介護職の個人目標の立て方とは?設定のポイントとキャリア別の具体例を紹介!
今、介護業界にかぎらず、どの業種の企業でも、従業員の個人目標を設定することが重要視されています。
目標設定することで、従業員のモチベーションを維持しながら成長につなげ、より適切な人事評価を行うことができるからです。
介護職として働いていると、事業所に自己評価シート(個人目標設定シート)の提出を求められることもあります。
自分自身のキャリアアップのためにも、目標設定が必要な理由や設定のポイントを知っておきましょう。
さらに、目標設定の参考にできるよう、キャリア段階別の個人目標の具体例も紹介します。

目標設定が必要な理由
介護職は、何かを生産して売り上げアップを目指すような仕事ではないため、「目標設定は不要なのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、だからこそ目標はあった方がいいといえるのです。
もし介護職が何の目標も設定しなければ、毎日同じ業務を繰り返すだけで、なかなか成長のきっかけをつかむことができないでしょう。
介護職一人ひとりがそのときのキャリア段階に合った目標を設け、それに向かって努力することで、モチベーションを維持し、スキルを高めることができます。
自分の将来を意識するきっかけにもなるでしょう。
また、目標設定の過程で業務上の課題を把握し、課題の解決を目標に盛り込むことができるため、業務改善にもつながります。
自己評価シート(個人目標設定シート)を人事評価に活用している事業所も多く、そのような事業所では、目標の達成具合が昇給や昇格に影響します。
スキルアップや業務改善はもちろん、待遇改善の観点からも、的確な目標設定の方法を身につける必要があるのです。
目標設定のポイント
では、どうすればそのときの自分のキャリア段階に合った目標を立てることができるのでしょうか。
ここでは、目標設定の方法とポイントを見ていきましょう。
■1.業務上の課題を洗い出す
目標設定のヒントは、自分自身が毎日介護業務にあたるなかで、失敗した経験や苦手だと感じること、うまくできずに悩んでいることに潜んでいます。
まずはそんな業務上の課題を洗い出しましょう。
それらの課題をもとにして目標を考えると、スキルアップや業務改善につながる目標設定をすることができます。
たとえば、現状で、利用者やその家族とうまくコミュニケーションがとれないと感じているなら、コミュニケーション力を高めることを目標に盛り込むことが考えられます。
あるいは、認知症の利用者の言動がよくわからず対応に困ることが多いのであれば、認知症についての基本知識を身につけることが目標の候補になるでしょう。
■2.理想のイメージを思い描く
業務上の課題のほか、介護職として「こうありたい」「こんなふうになりたい」という自分の理想のイメージを目標設定に反映させるのも一案です。
自分より経験年数が長く、見本となるような先輩介護職をイメージするのもよいでしょう。
「常に利用者に笑顔で接する」「不測の事態でも動じず、冷静に対処する」というように、先輩の行動や対応のなかで真似したいことを見つけて自分の目標設定に取り入れていきます。
■3.具体化する
目標設定の第一歩は、業務上の課題や理想の介護職像をもとに自分のキャリア段階に合う目標を見つけることです。
ただし、そのままだと多くの場合、抽象的な目標設定になりがちです。
たとえば「コミュニケーション力を高めること」を目標にするなら、「毎日◯分以上、利用者と会話をする」というように、スキルを高めるために必要とされる具体的な行動を考えましょう。
コミュニケーション上手な先輩に、スキルアップのためにどんなことをしたのか、聞いてみてもよいでしょう。
目標を具体化してはじめて、現場で実際に行動できるようになります。
■4.期限を設ける
人によってはキャリアアップのために介護福祉士実務者研修や介護福祉士といった資格取得を目標にしたい場合もあるでしょう。
その場合、ただ「資格を取る」ではなく、「来年中に」「◯◯まで」などの期限も具体的に設定することがポイントです。
「筆記試験の問題集を1日◯ページ解く」というように、資格取得のために必要な具体的な行動を盛り込むのもよいでしょう。
■5.実現可能な目標にする
仕事に対する向上心が高い人は、目標設定の際に、つい高すぎる目標を掲げてしまうことがあります。
しかし、せっかく設定しても、それが自分のキャリア段階や生活スタイルに見合っていない目標だと、達成できないばかりか、かえってモチベーションが低下する場合もあります。
たとえば、入所して数カ月もたたない新人が、「他の従業員をフォローできるようになる」という目標を立てるのは時期尚早でしょう。
「介護スキルに関する本を週に10冊読む」という目標も、介護職として忙しく働きながら達成するには無理があります。
冷静に現実を見て、実現可能な範囲の目標にすることが大切です。
■6. キャリアプランを考える
個人目標を考えるときには、将来のキャリアプランをイメージしておきたいものです。
特に、資格取得を目標にするときは、最終目標を考えることが大切です。
というのも、介護関連の資格はたくさんありますが、最終目標によって、そこに至るまでに取らなくてはならない資格や経験などの条件が異なるからです。
介護職の多くは、介護福祉士の資格を取得することを目標にしていますが、介護系の養成学校に行かずに働きながら取得を目指すなら、介護職として3年経験を積み、介護福祉士実務者研修を修了する必要があります。
最終的に介護支援専門員(ケアマネージャー)を目指すのであれば、介護福祉士の資格を取得してから、介護支援専門員の試験にチャレンジするのが王道ルートとされています。
最終目標から逆算して、今の自分にどんな経験が必要で、◯年後にどの資格を取ればいいかを考え、そのプランに沿った個人目標を立てるようにしましょう。
個人目標の具体例
個人目標の内容は、キャリアの段階(勤続年数)によって大きく変わってきます。
ここでは、実際に自己評価シートに記入する際の例文を、「勤続1~3年の新人介護職」「勤続3~9年の中堅介護職」「勤続10年以上のベテラン介護職」の3つに分けて紹介します。
■勤続1~3年の新人
まずは仕事に慣れ、介護の基本的な知識とスキルをしっかり身につけるべき時期です。
初めて就職した人や、転職者でも社会人経験が少ない人は、並行して社会人としてのマナーやルールも覚えていく必要があります。
【目標設定の例】
・○月から「介護福祉士実務者研修」を受け、○月に修了する
・◯月中に利用者の名前と顔をしっかり覚え、カルテを確認して持病を把握する
・1日に一度は自分から利用者に声をかけてコミュニケーションを図る
・介護記録は「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」を意識し、正確に書く
・上司への報連相を忘れないようにする
【取りたい資格】
・介護職員初任者研修
介護職としての基本の知識・スキルを習得する研修です。
・介護福祉士実務者研修
実践的な知識とスキルの習得を目的とした研修です。介護福祉士の試験では、同研修を修了していることが受験の条件となります。
■勤続3~9年の中堅
勤続3年以上になれば、基本の知識とスキルは身につけているはずです。
経験ある介護職として存分に現場で力を発揮しながら、研修や勉強会に積極的に参加して、より専門的な知識を学ぶ時期といえます。
後輩に仕事を教える機会も増えるでしょう。主任やチームリーダーを任される人も増えてきます。
【目標設定の例】
・利用者の表情や様子をよく観察し、小さな変化にすぐに気づけるようになる
・利用者それぞれに応じた対応やケアをできるようになる
・利用者やその家族から質問を受けた際に正確に答えられるようになる
・部下の業務の仕方でよくない点があれば指摘し、丁寧に指導する。逆に良い対応をしているときは一言でもほめる
・介護福祉士試験の半年前から、1日1時間は参考書を読む、問題集を解くなどの勉強をする
【取りたい資格】
・介護福祉士
介護福祉士は、専門的な知識とスキルを持つ介護のプロ。国家資格で、受験するには、介護系の教育機関で定められたカリキュラムを終了するか、実務経験3年以上かつ介護福祉士実務者研修を修了していなければなりません。
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
入居型の施設や地域の拠点で、ケアプラン(介護サービス計画)を作成するほか、利用者からの相談への対応、介護保険申請の代行、行政や事業所などとの連絡・調整を行います。試験を受験する条件は、介護福祉士や看護師など介護・医療・福祉分野の国家資格を有し、それに基づく業務、または介護施設などで相談員の業務をした経験が5年以上あることです。
・サービス提供責任者
訪問介護事業所における訪問介護サービスの責任者のことです。受験の条件は、介護福祉士の資格を持っていること、または介護福祉士実務者研修を修了していることです。
・社会福祉士
高齢者や身体・知的障害者などを支援する専門職。取得するには試験に合格する必要がありますが、実務経験の年数や学歴に応じて、12通りの受験条件が設定されています。
■勤続10年以上のベテラン
ベテランになると、基本の介護業務はもちろん、業務全体の流れ、部下の指導・育成、他の職種との連携についても意識する必要があります。
主任やリーダーはもちろん、さらにその上に立って施設全体をまとめるホーム長や施設長、所長といった管理者になる人もいるでしょう。
管理者になると、従業員をマネジメントするスキルや運営や経営に関する知識も求められます。
ただし施設の種類によっては、管理者になるための要件(実務経験や資格など)が定められている場合もあります。
【目標設定の例】
・利用者やその家族から相談やクレームを受ける際には、話によく耳を傾け、真摯に対応する
・従業員がそれぞれの能力を存分に活かせるような人員配置を考える
・介護職のリーダーや管理者向けの研修には積極的に参加する
・外部の研修会などで介護の知識やスキルを伝える講師としてのスキルを磨く
・事業所の経営状況を正確に把握し、経費削減に努める
【取りたい資格】
・認定介護福祉士
介護福祉士のさらに上の資格。試験はありませんが、養成研修を修了する必要があります。養成研修を受けるには、介護福祉士の資格を取得していること、その後5年以上の実務経験があることなどの条件が決められています。
・主任介護支援専門員(ケアマネージャー)
介護支援専門員の上位資格で、ほかのケアマネージャーへのアドバイスや指導、ほかの従業員や外部との連絡調整という役割を担っています。試験はありませんが、研修を受ける必要があります。研修を受講する条件として、介護支援専門員としての実務経験などが求められます。
キャリアパス制度について
今、政府が介護サービス事業所に対して、導入を勧めているキャリアパス制度について見ておきましょう。
■キャリアパス制度導入の背景
少子高齢化が進むなかで、介護業界は人手不足に悩まされてきました。
原因はさまざまですが、主な原因は、介護職が重労働であるうえに、給料の額がそれに見合わないと考えられていることです。
さらに、評価制度が整っていない事業所も多く、従業員のモチベーションが上がりにくい、昇給しにくいため離職率が高い、といった課題もありました。
■キャリアパス制度とは
そこで近年、国は、全国の介護サービス事業所に「キャリアパス制度」の導入を勧めています。
キャリアパス制度とは、従業員が昇進していくための道筋を示し、キャリア段階ごとの基準や条件を明確にする制度です。
一般企業の多くが導入している人事制度の1つで、従業員の昇給の目安にもなります。
キャリアパス制度の内容は事業所ごとに異なりますが、介護業界では多くの事業所が、資格の取得を基準に取り入れています。
キャリアパス制度は、「介護職員等処遇改善加算」という制度とも関係しています。
この制度は、キャリアパスに関する要件や職場の環境改善などの要件を満たすことで、事業所の介護報酬に加算金が追加され、それが「処遇改善手当て」として職員に支給される仕組みになっています。
つまり、事業所がキャリアパス制度を導入することで、介護職の処遇が改善し、人手不足の解消や人材の定着につながる可能性があるのです。
勤務する事業所がキャリアパス制度を導入している場合は、個人目標を立てる際に、まず勤務先のキャリアパスにおいて、自分がどの段階にいるのかを確認しましょう。
明確なキャリアパスがあれば、次のステップに進むにはどんなことが必要なのかも可視化されるため、目標設定もしやすいはずです。
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まとめ:目標を明確にして、能力・スキルを最大限に伸ばそう
かつての介護業界では、評価基準があいまいな事業所も多く、介護職の日々の業務は目的意識を持たずにただ同じ作業を繰り返すルーチンワークになりがちでした。
しかし近年では、キャリアパス制度や自己評価シートを導入する事業所も増えつつあり、評価や昇給の仕組みがより明確になってきています。
具体的な個人目標を立てて、キャリアに応じて必要な資格を取得していくことで、将来の可能性は広がり、転職活動もしやすくなります。
キャリアアップにつながる目標設定ができるよう、まずは基本のポイントを把握しておきましょう。
ささえるラボ編集部です。
「マイナビ福祉・介護のシゴト」が運営しています。
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