利用者さんへの声かけが上手くいかず悩んでいます
■本日のお悩み
自分なりに努力をして感情などが出ないように落ち着いて声かけをしているのですが…
上手にコミュニケーションをとるためのポイントがあれば教えてください。
■執筆者/専門家
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業を経験し、介護業界に9年携わる。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営。
努力していても怒られてしまうと、お辛いですね…。
質問者さんが上司やリーダーから意見をもらうとき、具体的にどういったところが課題なのか、などのフィードバックはありますか?
質問内容にある、「感情が出てしまう」ということなのでしょうか?
「声かけ」というのは、とても難しいです。
私も日々、頭を悩ませています。いまだに「あ、しまった…。もっと違う声をかければよかった。」と反省することもしばしばです。
まずコミュニケーションの基本を再確認しましょう!
まずはコミュニケーションにおける基本のポイントを再確認していきましょう。
2.利用者さんには敬語を使うようにしましょう
3.利用者さんと目線を合わせ、口調や声の大きさに注意しましょう
4.利用者さんの様子を日ごろからよく観察しましょう
■1.アセスメントをしっかり行いましょう
声かけに正解はなく、声をかける相手の状況や、そのときの環境によって適した声かけは異なってきます。
私は以前、100歳の誕生日を迎えられた方に対して「お誕生日おめでとうございます!!」と声をかけたら、ものすごく怒られた経験があります。その方は年齢のことを言われるのが嫌で、誕生日はおめでたいものではなかったのです。
これは極端な例ですが、その人がどんな人なのか、入所までの状況はどのような感じであったか、今どのような状況なのかなどというアセスメントを丁寧に行い、相手のニーズを把握することが重要になってきます。
■2.利用者さんには敬語を使うようにしましょう
お客様であるから敬語を使わなければならないというわけではなく、敬語を外してしまうと、線引きが難しくなり、言葉が乱れていってしまいます。その結果、ケアにも乱れが影響してしまうのです。
最初は丁寧に話していたはずでも、気づいたら慣れなどから敬語が曖昧になっていませんか。今一度、立ち止まり振り返ってみてください。
■3.利用者さんと目線を合わせ、口調や声の大きさに注意しましょう
たとえば、車いすの利用者さんとお話しをする際、忙しいと立ったまま会話をしてしまうことはありませんか。
こちらにとっては、忙しい中の1シーンであっても利用者さんからすると上から話しかけられ、威圧的に感じてしまう場合もあります。利用者さんとコミュニケーションをとる際は、必ず目線をあわせて話しかけるようにしましょう。
また、口調や声の大きさも重要です。年齢と共に、聴力の低下がある利用者さんもいると思います。その方に普段より大きな声で声をかけることはよいのですが、それが過剰になると周囲の利用者さんから見て口調が強く感じてしまったり、威圧的に感じてしまったりします。
声をかける際は、相手のことはもちろん、周囲の状況も考慮するようにしましょう。
■4.利用者さんの様子を日ごろからよく観察しましょう
たとえば、頭が痛いとき。ゆっくり休みたいのにずっと声をかけられると正直「しんどい」と感じてしまうと思います。一方で、「体調が悪いのですか?」などと声をかけられて嬉しいと感じる場合もあると思います。これは利用者さんも同じです。
利用者さんの気持ちを100%汲み取ることは難しいと思いますが、利用者さんの様子を観察し、その状況に適切な声かけを推測することはできると思います。
ー時には、行動の背景事情を考える必要がある場合もある
転倒の危険性を防ぐためには「なぜその人は立ち上がりたいのか?」を探る必要があります。
たとえば、トイレに行きたいのか、散歩がしたいのか、はたまた座りっぱなしでお尻が痛いのか…など何かしらの背景事情があるはずです。
ご本人に、「どうされましたか?」と聞いてみて、求めていることが分かれば、すぐ対応できるのですが、言葉で返ってこないこともあるでしょうし、適切な言葉が見つからない方もいらっしゃるでしょう。
だからこそ私たちが観察し、推測をして、そのときに適するであろう声かけを考える必要があるのです。
ただ、ここで一生懸命考えた声かけでも、相手が求めていることではない場合も多々あります。状況によっては少し時間を置いたり、対応者を変えたりすることが必要な場面もありますね。
利用者さんの状況別!声かけのOK例とNG例
ここからは状況に応じて適切な声かけの例(OK例)と避けた方がよい声かけの例(NG例)を紹介していきます。
■認知症の利用者さんへの声かけ
■ポイントと注意点
また、見当識障害により時間の感覚が薄れてしまう方も多いので、挨拶の際は時間がイメージできるように「おはようございます」「こんばんは」を意識的にお伝えしたり、施設等だと、生活の場所なので職員同士の「お疲れさまです」は利用者さんの前では使わないなどをルールにしているところもあります。
ー適切な声かけの例(OK例)
と提案する形での言葉かけを行うことで、相手の意思を確認することができますし、たとえ言葉で意思を表現するのが難しい方であっても、表情や仕草から読み取れるものもあります。
ー避けた方がよい声かけの例(NG例)
といった否定的な声をかけてしまうと、不快な感情が残ってしまいます。
また、「○○した方がいいですよ」など指示を出すような言い方も、一方的に介助者の決めたことに従ってもらうような印象を与えることがあります。
■視覚障害のある利用者さんへの声かけ
■ポイントと注意点
一緒に歩いているときに「これから上りの坂道です」と、いちいち言わなくても感覚で分かるから不要という方もいれば、言ってもらった方が安心、という方もいます。何をどこまで説明するかは介助者の考えではなく利用者さんの考えに沿うことが大切です。
また、高齢期になってから視覚に障害をもった場合、見えないことに対しての不安が大きい方もいらっしゃるため、こまめに「来ましたよ」「これから○○しますね」と声をかけたり、細かいことを説明したほうが安心される方が多いと思います。
ー適切な声かけの例(OK例)
食事の際に「○時の方向に○○があります」とお伝えしたり、「右手の近くに○○があります」「トイレの流すレバーは座って左手を伸ばした壁側についています」といったように、誰が聞いてもわかりやすいことがポイントです。
ー避けた方がよい声かけの例(NG例)
■拒否のある利用者さんへの声かけ
■ポイントと注意点
とにかく目をみて、天気でも、ニュースの話でもいいので話しかけ、好きなことを探る。そして好きなことの話をする。「気にかけてますよ」というメッセージを態度で示す。そのような工夫の繰り返しでプラスのイメージを持ってもらう必要があります。
どうしても介助者側が苦手意識を持つことも多いですが、そういった感情はなぜか相手に伝わってしまいます。利用者さんの立場から考えれば、いきなり自分よりもはるかに若い人にあれしましょう、これしましょうと言われたら、それだけでうんざりしてしまう気持ちもわかりますよね。
ー適切な声かけの例(OK例)
といったようにプラスのイメージの言葉に言い換えることができ、これをリフレーミングと言います。 あくまでも拒否というのは介助者側からみた現象であって、利用者さんからみたら当然の防御。リフレーミングを活用して、声のかけ方を考えてみるのも策かと思います。
ー避けた方がよい声かけの例(NG例)
最後に:相手が求めている声かけを考えてみましょう!
無意識にできているものもあれば、長く働くなかで忘れてしまっているものもあったはずです。しかし、繰り返しにはなりますが、ここで紹介したものが全て正解とは限りません。
では、私たち介護職ができることは何でしょうか。それは「考えること」です。利用者さんが求める声かけや対応が何なのか、日々思考し、想像していくことが大切です。
ぜひ、声をかける前に「利用者さんが求めている声かけを考える」という習慣をつけてみてください。
■マンガでまとめ♪
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
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社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員