本日のお悩み
介護士は髪色を黒くしないといけないですか?
金髪に近い色だとさすがにダメですか?
ピアスとかタトゥーとかもだめでしょうか?
それだけで落とされてしまいますか?
身だしなみの判断は「誰が基準か?」
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
ここだけの話、私も金髪にちょっと憧れがあります。
ダウンタウンの松ちゃんやビートたけしさん、所ジョージさんなど、実力、経歴を兼ね備えた方が、金髪でもどこか知的に見える、ちょいワルおやじ的感覚(もう古いですか笑)が良いですよね。
しかしながら、私が金髪にしたらただ笑われるだけでしょう笑
ピアスやタトゥーは痛そうなので断念します。
そんな私とは対象的に質問者さんは、金髪、タトゥー、ピアスをされているんでしょうか?
きっと、アグレッシブでチャレンジ精神にあふれる方だと想像します。
■面接官の採用基準は?
さて、ご質問の件です。
まず、質問者さんはなぜ、介護士は金髪、ピアス、タトゥーがあっては採用されないのではないか?とお考えになったのでしょう。
介護事業所の面接官の判断として印象が悪いのではと考えられたのでしょうか。
では、もう一層深く考えてみましょう。
介護事業所の面接官は何を基準に面接の可否を判断しているのでしょうか?
そうなんです。
質問者さんもピンときたはず、介護サービスの対象者であるお年寄りが、金髪、ピアス、タトゥーをしている質問者さんに介護を受けた時、どう捉えるか?
もしくは、そのご家族が、どう捉えるか?と想像し、判断するのではないでしょうか。
■利用者さんやそのご家族は、どう受け止めるか?
介護サービスを必要とするお年寄りの平均年齢はおおよそ80歳です。
80歳のお年寄りが金髪、ピアス、タトゥーの介護職をどう思うか?
80年の人生には質問者さんがカッコイイと感じたような文化はなく、ちょっとびっくりしちゃうかもしれませんね。
また、自分の支えになってもらうにあたり、誠実性の面では不安を感じてしまうかもしれません。
そして、そのご家族も自分の親、祖父母の支えとして介護職を捉えた際、同様に感じるのではないでしょうか?
■外国人の活躍で変化している介護業界
しかし、日本の介護業界、少し状況が変化してきました。
それは、技能実習生をはじめとする外国人の方の介護現場での活躍です。
実は、外国人の方には出身国の文化でタトゥーをしている方がいます。これは否定できませんよね。
また、温泉でよく見かける案内に「タトゥー(入れ墨)をしている方の入浴は禁止」がありますが、これも撤廃する温泉が増えているそうです。
タトゥーを文化としている外国人の方が、日本の温泉を楽しみに来日したのに、温泉を目前にして入浴できなかったらさぞかしガッカリしますよね。
つまり、他国の文化を受け入れ、日本の温泉を楽しんで頂く方向に温泉地も転換しているというお話です。
■「お年寄りがどう思うか?」が判断基準
結論です。
質問者さんはなぜ、介護の仕事をしたいと考えたのでしょうか?
この問いに、「お年寄りを支えたい」「人の役に立ちたい」などのしっかりとした考え、熱意が面接官に伝われば、金髪でもピアスをしていてもタトゥーがあっても採用されるかもしれません。
しかし、「現場で働く際は、直してきてね。」と言われるでしょう。
タトゥーをOKにした温泉の目的は「外国人の方に日本の温泉文化を楽しんでもらう」
介護事業所の目的は「お年寄りの思いを実現、サポートする」ためと違います。
つまり、主語はお年寄りなんですね。
この目的の達成が判断基準である以上、日本人の介護職が、金髪、ピアス、タトゥーを公にして仕事をするのはまだ少し時間がかかるかもしれません。
■介護職はピアスもダメなの?
ピアスOKの事業所もあります
まず、ピアスはファッションか、文化か、と考えるとどちらでしょうか?
そもそもファッションとは「人々の間で流行している服装」を言うそうです。
ピアスが日本で流行したのは戦後少し経ってからだそうですので、今の高齢者の方にとっては比較的身近な存在と考えられます。また、今年は、戦後77年、流行時はファッションでしたが、現在は、十分女性の装いの文化として定着していると考えられます。
そのため、私の事業所では、ピアスは禁止していません。
大きなピアスは利用者さんを傷つける恐れも
もちろん、大きなのものは良くありませんよ。
なぜなら、介護の仕事はご利用者の体に密着して移乗介助をするなどの動きがあります。そのため、外れてしまったり、ご利用者の体に引っかかってしまったりしますとその動作に支障をきたす可能性があります。
よって、動作に支障がないシンプルなピアスであれば女性の装いとして問題ないと判断しています。
男性介護職のピアス着用は?
ただし、男性はどうでしょうか?まだ文化には至っていないですよね。高齢者の方も違和感を感じる方が多いのではと思います。そのため、休みの時は良しとしても現場では遠慮いただいています。
■介護職は、ジェルネイルやネイルアートもダメ?
ネイルは、ファッション?文化?
これは、ファッションか文化かといったらファッションではないでしょうか?
昨今はネイルサロンも定着し、ネイルをおしゃれや気分転換に活用する方も増えています。
実は、高齢者の女性にネイル教室みたいな形でマニュキュアを塗ったり、ネイルアート体験会などを行うととてもイキイキされ、「若返った!」なんて喜ぶ方は本当に多いです。女性は幾つになってもおしゃれが好きですし、おしゃれに気を使う方は実年齢より若々しく見えるとも感じます。
介護現場の主役は高齢者
そもそも「おしゃれ」も言葉の意味を調べると、人より先に注目アイテムを身につけたり、誰も着こなせないような服を見事に着こなすという意味になるそうです。
つまり、ファッションに近い言葉となるのではないでしょうか。
介護現場の主役は高齢者です。サービス提供者として対象者である高齢者が好感の持てる清潔感が求められます。とすれば、ファッションであるネイルは必要ないですよね。
介護職は水回りの仕事も多い
また、介護の仕事は、感染予防のため都度手を洗うことが求められます。さらに水回りの仕事として食器洗いや洗濯物も一部対応することもあるでしょう。
何より、前段でも記述しましたが、高齢者に触れる、密着する、移乗介助する等の動作の際、ジェルネイルやネイルアートが高齢者の肌や衣類に引っかかる可能性があり、場合によっては皮膚を傷つけてしまうことも考えられます。
つまり、見た目だけでなく、業務上も大きな支障が出ることは必須です。
さすがに、ファッションとしてのネイルをOKにしている施設は聞いたことがありません。
いかがでしたか。
冒頭で述べた通り、多様性を認めることは重要ですが、なんの場なのか?ということも重要ですよね。そして、誰のために、何のために働いているのか?も考えてください。
すべての判断基準となるはずです。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)