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SNS方式の電子記録で、施設長から指摘され公開処刑に…介護記録の電子化に伴う問題が起こった時は?

SNS方式の電子記録で、施設長から指摘され公開処刑に…介護記録の電子化に伴う問題が起こった時は?

【回答者:伊藤 浩一】電子化の課題は、電子機器でなくコミュニケーション


本日のお悩み

職場の記録がオンライン化され介護記録や申し送りなど書き方が悪いと施設長から公開処刑的に書込み指摘されます。
今後は利用者さんの様子など、家族からも記録を見られるようになる予定でそれにあたり、職員の名前、顔写真、有資格など公開するので掲載するよう求められています。

SNSが嫌いな人もいます。
不安感等を伝えても聞き入れてもらえず、辞めようか悩んでいます。

電子化の課題は、電子機器でなくコミュニケーション

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

ご質問ありがとうございます。
記録の電子化は悩ましいですね。

なかなか電子化できずに悩んでいらっしゃる事業所さんもあれば、前衛的に進まれて悩まれている事業所さんもある。
質問者さんは後者でしょうか。

さて、ご質問の件、今話題のSNS方式の電子記録と推測します。
読者の方にはイメージがつかない方もいらっしゃると思いますので少し解説しますね。

SNS方式の電子記録の、メリットとデメリットは?

SNS方式の電子記録とは、事業所が、SNS(Facebookが近い感じと思います)に投稿するような感覚で、利用者さんの日常記録を記録していくと
ご家族もその記録システムにログインすれば、SNSを閲覧するように自分のお父さん、お母さん若しくはおじいさん、おばあさんの日常生活の様子がわかるという仕組みの電子記録です。

ご家族がスマホを持っていれば、オンタイムで情報が入ってきますし、写真や動画も共有できます。私もこれは面白いアイディアだなと思いました。
しかし、便利すぎて困ることもあります。

私用のSNSではないので記録者は匿名やハンドルネームとういうわけにはいきません。
記録には記録者名が明記され、記録者名をタップすれば、個人の簡単なプロフィール画面に飛ぶ感じでしょう。

施設長の視点で考えると

施設長さんからすれば、情報をオープンにすることでご家族の信頼を獲得でき、サービスの質向上につながる、若しくは、このような最新の記録システムをサービスに取り入れることで他事業所との差別化を図れると考えることもできるでしょうが、名前、顔写真、資格も職員にとってみれば個人情報です。
ご質問の通り抵抗感がある職員さんもいらっしゃって当然ですね。

また、記録も記載完了ボタンを押した時点でご家族も閲覧可能となると、入力ミスや文章の確認、修正を職員同士ですることができず、ダイレクトでご家族の目に触れることになります。
誤った記録やご家族が不審に捉えそうな表現があった場合は、せっかくのシステムが本末転倒になってしまいますので、施設長さんも、やっきになって記録指導をしていらっしゃるという構図ではないでしょうか?

施設長に意見を聞いてもらうために

では、ここでお悩みの問題点を整理したいと思います。

問題① 施設長さんの指導の仕方が悪い。公開処刑はいけません。
問題② SNS方式の電子記録導入にあたって施設長さんと現場との目的やルールの共有ができていない。
問題③ 施設長さんが現場の話を聞かない。

この3つの問題に関して質問者さんが、施設長さんに伝えて話し合いにならないのであれば、辞めることも選択の一つかもしれません。
しかし、施設長さんが聞く耳を持ってくれるのであれば、改善の余地もあるのではないでしょうか?

例えば、施設長さんに聞き入れてもらえなかった時のシュチュエーションはどんなだったでしょうか?
施設長さんが忙しそうな時?場所は?誰が伝えましたか?
もしかしたら、しっかり時間と部屋を準備してもらって現場の代表2名で話に行く、なんて作戦でいけば聞いてくれるかもしれません。

問題を乗り越えるために

質問から、やり方は考えなければならないとはいえ、最新の電子記録を導入しようとする施設長さんの熱意は感じます。
また、質問者さんを筆頭に不安等を上司に伝える行動力があるすばらしい現場ではないかと思いました。

施設長さんの熱意の根拠は、きっとご利用者、そのご家族によりよいサービスを提供することだと思います。
質問者さんが辞めたいという思いになるまで思い込んでいる話を聞いたら、ハッと気づくのではないでしょうか?
みなさんが辞めたら、それこそ施設長さんにとっては本末転倒ですもの。

新しいシステム導入にあたっては、いろんな思いや考えがぶつかり合ったり、すれ違ったり、本当に大変なエネルギーが必要となります。
しかし、これを乗り越えれば、風景は変わります。

課題は、コミュニケーションにある

課題は、電子記録ではなく、コミュニケーションでは?
話し合いのシュチュエーション、ちょっと工夫してみてください。

お互いの思いをわかりあえれば、最新の電子記録を取り入れ、運用できている誰もがうらやむモデル的な施設になっているのではないでしょうか?
その際は、ぜひ見学に行かせてください。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員

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