介護職の個人目標の立て方とは?設定のポイントとキャリア別の具体例を紹介!
とはいえ、「目標設定ってどうやるの?」「何を基準に作成すればよいの?」と目標の設定に悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、目標設定のポイントや、キャリア段階別の具体例について紹介していきます。
■監修者/専門家
<経歴> ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役| 株式会社ゆりかご 代表取締役| 茨城県訪問介護協議会 副会長| 茨城県難病連絡協議会 委員| 水戸在宅ケアネットワーク 世話人| 茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事| 茨城県訪問看護事業協議会 監事| 水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員| 水戸市地域自立支援協議会全体会 委員| 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント| 日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中
介護職における目標設定の重要性とその理由
しかし、だからこそ目標はあった方がよいと言えるのです。
目標設定が必要な主な理由は以下の通りです。
2.自分の課題を発見し、スキルアップするため
3.キャリアプランを具体化するため
4.人事考課や待遇改善のため
■1.モチベーションを維持するため
■2.自分の課題を発見し、スキルアップするため
自身の苦手なことや、できないことなど直面している課題を整理し、身につけるべきスキルを明確にすることで、改善につながっていきます。
■3.キャリアプランを具体化するため
また、そのキャリアに向けて段階的に目標を立てることができると、無理なく着実に成長できるステップを築くこともできるでしょう。
■4.人事考課や待遇改善のため
そのような事業所では、目標に対してどのように努力しているかであったり、その達成具合などを見て、昇給や昇格などに影響します。
介護職の目標設定のポイント
目標設定のポイントを解説します!
2.理想のイメージを思い描く
3.具体化する
4.期限を設ける
5.実現可能な目標にする
6.キャリアプランを考える
■1.業務上の課題を洗い出す
まずはそんな業務上の課題を洗い出しましょう。
それらの課題をもとに目標を考えると、スキルアップや業務改善につながる目標設定をすることができます。
たとえば、現状で、利用者やその家族とうまくコミュニケーションがとれないと感じているなら、「コミュニケーション力」を高めることを目標に盛り込む必要があると考えられます。
あるいは、認知症の利用者の言動がよくわからず対応に困ることが多いのであれば、認知症についての基本知識を身につけることが目標の候補になるでしょう。
■2.理想のイメージを思い描く
理想像を考えづらいときは、自分より経験年数が長く、見本となるような先輩介護職をイメージするのもよいでしょう。
「常に利用者に笑顔で接する」「不測の事態でも動じず、冷静に対処する」というように、先輩の行動や対応のなかで真似したいことを見つけて自分の目標設定に反映させていきます。
■3.具体化する
ただし、そのままだと多くの場合、抽象的な目標設定になりがちです。
たとえば「コミュニケーション力を高めること」を目標にするなら、「毎日◯分以上、利用者と会話をする」というように、スキルを高めるために必要とされる具体的な行動を考えましょう。その際に、数値化することができるとより具体的な目標となり、達成状況を把握しやすくなるでしょう。
悩んだ際は、コミュニケーションが上手な先輩に、スキルアップのためにどんなことをしたのか、聞いてみてもよいでしょう。
目標を具体化してはじめて、現場で実際に行動ができるようになります。
■4.期限を設ける
その場合、ただ「資格を取る」ではなく、「来年中に」「◯◯まで」などの期限も具体的に設定することがポイントです。達成までの道のりが長そうな目標については、その過程で必要なスキルや、行動を短期・中期・長期に分けて設定すると、より達成までの流れが明確になるでしょう。
たとえば資格取得を目指す際は、「筆記試験の問題集を1日◯ページ解く」「過去問題で〇割とる」といったように、資格取得までの具体的な行動を盛り込むのもよいでしょう。
■5.実現可能な目標にする
しかし、せっかく設定しても、それが自分のキャリア段階や生活スタイルに見合っていない目標だと、達成できないばかりか、かえってモチベーションが低下する場合もあります。
たとえば、入所して数カ月もたたない新人が、「他の従業員をフォローできるようになる」という目標を立てるのは時期尚早でしょう。「介護スキルに関する本を週に10冊読む」という目標も、介護職として忙しく働きながら達成するには無理があります。
冷静に現実を見て、実現可能な範囲の目標にすることが大切です。
■6. キャリアプランを考える
目指す姿と今の姿とのギャップとなる部分を洗いだすことで、その姿に近づいていくことができます。例えば、そのギャップを埋めるための手段として、資格取得を目指すという方もいるでしょう。
特にそういう意味では、キャリアプランを考えることがとても重要となります。
というのも、介護関連の資格はたくさんありますが、最終目標によって、そこに至るまでに取らなくてはならない資格や経験などの条件が異なるからです。
具体例として、介護職の多くの方が目指している「介護福祉士の資格を取得することで、根拠のあるケアを行えるようになりたい」ということを目標にしたとします。
介護系の養成学校に行かずに働きながら取得を目指す場合、「介護職として3年経験を積み、介護福祉士実務者研修を修了する」必要があります。
また、最終的に「介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し、ケアプランの作成に関わり深みのあるケアができるようになりたい」という姿を目指すのであれば、「介護福祉士の資格を取得してから、介護支援専門員の試験にチャレンジする」ことになります。
このように最終目標から逆算して、
・今の自分にどんな経験が必要になるのか
・◯年後にどの資格を取ればいいか
を考えることで、そのプランに沿った個人目標を立てるようにしましょう。
また、キャリア形成という視点では、組織の中での役職をあげることで「組織マネジメントでの役割の変化を目指す」という形と、組織のポジションや役割にはこだわらないが、現在の業務の中でできることを増やし、サービスの質をあげていくという意味での「職能をより発揮することを目指す」という形があると思います。
このようにご自身が目指す方向性を踏まえて、キャリアプランを考え、ご自身が必要となる経験を書きだしてみるのもよいでしょう。
キャリア段階(勤続年数)に応じた個人目標の具体例
ここでは、実際に自己評価シートに記入する際の例文を、「勤続1~3年の新人介護職」「勤続3~9年の中堅介護職」「勤続10年以上のベテラン介護職」の3つに分けて紹介します。
■「勤続1~3年の新人介護職」個人目標の例
初めて就職した人や、転職者でも社会人経験が少ない人は、並行して社会人としてのマナーやルールも覚えていく必要があります。
■個人目標設定の例文
・◯月中に利用者の名前と顔をしっかり覚え、カルテを確認して持病を把握する
・1日に一度は自分から利用者に声をかけてコミュニケーションを図る
・介護記録は「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」を意識し正確に書く
・上司への報連相を忘れないようにする
■取りたい資格
→介護職としての基本の知識・スキルを習得する研修です。
・〇年までに介護福祉士実務者研修を修了する
→実践的な知識とスキルの習得を目的とした研修です。介護福祉士の試験では、同研修を修了していることが受験の条件となります。
・〇年までに介護福祉士資格を取得する
→介護福祉士は、専門的な知識とスキルを持つ介護のプロ。国家資格で、受験するには、介護系の教育機関で定められたカリキュラムを終了するか、実務経験3年以上かつ介護福祉士実務者研修を修了していなければなりません。
■「勤続3~9年の中堅介護職」個人目標の例
経験ある介護職として存分に現場で力を発揮しながら、研修や勉強会に積極的に参加して、より専門的な知識を学ぶ時期といえます。
後輩に仕事を教える機会も増えるでしょう。主任やチームリーダーを任される人も増えてきます。
■個人目標設定の例文
・利用者それぞれに応じた対応やケアをできるようになる
・利用者やその家族から質問を受けた際に正確に答えられるようになる
・部下の業務の仕方でよくない点があれば指摘し、丁寧に指導する。逆に良い対応をしているときは一言でもほめる
・介護福祉士試験の半年前から、1日1時間は参考書を読む、問題集を解くなどの勉強をする
■取りたい資格
→介護福祉士は、専門的な知識とスキルを持つ介護のプロ。国家資格で、受験するには、介護系の教育機関で定められたカリキュラムを終了するか、実務経験3年以上かつ介護福祉士実務者研修を修了していなければなりません。
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
→入居型の施設や地域の拠点で、ケアプラン(介護サービス計画)を作成するほか、利用者からの相談への対応、介護保険申請の代行、行政や事業所などとの連絡・調整を行います。試験を受験する条件は、介護福祉士や看護師など介護・医療・福祉分野の国家資格を有し、それに基づく業務、または介護施設などで相談員の業務をした経験が5年以上あることです。
・サービス提供責任者
→訪問介護事業所における訪問介護サービスの責任者のことです。受験の条件は、介護福祉士の資格を持っていること、または介護福祉士実務者研修を修了していることです。
・社会福祉士
→高齢者や身体・知的障害者などを支援する専門職。取得するには試験に合格する必要がありますが、実務経験の年数や学歴に応じて、12通りの受験条件が設定されています。
■「勤続10年以上のベテラン介護職」個人目標の例
主任やリーダーはもちろん、さらにその上に立って施設全体をまとめるホーム長や施設長、所長といった管理者になる人もいるでしょう。
管理者になると、従業員をマネジメントするスキルや運営や経営に関する知識も求められます。
ただし施設の種類によっては、管理者になるための要件(実務経験や資格など)が定められている場合もあります。
■個人目標設定の例文
・従業員がそれぞれの能力を存分に活かせるような人員配置を考える
・介護職のリーダーや管理者向けの研修には積極的に参加する
・外部の研修会などで介護の知識やスキルを伝える講師としてのスキルを磨く
・事業所の経営状況を正確に把握し、経費削減に努める
■取りたい資格
→介護福祉士のさらに上の資格。試験はありませんが、養成研修を修了する必要があります。養成研修を受けるには、介護福祉士の資格を取得していること、その後5年以上の実務経験があることなどの条件が決められています。
・主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)
→介護支援専門員の上位資格で、ほかのケアマネジャーへのアドバイスや指導、ほかの従業員や外部との連絡調整という役割を担っています。試験はありませんが、研修を受ける必要があります。研修を受講する条件として、介護支援専門員としての実務経験などが求められます。
介護職のキャリアパス制度について
いずれの場合も、目標設定においては自身の課題や、今後のキャリアと向き合う必要があると思います。
ここからは、政府が介護サービス事業所に対して、導入を勧めているキャリアパス制度について見ていきましょう。
■キャリアパス制度とは
一般企業の多くが導入している人事制度の1つで、従業員の昇給目安にもなります。
キャリアパス制度の内容は事業所ごとに異なりますが、介護業界では多くの事業所が、資格の取得を基準に取り入れています。
また、キャリアパス制度は、「介護職員等処遇改善加算」という制度とも関係しています。 この制度は、キャリアパスに関する要件や職場の環境改善などの要件を満たすことで、事業所の介護報酬に加算金が追加され、それが「処遇改善手当」として職員に支給される仕組みになっています。 つまり、事業所がキャリアパス制度を導入することで、介護職の処遇が改善し、人手不足の解消や人材の定着につながる可能性があるのです。
勤務する事業所がキャリアパス制度を導入している場合は、個人目標を立てる際に、まず勤務先のキャリアパスにおいて、自分がどの段階にいるのかを確認しましょう。
明確なキャリアパスがあれば、次のステップに進むにはどんなことが必要なのかも可視化されるため、目標設定もしやすいはずです。
■キャリアパス制度導入の背景
原因はさまざまですが、主な原因は、介護職が重労働であるうえに、給料の額がそれに見合わないと考えられていることです。
さらに、評価制度が整っていない事業所も多く、従業員のモチベーションが上がりにくい、昇給しにくいため離職率が高い、といった課題もありました。
これらの課題を解決すべく、政府は介護事業所に対して「キャリアパス制度」の導入を推奨しているのです。
資質向上(スキルアップ)のための目標が思いつかないときの対策は?
実際に、目標がないからといって給与がもらえないというわけではありませんし、決められた業務を遂行していれば大きな問題も起こらないと思います。
しかし、前述したように目標を設定することで、自身の目指したいところが明確になりモチベーションの向上や正当な評価を受ける体制づくりに繋がるのです。
ここからは、目標が思いつかない場合の対策方法について解説していきます。
■目標が立てられない原因は?
■未経験のときのほうが、自分の課題に気づきやすい
そもそも、全く未経験で仕事をしようと思うと「ゼロ」の状態からのスタートなので、そこで働くために色々な業務内容を覚えなくてはいけません。教えてもらうときも、「次までにはできるようにしなくては」や「今月中にはここまで覚えないと」と思いながら仕事をしていると思います。それがまさに目標なのです。
なぜ全く仕事ができない未経験のときは目標を立てることができるのかというと、「自分が何ができないのか」を分かっているからだと考えます。そしてできないことで周囲に迷惑をかけているなど、自分にとって困ることがあるからです。
しかし、ある程度の年数を重ねると、仕事にも慣れ、困っていることや不安なことが少しずつなくなっていきます。その結果、目標を立てることの必要性が感じられなくなり、目標設定時に「思いつかない」という状態になるのです。
■目標設定に困ったとき、自分に問いたいことと対策法
・自分で行っている介護業務について科学的根拠をもって、自分以外にわかりやすく説明できるか?
・今後、絶対に失敗しないか?
・災害やトラブル等、どんなことがあっても想定内として対応できるか?
・目の前のご利用者は、自分の介護を受けることで100%満足しているか?
上記のように問いかけられたとき、すべてに自信をもって「Yes」と答えられるでしょうか。
もし答えられる方は、自身の欠点や不安に向き合えていない証ですので、逆に危険であると思ってください。
■自分にとって「できないこと」を正確に把握しましょう
私たちは、色々な課題を持った人に対応できる力を身につけなくてはなりません。現状関わっている方に対しては、たまたまうまくいっているだけかもしれないと考え、どのような方が目の前に現れても、しっかりと対応できるようになっておくことが大切なのです。
苦手な業務を考えてすぐに思いつかない方でも、嫌いな業務や避けたい業務など、「できればやりたくない」と感じている業務が1つはあるのではないでしょうか。
おそらく、その背景には苦手意識など何らかの抵抗があるはずです。
「できない」=あなたの課題です。自分にとっての「できない」を明確にしていきましょう。
■その課題をどのように解決するかも考えよう
「できない」が「できる」になるために大切なことは、「何を、いつまでに、どのくらい、誰に対して、どこで、どのようにできるようになりたいか」を考えることです。 実際の例を紹介します。
例:排泄介助にかかる時間に課題がある場合
一方、ただ急いで実施するのは、おむつの当て方が雑になり排泄物が漏れてシーツまで汚染してしまうなど利用者さんの不快感に繋がるため意味がありません。
■課題に対して、やるべきことを分解していく
・急いでも仕上がりのきれいなおむつ交換を(何を)
・1年かけて(いつまでに)
・1人あたり6分間短縮(どのくらい)
・利用者様に対して急いでいると感じられないように(誰に対して)
・外部研修や職場で(どこで)
・排泄介助技術の学び直しのためにおむつフィッター3級資格を取得し、職場スタッフと練習しながら、2か月で一人当たり1分短縮できるように意識して業務を行う。(どのようにできるようになりたいか)
ということになります。
そして、これらを整理すると、「おむつフィッター3級資格を取得し、ご利用者が不快に思わないようなおむつ交換を1年後に一人当たり24分以内に終わらせることができるようになる。」
と最終的にまとめることができます。
■介護系の資格だけじゃない!目的から逆算して資格にチャレンジしよう
資格取得と聞くと、介護に関連する資格というイメージが強いと思います。しかし、介護系の資格のみを狙う必要はありません。
実際に、脇先生が介護関連資格ではない資格を取得したエピソードを紹介します。
■脇先生がファイナンシャルプランナー(FP)を取得した実体験
ケアマネジャーとしての業務の中で、「私は60歳で、前倒しで年金を受けられる年齢にはなったけど、65歳まで待った方がいいか?」と相談を受けました。
私は、そのとき恥ずかしながら即答することができなかったのです。
そこで介護系の資格ではないファイナンシャルプランナーの資格にチャレンジしました。
そうすると65歳より前倒しで老齢基礎年金を繰り上げ受給する場合、1ヶ月あたり、0.4%の減額支給となることが理解できました。
そうすると5年間(60ヶ月)前倒しとなるわけですから、
0.4%×60ヶ月=24% 減額支給となるということがわかります。
それでも、60歳から受給したいか?満額もらえるようになるまで65歳からもらうのか?
どちらが良いかを判断していただけるようになりました。
(もちろん65歳以上に遅らせて、満額以上にもらうという選択肢もありますが割愛いたします。)
このように、一見介護に関係のなさそうな資格でも、役に立つ場面があるのです。
もちろん、資格試験を受けるという観点では、資格を取得することも大切です。しかし、資格取得そのものが目的ではなく、そのチャレンジ過程で得る学びや、努力というのも大切にしてください。
ぜひ、生活を支える介護職という視点で、様々な資格に挑戦をしてみてください。
■ユニットやチームの目標も、同じ手順でやるべきことを分解していこう
ぜひみんなで共感できるよう目標を立て、日々研鑽を重ねていきましょう。
まとめ:目標を明確にして、能力・スキルを最大限に伸ばそう!
具体的な個人目標を立てて、キャリアに応じて必要な資格を取得していくことで、将来の可能性は広がり、転職活動もしやすくなります。
キャリアアップにつながる目標設定ができるよう、まずは基本のポイントを把握しておきましょう。
最後に:マンガで解説!
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
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ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
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茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中
介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級