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「かまってちゃん」な高齢者への対応は?介護現場でよくある声かけの盲点について専門家が解説します

「かまってちゃん」な高齢者への対応は?介護現場でよくある声かけの盲点について専門家が解説します

【回答者:後藤 晴紀】ご本人の困り事や不安をアセスメントしなおしてみましょう。「出来ることは利用者ご自身で」という声かけの盲点も解説します。


本日のお悩み

いわゆる「かまってちゃん」の高齢者への対応に悩んでいます。
ナースコールの頻度が高い、他の利用者さんとの会話を妨害してくるなど、どこまでどの程度付き合えば良いか分かりません。

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ご本人の困り事や不安をアセスメントしなおしてみましょう!!

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

ご質問ありがとうございます。

・依存心が強い
・ナースコールの頻度が多い
・いつも職員を頼ってしまう
そんな利用者さんについては、多くの介護職員が悩んでいるかもしれません。

特に他にやるべき業務がある時には、職員もご利用者もイライラしてしまい、お互いに良い精神状態にはなりませんよね。

まずは丁寧に再アセスメントを!

まずは、回答をズバリお伝えします。
そのご利用者さんのアセスメントをもう一度丁寧におこなってみましょう!

その際、特に大切なのは『ご本人の困りごとや、不安の解消をする』という視点を持っておくことです。
なぜなら、そのご利用者様が必要とするケアの量によって、必要な関わりの時間の長さも違ってくるからです。

必要な関わりの時間の長さとは?

例えば、『もっと私と関わってほしい』という困りごとがあったとして、そのご利用者さんにとって必要な時間を考えてみましょう。
ご利用者さん全員に対して平等に関わりたいと思っている介護職員さんは多く、一人だけに多くの時間を割くなんて…。という気持ちもあるかもしれません。

その気持ち自体はとても良いと思いますが、『ご利用者に必要な量のケアを提供する』という考え方に変えてみるとどうでしょうか?
その人にとって必要な、関わりの時間の長さはそれぞれですよね。
さらに、精神的に不安定な方に対しては、安定している方よりも優先度は高くなってきます。

精神的に不安定な利用者さんに対しては、こう考えてみても良いでしょう。
身体介護が必要なご利用者は、自立度が高い方よりも関わりの時間は長くなりますよね。
では精神的に不安を抱えている方のケアは?
当然同じように、関わりの時間を長く持つ必要があります。

まとめ:「困りごと・不安の解消」の視点を持つ

その方にとって必要な時間はどのくらいか?ということを念頭に置いて、ご本人の不安に思っている事・やってほしいこと・困りごとを丁寧にアセスメントしましょう。
すると、どのくらい関わればよいのかということも、ある程度把握できそうですね。

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ナースコールが多い利用者さんには、どう対応する?

そして、ナースコールが多い理由は、「不安だ、助けてほしい」という気持ちの大きさの表れです。
その不安が解消されてくれば、不安なことが少ない状態=ナースコールを押さなくても安心できる状態になるでしょう。
その安心感が、徐々にご本人の状態の変化として現れてきます。

ご利用者としっかり向き合って解決する課題だからこそ、これを解決するのは介護職員の腕の見せ所ですね。

全ての職員で、望ましい対応を検討・共有する

質問者さん一人で考えるのではなく、できるだけ多くの職員や他職種と共に考えてみても良いでしょう。

サービス担当者会議やケース会議で、『この議題で話し合いたい』と自ら申し出ても良いと思います。
質問者さんと同じ気持ちを持っている職員さんもいらっしゃると思いますし、もしかしたら話し合う中で、ご利用者さんの精神的不安が大きくなるような対応をしていたことが見つかるかもしれません。

全ての職員が、ご利用者にとって安心できる対応を共有・実現することで、ご利用者の精神状態も安定されてくると思いますよ!

「出来ることは利用者ご自身で」という声かけの盲点

加えて、一つアドバイスとして伝えさせて下さい。
その議論の中で、『できる事はご本人にやっていただこう』という話題になり
その対応として、『出来ることはご自身で行いましょうね』と声掛けをする。という解決策が出たとするならば、注意が必要です。

なぜなら、誰かを頼りたい時に、声をかけた人から『自分でやって』という言葉を返されると不安になりますよね。
その精神的な不安は、その後のご本人の精神状態を悪化させてしまう可能性もはらんでいます。

・職員の表情
・職員の声色 
・ご利用者の表情 
・ご利用者の体調 
・対応者とご利用者の信頼関係 
これらに注目せず、画一的な言葉掛けを行うことは、ご利用者を傷つけてしまう可能性もあります。
注意していきましょう!

最後に

職員側の『こうあるべきだ!』という固定概念を外して対応策を検討すると、同時に職員側が抱くイライラの解決策も出てくると思います。
どの程度ご利用者の要望に付き合うのか?という視点ではなく、『ご利用者の不安や困りごとを解決するためには?』という視点で議論を展開して下さいね!

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・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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