第34回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

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第34回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(認知症の理解)

問題1

認知症ケアにおける「ひもときシート」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.「ひもときシート」では、最初に分析的理解を行う。
2.認知症(dementia)の人の言動を介護者側の視点でとらえる。
3.言動の背景要因を分析して認知症の人を理解するためのツールである。
4.評価的理解では、潜在的なニーズを重視する。
5.共感的理解では、8つの要因で言動を分析する。

解答

3.言動の背景要因を分析して認知症の人を理解するためのツールである。

解説

1.(×)「ひもときシート」は、評価的理解→分析的理解→共感的理解の順に理解を進め、事実に基づいて情報を整理するプロセスを通して援助者自身の思考の転換を行い、求められるケアを導き出すツールです。
2.(×)認知症の人の立場に立って言動を意味付けしながら考えていくツールになっています。
3.(○)言動の背景にあるメッセージやシグナルを読み解き、情報分析を行いながら介護者が認知症の人の理解を進め、求められる支援を考えていくためのツールになっています。
4.(×)評価的理解では、介護者として感じている課題を、介護者の視点で評価します。
5.(×)8つの要因で言動を分析するのは、分析的理解です。共感的理解では、認知症の人の視点から課題解決に向かう手がかりを得て、介助者の思考展開を行います。

問題2

認知症初期集中支援チームに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.自宅ではない場所で家族から生活の様子を聞く。
2.チーム員には医師が含まれる。
3.初回の訪問時にアセスメント(assessment)は不要である。
4.介護福祉士は、認知症初期集中支援チーム員研修を受講しなくてもチームに参加できる。
5.認知症疾患医療センター受診後に、チームが対応方法を決定する。

解答

2.チーム員には医師が含まれる。

解説

1.(×)認知症になっても本人の意思が尊重され、できるだけ住み慣れた地域で暮らし続けられるように、家族から自宅で普段過ごしているありのままの様子を聞くことが適切です。
2.(○)保健師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士などと共に、医師(認知症サポート医など)も連携しながら支援を実施します。
3.(×)本人や家族の課題、支援にあたっての課題などを明確にし、初期の支援を包括的・集中的に行うためには、初回訪問時のアセスメントが重要です。
4.(×)支援チームへの参加要件に、認知症初期集中支援チーム員研修を受講することが含まれているため、原則的にはチーム全員が受講する必要があります。ただし、やむを得ない場合は、受講したチーム員から研修内容を共有することで参加可能となっています。
5.(×)家族の要請により自宅を訪問し、アセスメントを実施することから支援が始まります。認知症疾患医療センターは、都道府県などが指定する病院に設置され、かかりつけ医、介護施設、行政などと連携して認知症の治療やケアを行う認知症専門の医療機関です。

問題3

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)の幻視の特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.幻視の内容はあいまいではっきりしない。
2.睡眠中でも幻視が生じる。
3.本人は説明されても幻視という認識ができない。
4.薄暗い部屋を明るくすると幻視が消えることがある。
5.抗精神病薬による治療が行われることが多い。

解答

4.薄暗い部屋を明るくすると幻視が消えることがある。

解説

1.(×)レビー小体型認知症では、現実的ではっきりとした内容の幻視が繰り返し出現します。
2.(×)睡眠中に幻視は生じませんが、レム睡眠行動障害が出現し、大声での寝言や奇声、手足を動かして暴れるなどの異常行動がみられます。
3.(×)介護者が一緒にいて不安を軽減し、何もないと説明することで、幻視であると認識できる場合もあります。
4.(○)幻視は、薄暗く周りが見えにくい場所で生じやすくなります。部屋を明るくし、見間違うような物品を片付け、影を作らないことで、幻視の発生頻度が下がる可能性があります。
5.(×)通常は、症状に応じて抗認知症薬や抗パーキンソン病薬による治療が行われます。レビー小体型認知症では抗精神病薬に過敏になり、症状の悪化や副作用の発現が予想されるため、抗精神病薬を用いた治療は慎重に実施されます。

問題4

認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)に対する抗精神病薬を用いた薬物療法でよくみられる副作用として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.歩幅が広くなる。
2.誤嚥(ごえん)のリスクが高くなる。
3.過剰に活動的になる。
4.筋肉の緊張が緩む。
5.怒りっぽくなる。

解答

2.誤嚥(ごえん)のリスクが高くなる。

解説

抗精神病薬の副作用としては、運動機能障害や薬剤性パーキンソニズムなどが挙げられます。

1.(×)歩き出しが不安定で、歩幅は狭くなり、前のめりな姿勢になります。転倒リスクが上昇するため、注意が必要です。
2.(○)運動機能障害により嚥下障害が引き起こされ、誤嚥性肺炎の発症リスクが上昇します。水分摂取や食事の際は、十分に留意する必要があります。
3.(×)鎮静作用や、日中の眠気やめまいなどの副作用により、活動性は低下します。
4.(×)手足の震え(振戦)や筋肉のこわばり(筋固縮)を引き起こす可能性があります。
5.(×)鎮静作用により活動性が低下し、無気力になることがあります。

問題5

軽度認知障害(mild cognitive impairment)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.本人や家族から記憶低下の訴えがあることが多い。
2.診断された人の約半数がその後1年の間に認知症(dementia)になる。
3.CDR(Clinical Dementia Rating)のスコアが2である。
4.日常生活能力が低下している。
5.治療には、主に抗認知症薬が用いられる。

解答

1.本人や家族から記憶低下の訴えがあることが多い。

解説

1.(○)軽度認知障害は、認知機能障害が一部に認められるものの、日常生活動作は自立している状態です。認知症が進行すると記憶低下の自覚はなくなりますが、軽度認知障害の段階ではもの忘れなどの自覚があり、多くは本人や家族から記憶低下の訴えがあります。
2.(×)診断された人のうち、5~15%の人がその後1年間で認知症に移行するといわれています。
3.(×)CDRは認知症の重症度を評価する指標の一つであり、0(健常者)~3(重度認知症)で点数化します。軽度認知障害のスコアは0.5となります。
4.(×)全般的な認知機能は正常範囲内であり、日常生活能力の低下はみられませんが、年齢だけでは説明のつかない記憶障害が存在します。
5.(×)抗認知症薬の効果は否定的であり、保険適用の薬物療法はありません。運動療法、脳トレ-ニング、生活習慣の見直しなどの非薬物療法が行われます。

問題6

若年性認知症(dementia with early onset)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.75歳未満に発症する認知症(dementia)である。
2.高齢者の認知症よりも進行は緩やかである。
3.早期発見・早期対応しやすい。
4.原因で最も多いのはレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)である。
5.不安や抑うつを伴うことが多い。

解答

5.不安や抑うつを伴うことが多い。

解説

1.(×)若年性認知症は、65歳未満で発症した認知症の総称です。
2.(×)高齢者の認知症より進行スピードが速いことが、若年性認知症の特徴の一つです。
3.(×)現役世代での発症であり、症状が現れてもうつ病やストレス障害、更年期障害などが疑われるケースが多く、早期発見は困難だといえます。
4.(×)若年性認知症の原因で最も多いのは、約半数を占めるアルツハイマー型認知症であり、次いで血管性認知症、前頭側頭型認知症となっています。
5.(○)現役世代での発症となることから、仕事や育児に関する不安、抑うつを伴うことが多いとされています。

問題7

軽度の認知症(dementia)の人に、日付、季節、天気、場所などの情報をふだんの会話の中で伝えて認識してもらう認知症ケアとして、正しいものを1つ選びなさい。

1.ライフレビュー(life review)
2.リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)
3.バリデーション(validation)
4.アクティビティ・ケア(activity care)
5.タッチング(touching)

解答

2.リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)

解説

1.(×)ライフレビューは、これまでの自分の人生を回想し、評価や総括を行う活動です。他者が質問することでサポートを行う場合もあります。
2.(○)リアリティ・オリエンテーションは、日付、季節、天気、今いる場所、家族の名前などを、日常の会話に入れて伝えることで認識してもらう療法であり、見当識障害に対する認知症ケアの一つです。
3.(×)バリデーションは、認知症患者の言動に共感し、受け入れることによりコミュニケーションを取る方法です。
4.(×)アクティビティ・ケアでは、芸術文化活動、体操、散歩などにより、日々の充実をめざします。
5.(×)タッチングとは、直接手で触れる、さする、揉むなどして、安心感を与える非言語的コミュニケーションの一つです。

問題8

Cさん(80歳、女性)は夫(85歳)と二人暮らしである。1年ほど前から記憶障害があり、最近、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。探し物が増え、財布や保険証を見つけられないと、「泥棒が入った、警察に連絡して」と訴えるようになった。「泥棒なんて入っていない」と警察を呼ばずにいると、Cさんがますます興奮するので、夫は対応に困っている。
夫から相談を受けた介護福祉職の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.「主治医に興奮を抑える薬の相談をしてみてはどうですか」
2.「施設入所を検討してはどうですか」
3.「Cさんと一緒に探してみてはどうですか」
4.「Cさんの希望通り、警察に通報してはどうですか」
5.「Cさんに認知症(dementia)であることを説明してはどうですか」

解答

3.「Cさんと一緒に探してみてはどうですか」

解説

1.(×)興奮を抑える目的で抗精神病薬などが処方されることもありますが、BPSD(認知症の行動・心理症状)においては、関わり方を変えることで症状が軽減されるケースが多くみられます。
2.(×)Cさんの夫が相談したいのは「興奮するCさんへの対応」であるため、在宅における対応方法を助言するべきです。
3.(○)もの盗られ妄想がみられるため、Cさんの言動を否定せずに一緒に探してみることで、不安や混乱を軽減できると考えられます。
4.(×)もの盗られ妄想による発言であり、警察に通報しても問題解決にはつながりません。
5.(×)興奮している状態のCさんに認知症であると伝えても、理解できずに混乱をきたすばかりです。

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