て、一つひとつ克服していくことでCさんの自信を取り戻すことができるでしょう。
5.(○)居室のベッドで寝て過ごすことが多くなっているため、まずは居室から出る意欲を引き出す介護が必要だと考えられます。
■問題5
Eさん(70歳、女性、要介護1)は、夫、長男と共に農業をしていた。半年前に脳梗塞(cerebral infarction)で左片麻痺になった。
現在は介護老人保健施設に入所し、リハビリテーションに取り組んでいる。
介護福祉職が居室を訪れたとき、Eさんが、「料理は苦手なの」「そろそろ夏野菜の収穫の時期ね。収穫は楽しいし、採れたての野菜を近所に配るとみんな喜ぶのよ」と言った。
その後、「夫には家事に専念しなさいと言われているから…」とうつむいて言った。
介護福祉職は介護福祉職間のカンファレンス(conference)でEさんの思いを共有した。Eさんの思いとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.農業に関わっていきたい。
2.家事に専念したい。
3.後継者の育成に関わりたい。
4.家でのんびりしたい。
5.料理の自信をつけたい。
■解答
1.農業に関わっていきたい。
■解説
1.(○)農業をしていた経験を振り返り、「そろそろ夏野菜の収穫の時期」「収穫は楽しい」「近所に配るとみんな喜ぶ」という発言をしています。夫の「家事に専念しなさい」という言葉にうつむいている様子からも、農業に関わっていきたい思いが伝わってきます。
2.(×)夫の言葉には気が進まない様子がみられます。
3.(×)後継者の育成については触れられていません。
4.(×)家でのんびりしたいという発言や様子はみられません。
5.(×)「料理は苦手なの」と発言しており、特にそれを克服したいという気持ちも示していません。
ささえるラボ編集部です。
福祉・介護の仕事にたずさわるみなさまに役立つ情報をお届けします!
「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。