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第40話 「人間理解」(マンガで学ぶ認知症ケア)解説付き

第40話 「人間理解」(マンガで学ぶ認知症ケア)解説付き

認知症ケアのコツは「行動の背景にある感情を想像すること」。認知症の症状を理解し、利用者さんの気持ちを想像することで対策を立ててケアしていきましょう。(解説:古畑佑奈)


介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~

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※健康で、爪の周囲に異常のない利用者さんを想定しています。

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監修者

望月 太敦

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/20

公益社団法人日本介護福祉士会 理事

作:伊藤 美穂

編集:株式会社サイドランチ

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認知症ケアのコツは「行動の背景にある感情を想像すること」

古畑 佑奈

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/19

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

感情を想像し、安心できる声かけを考えてみましょう

このとき、この利用者さんの心にはどんな感情があるのか考えてみましょう。
・刃物を向けられて怖い
・何をされるかよくわからなくて不安
・急に触られると思ってびっくりした
・知らない人に声を掛けられた
・もともとその日は機嫌が悪かった
ざっと思い浮かぶものですが、他にもまだありそうです。

認知症ケアで大切なことは、その方の行動の背景にある感情を想像することです。
なぜなら、人が行動を起こす背景には必ず感情があり、それに合わせた働きかけや、感情に寄り添った関わり方が非常に重要となるからです。

利用者さんの気持ちと、その原因となる症状を考えてみよう

・刃物を向けられて怖い

認知症症状の1つに「失認」があります。これは、物は見えているのにそれが何であるかが分からなくなることです。この方は、爪切りを見てもそれが「爪切り」と認識できず、刃物を見て恐怖を感じている可能性があります。

・何をされるかよくわからなくて不安

「見当識障害」により、今自分がどこにいて、何をされようとしているのか分からず混乱している可能性があります。見当識障害とは、今がいつで、ここがどこなのかが分からなくなる症状のことです。

・急に触られると思ってびっくりした

誰しもいきなり自分に向かってくる人がいたら驚くと思います。
特に認知症のある方は、記憶障害によって日常の中で「不安」や「焦り」を感じやすくなっていると言われています。
状況がよくわからないままいきなり人から触れられれば、驚くのも当然と言えそうです。

・知らない人に声を掛けられた

記憶障害により、職員の顔や名前を憶えていなければ、毎回がはじめましての状態です。
いきなり知らない人から声をかけられたら、どうして自分のことを知っているのか、この人は誰なのか、混乱してしまう気持ちも分かります。

・もともとその日は機嫌が悪かった

空腹や便秘、睡眠不足などの理由から、イライラにつながる可能性があります。
なぜならその原因自体の記憶が障害されるため、なぜか理由が分からないが身体の調子がいつもと違う、いつもより辛い、という状態だからです。
「失語」の症状により言葉で表出できない、という可能性もあります。

では、どのように対策すれば良いのか?

対策① いきなり爪切りを出して近づくのではなく、雑談からはじめる

まずは利用者の方に今の状況を把握してもらい、安心して話せる相手だと認識してもらう必要があります。
きちんと目を見て視界に入り「今日のお身体の調子はいかがですか」「いい天気ですね」などの雑談から声をかけ、緊張を解きます。「この人は危険な人ではない」と認識してもらうことが必要です。

対策② ポジティブな声かけや、安心できる方法を検討する

「爪が伸びていて危ないから切らないとだめですよ」「そのままにしていたら怪我をしますよ」といったネガティブな声かけは、相手が感じている不安や焦りを加速させてしまう恐れがあります。不安や焦りは認知症の方にとって大きなストレスとなり、結果としてBPSD(行動・心理症状)として現れることもあります。

「綺麗な爪をされていますね。もう少し整えて綺麗にしましょうか」「お風呂のあとで爪が柔らかいので整えましょうか」といったような、ポジティブな声かけを心がけます。また、そもそも爪切り自体を怖がって難しい場合は、やすりで削るなど他の方法を考えます。

対策③ イライラの原因を探る

爪切りは皮膚を傷つけるリスクもあり、どうしても難しい場合はタイミングをずらして声をかけてみましょう。その際、空腹や便秘、睡眠不足などのイライラの原因がないか探り、もしも原因が思いつく場合はまずそちらに対してアプローチします。

マズローの欲求5段階説は有名ですが、5段階のうち1段階目である生理的欲求(食べたい、眠りたい、排泄したいといった生命維持に必要な欲求)を満たすことでイライラが軽減し、より高次な欲求、今回で言えば爪を切って清潔に過ごす、安全に過ごすといったことへ意識が向く可能性があります。

いずれにしても、認知症の方は不安や焦りを感じやすく、言葉で感情を表現することが難しいため、感じた恐怖や混乱をマンガのような形で表現することがあります。どんなことを感じているのか想像をめぐらし、安心できる声かけや対応を考えていきましょう。

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今回のお話し

施設にはいろいろな利用者さんが入居しています。
金井さんが利用者さんの爪を切ろうとすると…

~~~~
利用者さん「こらあああ私に触るんじゃない!」
でも爪を切り終わると…

ケロリとして、いつものかわいい利用者さんに戻るのでした。
~~~~
次回もお楽しみに♪

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