「仕事と介護の両立」を考えることがお互いの幸せに繋がる
■本日のお悩み
一方、ここで仕事を辞めてしまうことに対して不安もあります。介護と仕事の両立について工夫すべきことなどがあれば教えてください。
■執筆者/専門家
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。
介護と仕事の両立のポイントや支援策、そして最近の国の施策に基づいて、自身の体験談も踏まえ、回答とさせていただければと思います。少しでもご質問者様の一助になれば幸いです。
■筆者の「介護離職」経験から
ー祖父の介護が必要になった20代、先のことは考えず在宅介護に踏み込んだ
家族の介護が必要になったのは、20代の頃でした。介護職をしていたとき、祖父の介護が必要になり、「介護離職」をして他県にある実家に戻ったのです。「仕方なく…」というわけではなく、祖父が大好きで大切だったので「私が介護する!それ以外の選択肢はない」という強い思いで在宅介護を始めました。
その頃は「介護離職」という言葉もありませんでしたし、同じような状況の人もあまり居なかった(目につかなかっただけかもしれません)ので、何かを参考にしたり、相談するなどもせずに決めたことでした。今考えると非常に視野が狭くなっていたと思います。一切、自分のキャリアや祖父の介護の後の人生のことは考えていませんでしたから…。
ー1人で抱え込む介護の結果、うつ状態に
介護職だった自分なら、ちゃんと介護できるだろう、という想いのみで臨み、何とか自宅で看取りはできたものの、満足する介護ができず後悔が残ったのです。
ー残ったのは、介護の質や自身のキャリアに関する後悔
まあ、結論として自分の「介護したい」という気持ちは果たせましたが、看取りの後、新しいキャリアを考え、仕事に戻るまでには時間もかかりましたし、紆余曲折しました。
これはまだ20代だったから「時間がかかった」だけで済んでいるのではないかとも思っています。
ー「満足できる介護」は難しくても、「介護と仕事の両立」を考えることは大切
「家族の介護」という、想定外の偶然の出来事が起きたとき、どう対処するのかは個人の価値観によるものだと思います。しかし、自分の仕事を含めた人生、キャリアを考えると、「仕事と介護を両立して考えていくこと」を模索することが、結果お互いの幸せにもつながるのではないかなと今は思っています。
介護と仕事の両立について考える
■介護をしつつ、仕事を続ける意義
経済的な安定はもちろん心の安定につながりますし、社会とのつながりが保たれることも大きな要素です。
仕事を通じて得られる社会的役割の維持は、介護者自身のメンタルヘルスにも良い影響を与えますし、介護に追われる中でも、仕事を続けることで自分の時間を確保する、という意識と習慣が保たれることで、心のバランスを保つことにもつながります。
不躾な言葉になりますが、介護は一度はじまると、いつ終わりが来るかは予想ができません。目安となる介護が必要になるであろう年数(平均寿命から健康寿命をひいた年数)は、日本では10年以上となります。※
もしも10年以上介護生活が続いた場合、経済的、肉体的、精神的な負担が増えることはご想像の通りかと思います。そうした状況を、家族は本当に望んでいるか、という未来からの視点でも、考えていただくことをおすすめします。
出典:厚生労働省 「平均寿命と健康寿命の推移」
■日本における介護と仕事の両立状況
また、同調査によると、介護を理由に毎年約10万人が離職しているとされ、特に女性の離職率が高いことが問題となっています。このことから、現在の日本では多くの人が介護と仕事の両立に直面していることがわかりますが、両立の難しさもまた現実です。さらに、制度の整備や利用促進が進められているものの、まだ十分に活用されていないという現状もあります。
出典:総務省 令和4年就業構造基本調査
介護と仕事の両立を行うためにできること
■介護と仕事の両立を支援する国の施策
2.介護休暇制度
3.短時間勤務制度
4.テレワークの推進
1.介護保険制度
2.介護休暇制度
3.短時間勤務制度
4.テレワークの推進
自宅で仕事ができる環境が整えば、介護と仕事の両立が行いやすくなります。テレワークは特に、通勤時間を介護に充てることができるため、介護サービスとのスケジュールが組みやすい利点があります。
ご状況に合ったものを活用することで、仕事を続けながら介護に対応できる可能性が高まります。
■職場とのコミュニケーション
自分が置かれている状況や、必要なサポートについて上司や人事担当者に相談しておくことは可能そうでしょうか?多くの企業は、社員が直面する介護の問題に対して柔軟に対応する姿勢を持っています。遠慮せずに、正直な気持ちを伝えることが、両立の第一歩です。
■介護サービスの利用
これにより、大きく負担を軽くすることができます。また、介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターなどに相談し、必要なサービスを受けるための手続きをサポートしてもらいましょう。一人で抱え込むよりも、プロの力を借りてチームで行えることが、介護される側にとっても良い場合があります。
■家族や周囲の協力
兄弟姉妹や親戚、あるいは近隣の友人に相談し、サポートをお願いすることも検討しても良いと思います。家族会議を開き、介護の役割分担や今後の方針について話し合うことも重要です。これにより、自分一人に負担が集中せず、適切な支援を受けることができます。
■介護者自身の健康管理
心身ともに健康でなければ、介護を続けることは困難になります。また、必要に応じてカウンセリングやサポートグループに参加してみるなども、ストレスを軽くすることにつながります。
どうかご自身のケアを蔑ろにはしないでください。
最後に:適切なケアや制度を活用し、自分らしい介護をおこないましょう!
介護と仕事の両立は決して簡単に進むことではないかもしれませんが、適切な支援や制度を活用し、職場や家族との協力を得ることで、両立していくことは可能です。何よりも大切なのは、自分らしく生きるための自由を持ちながら、介護者自身が健康であり続けることです。
まずは、ご自身の状況と優先順位を見極める時間を取られてみてください。
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社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士