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【例文あり】介護職の個人目標が思いつかない?|キャリア段階別の具体例や設定時のポイントを紹介!

【例文あり】介護職の個人目標が思いつかない?|キャリア段階別の具体例や設定時のポイントを紹介!

[2025年5月26日更新]介護業界でも、個人目標を設定することが重視されています。目標設定を行うことで、より適切な人事評価を行うことができ、職員の成長にも繋がります。この記事では目標設定時の方法やポイント、キャリア段階別の文例を紹介します。【監修者/専門家:脇 健仁】


目次

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介護職の個人目標の立て方とは?設定のポイントとキャリア別の具体例を紹介!

近年、介護業界だけに限らず、どの業界でも従業員それぞれに個人目標を設定することが重視されています。目標を設定することで、現状と目標のギャップが明確になり、モチベーションを高めながら働くことができます。また、目標があることで、人事評価においても基準が定まり、適切な評価を行うことができます。

とはいえ、「目標設定ってどうやるの?」「何を基準に作成すればよいの?」と目標の設定に悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、目標設定のポイントや、キャリア段階別の具体例について紹介していきます。

監修者/専門家

脇 健仁

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/22

<経歴> ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役| 株式会社ゆりかご 代表取締役| 茨城県訪問介護協議会 副会長| 茨城県難病連絡協議会 委員| 水戸在宅ケアネットワーク 世話人| 茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事| 茨城県訪問看護事業協議会 監事| 水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員| 水戸市地域自立支援協議会全体会 委員| 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント| 日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中

介護職における目標設定の重要性とその理由

介護職は、日々目の前にいる利用者さんのケアを行うことが主な仕事です。そのため、目標を設定するうえで数値化することが難しく、「目標設定は不要なのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、だからこそ目標はあった方がよいと言えるのです。
目標設定が必要な主な理由は以下の通りです。

1.モチベーションを維持するため
2.自分の課題を発見し、スキルアップするため
3.キャリアプランを具体化するため
4.人事考課や待遇改善のため

1.モチベーションを維持するため

人に決められた業務に単調に取り組むことに比べて、自身でありたい姿を考え、目標が明確になることで、そこに向かって努力をしようという意欲やモチベーションに繋がります。

2.自分の課題を発見し、スキルアップするため

目標を立てるには、現状の課題を把握し、現状と理想の差を目標として設定する必要があります。

自身の苦手なことや、できないことなど直面している課題を整理し、身につけるべきスキルを明確にすることで、改善につながっていきます。

3.キャリアプランを具体化するため

数年後までの理想のキャリアを考えることで、逆算して今何をするべきかが明確になります。

また、そのキャリアに向けて段階的に目標を立てることができると、無理なく着実に成長できるステップを築くこともできるでしょう。

4.人事考課や待遇改善のため

自己評価シート(個人目標設定シート)を人事評価に活用している事業所も多くあります。

そのような事業所では、目標に対してどのように努力しているかであったり、その達成具合などを見て、昇給や昇格などに影響します。

介護職の目標設定のポイント6選!

では、キャリア段階に応じた適切な目標設定を行うために、どのようなことを意識する必要があるのでしょうか。

目標設定のポイントを解説します!
*目標設定のポイント*
1.業務上の課題を洗い出す
2.理想のイメージを思い描く
3.具体化する
4.期限を設ける
5.実現可能な目標にする
6.キャリアプランを考える

1.業務上の課題を洗い出す

目標設定のヒントは、自分自身が毎日介護業務にあたるなかで、失敗した経験や苦手だと感じること、うまくできずに悩んでいることに潜んでいます。
まずはそんな業務上の課題を洗い出しましょう。
それらの課題をもとに目標を考えると、スキルアップや業務改善につながる目標設定をすることができます。

たとえば、現状で、利用者やその家族とうまくコミュニケーションがとれないと感じているなら、「コミュニケーション力」を高めることを目標に盛り込む必要があると考えられます。
あるいは、認知症の利用者の言動がよくわからず対応に困ることが多いのであれば、認知症についての基本知識を身につけることが目標の候補になるでしょう。

2.理想のイメージを思い描く

業務上の課題のほか、介護職として「こうありたい」「この人のような介護士になりたい」といった自分の理想のイメージを目標設定に反映させるのも一案です。

理想像を考えづらいときは、自分より経験年数が長く、見本となるような先輩介護職をイメージするのもよいでしょう。
「常に利用者に笑顔で接する」「不測の事態でも動じず、冷静に対処する」というように、先輩の行動や対応のなかで真似したいことを見つけて自分の目標設定に反映させていきます。

3.具体化する

目標設定の第一歩は、業務上の課題や理想の介護職像をもとに自分のキャリア段階に合う目標と達成するための具体的な行動を見つけることです。

ただし、そのままだと多くの場合、抽象的な目標設定になりがちです。
たとえば「コミュニケーション力を高めること」を目標にするなら、「毎日◯分以上、利用者と会話をする」というように、スキルを高めるために必要とされる具体的な行動を考えましょう。その際に、数値化することができるとより具体的な目標となり、達成状況を把握しやすくなるでしょう。
悩んだ際は、コミュニケーションが上手な先輩に、スキルアップのためにどんなことをしたのか、聞いてみてもよいでしょう。

目標を具体化してはじめて、現場で実際に行動ができるようになります。

4.期限を設ける

人によってはキャリアアップのために介護福祉士実務者研修や介護福祉士といった資格取得を目標にしたい場合もあるでしょう。

その場合、ただ「資格を取る」ではなく、「来年中に」「◯◯まで」などの期限も具体的に設定することがポイントです。達成までの道のりが長そうな目標については、その過程で必要なスキルや、行動を短期・中期・長期に分けて設定すると、より達成までの流れが明確になるでしょう。

たとえば資格取得を目指す際は、「筆記試験の問題集を1日◯ページ解く」「過去問題で〇割とる」といったように、資格取得までの具体的な行動を盛り込むのもよいでしょう。

5.実現可能な目標にする

仕事に対する向上心が高い人は、目標設定の際に、つい高すぎる目標を掲げてしまうことがあります。
しかし、せっかく設定しても、それが自分のキャリア段階や生活スタイルに見合っていない目標だと、達成できないばかりか、かえってモチベーションが低下する場合もあります。

たとえば、入所して数カ月もたたない新人が、「他の従業員をフォローできるようになる」という目標を立てるのは時期尚早でしょう。「介護スキルに関する本を週に10冊読む」という目標も、介護職として忙しく働きながら達成するには無理があります。

冷静に現実を見て、実現可能な範囲の目標にすることが大切です。

6. キャリアプランを考える

個人目標を考えるときには、ご自身が目指す「ありたい姿」に近づくためのキャリアプランをイメージしておきたいものです。特に、実現したいキャリア(ご自身が目指すありたい姿)に近づくためには、自身には何が必要かを考える必要があります。

目指す姿と今の姿とのギャップとなる部分を洗いだすことで、その姿に近づいていくことができます。例えば、そのギャップを埋めるための手段として、資格取得を目指すという方もいるでしょう。

特にそういう意味では、キャリアプランを考えることがとても重要となります。
というのも、介護関連の資格はたくさんありますが、最終目標によって、そこに至るまでに取らなくてはならない資格や経験などの条件が異なるからです。

ーキャリアプランから目標を考える具体例

介護職 個人目標 キャリアプラン

具体例として、介護職の多くの方が目指している「介護福祉士の資格を取得することで、根拠のあるケアを行えるようになりたい」ということを目標にしたとします。
介護系の養成学校に行かずに働きながら取得を目指す場合、「介護職として3年経験を積み、介護福祉士実務者研修を修了する」必要があります。

また、最終的に「介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し、ケアプランの作成に関わり深みのあるケアができるようになりたい」という姿を目指すのであれば、「介護福祉士の資格を取得してから、介護支援専門員の試験にチャレンジする」ことになります。

このように最終目標から逆算して、
・今の自分にどんな経験が必要になるのか
・◯年後にどの資格を取ればいいか 
を考えることで、そのプランに沿った個人目標を立てるようにしましょう。

また、キャリア形成という視点では、組織の中での役職をあげることで「組織マネジメントでの役割の変化を目指す」という形と、組織のポジションや役割にはこだわらないが、現在の業務の中でできることを増やし、サービスの質をあげていくという意味での「職能をより発揮することを目指す」という形があると思います。

このようにご自身が目指す方向性を踏まえて、キャリアプランを考え、ご自身が必要となる経験を書きだしてみるのもよいでしょう。

介護職の個人目標を書くときの注意点

ここまで目標を作成する際のポイントを紹介してきました。
ここからは、目標設定で避けるべき表現や、ありがちなNG例を紹介します。

曖昧な目標は評価されにくい

目標設定時のポイントとして、「誰が見てもわかる目標」を作成する必要があります。そのため、人の価値観によって判断が異なってくる以下のような表現の使用は、避けることが好ましいでしょう。

頑張る・工夫する・気をつける・スキルを高める・もっと・たくさん・しっかり


これらは期限や量が明確ではなく、数値化することができていない表現です。たとえば「もっと頑張る」という目標を立てたとしても、もっととは「どれくらいか」「がんばる」の基準は何かなど曖昧な点が多いでしょう。

目標を設定する際は、「SMART」を意識し、具体的な目標を作成していきましょう。

※目標設定の「SMART」とは

目標設定のポイント

【具体例あり】NGな目標とその修正例

曖昧な表現の言い換え

■NGな目標1:利用者さんにもっと丁寧に接する

この目標の要修正ポイントと、具体的な修正案を確認していきましょう。

・要修正ポイント
「もっと」の概念が人によって曖昧であるかつ、丁寧の認識も個人差が生じます。

・修正案
「いらっしゃった利用者さんと挨拶をする際は、必ず名前を呼んで挨拶する。」
→どのような場面で、どのように立ち振る舞うのかを明確にすることで、誰が見ても統一の評価を行うことができます。

■NGな目標2:仕事でミスをしない!

ミスをしないというのは誰が見ても基準が同じであるかと思いますが、この目標のNGポイントと修正案を確認していきましょう。

・要修正ポイント
「ミスをしない」だけでは、完璧を求めすぎているため現実的な目標ではありません。

・修正案
「記録を記入した際に、必ずダブルチェックを行い、週に1回先輩に確認をしてもらう」
→ミスが多いことを課題に感じているのであれば、それをいつまでにどのように解決するのかがわかるような目標にしましょう。

■NGな目標3:新人の指導を頑張る

新人教育担当になった職員さんの目標ですね。では、この目標はどのような点がNGなのでしょうか。確認していきましょう。

・要修正ポイント
「頑張る」という言葉が曖昧で、人によって判断の基準が異なります。

・修正案
「毎日終業時に、新人職員と振り返りを行い、週に1回、1on1の時間をとって業務内容や不安なことと向き合う時間を作る」
→何をどのくらいの頻度でやるのか明確に記すようにしましょう。

【例文あり】キャリア段階(勤続年数)に応じた個人目標

現状と目標

個人目標の内容は、キャリア段階(勤続年数)によって大きく変わってきます。
ここでは、実際に自己評価シートに記入する際の例文を、「勤続1~3年の新人介護職」「勤続3~9年の中堅介護職」「勤続10年以上のベテラン介護職」の3つに分けて紹介します。

「勤続1~3年の新人介護職」個人目標の例

まずは仕事に慣れ、介護の基本的な知識とスキルをしっかり身につけるべき時期です。
初めて就職した人や、転職者でも社会人経験が少ない人は、並行して社会人としてのマナーやルールも覚えていく必要があります。

■期間別の個人目標の例文

新人介護職 目標の例

上記のように目標は短期・中期・長期にわけて設定しましょう。
先述したように、SMARTを意識し、新人職員であっても努力次第で達成可能な目標を作成します。

■評価項目別の個人目標の例文

評価においては、項目にあわせた目標設定が必要な場合もあります。
そのような場合は、各項目における自身の将来像をイメージしながら、具体的に設定していきましょう。

ー業務面

業務面における目標の例文を紹介します。

・1ヶ月で利用者さんの名前を全員覚え、必ず名前を呼んで挨拶する
・食事介助と移乗介助を3ヶ月以内に、1人でできるようになる
・1年後、すべての介助を1人で行えるようになる

ー緊急時対応

利用者さんの安全をまもることは重要であるため、緊急時の対応に関する目標を設定する場合もあるでしょう。

・入社して1ヶ月で緊急時対応マニュアルの場所を把握し、目を通すことができている
・避難訓練と研修に参加し、非常時の避難経路とAEDの使用方法を把握しておく
・緊急時において、冷静かつ迅速に上司への報告が行えるようになる

ー資格取得

資格の目標を立てる際は、期間別の目標設定のように、達成時期を定めておくと、モチベーションの維持に繋がるでしょう。
資格取得 目標の例

■新人介護職が取りたい資格

・介護職員初任者研修
→介護職としての基本の知識・スキルを習得する研修です。

・介護福祉士実務者研修
→実践的な知識とスキルの習得を目的とした研修です。介護福祉士の試験では、同研修を修了していることが受験の条件となります。

・介護福祉士国家資格
→介護福祉士は、専門的な知識とスキルを持つ介護のプロ。国家資格で、受験するには、介護系の教育機関で定められたカリキュラムを終了するか、実務経験3年以上かつ介護福祉士実務者研修を修了していなければなりません。

「勤続3~9年の中堅介護職」個人目標の例

勤続3年以上になると、基本の知識とスキルは身につけているはずです。
経験ある介護職として存分に現場で力を発揮しながら、研修や勉強会に積極的に参加して、より専門的な知識を学ぶ時期といえます。
後輩に仕事を教える機会も増えるでしょう。主任やチームリーダーを任される人も増えてきます。

■期間別の個人目標の例文

中堅介護職 目標設定 期間別

新人の頃と同様に、SMARTを意識した目標設定は続ける必要があります。

それと併せて、介護職としての希望や理想像も見えてきたと思うので、短期目標から考えるのではなく、将来や、長期的に考えたときになりたい姿から、逆算して目標設定を行うようにしましょう。

■評価項目別の個人目標の例文

ー業務面

業務面における目標の例文を紹介します。

・後輩に対し、月に1回研修や勉強会を開く
・利用者さんににあわせたケアをおこない、介護記録に詳細を記入する
・チームで振り返りを行う際に最低1回は自分の意見を伝える

ー緊急時対応

次に緊急時の対応についても目標を紹介します。

新人の頃とは異なり、後輩を預かる立場でもあるので、自身がしっかりと把握し、周りのフォローにまわることができる状態になっているのが理想的です。

・職員向けの緊急時対応確認テストを作成し、全職員正答率90%を目指して研修の実施にも携わる
・要介護度が高い利用者さんの緊急時対応を1人でできるようになる

ー資格取得

中堅介護職 目標 資格

中堅介護職になると、介護福祉士国家試験や次のキャリアを加味した資格の取得を目指す方が多いでしょう。そのような資格は取得までの難易度もあがるため、合格から逆算して、目標を立てるとよいでしょう。

■中堅介護職が取りたい資格

・介護福祉士
→介護福祉士は、専門的な知識とスキルを持つ介護のプロ。国家資格で、受験するには、介護系の教育機関で定められたカリキュラムを終了するか、実務経験3年以上かつ介護福祉士実務者研修を修了していなければなりません。

・介護支援専門員(ケアマネージャー)
→入居型の施設や地域の拠点で、ケアプラン(介護サービス計画)を作成するほか、利用者からの相談への対応、介護保険申請の代行、行政や事業所などとの連絡・調整を行います。試験を受験する条件は、介護福祉士や看護師など介護・医療・福祉分野の国家資格を有し、それに基づく業務、または介護施設などで相談員の業務をした経験が5年以上あることです。

・サービス提供責任者
→訪問介護事業所における訪問介護サービスの責任者のことです。受験の条件は、介護福祉士の資格を持っていること、または介護福祉士実務者研修を修了していることです。

・社会福祉士
→高齢者や身体・知的障害者などを支援する専門職。取得するには試験に合格する必要がありますが、実務経験の年数や学歴に応じて、12通りの受験条件が設定されています。

「勤続10年以上のベテラン介護職」個人目標の例

ベテランになると、基本の介護業務はもちろん、業務全体の流れ、部下の指導・育成、他の職種との連携についても意識する必要があります。

主任やリーダーはもちろん、さらにその上に立って施設全体をまとめるホーム長や施設長、所長といった管理者になる人もいるでしょう。
管理者になると、従業員をマネジメントするスキルや運営や経営に関する知識も求められます。
ただし施設の種類によっては、管理者になるための要件(実務経験や資格など)が定められている場合もあります。

■期間別の個人目標の例文

ベテラン介護職 目標

■評価項目別の個人目標の例文

ー業務面

10年以上のベテラン介護職となると、自身のことではなく施設全体の課題解決に努めるような業務が増えてくるかと思います。また、介護技術の向上を行い続けるのはもちろんですが、管理職やリーダーとしてのスキルを身につけていくことも必要です。

これらを意識したうえで、ベテラン介護職の目標の例を見ていきましょう。

・2ヶ月に1回リーダーシップを学ぶ研修に参加し、スキルの習得に努める
・職員と月に1回1on1を行い、そこの意見を踏まえたうえで人員配置を検討する

ー緊急時対応

次に緊急時の対応に関する例文を見ていきましょう。

・月1回緊急時の対応に関する研修をチームごとに実施する
・医師、看護師など他の職種との連携体制を見直し、2ヶ月に1回緊急時の対応に関する会議を開く

ー資格取得

ベテラン介護職 資格 目標

ベテラン介護職は、経験も積んでいるため次のステップに進むか、より上位の資格を目指す傾向があります。

そのため中堅介護職の目標と同じく、長期的なものから逆算して目標設定を行いましょう。

■ベテラン介護職が取りたい資格

・認定介護福祉士
→介護福祉士のさらに上の資格。試験はありませんが、養成研修を修了する必要があります。養成研修を受けるには、介護福祉士の資格を取得していること、その後5年以上の実務経験があることなどの条件が決められています。

・主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)
→介護支援専門員の上位資格で、ほかのケアマネジャーへのアドバイスや指導、ほかの従業員や外部との連絡調整という役割を担っています。試験はありませんが、研修を受ける必要があります。研修を受講する条件として、介護支援専門員としての実務経験などが求められます。

介護職のキャリアパス制度について

ここまで、目標設定の具体例について解説をしてきました。定性的な目標を立てる場合もあれば、定量的なもの、資格取得に関連したものなど様々な設定の軸があることがわかりました。
いずれの場合も、目標設定においては自身の課題や、今後のキャリアと向き合う必要があると思います。

ここからは、政府が介護サービス事業所に対して、導入を勧めているキャリアパス制度について見ていきましょう。

キャリアパス制度とは

キャリアパス制度とは、従業員が昇進していくための道筋を示し、キャリア段階ごとの基準や条件を明確にする制度です。

一般企業の多くが導入している人事制度の1つで、従業員の昇給目安にもなります。
キャリアパス制度の内容は事業所ごとに異なりますが、介護業界では多くの事業所が、資格の取得を基準に取り入れています。

また、キャリアパス制度は、「介護職員等処遇改善加算」という制度とも関係しています。 この制度は、キャリアパスに関する要件や職場の環境改善などの要件を満たすことで、事業所の介護報酬に加算金が追加され、それが「処遇改善手当」として職員に支給される仕組みになっています。 つまり、事業所がキャリアパス制度を導入することで、介護職の処遇が改善し、人手不足の解消や人材の定着につながる可能性があるのです。

勤務する事業所がキャリアパス制度を導入している場合は、個人目標を立てる際に、まず勤務先のキャリアパスにおいて、自分がどの段階にいるのかを確認しましょう。
明確なキャリアパスがあれば、次のステップに進むにはどんなことが必要なのかも可視化されるため、目標設定もしやすいはずです。

キャリアパス制度導入の背景

少子高齢化が進むなかで、介護業界は人手不足に悩まされてきました。
原因はさまざまですが、主な原因は、介護職が重労働であるうえに、給料の額がそれに見合わないと考えられていることです。

さらに、評価制度が整っていない事業所も多く、従業員のモチベーションが上がりにくい、昇給しにくいため離職率が高い、といった課題もありました。

これらの課題を解決すべく、政府は介護事業所に対して「キャリアパス制度」の導入を推奨しているのです。

スキルアップのための目標が思いつかないときの対策は?

書き方や設定のポイントがわかっても、いざ考えようとすると思いつかないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に、目標がないからといって給与がもらえないというわけではありませんし、決められた業務を遂行していれば大きな問題も起こらないと思います。

しかし、前述したように目標を設定することで、自身の目指したいところが明確になりモチベーションの向上や正当な評価を受ける体制づくりに繋がるのです。

ここからは、目標が思いつかない場合の対策方法について解説していきます。

目標が立てられない原因は?

■未経験のときのほうが、自分の課題に気づきやすい

「目標が思いつかない」となると、自身の仕事に対するモチベーションが低いのではないかと不安になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは「仕事に慣れてきている」証拠なのです。

そもそも、全く未経験で仕事をしようと思うと「ゼロ」の状態からのスタートなので、そこで働くために色々な業務内容を覚えなくてはいけません。教えてもらうときも、「次までにはできるようにしなくては」や「今月中にはここまで覚えないと」と思いながら仕事をしていると思います。それがまさに目標なのです。

なぜ全く仕事ができない未経験のときは目標を立てることができるのかというと、「自分が何ができないのか」を分かっているからだと考えます。そしてできないことで周囲に迷惑をかけているなど、自分にとって困ることがあるからです。

しかし、ある程度の年数を重ねると、仕事にも慣れ、困っていることや不安なことが少しずつなくなっていきます。その結果、目標を立てることの必要性が感じられなくなり、目標設定時に「思いつかない」という状態になるのです。

目標設定に困ったとき、自分に問いたいことと対策法

では、目標が思いつかず困ったときには、どのようなことを確認していけばよいのでしょうか。振り返りたいポイントは以下の通りです。

・自分が行っている介護業務の質は日本一か?
・自分で行っている介護業務について科学的根拠をもって、自分以外にわかりやすく説明できるか?
・今後、絶対に失敗しないか?
・災害やトラブル等、どんなことがあっても想定内として対応できるか?
・目の前のご利用者は、自分の介護を受けることで100%満足しているか?

上記のように問いかけられたとき、すべてに自信をもって「Yes」と答えられるでしょうか。
もし答えられる方は、自身の欠点や不安に向き合えていない証ですので、逆に危険であると思ってください。

■自分にとって「できないこと」を正確に把握しましょう

振り返ると、自分にとって自信のない業務や知らない知識、苦手な分野や技術があると思います。
私たちは、色々な課題を持った人に対応できる力を身につけなくてはなりません。現状関わっている方に対しては、たまたまうまくいっているだけかもしれないと考え、どのような方が目の前に現れても、しっかりと対応できるようになっておくことが大切なのです。

苦手な業務を考えてすぐに思いつかない方でも、嫌いな業務や避けたい業務など、「できればやりたくない」と感じている業務が1つはあるのではないでしょうか。
おそらく、その背景には苦手意識など何らかの抵抗があるはずです。

「できない」=あなたの課題です。自分にとっての「できない」を明確にしていきましょう。

■その課題をどのように解決するかも考えよう

次に、あなたの課題が明確になったあとは、その課題をどのように解決するかを考えることが大切です。
「できない」が「できる」になるために大切なことは、「何を、いつまでに、どのくらい、誰に対して、どこで、どのようにできるようになりたいか」を考えることです。 実際の例を紹介します。

例:排泄介助にかかる時間に課題がある場合

例えば、フロアの排泄介助を5人分行うのに2時間30分かかっている現状があったとします。そうすると2時間30分を2時間で行うことができれば、フロア全体のスタッフ間の相互フォローに余裕が生まれ、ご利用者との関わる時間を増やせたり、残業時間が減らせたりと良い効果があると考えられます。

一方、ただ急いで実施するのは、おむつの当て方が雑になり排泄物が漏れてシーツまで汚染してしまうなど利用者さんの不快感に繋がるため意味がありません。

■課題に対して、やるべきことを分解していく

先述した「何を、いつまでに、どのくらい、誰に対して、どこで、どのようにできるようになりたいか」にこの状況を落とし込むと、やるべき目標は

・急いでも仕上がりのきれいなおむつ交換を(何を)
・1年かけて(いつまでに)
・1人あたり6分間短縮(どのくらい)
・利用者様に対して急いでいると感じられないように(誰に対して)
・外部研修や職場で(どこで)
・排泄介助技術の学び直しのためにおむつフィッター3級資格を取得し、職場スタッフと練習しながら、2か月で一人当たり1分短縮できるように意識して業務を行う。(どのようにできるようになりたいか)

ということになります。

そして、これらを整理すると、「おむつフィッター3級資格を取得し、ご利用者が不快に思わないようなおむつ交換を1年後に一人当たり24分以内に終わらせることができるようになる。
と最終的にまとめることができます。

介護系の資格だけじゃない!目的から逆算して資格にチャレンジしよう

また、業務面の目標だけではありません。資格取得という面においても、目標設定を行うことは可能なのではないでしょうか。
資格取得と聞くと、介護に関連する資格というイメージが強いと思います。しかし、介護系の資格のみを狙う必要はありません。

実際に、脇先生が介護関連資格ではない資格を取得したエピソードを紹介します。

■【実体験】脇先生がファイナンシャルプランナー(FP)を取得したお話

私の実体験をお話しします。

ケアマネジャーとしての業務の中で、「私は60歳で、前倒しで年金を受けられる年齢にはなったけど、65歳まで待った方がいいか?」と相談を受けました。
私は、そのとき恥ずかしながら即答することができなかったのです。

そこで介護系の資格ではないファイナンシャルプランナーの資格にチャレンジしました。
そうすると65歳より前倒しで老齢基礎年金を繰り上げ受給する場合、1ヶ月あたり、0.4%の減額支給となることが理解できました。
そうすると5年間(60ヶ月)前倒しとなるわけですから、
0.4%×60ヶ月=24% 減額支給となるということがわかります。

それでも、60歳から受給したいか?満額もらえるようになるまで65歳からもらうのか?
どちらが良いかを判断していただけるようになりました。

(もちろん65歳以上に遅らせて、満額以上にもらうという選択肢もありますが割愛いたします。)


このように、一見介護に関係のなさそうな資格でも、役に立つ場面があるのです。
もちろん、資格試験を受けるという観点では、資格を取得することも大切です。

しかし、資格取得そのものが目的ではなく、そのチャレンジ過程で得る学びや、努力というのも大切にしてください。
ぜひ、生活を支える介護職という視点で、様々な資格に挑戦をしてみてください。

ユニットやチームの目標も、同じ手順でやるべきことを分解していこう

ユニットやチーム全体の目標を立てる際にも、そのユニット・チームとしての課題をしっかりと明確にできれば、その課題解決の行動を具体的に落とし込み、その行動をするために、いつまでに、具体的に、どんなことができるようになるという目標は立てられると思います。

ぜひみんなで共感できるよう目標を立て、日々研鑽を重ねていきましょう。

まとめ:目標を明確にして、能力・スキルを最大限に伸ばそう!

かつての介護業界では、評価基準があいまいな事業所も多く、介護職の日々の業務は目的意識を持たずにただ同じ作業を繰り返すルーティンワークになりがちでした。 しかし近年では、キャリアパス制度や自己評価シートを導入する事業所も増えつつあり、評価や昇給の仕組みがより明確になってきています。

具体的な個人目標を立てて、キャリアに応じて必要な資格を取得していくことで、将来の可能性は広がり、転職活動もしやすくなります。
キャリアアップにつながる目標設定ができるよう、まずは基本のポイントを把握しておきましょう。

最後に:マンガで解説!目標の立て方とは…?

介護職の目標の立て方①

介護職の目標の立て方②

マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)

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この記事のライター

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介護職の魅力を知ってもらうために、介護に携わる多くの方がSNSやプロジェクトで魅力の発信を行っています。それでもなお、2040年には57万人の介護職不足が起こると言われているのが現状です。この記事では、1人でも多くの方に介護職の魅力が伝わるよう、介護業界に携わる大関先生が介護職に就いたきっかけや、施設・事業所ができる介護の魅力発信方法を解説します!【執筆者/専門家:大関 美里】


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梅雨の介護施設で気をつけたいこと!|利用者さんに快適に過ごしてもらうためにできる工夫策とは?

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梅雨の季節は雨の日が多く、思うように行動できなかったり、湿度が高くじめじめしたりと利用者さんにとっても職員さんにとっても過ごしづらい日々が続きます。少しでも快適に過ごせるよう、介護施設におけるカビ対策・湿度管理・雨の日の過ごし方の工夫を紹介します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


介護施設ができるSDGsへの取り組み|6月5日は環境の日!環境問題への取り組み方を考えてみましょう

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6月5日は環境の日です。介護施設でも近年話題となっているSDGsや環境問題への取り組みを行うことが可能です。この記事では、介護施設で利用者さんと一緒にできる環境問題への取り組みやエコ活動を紹介します!【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


第153話 「思いやり?」/ほっこり介護マンガ

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介護施設で取り組む口腔ケア!|歯と口の健康週間で取り組むべきことや日常ケアの重要性

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6月は「歯と口の健康週間」があります。歯の健康を怠ると、口腔内の不調だけでなく、心身ともにさまざまな不調が生じます。この記事では介護施設で「歯と口の健康週間」に取り組む際にできることを紹介します!【執筆者/専門家:羽吹 さゆり】


第152話 「母の日」/ほっこり介護マンガ

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