介護の仕事を体験したい!
■大起エンゼルヘルプ 小規模多機能型居宅介護編
ささえるラボを運営しているのに、介護の仕事を近くで見たことも、体験したこともない…。
そう思ったことから始まった、株式会社大起エンゼルヘルプ様での仕事体験。
今回は小規模多機能型居宅介護での2日間についてレポートします!
小規模多機能型居宅介護とは?
小規模多機能型居宅介護は2006年に誕生した地域密着型サービスのひとつです。
通い、短期間の宿泊、職員の自宅への訪問など、利用者さんの生活を同一の職員が切れ目なくささえます。小規模多機能ホーム方南では25名の登録があり、すべての方に認知症の症状があります。(取材当時)
エンゼルヘルプ方南のこだわり
利用者さんへご挨拶の前に、主任のMさんが施設内を案内してくださいました。
「この施設には基本的に手すりがありません。それはできるだけご自宅に近い環境で、利用者さんに過ごしていただくためです。手すりをつけることは簡単で便利ですが、その反面、手すりへの衝突のリスクなども高くなります。」
「施設内は同じ木目調で、どのフロアも似たようなデザインで作られています。利用者さんの中には認知症の方も多くいらっしゃいます。宿泊をするときも、入浴するときも、デイサービスを利用するときも、同じ建物にいるという安心を感じていただくためなんです。」
デイサービス同様、「利用者さんの生活を維持するためにどうするか?」を大切にするエンゼルイズムを感じ取ることができました。
小規模のリビングへ!
さっそくリビングへお邪魔すると、テーブルの上には鬼のお面と恵方巻のチラシが!
この日は節分で、利用者さんが交代で鬼のお面をつけて楽しんでいらっしゃいました。
「関東で恵方巻が始まったのは本当に最近ですよね、◯◯さんは関西だから昔からやってたんですか?」
「せっかくだし今日は巻き寿司食べたいですよね。あ!◯◯さんはお寿司屋さんだったから恵方巻も得意なんじゃないですか?材料買ってきてここで作りますか?全員分は大変かあ~!」
Mさんが声掛けをするとリビングの雰囲気が一瞬で明るくなります。利用者さんのパーソナリティを完璧に把握していて、話を盛り上げる技術がすごい。
この日のメニューは恵方巻きとすまし汁に決定しました!
みんなで同じものを食べるために
利用者さん数人とお寿司屋さんへ買い物に行き、みんなで恵方巻きを切り分けます。
切らずにかぶりついたほうがいいのかもしれないけど…このほうが食べやすいですもんね笑
「豆は歳の数だけ食べるって言うけど、私たちの歳だとそれだけでお腹いっぱいになっちゃうわよね。」
と豆を取り分けながら笑い合う利用者さん。本当に家にいるようなゆったりした空気の中、食後のお茶を楽しみます。
硬いものが苦手な方には少しお湯を通した節分豆を提供するなど、職員さんの工夫によってみなさん同じものを召し上がります。
硬いものが食べられない→提供しない のではなく
硬いものが食べられない→どうしたら食べられるようになるのか と考え、それを実践することで食べる楽しみを最大限感じていただくための工夫と努力がありました。
利用者さんに、あなたは若いんだからこのくらいじゃない?と私の分までよそっていただきました。
浸透している「理想の介護」
私も職員の皆さんと同じ休憩室でお昼ごはんをいただきます。
「大起エンゼルヘルプは自立支援型の施設なんだけど、それを本当に実践しているところは日本にはまだ少ないんですよ。」
「どこまで手伝うか、はじめは判断が難しいよね。やりすぎると利用者さんのためにならないし、でも限られた時間でいろいろなことをやっていかないといけないからね。」
そう話してくださったのは、派遣の看護師さん。特定の施設に所属しているわけではない雇用形態の職員さんにも大起エンゼルヘルプが理想とする考え方が浸透しているからこそ「生活介護」が実践できるのですね。
大浴場!そしてちょっと嬉しかったこと
大起エンゼルヘルプには、高級温泉顔負けの大浴場があります!
入浴介助についていくことは遠慮していたのですが、利用者さんと職員のOさんに許可をいただき更衣室までご一緒できることになりました。
入浴が終わったあと、片付けをしながらOさんが
「あの方、本当はお風呂が苦手なんです。日によってかなり時間がかかってしまうこともあるし、女性が2人で介助に入ると大体うまくいかないんです。でも今日はとてもスムーズでしたね!」
う…うれしい…
実はこの仕事体験を始めてから、利用者さんとうまくコミュニケーションが取れているのか分からないし、頭では分かっていても手伝いすぎない介護を実践することがとても難しく、職員の方に迷惑ばかりかけていてこっそり落ち込んでいたのです。
でもこのときばかりは利用者さんに少しだけ受け入れていただけたような気がして、Oさんの一言は思わず涙ぐんでしまうほど嬉しいものとなりました。
「認知症になると確かに分からなくなることも増えるけど、その分 五感というか目に見えないものを敏感に感じ取れるようになるんじゃないかなと思うんですよね。人がどんなことを考えて自分と接しているか、そういうことが利用者さんにはきっと分かるんだろうなあ。」
生活介護の難しさ
少し時間をいただき、主任のMさん、責任者のHさんにお話を伺いました。
-買い物に行ったり、調理をしたり、利用者さんに任せるということはリスクも伴うのですね。
Mさん:買い物に行けば事故に遭うリスク、調理をすれば怪我をするリスクが発生します。極端に言うと、施設の中でじっとしてもらっていればそんなリスクは発生しません。
でも、そこはプロである我々の力でサポートします。
例えば利用者さんがお手洗いに立ったとき、私たちはその方に付いて行ったり近くへ行ったりしません。もちろんそれぞれの症状を考慮して、問題ないと判断した場合は少し離れた位置からお手洗いまでの導線を確認し、見守ります。何も知らない方から見れば職員が何もやっていないように見えるでしょう。我々の頭の中では、その方の症状や能力を考えること、想定されるリスクを洗い出すこと、周りを見て危険がないか確認することを瞬時に行っています。何もやっていないようで、実はとても頭を使っているんです。
-そのように細やかなところまで気を配りながら、通所から訪問まですべてをカバーするということは職員さんに求められるスキルがとても高度ですよね。
Hさん:確かにそうですね。でも小規模多機能型居宅介護で仕事ができるようになれば、逆にどこでも通用する力が付きます。
利用者側にとっては、どれだけサービスを利用しても定額であること、固定の職員がチームでケアをできるため慣れた人に介護を任せるという安心感があることが小規模多機能型居宅介護のメリットです。そしてやろうと思えば我々はどこまでもサービスを提供できます。
でも職員にも限界があるので、実際はすべてのリクエストに応えられるわけではありません。まずは職員が無理することなく、力を最大限に発揮できるように環境を整えることが責任者の役目です。
ご家族に事情を説明したり、時には宿泊等のサービスを譲り合っていただいたり、みんなで一緒にお一人おひとりを見守るというような感覚です。
-大起エンゼルヘルプさんの、日常生活を支える介護の難しさを実感しています…。Hさんはなぜ働く場として大起エンゼルヘルプを選んだのですか?印象に残っているエピソードなどはありますか?
Hさん:実は私が介護の勉強を始めたのは50歳手前だったんですよ!学校に通っているとき、ひょんなことから和田行男の講演会に参加しました。特別養護老人ホームで少し勤めたあとに和田さんから手紙をもらったのがきっかけで、この会社に入社しました。
3年前、お医者様からあと3ヶ月だろうと診断された、病院から療養型病院へ移る予定の利用者さんを引き取ってきたことがあるんです。
その方は食べることがとても好きで、療養型に移ってしまったらその楽しみもなくなってしまうなと考えました。そこでご家族、職員と相談して、もちろんリスクも承知していただいた上で我々がケアをすることにしました。その結果、インフルエンザにかかって亡くなる今年の1月までの3年間もの間、好きなものを食べ、行動を過度に制限されることなくその方らしい生活を維持することができたのではないかと思います。
これは小規模多機能型居宅介護だから出来たと今でも思っています。
大起エンゼルヘルプ 採用ご担当 武藤様からのメッセージ
最後に、株式会社大起エンゼルヘルプの武藤さまからメッセージをいただきました!
「介護の仕事は大変だ」とよく言われますが、私からみると、どこの業界、仕事も大変だと思います。でも何故、「介護の仕事は大変だ」と言われるのか。それは身内の介護等により、介護は身近な存在である為、知っていることだから大変だと思われると感じます。当たり前ですが、身内の介護と仕事の介護は大きく違います。身内の介護は時間が決まってなく、給与もでず、むしろ支出が多くなります。仕事の介護は始業時間、終業時間が決まっており、給与がでます。身内の介護を助けてあげるのがプロの介護です。
大起エンゼルヘルプは無資格者、未経験者も積極的に採用しています。利用者さんからみたら、資格があろうとなかろうと関係ありません。だから50代、60代の無資格者、未経験者でも社員として入社している方が多いです。もちろん、大起エンゼルヘルプならではの手厚い研修があるから安心して働けます。
人に社会に自分自身に誇れる仕事を大起エンゼルヘルプで実践して頂き、そして利用者さんや利用者さんの家族から「ありがとう」と言われて満足せず、その先の「さすがだね」と言われるように一緒に働けたらと思っております。
ささえるラボ編集担当のTが興味のあることを深堀りしたり、体験したり、成長していくコラムを連載していきます。