本日のお悩み
自分自身のスキルアップをすることや収入を増やすことが目的です。
介護職が副業や掛持ちをする上でのおすすめや事例、また気を付けたほうが良いことなど教えてください。
社労士が解説!副業・兼業をするうえで気をつけておきたいこと、やる手続きについて
■執筆者
おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級
この内容のご質問のされる方はとても意欲の高い方が多い印象があります。
ご質問にあるように副業・兼業が可能であれば自身のスキルアップや、複数の収入源を持つことで所得を増やすことが可能になりますよね 。
ここでは国の方針や労働者や会社で共有をしていただきたい副業・兼業のメリットや気をつけてほしい留意点、さらには手続きの手順について解説をさせていただきます。
国の副業・兼業についての考え方について
介護業界も例外ではないでしょう。
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由あるとされており、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討されていることが適当とされています。
ただ、会社も労働者も双方でよく理解をしないとお互いが気持ちよく働くことができなくなってしまいます。その点を踏まえたうえで社労士としてわかりやすく解説をしたいと思います。
参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」
■副業・兼業とは?
企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して個人事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざまな形態があります。
■副業・兼業のメリットと留意点
これらを理解した上でお互いに理解をすることがベストだと考えます。
メリット
・会社としては社内で得られない知識・スキルを得ることができ、優秀な人材の獲得・流出の防止ができる。
・ 労働者は所得が増加する。
・会社は余分な無駄な残業コストなど費用が減少し生産性の高い仕事ができるようになる。
留意点
・労働者は職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務への意識付けと会社はこれらをどう確保するという懸念への対応が必要です。
・就業場所が2ヶ所以上になることで1週間の労働時間が短くなることで、雇用保険・社会保険の適用から外れてしまう場合もあります。
このような働き方は幅広いスキルの習得につながりますし、フリーランス介護士など多様な働き方ができれば、人材不足と言われる介護業界としても追い風になるかと思います。
副業・兼業の際の手続きの手順
■step1 就業規則等の確認
副業・兼業が禁止・制限をしており不許可の理由がなく不法行為に基づく惨害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案(マンナ運輸事件 京都地判平成24年7月13日)、また兼業・副業を理由に解雇をしたものが無効とされた裁判例(十和田運輸事件 東京地判平成13年6月5日)があります。
一番は直属の上司や経営者と相談をしてみましょう。
その上で上記のメリットと留意点を検討してみるとよいかもしれません。
仮に禁止となっている会社であっても、労使で前向きな話合いができる環境であれば過去の前例がなくても対応に応じてくれる可能性は十分にあります。
許可制の会社でも同様です、あなたが優秀であれば離職につながることは避けたいと考えて柔軟に応じてくれる可能性があります。
■step2 副業・兼業の届出・内容の確認
以下が一般的な確認事項となります。
・副業、兼業先の事業内容
・副業、兼業先で労働者が従事する業務内容
・労働時間通算の対象となるか否かの確認
繰り返しになりますが、労働時間の管理や健康管理などは労使双方で虚偽のないようにお願いします。
2ヶ所目以降に労働契約をした会社とは1社目の所定労働時間によっては残業代が発生する可能性もあります。
また副業先が自営業だった場合は労働時間管理の対象外となるため、さらなる自身の健康管理が必要になってきます。
万が一業務中に事故が起これば労災保険の適用になる場合もあります。
のちにトラブルにならないためにも正しく管理・把握をしましょう。
■step3 その他手続きについての確認
労働保険(労災保険・雇用保険)
労災保険は事業所ごとに加入をするのですが、雇用保険は被保険者の要件を満たせば2社目も保険の対象になりますが、主たる生計を維持する会社(給料の多い方)が加入することとなります。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
また2ヶ所以上の会社で社会保険の加入要件を満たした場合、被保険者本人はいずれかの事業所の管轄の年金事務所及び医療保険者を選択します。
事実の発生から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を選択する事業所の所在地を管轄する年金事務所へ提出します。
所得税
■最後に
今後労働人口が減少する中で、優秀な社員は一つの会社に縛られず活躍する場は広がり、加速していくことが予想されます。
リスキリング(新たな分野や職務にて新しいスキルの習得)など人的資本経営へのシフトも高まっております。
とはいえやはりリスクもあるのではないかという意見も否定はしませんが、正しくルールを守って働くことができると、この副業・兼業は労使双方にとってよりよい制度になると考えています。
介護業界の専門家が解説!ルールを守り、目的を明確にすることが大切です。
■執筆者
まずは同じような感じで使われる言葉の整理をしておきましょう。
「副業」とは、「副」という感じが意味するように、主とする「本業」があって、それとは別に「サブ」で行う仕事を指します。
「兼業」とは、複数の仕事を掛け持ちで行うことを指します。「複数」ですので、2つ以上の3つや4つの仕事の掛け持ちも兼業です。
「ダブルワーク」とは、「兼業」の中でも、2つの仕事を掛け持ちで行うことを指します。
■介護職の副業・ダブルワークで注意することとは
2022年の経団連の調査によると、「認めている」が53.1%、「認める予定」が17.5%だそうです。
半分以上の企業が認めていることとなります。
参考:経団連「副業・兼業に関するアンケート調査結果」
介護業界での統計は見つけきれませんでしたが、従業員数による違いは明確で、従業員の数が少ない企業ほど、認めていない割合は多くなっています。
小規模の事業所が多い介護業界は、認めていないところが多いと言えるかもしれません。
ただ、2020年の厚生労働省の調査によると、日本全体で9.7%、医療・福祉の業種で見ると9.9%の人が副業をしているそうで、私たちの業界でも10人に1人は、副業をしているということになります。
参考:厚生労働省「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」
認められていないにもかかわらず、それを行うことは、就業規則に反する行為ですので、何らかの形で指導や懲罰があるかもしれません。そこは必ず確認してください。
本業の就業規則を守ったうえで、副業等を行うことは、私は良いことだと思います。
■目的に応じた副業をすることがおすすめ
●収入を増やしたいのか
●介護の知識を深めたいのか・知識を広げたいのか など
「一番大切にしたい目的」を明確にすると、働き先は絞られてきますね。
私が、自分の経験上お勧めしたいのは、より介護の知識を深めたいのであれば、他の介護事業所での兼業です。
デイサービスで勤めているのであれば、特別養護老人ホームの夜勤専従の仕事などは、高齢者の夜の状態が知れて学びになりますね。
そして、介護で必要な医療分野での知識も広げることになる医療機関もお勧めです。
認知症ケアに特化したクリニックや病院などは、本業のスキルアップにも役立ちます。
ぜひ、目的に合った副業先、兼業先を見つけてみてください。
最後に
副業を始めたばかりに疲労が抜けない……
本業を休みがちになる…… などが起きると本末転倒です。
そのようなことが無いように、ご注意ください。
あと、働き方や収入に応じた公的機関への届け出義務があることもお忘れなく。
年金事務所や税務署への申告も必要になるケースもありますので、よく調べてください。
そのようなことを注意しながら、副業等を行い、見分を広げることは賛成です。
豊かな副業ライフ、兼業ライフを過ごされることを祈念しています。
ささえるラボ編集部です。
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