介護者の息抜きを行う支援「レスパイトケア」を徹底解説!
厚生労働省によると、65歳以上の高齢者人口は令和24年まで増加し続けると推計されています。
一方、15歳~64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。
高齢者の増加に伴って、介護が必要な人もさらに増加すると予想される中、介護する側(親族や家族など)の休息を目的とした「レスパイトケア」が注目されています。
この記事では、レスパイトケアについて基礎的な部分から説明し、最後に介護職の視点で気を付けるべきことについても解説していきます。
執筆者
レスパイトケアとは?
■長期間続く介護の負担を和らげる支援
介護をしている介護者に、一時的な休息や息抜きを行う支援のことを、レスパイトケアと呼びます。
介護をするためには、介護者の心身の健康が不可欠です。
身体的な負担も多く、自分自身の健康の悩みや精神的、経済的に悩む介護者も少なくありません。
■介護職とのかかわりが増え、助言も受けられる
介護の負担感は、急に大きくなるというよりも、さまざまなことが少しずつ蓄積されることが多く、長期間にわたる介護生活を続けるためには特に、レスパイトケアが重要となってきます。
レスパイトケアを受けることで、介護職とのかかわりも増え、助言を受ける機会も増えます。
レスパイトケアの目的
レスパイト(respite)とは、小休止や延期などを意味する英語です。
レスパイトケアは、介護者が一時的にケアを休息することによって心身の疲労を回復し、リフレッシュするための支援です。そうすることで、介護者の支援を受けながらの在宅生活を継続していくことが目的となります。
レスパイトケアで得られる効果
介護者にも、身体的、精神的なケアが必要です。
介護から少し離れる時間を作ることで、介護者自身のケアに時間を使うことができます。
また、レスパイトケアを受ける事業所があるということは、不安や困りごとを相談する窓口が増えたことにもなります。
普段の思いをため込まず話せる相手がいることは、気持ちを楽にするためにも重要です。
利用者自身にとっても、ほとんど介護者としかかかわる機会のない生活から外に出ることで、社会性を保つことや他者との交流を持つことなど適度な刺激や変化となります。
レスパイトケアが行われる介護施設の種類
■①通所介護(デイサービス)
日中の時間、介護者の一時的な休息に役立ちます。
どの地域にも多くあり、特別養護老人ホームや短期入所生活介護(ショートステイ)等と併設している事業所もあります。
■②認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
認知症と診断された人のみが利用でき、通常のデイサービスより小規模となっています。
認知症ケアに厚く、安心する環境づくりがされています。
■③小規模多機能型居宅介護
「訪問(ホームヘルプサービス)」「通い(デイサービス)」「泊り(ショートステイ)」のサービスを一体的に組み合わせて使うことができ、柔軟に対応が可能なことから精神的なケアとしても効果が期待できます。
■④短期入所介護・短期入所療養介護(ショートステイ)
まとまった期間利用することができるため、レスパイトケアとして大きな効果が期待できます。
介護職の視点で、利用者やご家族に対して配慮することとは?
■環境が変わることでの混乱に注意
利用者の方、特に認知症のある方にとって、環境が急に変わることは混乱を発生させ、時にせん妄や妄想などの精神症状が起こることがあります。
利用の際には、本人の自宅での生活リズム・食事量・排泄のリズムなどをよく把握し、できるだけそれを継続することが大切です。
また、自宅へ帰ってから混乱することもあるので、利用後の様子にも注意が必要です。
■理想論だけを述べない
介護者から相談を受けた際は、まずは十分に話を聞きます。
何に困っていて、どんな気持ちなのかを聴き、すぐに助言をするのではなく介護者が望ましい生活をするためにどうしていくことがよいのかを一緒に考えます。
その際、つい介護の理想論を伝えてしまいたくなるかもしれませんが、介護者が知りたいのは理想ではなくどのように今の状況を回避すればよいのかという現実的な生活の工夫であることが多いです。
そうした気持ちを理解し、具体的で実用的な、試すことができる助言を心がけます。
■介護者を気遣う言葉がけ
介護者が心身ともに健康でなければ、在宅での介護は成り立ちません。
介護者への声かけには、負担感を和らげる役割もあります。家族の体調や睡眠時間、健康についてさりげなく聞き取り、表情や様子から、今困っていることはないか、なにか不安なことはないかを察するようにします。
介護者は、申し訳ないという気持ちを感じ要望を言い難く遠慮していたり、サービスを利用している間も不安を感じたりしていることがあります。
積極的にコミュニケーションをとることで、不安の解消にもつながります。
レスパイトケアの課題
■①急なサービス利用に対応しづらい
介護保険サービスを利用する場合、サービスを利用するためには事業所の調整や契約、担当者会議等の手順を踏む流れとなっています。
そのため、家族の急な体調不良や突発的なサービス利用については対応しづらい現状があります。
ケアマネジャーが介護者についても適切にアセスメントを行い、計画的に利用する必要があります。
■②介護者の訴えがあるまで気づきにくい
介護者の中には、日々の介護の中で、自分の時間がなくてもそれを当たり前と感じ気づくと自分を追い込んでいる人や、自分でやらなくてはいけないという強い責任感で疲弊してしまう人が少なくありません。
ケアマネジャーの訪問で直接会えなかったり、本人の様子だけを話して介護者についてはあまり話せなかったり、ということが重なり、1人で負担や悩みを抱え込んでしまうこともあります。
かかわるサービス事業者それぞれが、介護者の様子も気にかけ、介護への負担感を大きく感じているようであればレスパイトケアの促しをするため、ケアマネジャーに相談が必要です。
■③利用者主体のサービスを提供する
レスパイトケアは介護者の休息を目的としてはいるものの、ケアの主体はあくまでも利用者ご本人です。
レスパイトケアのためのサービス利用の場合、本人は望んでいないが、介護者の事情でサービスを利用せざるを得ない、というケースがほとんどではないでしょうか。
しかし視点を変えると、自宅の外へ出て介護者以外の人とかかわるという機会は、社会生活を送る上で利用者にとってもプラスとなることが多いです。サービスの利用が介護者にとってメリットがあるだけではなく、利用者さん自らが利用したい、利用してよかった、と思うようなサービスの提供が課題であると思います。
ささえるラボ編集部です。
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