■執筆者/専門家

おかげさま社労士事務所 代表 元地域包括支援センター センター長 社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級
今回は特にご相談が多かった3つのご質問について、実務と制度の観点からお答えいたします。
質問1:処遇改善加算は時給に含まれていても問題ない?給与とは別にもらえるもの?

処遇改善は給与と別にもらえるものではないのでしょうか?
■専門家の回答:給与に含まれていても法的な問題はない!
まず大前提として、「処遇改善加算」は事業所に対して国から支給されるものであり、事業所ごとに使い道を定める裁量がある仕組みです。特に2024年6月にこれまで複雑であった処遇改善加算の制度がシンプルに一本化されました。しかし根本的なルールは従来と変わらないものも多いというのが現状です。
さて質問について解説をします。
「処遇改善手当」として別途支給する事業所もあれば、基本給や時給に含めて支給するケースもあります。後者の場合、「時給1200円に処遇改善を含む」となっていても法的には問題ありません。むしろ就業規則や労働条件通知書にその旨が記載されていれば、明確に説明されているといえます。
ただし、実際には「処遇改善手当が見えにくい」「給与明細で分かりづらい」という不満は現場でも多く聞かれます。この処遇改善加算については、事業所は具体的に職員に周知をするということが求められるという大前提があります。これについては、支給実績の説明責任がありますので、気になる方は「処遇改善の金額内訳を教えてください」と尋ねてみてもよいかもしれません。
質問2:介護職1人あたり5.4万円の補助金はいつ支給される?

しかし、2024年は終わったのにまだ支給されていません。いつ支給されるのでしょうか?
■専門家の回答:補助金は直接介護職に振り込まれるわけではありません!
しかし、この補助金の支給は「事業所に交付される補助金」であり、職員一人ひとりに自動的に現金が支給されるわけではありません。
また補助金の使い道としては、「1:介護職員の処遇改善として給与に反映する人件費」または「2:職場環境改善経費」があります。特に2の場合は、介護助手を募集するための経費、職場環境改善のための様々な取り組みを実施するための研修費などに使われます。
この補助金は処遇改善加算とは別枠で、給与の増加だけでなく、職場環境改善が介護職員の定着につながることを目指しているものであります。
また実際の支給タイミングや方法は、各自治体・事業所によって異なります。交付金が事業所に届いてから、それを一時金や手当の形で職員に分配するかは事業所の裁量に委ねられています。
つまり、「支給されるかどうか」「いつ支給されるか」は、皆さんの勤める事業所がどう対応するか次第となります。心配な方は、事業所の担当者や管理者に「今回の補正予算に基づく処遇改善はありますか?」「具体的な使い方はどうされますか?」と率直に聞いてみることをおすすめします。
質問3:介護休暇は無給扱いなの?

有給休暇との違いは何なのでしょうか?お休みしても給与をもらうためには、結局、有給を使うしかないのでしょうか?
■専門家の回答:介護休暇は法的には「無給」です!
労働基準法上、育児介護休業法に基づく「介護休暇」は、対象家族の通院同行や通所介護の手続きなど短期間(半日単位でも可)での取得が想定されており、雇用主には「休暇を認める義務」がある一方で「有給で支給する義務」はありません。
したがって、多くの事業所では介護休暇は「無給」として取り扱われています。
また似て非なるもので、「介護休業」があります。こちらは介護休暇と比べて、一定期間のお休みが必要となった場合に、要介護状態にある家族を一定期間、継続的に介護する必要が生じた場合に取得できる制度です。
1人の対象家族につき「通算93日まで」休業可能で、3回まで分割して取得できる制度となります。介護休業期間中は原則無給ですが、雇用保険の「介護休業給付金」が支給される可能性があります(支給額は休業前賃金の約67%、一定の条件あり)。
一方で、有給休暇を使えば給与は保証されます。そのため、「実質的に収入が減るのが困るから」という理由で、有給休暇を代わりに使う方も少なくありません。介護事業所においては有給休暇の取得率が低い傾向にあります。介護が理由で休む必要がある場合で無休の場合は、積極的に有給休暇を使うのも一つの方法かもしれません。
日数の長さに応じて介護休暇か介護休業を検討したうえで、介護休暇を取得する際には、会社に「有給か無給か」「勤怠表上でどのように扱われるか」を事前に確認し、自分の状況にあった選択をすることが大切となります。
最後に:労働条件で不明な点は事業所・施設に確認しましょう!
制度と現場のギャップを埋めるためにも、まずはご自身の給与明細や労働条件をしっかり確認し、不明点は遠慮せず事業所に質問してみましょう。現場の皆さんの声が、介護業界全体の改善につながる一歩になるはずです。
■あわせて読みたい記事

【介護業界】実はそれ、労働基準法違反かも?!よくある事例を解説! | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/1163「訪問ヘルパーの移動時間は業務外?」「アルバイトに有休はない?」実はそれ、労働基準法違反にあたるかも。この記事では、介護業界でよくある労働基準法違反の事例を専門家が解説します!働く人も事業主も知らなかったということがないようにすることで、働きやすい業界を目指しましょう。[執筆者/社労士:山本 武尊]

介護職1人につき一時金5.4万円支給!|2024年度補正予算806億円の概要を解説! | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/1252[2025年3月19日更新]政府は、2024年度(令和6年度)の補正予算案で、介護職員1人あたり5.4万円の一時金を支給する方針を発表しました。「生産性向上が要件?」「全員5.4万円もらえるの?」この記事では、補正予算が立てられた背景や、概要を専門家が解説します。【執筆者/専門家:伊藤 浩一】
おかげさま社労士事務所 代表
元地域包括支援センター センター長
社会保険労務士、社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・
ファイナンシャルプランナー2級(AFP)・簿記3級