福祉住環境コーディネーターとは?資格の取り方や仕事内容を解説
要介護状態になっても暮らしやすいように自宅をリフォームする人が増えているなかで、注目されている資格です。
級による違いや資格の取得方法や合格率、主な仕事内容など、福祉住環境コーディネーターの概要を解説します。
福祉住環境コーディネーターとは
誕生の背景には、高齢者や障がい者が安心して暮らせる住環境が求められているにもかかわらず、住環境づくりについての相談に対応できる職種がなかったことがあります。
資格の取得者には、医療・福祉・建築に関する体系的で幅広い知識をもとに、高齢者や障がい者に住みやすい住環境を提案するアドバイザーとしての役割が期待されています。
また、利用者の要望はもちろん、建築士、ケアマネジャー、医療従事者といった専門家の意見を聞いて住環境づくりに反映させることも重要な役割です。
現状では、福祉住環境コーディネーターという職種での求人募集は少ないため、この資格のみで就職や転職につなげるのは難しいでしょう。
ただ、福祉・介護業界や住宅業界では、ほかのスキルや資格に加えてこの資格を持っていると、歓迎されて採用で有利になる可能性があります。
■どんな人が取得している?
東京商工会議所は、Webサイト上で福祉住環境コーディネーター検定試験受験者に保有資格を聞いたアンケート調査の結果を公開しています。
それによると、最も多かった保有資格は福祉用具専門相談員(19.5%)で、次いで介護福祉士(18.3%)、介護職員初任者硏修(13.8%)がそれに続きます。
さらにケアマネジャー、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、看護師、宅地建物取引士、1級・2級建築士、インテリアコーディネーターなどの資格名も含まれています。
この結果からは、福祉・介護業界、医療業界、建築・住宅業界と、幅広い業界に福祉住環境コーディネーターの資格取得者がいることがわかります。
福祉用具専門相談員をはじめ、介護職、ケアマネジャー、建築士、リフォーム会社のスタッフなどが、業務に役立てるために取得するケースが多いと考えられます。
■級による違い
以下に、各級について、検定試験で求められるレベルを紹介します。
■3級
■2級
■1級
福祉住環境コーディネーターの資格取得方法
なお、試験の実施年度によって細部が変更になる場合があるため、詳細は東京商工会議所の福祉住環境コーディネーター検定試験サイトで確認ください。
■受験資格
介護系の資格で求められることが多い実務経験は必要ありません。
2級や1級から受験することもできます。3級と2級の併願受験も可能です。
■3級・2級の試験概要
7月~8月、11~12月の年2回
■受験方式
IBT方式、CBT方式から選択。
IBTは自分の端末・インターネット環境を利用して受験する試験方式、CBTは全国にあるテストセンターのパソコンで受験する方式です。定められた試験期間・開始時間から、受験者が受験日時を選んで申し込みます。
■試験形式・時間
試験形式は複数の選択肢から当てはまるものを選ぶ多肢選択式。試験時間は90分。
■合格基準
100点満点中70点以上
■受験料
3級:5,500円、2級:7,700円。CBT方式の場合は、それぞれにCBT利用料として2,200円が必要です。
■1級の試験概要
12月中旬
■受験方式
全国にあるテストセンターのコンピューターで受験するCBT方式のみ。決まった日時に実施される全国共通の統一試験なので、日時の選択はできません。
■試験形式・時間
前半:多肢選択式(90分)、後半:記述式(90分)
■合格基準
前半・後半各100点満点とし、それぞれで70点以上の得点が必要
■受験料
9,900円。それに加えてCBT利用料2,200円が必要です。
■合格率
3級の合格状況 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
2022年度合計 | 5,616 | 2,183 | 38.9 |
2021年度合計 | 5,129 | 3,391 | 66.1 |
2020年度合計 | 6,486 | 4,335 | 66.8 |
2級の合格状況 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
2022年度合計 | 13,263 | 4,903 | 37.0 |
2021年度合計 | 10,617 | 7,201 | 67.8 |
2020年度合計 | 10,778 | 5,043 | 46.8 |
1級の合格状況 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
2022年度合計 | 285 | 16 | 5.6 |
2021年度合計 | 361 | 64 | 17.7 |
2020年度合計 | 335 | 43 | 12.8 |
合格率については、3級と2級は低い年で30%台後半、高い年は60%台後半と、年度によってかなり差があります。
一方、1級の合格率は5~17%程度と低い割合で推移しています。1級に比べると3級・2級は合格率が高めですが、難易度が低いわけではありません。各級のレベルに合わせた試験対策が必須です。
■勉強方法
公式テキストは3級、2級、1級の3冊あり、各級で求められる知識がテーマごとに解説されています。
さらに公式テキストに準じた練習問題もあるので、あわせて活用するとよいでしょう。
公式テキスト、練習問題は、福祉住環境コーディネーター検定試験サイトから、リンク先の外部サイトや申し込みフォームで購入できます。
試験勉強に要する期間・時間は人それぞれですが、東京商工会議所による2級・3級の合格者へのアンケート調査の結果を見ると、3級・2級ともに約6割の人が、2ヶ月以内の勉強期間で合格しています。
また、勉強時間については、1日あたり1時間以内の勉強時間で合格した人が約半数を占めています。
独学でも合格は可能ですが、より効率的に勉強したい場合は、商工会議所が主催する受験対策セミナーや、民間スクールによる講座を利用するとよいでしょう。
福祉住環境コーディネーターの主な仕事内容
ここからは、福祉住環境コーディネーターの主な仕事内容について解説します。
■住宅の新築・改修の提案
個人宅のほか、介護施設の住環境整備に携わることもあります。
介護が必要な高齢者の住宅では、例えば、玄関に手すりやスロープを設置する、部屋と部屋の間の段差をなくす、浴室の床を滑りにくい素材にするといったリフォーム例が考えられます。
■住宅改修の理由書の作成
申請時には、申請書のほかに、住宅改修が必要な理由をまとめた「理由書」が求められます。
この理由書は、ケアマネジャーが作成するのが一般的ですが、自治体によっては、福祉住環境コーディネーター2級または1級の取得者も作成を認められています。
そのため、いずれかの資格を持つリフォーム会社や工務店のスタッフなどが理由書を作成することもあります。
■福祉用具の選定アドバイス
福祉住環境コーディネーター資格(2級以上)を取ると、要介護者の体の状態やライフスタイルに合った福祉用具の選び方や活用の仕方についてもアドバイスできるようになります。
福祉用具貸与・販売事業所で働く福祉用具専門相談員は、利用者の状態や環境に合わせて適切な福祉用具を提案するほか、自宅に導入する際の取り扱い説明や調整、その後の定期点検なども行います。
福祉用具専門相談員が福祉住環境コーディネーターの資格を取ると、医療・福祉・建築に関する幅広い知識に基づいた提案ができるようになります。
まとめ:ほかの資格にプラスすると、活躍の場が広がる可能性が
医療・福祉・建築に関する体系的な知識をもとに住環境づくりのアドバイスができる福祉住環境コーディネーターのニーズは、今後さらに高まっていくでしょう。
福祉住環境コーディネーターは、これだけで就職や転職につながる資格ではありませんが、ほかの資格や知識・スキルにプラスすることで、活躍の場や機会が広がる可能性があります。
福祉住環境コーディネーターの資格は、実務経験などの受験要件が求められないうえ、独学で試験勉強が可能なので、比較的チャレンジしやすい資格といえます。
介護・医療・建築関連で働く人は、将来の選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
ささえるラボ編集部です。
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