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希望しない自立支援。「やりたくない人」への接し方とは?専門家が解説

希望しない自立支援。「やりたくない人」への接し方とは?専門家が解説

自立支援をしても拒否する利用者さんへの接し方とは?心が近づく共通点を探すために、まずは介護士とご利用者の価値観のすり合わせを行うようにしましょう。【執筆者:羽吹さゆり/介護福祉⼠、介護⽀援専⾨員、介護技術指導員、⽇本語教員、社会科教員、介護職員実務者教員、社会福祉主事任⽤】


希望しない自立支援。「やりたくない人」への接し方とは?専門家が解説

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本日のお悩み

介護施設で働いていますが、介護をするなかで本人の意思を尊重することが大切とは思うものの、わがままを言ったり、自分でできることも支援して欲しがったりする利用者さんへの対応や声かけに悩んでいます。自分でできることはやろうという気持ちがそもそもない方にどのように接すればいいでしょうか。アドバイスをお願いいたします。

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執筆者

この記事は、羽吹さんが執筆しました♪
*資格*
介護福祉⼠、介護⽀援専⾨員、介護技術指導員、⽇本語教員、社会科教員、介護職員実務者教員、社会福祉主事任⽤

羽吹 さゆり

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7

(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表、アモールファティスクール⻑、 理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。 ▶プロフィール 法政⼤学社会学部卒業後、⼤⼿損害保険会社⼊社。 30代で⽗の在宅介護を経験後、訪問介護、グループホーム、居宅介護⽀援事業所等に従事 ⽇本医療⼤学介護職員研修講座の専任教員従事する。

ご利用者の価値観を想像していくことが介護職としては必要

介護の現場では、ご本人の意思の尊重が大切だと頭の中では理解していても、どうしても納得できないことが多々ありますよね。
「どうして、自分でできるのにやってくれないのだろう」「わがままを言って困らせてくる」など憤りを抱くシーンもきっとあるはずです。

そして、このような憤りは、スムーズにケアが実行できない原因となり、ご利用者に対して「苦手なご利用者」「厄介なご利用者」という感情が生まれるきっかけになりやすいのではないかと思います。

実際、私自身もこのようなご利用者のケアで悩んだ経験があります。体験談も踏まえながら、アドバイスをさせていただきます。参考になれば幸いです。

まずは、ご利用者と介護職の価値観をすり合わせてみましょう

介護保険制度上での介護は「自立支援」が大切です。過剰なケアは活動性低下による、筋力低下や心肺機能の低下、うつ状態、褥瘡などを生む可能性もあるため、ご利用者にできる限りは「ご自分で頑張ってやってほしい」と思うことは当然ですね。
しかし一方で、私たちは介護を実践する際に、必ずアセスメントをします。

その方の性格や家族構成や生い立ち、社会経験等や地域の環境に関わる様々な情報を得て、分析し、ご利用者の価値観も推察し、その方らしいケアを提供します。
しかしながら、その際に勤務している介護職員自身の価値観とのすり合わせはどうでしょう?怠ってはいないでしょうか?
介護職員は対人援助職です。
そのため、ご利用者に寄り添う上で、介護職員自身の価値観とご利用者の価値観の違いを知ることは、ご利用者を尊重し、理解するために必要不可欠で、大変重要な過程だと思います。

価値観とは「本人の考え方の基準」です。
個々の特有な捉え方なので、100人100通りあります。
それは、はっきりと目で見えるものでもなく、正解はありません。だからこそ難しいとも言えます。

人とのコミュニケーションは「価値観」対「価値観」です。だからこそ、ご利用者の価値観だけではなく、介護職自身の今持っている価値観についても分析する必要があるのです。

「自分の当たり前」と「他人の当たり前」は実は大いに違う事があります。この当たり前の価値観は、時代背景や様々な個人的な経験から日々変化もしています。
*羽吹さんの体験談*

私は、以前勤務していた施設で「生活リハビリ」を導入するなかで、「ご自分の洗濯物を畳むこと」や「お部屋の掃除や片付け」を一切されないご婦人に出会ったことがあります。

私が「一緒にしましょう」と声かけすると、大きな声で怒鳴りちらし、お部屋に引きこもってしまいました。
そこで私は、再アセスメントをすることにしました。

すると、ご利用者はご自宅では、常駐の家事代行の方が全ての家事をしていたことがわかりました。
つまり、「洗濯物を畳むこと」や「お部屋の掃除・片付け」などの家事をする「当たり前」がその方にはなかったのです。
これこそが私とご利用者の「当たり前」の違いでした。私はもう少しでこのご利用者の方を「わがままな気難しいご利用者」と言うレッテルを貼ってしまうところでした。
慌てて、そのご利用者の価値観に寄り添った「生活リハビリ」メニューを構築したところ、スムーズに実践ができました。


いかがでしたでしょうか?

・ご利用者の方の価値観がどのようなものなのか
・自分との価値観とのギャップはどこなのか

上記2点をまずは、確認してみることが大切ですね。
この確認は、ご利用者のQOLの質を低下させないことに繋がるためとても重要です。

ご利用者の価値観を理解しないまま、こちらの価値観を押し付けてしまうと、介護職の価値観が優位に進んでしまいご利用者の気持ちに寄り添っていない、不愉快にさせてしまうケアになる可能性が生じます。

実はこの「価値観」は、お互いに近いものを感じ、共通点を見出せると「心の距離が近づく」場合もあります。「心の距離が近づく」ことで、本音を伝えやすくなる効果もあるのです。
どのような声かけが必要かどうか?に関しても。その点をヒントに考えてみてください。

自分の知らない価値観をご利用者は持っているのかも知れません

以前、研修を行った際に、受講者の皆さんに
「SNSのダイレクトメッセージの返信は、どのぐらいの時間内で返しますか?」と訊ねたことがありあす。
すると、1時間以内で返す方や1週間以内に返すという方がいらっしゃいました。
このようにSNSのダイレクトメッセージへの返信時間ひとつとっても、幅広い回答があり、人それぞれの考え方・価値観があることをつくづく実感しました。

ご利用者のことが理解しにくい、寄り添うのが難しいと感じた時は、一旦立ち止まりご利用者の価値観を想像していく必要が介護職員にはあるのではないでしょうか。

自分の知らない価値観をご利用者は持っているのかも知れませんね!

さいごに/心が近づく共通点をまずは探していくこと

生活環境や時代背景を要因とした介護職員の「当たり前の価値観」とご利用者の「当たり前の価値観」のギャップは、これから益々開きが出てくる事でしょう。

「大正・昭和・平成・令和」を生き抜くご利用者の方々の価値観は、時代背景からも推察しなくてはなりません。ご利用者を知る為に「対話」を大切にしていきましょう。
「対話」からご利用者らしい価値観を知ることができるはずです。心が近づく共通点をまずは探していくことをお勧めします。
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この記事のライター

・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表
・アモールファティスクール⻑

介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員
介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤

理論と経験に基づく「優しく丁寧に美しい介護」を理念に実践的な介護技術研修/コミュニケーション研修及び介護離職防止の為一般企業様向けに「介護セミナー」を実施しています。

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