介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~

■監修者

作:伊藤 美穂
編集:株式会社サイドランチ
今日も元気に出勤したマイさん。
定年退職まで、大企業の社長だった
利用者のBさんにあいさつをすると…?
「過去の記憶の中に暮らす利用者さん」との接し方を解説します

・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表 ・アモールファティスクール⻑ 介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員 介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤
こちらのマンガに登場するようなご利用者の方と、私もたびたび出会ってきたような気がします。
特に、男性のご利用者の中に、「職業としての経験の記憶の中で暮らしている」方が多いように思えます。
■羽吹さんが体験した、利用者さんとのエピソード
ホームでも、朝はきっちり身支度をしてスーツを着る利用者さん
私が出会ったSさん(男性・当時84歳)は、権威ある鍼灸マッサージの学校の校長先生で、アルツハイマー型認知症でした。
とても穏やかな性格のSさんには、自分らしい暮らしのルーティンがありました。Sさんは毎朝、義歯装着後、スーツに着替え、ネクタイもご自分でしっかり身につけます。スーツやネクタイは職員と一緒に選びます。ホームに入居するまでは、きっと奥様と一緒に選んでいたのでしょうね。髪は現役時代のように、ポマードをつけてクシで整え、メガネをかけ、腕時計を身につけて食堂に行き朝食を済ませます。
その後、自室からビジネスバックを取り、玄関に向かって行き交う職員たちに「行ってきます」と声をかけます。職員も「気をつけて行ってらっしゃいませ」と挨拶をかわします。
そこでいつも通りに職員は「Sさん、これからご出勤ですか?もし良かったら途中までご一緒しませんか?」と声かけをします。
Sさん「君も出かけるの?」
職員「はい、そうなんです」
Sさん「じゃ、一緒に行こう」
という流れで、一緒に出かけます。
それに対する職員の対応・工夫は?
もちろん仕事場には行きません。道中、おしゃべりしながら、施設の近くの公園のベンチに腰掛けて休憩。
すると、スタッフが「Sさんの勤務先から連絡が入って、ホームで待ってるように連絡があった」ことを伝えて、Sさんに納得してもらい、スタッフと共に帰宅するのです。
雨や雪の日は、今日は休日なので学校はお休みだと伝えると「あっ、そうだったな。うっかりしてた」と休日モードになります。
外出時間は大体10分程度の時間です。
戻ると職員が所々で「お帰りなさい」「お疲れ様でした」と声掛けします。Sさんは満足気に「ただいま」と言いながら、食堂でお茶を飲みながら休憩します。
そこから、他の入居者の方やスタッフ達とおしゃべりが始まり、おしゃべりの途中から、スタッフにマッサージをしてくれる時もありました。
時には「君はひどい肩こりだから次回は鍼もやりましょう」とアドバイスを下さいます。ご入居者の方からもスタッフからも「先生」と慕われSさんらしい暮らしができるように最期まで貫くことができ、私たちスタッフも納得できたサービスを提供できた気持ちになったことを思い出します。
■ご本人らしさを知って、利用者さんに寄り添うヒントを掴もう
ご利用者様らしい暮らしを模索する中で、ご本人らしいものが顕著に現れていると、わたしたち介護従事者は寄り添いやすくなります。
また、その方の暮らしの質を低下させないヒントもいただけるので、関わりやすく楽しい時間も作りやすくなるはず。
さらには、人生そのものを学ばせていただける貴重な時間にもなるのではないでしょうか。
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今回のお話し
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Bさん「きみ、社長と呼びたまえ。ところで今日のスケジュールはどうなっているかね?」
どこにいても、Bさんは社長さんなのでした。
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次回もお楽しみに♪

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