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【事例あり】ご利用者と地域・社会との架け橋となる介護の仕事

【事例あり】ご利用者と地域・社会との架け橋となる介護の仕事

高齢化、人口減少の日本において重要となる「地域と高齢者・障害者を結ぶ取り組み」に注目し、ご紹介します。 茨城県介護福祉士会 副会長、特別養護老人ホームもくせい 施設長でいらっしゃる伊藤先生の講演内容をささえるラボでもご紹介いたします。【情報提供/伊藤 浩一】


【事例あり】ご利用者と地域・社会との架け橋となる介護の仕事

2025年問題、2040年問題など、日本の高齢化と人口減少の進行は重要な社会問題となっています。
それにともない高齢者や障害者の方へ提供するサービスのニーズも多様化しています。
核家族化や単身でお住まいの高齢者も増えており、その支援はより一層、福祉の介入による「人と社会」や「人と人」を繋げる取り組みやアプローチが重要となっています。
認知症があっても、高齢であっても、障害があっても共に地域で生きていける社会を作っていく必要があります。

地域共生社会の実現に向けて、介護福祉士や社会福祉士はじめ、各専門職に求められる専門性や業務内容にも変化があります。今回は、新卒学生向けに伊藤先生にご講演いただいた本テーマをささえるラボでもご紹介させていただきます。
●地域共生社会とは

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会

出典:厚生労働省「地域共生社会とは

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高齢になっても障害があっても自分らしくいきいき生活できる社会をつくる!

情報提供者

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

<経歴> 茨城県介護福祉士会副会長| 特別養護老人ホームもくせい施設長| いばらき中央福祉専門学校学校長代行| NPO法人 ちいきの学校 理事| 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント| <プロフィール> 介護福祉士として8年の現場を経験後、33歳で特別養護老人ホームの施設長に就任。現在まで、4カ所の特養の施設長を経験。また、介護福祉士養成校の経営に携わる観点から福祉人材の確保定着をライフワークと位置づけ「茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクト(いばふく)」を法人の垣根を超えて横展開している。 令和元年にNPO法人ちいきの学校を設立。元気なシニアが中心となって多世代が笑顔で暮らす新しいちいきをつくることにもチャレンジしている。 20年で培った現場経験と教員経験、管理者経験を生かして、認知症ケアから組織やチームマネジメントの悩みなど幅広く対応する。

地域共生社会の実現とそのために私たちが求められていること

私たち、福祉・介護の専門職は、地域共生社会を目指し「どんなご利用者でも、活躍できる環境を作る」サポートをすることを求められています。

「誰もが役割を持てる地域共生社会であること」の実現に向けて、このテーマは福祉・介護の仕事の大きな柱であると考えています。

もちろん目の前のご利用者に対して直接的に行う支援も重要ですが、それと同時に地域の障害者やお年寄りが社会の中で、活躍できる環境を整えるサポートにも目を向けて取り組むことが重要です。

後述しますが、認知症の方でも社会に対しての役割は持つことができます。
その環境を提供するためには、介護福祉士・社会福祉士などの専門性がある方の働きかけが必要です。本記事では、私たちが架け橋となって、取り組んでいる事例を紹介いたします。

本記事をご覧の皆さまがこれをきっかけに「介護の仕事の1つとして、ご利用者が社会と接点を持てるような環境サポートの仕事がある」ということを知っていただき、興味や関心を持っていただけると嬉しいです。

地域で活躍する高齢者と障害者の事例

1.介護福祉士×まちのプロバスケットボールチーム

プロバスケットボールチームの運営の支援として、公式グッズのシール貼りをお年寄りや障害者の方にやってもらっています。
この取り組みは、介護や福祉の視点がある専門職が地域のなかで「あ、この仕事は利用者さんにもできるぞ」と気が付いたことからはじまりました。

専門職が地域支援へ視野を広げることで、利用者さんの活躍できる場所、環境を用意できたとてもよい事例だと考えています。
ぜひ、地域の中にご利用者さんが活躍できそうな場がないか視野を広げてみましょう。

2.介護サービスを拒否する地域のお年寄りに対するアプローチ

地域の空き家を利用して、「こども食堂」の運営をしました。
ここでは、経済的に大変な方を対象にお弁当を提供しています。

もちろん、お弁当を受け取る方への支援にもなりますが、我々が大切にしていることはこのような場所に地域のお年寄りが出てきて、お弁当を作る活動をしているということです。

実はここへは認知症の疑いのあるお年寄りも参加して、お料理をしてくれています。
この方は、おひとりで生活をされている方で、認知症のような症状があり、周りから介護サービスを受けたほうがいいよと言われているものの、「大丈夫」と頑なにサービスを受けようとされなかったそうです。
しかし、「子供にお弁当を作ろう」とお声かけするとこのような場にきてくださいました。

一人暮らしをされているお年寄りが増えている社会のなかで、「認知症に気が付かないお年寄り」や「介護サービスを拒否されるお年寄り」は増えていくでしょう。

このような対象の方に、上記のアプローチで関わりを持つことは、介護福祉士の専門性があるからこそできることだと思います。
介護サービス以外のアプローチでも、様々な人に支援を行き届かせ介入のきっかけを作ることができるのです。

3.保育園と特別養護老人ホームの利用者が自然と出会う場所

私が勤める施設は、医療・福祉・介護・教育・健康など12の施設があるスイコウスクエアというエリアにあります。 保育園と特別養護老人ホームが近くに立地しているため、開放的な場所で自然とご利用者と園児が触れ合える空間に各施設があります。
この事例では、環境を整える・工夫することで、ごく自然にご利用者と社会の接点を設けることができています。

私は介護の仕事は「介:間に入る」「護:まもる」ことだと捉えています。
環境を整えることで、「ご利用者」と「社会」との間に入りその接点を護ることが「介護」であるということです。

「ご利用者の本人の想い」と「社会を繋ぐ活動」は介護・福祉職の重要な仕事であり、そのやり方は様々です。クリエイティブにチャレンジしていくことで「介護職のやりがい」に繋がるでしょう。

多様性、価値観の変化のなかで私たちが求められていること

横のつながりを大切にしよう

地域共生社会の実現に対する活動は、介護・福祉業界のみではなくさまざまな企業で取り組まれているものです。 地域に根差した企業やスポーツチームなどと協業して、ぜひ様々な取り組みを立案・チャレンジしてみてください。

業種、職種、専門性を超えて協力し合うことがとても重要です。

利用者(高齢者)の価値観の変化

令和のお年寄りは、昭和、平成のお年寄り像とは異なり、非常に考えも新しく若々しい高齢者です。
経済成長やバブルを経験され、様々な娯楽を楽しんでこられた世代であり生活様式も様々だからこそ、高齢者のニーズも多様化しています。

そのようなニーズに私たちは、応えていく必要があります。

レクリエーション1つにしても、手遊びのようなレクリエーションでは満足されないかもしれません。
本格的なカルチャーの先生をお呼びしたり、リハビリの専門職によるサービスを提供したりなど、ご利用者のニーズとサービスの質がマッチしていることが経営戦略的にも重要になるでしょう。

働き手の価値観の多様化

次に、シニアの方がこの業界で再度、働いてくださるケースも多いため介護・福祉業界で働き手も高齢化していきます。
また、外国人の方の担い手も増えています。

利用者の価値観の多様性はもちろんですが、担い手の価値観も多様化していきますので、私たちはその価値観を受け入れ尊重しながら協力し合う姿勢が重要になるでしょう。

さいごに/「地域資源 × 各専門職の職能」にチャレンジしよう

福祉・介護の業界では、「目の前の利用者を支えること」はもちろんですが、
地域社会にあるもの(地域資源)と各専門職の専門性(職能)を掛け合わせて、

・利用者の生活の満足度を上げていく
・利用者の持っている力を引き上げていく

そのような取り組みが今後、より一層大切だと考えています。

私は、この介護業界に入り二十年以上が経ちましたが、
現場に配属されてからは、介護主任、介護課長と1つ1つのプロセスを踏みながら、
現在は施設長として仕事をしながら地域への支援も行っています。

介護の仕事は、クリエイティブな仕事です。
未経験の方でも大丈夫です。皆さんのチャレンジを心から応援しています。

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この記事のライター

茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)

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