第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(障害の理解)

第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(障害の理解)

第35回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第35回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(障害の理解)

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問題1

ストレングス(strength)の視点に基づく利用者支援の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.個人の特性や強さを見つけて、それを生かす支援を行うこと。
2.日常生活の条件をできるだけ、障害のない人と同じにすること。
3.全人間的復権を目標とすること。
4.権利を代弁・擁護して、権利の実現を支援すること。
5.抑圧された権利や能力を取り戻して、力をつけること。

解答

1.個人の特性や強さを見つけて、それを生かす支援を行うこと。

解説

1.(○)ストレングス(strength)に関する説明です。個人の特性、本来持っている力や強さ、才能などの「個人のストレングス」や、住んでいる地域などの「環境のストレングス」に着目して支援を行います。ストレングスはエンパワメントのためにも重要な要素となります。
2.(×)ノーマライゼーション(normalization)に関する説明です。
3.(×)リハビリテーション(rehabilitation)に関する説明です。
4.(×)アドボカシー(advocacy)に関する説明です。
5.(×)エンパワメント(empowerment)に関する説明です。

問題2

Eさん(38歳、男性)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症し、病院に入院していた。退院時に、右片麻痺(みぎかたまひ)と言語障害があったため、身体障害者手帳2級の交付を受けた。現在、Eさんと家族の希望によって、自宅で生活しているが、少しずつ生活に支障が出てきている。Eさんの今後の生活を支えるために、障害福祉サービスの利用を前提に多職種連携による支援が行われることになった。
Eさんに関わる関係者が果たす役割として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.介護支援専門員(ケアマネジャー)が、介護サービス計画を作成する。
2.医師が、要介護認定を受けるための意見書を作成する。
3.基幹相談支援センターの職員が、障害福祉計画を立てる。
4.地域包括支援センターの職員が、認定調査を行う。
5.相談支援専門員が、サービス担当者会議を開催する。

解答

5.相談支援専門員が、サービス担当者会議を開催する。

解説

1.(×)介護支援専門員(ケアマネジャー)が介護サービス計画を作成するのは、介護保険サービスを利用する場合です。障害福祉サービスの利用においては、相談支援専門員がサービス等利用計画を作成します。
2.(×)医師は、障害支援区分の認定を受けるための意見書を作成します。
3.(×)障害福祉計画を立てるのは、都道府県および市町村です。
4.(×)障害支援区分認定調査を実施するのは、市町村職員や相談支援専門員などです。
5.(○)相談支援専門員がサービス等利用計画を作成する目的でサービス担当者会議を開催し、多職種連携による支援につなげることが適切です。

問題3

Cさん(3歳)は、24時間の人工呼吸器管理、栄養管理と体温管理が必要であり、母親(32歳)が生活全般を支えている。Cさんの母親は、「発達支援やショートステイを活用したいのに、市内に事業所がない。ほかにも困っている家族がいる」とD相談支援専門員に伝えた。
D相談支援専門員が、課題の解決に向けて市(自立支援)協議会に働きかけたところ、市内に該当する事業所がないことが明らかになった。
この事例で、地域におけるサービスの不足を解決するために、市(自立支援)協議会に期待される機能・役割として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.困難な事例や資源不足についての情報の発信
2.権利擁護に関する取り組みの展開
3.地域の社会資源の開発
4.構成員の資質向上
5.基幹相談支援センターの運営評価

解答

3.地域の社会資源の開発

解説

市(自立支援)協議会には、情報機能、調整機能、開発機能、教育機能、権利擁護機能、評価機能という6つの機能があります。
1.(×)困難な事例や資源不足についての情報の発信は、情報機能に該当します。
2.(×)権利擁護に関する取り組みの展開は、権利擁護機能に該当します。
3.(○)地域の社会資源の開発は、開発機能に該当します。地域におけるサービスの不足を解決するための機能として最も適切です。
4.(×)構成員の資質向上は、教育機能に該当します。
5.(×)基幹相談支援センターの運営評価は、評価機能に該当します。

問題4

1960年代のアメリカにおける自立生活運動(IL運動)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.障害があっても障害のない人々と同じ生活を送る。
2.一度失った地位、名誉、特権などを回復する。
3.自分で意思決定をして生活する。
4.医療職が機能回復訓練を行う。
5.障害者の社会への完全参加と平等を促進する。

解答

3.自分で意思決定をして生活する。

解説

1.(×)ノーマライゼーションに関する説明です。
2.(×)全人権的復権(リハビリテーション)に関する説明です。
3.(○)自立生活運動(IL運動)は、重度身体障害を抱える米国の学生が、環境上の理由から大学の学生寮に入れなかったことに対して、抗議運動を行ったことが契機となって始まりました。障害者が自立的な生活を送るために必要な社会体制や意識変革を求める社会運動であり、自己決定の尊重が主張されています。
4.(×)機能訓練指導員によるリハビリテーションに関する説明です。
5.(×)国際障害者年(1981年)のテーマとされました。

問題5

Aさん(60歳、男性)は、脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)のため、物をつかもうとすると手が震え、起立時や歩行時に身体がふらつき、ろれつが回らないため発語が不明瞭である。
次のうち、Aさんの現在の症状に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.運動麻痺(うんどうまひ)
2.運動失調
3.関節拘縮
4.筋萎縮
5.筋固縮

解答

2.運動失調

解説

1.(×)運動麻痺は、筋肉を正しく動かすことができない状態であり、主に大脳の障害により出現します。
2.(○)運動失調は、運動に関与する筋肉の調節機能が失われ、身体をスムーズに動かすことが困難になった状態です。脊髄小脳変性症では、歩行時のふらつき、手の震え、口や舌がもつれて話しづらいなど、小脳の障害による運動失調をきたします。
3.(×)関節拘縮は、傷病などが原因で関節を動かす機会が減り、関節が硬くなって動きが制限されている状態です。
4.(×)筋萎縮は、筋線維が細くなって筋力が低下した状態です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の主症状となります。
5.(×)筋固縮は、筋肉がこわばって力が抜けず、動作をスムーズに行うことが困難になった状態です。パーキンソン病の四大症状の一つとなります。

問題6

学習障害の特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.読む・書く・計算するなどの習得に困難がある。
2.注意力が欠如している。
3.じっとしているのが難しい。
4.脳の機能に障害はない。
5.親のしつけ方や愛情不足によるものである。

解答

1.読む・書く・計算するなどの習得に困難がある。

解説

1.(○)学習障害(学習症)は、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するといった基礎的能力のうち、1つ以上の習得に困難が生じている状態です。
2.(×)注意力の欠如は、注意欠如多動症(ADHD)にみられる特徴の一つです。
3.(×)じっとしているのが難しいのは、注意欠如多動症にみられる特徴の一つです。
4.(×)原因は完全には解明されていませんが、脳機能の一部に障害があると考えられています。
5.(×)学習障害は発達障害の一種であり、脳機能の障害であるとされています。親のしつけ方や愛情不足などの環境要因は直接の原因とはなりません。

問題7

「障害者虐待防止法」における、障害者に対する著しい暴言が当てはまる障害者虐待の類型として、最も適切なものを1つ選びなさい。

(注)「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。

1.身体的虐待
2.放棄・放置
3.性的虐待
4.心理的虐待
5.経済的虐待

解答

4.心理的虐待

解説

1.(×)身体的虐待には、たたく、殴る、蹴るなどの暴行や、正当な理由のない身体拘束などが該当します。
2.(×)放棄・放置(ネグレクト)には、食事を与えない、入浴させない、必要な医療やサービスを受けさせないなどの行為が該当します。
3.(×)性的虐待には、性的な行為の強要や、一方的にわいせつな言葉を聞かせたり、映像を見せたりすることなどが該当します。
4.(○)著しい暴言や拒絶的な対応により精神的苦痛を与えることは、心理的虐待に該当します。
5.(×)経済的虐待には、財産の不当な処分や、財産上の利益を不当に得ることなどが該当します。

問題8

Bさん(21歳、男性)は、統合失調症(schizophrenia)を発症し、継続した内服によって幻覚や妄想などの症状は改善しているが、意欲や自発性が低下して引きこもりがちである。現在、Bさんは、外来に通院しながら自宅で生活していて、就労を考えるようになってきた。
介護福祉職が就労に向けて支援するにあたり留意すべきこととして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.あいまいな言葉で説明する。
2.代理で手続きを進める。
3.介護福祉職が正しいと考える支援を行う。
4.Bさんに意欲をもつように強く指示する。
5.Bさん自身が物事を決め、実行できるように関わる。

解答

5.Bさん自身が物事を決め、実行できるように関わる。

解説

1.(×)統合失調症では理解力や問題解決能力が低下することから、理解しやすい言葉や方法で説明します。
2.(×)Bさんができることや決められることは、できるだけ本人が手続きする方向で支援します。
3.(×)介護福祉職の意向を一方的に押し付けるのではなく、本人が意思決定できるよう情報提供などの支援を行います。
4.(×)意欲や自発性が低下しているのは統合失調症の陰性症状であり、強く指示することは不適切です。
5.(○)本人の自主性を尊重し、力を最大限に生かして自己決定できるよう関わります。

問題9

上田敏の障害受容のモデルにおける受容期の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.受傷直後である。
2.障害の状態を否認する。
3.リハビリテーションによって機能回復に取り組む。
4.障害のため何もできないと捉える。
5.障害に対する価値観を転換し、積極的な生活態度になる。

解答

5.障害に対する価値観を転換し、積極的な生活態度になる。

解説

1.(×)受傷直後は、ショック期となります。
2.(×)障害の状態を否認するのは、否認期です。
3.(×)リハビリテーションによって機能回復に取り組むのは、努力期です。
4.(×)障害のため何もできないと捉えるのは、混乱期です。
5.(○)受容期では、障害に対する価値観を転換し、積極的な生活態度になります。障害に適応する最終段階であり、価値転換を行って残された機能の活用を模索するなど、人生を前向きに捉えるようになります。

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