2.勉強会に参加する人=認知症に関して理解したいけど知識がないということ
3.認知症について正しい情報を話しましょう
4.何より利用者の気持ちを理解することが大切
認知症のことよりも、「ご本人を知る」という方向性で勉強会を組み立てよう
・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。
勉強会は、参加者の理解を深めることはもちろん、準備をしたり、教えたりする中で勉強会を行うスタッフ側の認知症に対する理解度もぐんと深まります。
・勉強会で使う事例はいつもどんなものを使っているか?事例の探し方は?
・認知症ケアの勉強会ではどんなことを話しているのか?
これらについて、お届けしていきます。
■勉強会で使用する事例の探し方
私の場合は、ほとんどが施設のご利用者の事例からお伝えしています。
参加するスタッフも、より状況や状態をイメージしやすく、理解が深まるためです。
みなさんの施設でも、認知症の方の事例がたくさんあると思います。ぜひ、身近なところから事例を集めてみてください。
それでも事例がなかなか見つからないときは、認知症ケア学会からも「認知症ケア事例集」が発行されているので、それを参考にします。
「認知症ケア 事例」等で検索すると、様々な事例が見つかると思いますよ。
■勉強会の内容① まずは行動心理症状(BPSD)の説明をする
◇中核症状や行動心理症状(BPSD)の説明をする
◇行動心理状態の介護記録に「暴力行為」「拒否」等の記載をしないよう注意する
→その理由と正しい表現の方法について詳しく伝える(「立腹される」「断られる」のような表現が良い)
単純に、介護職員の対応が不適切だったかもしれない、かかわりが不十分だったかもしれないと、症状の原因を介護職員側に向けて考えてほしいと思っています。 なぜ怒ってしまったのか?なぜ断られたのか?の理由を探り、認知症としてではなく、「人」として捉えて欲しいと伝えています。
■勉強会の内容② 大脳の機能と働き
・頭頂葉
・後頭葉
・側頭葉
・海馬
これらの機能を説明し、障害される脳の部位によって様々な症状が出現することを説明します。
大脳の働きは、「見て・認識して・記憶から引き出し・再認識し・計画を立てて・行動に移す」ことです。勉強会では、そのプロセスを説明します。
例えば、失認の中核症状は、このプロセスの中で間違った記憶から引き出された情報によって行動してしまうことが原因で、異食等の行動心理症状に繋がります。
ティッシュを見て、キャベツとして記憶から引き出されてしまうことで、口に入れてしまう「異食」に繋がるのです。
■勉強会の内容③ 認知症の定義と診断
「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患、その他の疾患により、日常生活に支障が生じる程度にまで、認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう」
(2020年に改正された介護保険法第5条の2で以下のように定義)
「認知領域(複雑性注意,実行機能,学習および記憶,言語,知覚運動,社会的認知)のうち 1 つ以上の障害がある状態」
(認知症の診断において現在最もよく使われている診断基準の一つであるDSM-5=米国精神医学会による認知症の診断基準での基準)
記憶障害は必須条件ではない。
■勉強会の内容④ 認知症の種類を理解する
認知症の種類によって、症状や注意点が大きく異なります。勉強会を通してその種類と特徴を伝えていきます。
◆アルツハイマー型認知症
吐き気や混乱、不眠といった症状に悩まされることで行動心理症状が悪化してしまうケースもあり、専門的なコントロールが必要な認知症です。
アルツハイマー型認知症の診断を受けると、認知症進行予防の薬が処方されますよね。
現在、アルツハイマー薬は保険適応で4種類あり、 その他に漢方薬等もあります。
この薬剤にはそれぞれ特徴があり、患者さんによって使いわけることで成果を出していますが、残念ながら、”アルツハイマー薬はどれも同じ”と誤解している方も多くいらっしゃいます。
アルツハイマー型認知症に処方されるの薬の働きは、進行を抑えることだけではありません。
神経細胞の働きを活発にし症状を改善する効果がもあるため、症状に合わせた適切な処方が大切です。
適切な薬剤が処方されるように、ご本人の様子や状態を看護職員と共有し、ご本人が苦しまない薬剤処方ができる情報を医療従事者に伝えていくことが大切です。
◆レビー小体型認知症
70代以降の高齢者に多く見られる認知症です。
主な症状は幻視で、これに伴う妄想なども多くみられます。 例えば、実際にはいない人や小動物、虫などが見えるようになるのです。
また、転びやすくなったり、手が震えたり、動きが緩慢になったりする「パーキンソン病」が同時に現れるのも特徴です。
◆血管性認知症
血管性認知症は、脳の血管が詰まる(脳梗塞)、脳の血管が破れる(脳出血)ことによって脳が損傷し、脳の機能が阻害されて発生します。
一般的に、60歳以上の男性に現れるケースが多いとされています。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になると、そのリスクが上昇すると言われています。
脳内で損傷を受けている部位と、受けていない部位があるため、部分的に能力が低下する場合があります。
損傷を受けた部位によって症状が変わるため、個人差が大きく現れます。
■勉強会の内容⑤ 利用者さんの気持ちを考える
認知症によって「わからなくなった」から問題を起こすのではありません。わかることがたくさんあるから問題が表面化してしまうのだということを理解しましょう。
自分の異変に気付いているご本人が、一番不安で、怖くて、悲しい気持ちになっているんです。行動一つ一つの裏に隠された気持ちを理解し、ご利用者様へ「ありがとう」を伝えるための環境を整え、たくさん感謝を伝えていきましょう。
一つ一つの項目を深掘りしてみると、認知症の理解が深まると思います!
一緒に頑張りましょう!
まとめ
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