本日のお悩み:介護施設でできる夏のイベントを教えてください!
七夕や夏祭りなどがよいのでしょうか。ただ、何を準備すればよいか、どのようなことを気をつければよいかわかりません。夏らしいイベントの企画から運営までの方法を教えてください。
夏に介護施設でできるイベントの運営マニュアルを紹介します!
■執筆者/専門家
・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。
季節を感じられる行事は、利用者さんの生活に彩りを加えるだけでなく、職員と利用者さん、そしてご家族との繋がりを深められる大切な機会となりますね。七夕や夏祭りは季節的にも良い企画になると思います!
この記事では、企画から運営、そして、その先のケアに繋げられるように、行事を成功させるためのポイントを整理しています。「七夕」「夏祭り」の行事企画運営マニュアルとしてご活用いただけるように、私の施設の事例も交えて、お届けしたいと思います。
「七夕」イベント準備の流れ

2.装飾テーマとスケジュールの設定
3.参加者の把握と招待状の作成
4.会場の設営と安全確認
5.食事や飲み物の準備
6.継続的ケアにつながる工夫
7.イベントでできるレクリエーション
■1.イベントの目的を明確にする
■七夕企画の具体的な目的例
・短冊に書いていただいた利用者さんの想いや願いを叶えるetc.
■企画時のポイント
2.必要なスタッフ数はどれくらいか?
3.利用者さんの生活リズムに合わせた業務オペレーションの調整
4.開催日時の確定(開催時間例:14:00〜15:30)
■2.装飾テーマとスケジュールの設定
職員と利用者さんが一緒に作成できると準備段階から楽しむことができます。
■七夕の装飾例

・星型の飾りを天井から吊るす
・願い事コーナーの設置
■スケジュール例(1ヶ月半前から準備開始)

・30日前:参加者リスト作成、装飾制作開始(レクの一環として実施)
・15日前:装飾の準備(生の竹を使用する際は、確保場所も事前に決めておく)
・7日前:笹の設置(生の竹の場合、可能な限り直前で用意、造花の笹やオブジェが作成できると常設が可能になる◎)
・当日:本番運営と記録
■笹がどうしても準備できないときは
太陽が当たるとステンドグラスのようになりますし、短冊を書き加えることもできるので多くの人に楽しんでもらうことができると思います。
■3.参加者の把握と招待状の作成
利用者さんやそのご家族、職員の出席を確認するために招待状を作成しましょう。
■招待状に記載すべきこと
・参加申込方法の明記(返信用封筒や電話、QRコードなど)
・駐車場の有無やアクセス案内
・感染症対策のお願い(マスク着用、検温など)
・雨天時の対応(屋外イベントの場合)
■4.会場の設営と安全確認
特に、車椅子の導線確保や転倒のリスクがある装飾やコードを設置しないこと、消火器や避難経路の確認を意識した会場ゾーニングができるとよいでしょう。
■5.食事や飲み物の準備
■七夕らしいメニューの例
・そうめん
・冷たい甘味(水ようかんやフルーツポンチ)
・七夕風ちらし寿司
■メニューを提供する際の注意点
・冷たいものの温度管理(冷えすぎに注意)
・嚥下対応やアレルギー対応を欠かさずに
・水分補給ができるコーナーや時間も用意しましょう
また、SNSなどで広報として、使用する予定があるのであれば、写真映えするメニューを意識しておくとよいでしょう。ただし、利用者さんの安全や楽しさが第一です。ここの軸はぶらさずに工夫を凝らしていきましょう。
■6.継続的ケアにつながる工夫
例えば、七夕の願い事で「散歩がしたい」「○○が食べたい」「○○に会いたい」など利用者さんの希望が書かれると思います。これらをご家族や他職種とも共有しながら安全や健康に配慮しつつ、計画的に実施していけると、よりイベントが楽しんでいただけるでしょう。
また、イベント後に写真や感想を共有しあったり、短冊をアルバムにして思い出記録にしたりすることで、イベントのあとも日々の活力に繋げることができます。
■7.イベントでできるレクリエーション
多くの人に楽しんでもらえるよう、大きな歌詞カードなどを用意しましょう。
「夏祭り」イベント準備の流れ

2.装飾テーマとスケジュールの設定
3.参加者の把握と招待状の作成
4.会場の設営と安全確認
5.食事や飲み物の準備
6.イベントでできるレクリエーション
■1.目的の設定
■夏祭り企画の具体的な目的例
■企画時のポイント
2.家族や地域住民、ボランティアも参加するか?
3.日時は体調管理や生活リズムに配慮(例:16:00〜19:00)
※特に外で開催する場合は、熱中症のリスクが高いので、日中よりも夕方で設定したほうがよい
■2.装飾テーマとスケジュールの設定
■夏祭りの装飾例

・ハッピやうちわを展示する
・昔の写真などを展示して昭和レトロを演出する
■スケジュール例(2ヶ月前から準備開始)

・30日前:参加者リスト作成、装飾制作開始(レクの一環として実施)
・15日前:装飾の準備、設営(できる限り事前に設営し、雰囲気づくりを行う)
・5日前:リハーサル(職員による催しがある場合は必要に応じて実施)
・当日:本番運営と記録
■3.参加者の把握と招待状の作成
外部への依頼等が発生するので、早めに準備を行いましょう。
■4.会場の設営と安全確認
夏祭りは、出し物を行うステージエリアや、飲食・屋台コーナー、涼むためのスペースなどイベントを楽しむためのブース分けが大切です。七夕同様に、車椅子の導線や転倒リスク、避難経路などは考慮するようにしましょう。
■5.食事や飲み物の準備
キッチンカーなど外部の協力が得られると、より盛り上がると思いますが、施設の予算や安全面などを考慮して企画するようにしましょう。
■夏祭りにおすすめのメニューの例
・かき氷(一口の量に注意)
・わたあめ
嚥下レベルに考慮した対応や、屋外で実施する場合には食中毒の対策もしっかりと行いましょう。
■6.イベントでできるレクリエーション
・ボランティアによる出し物
・ご家族向けのサプライズ
■おみこし、よさこいソーラン節、花火

また、安全を確保したうえで、夏の風物詩である花火の開催もおすすめです。
私の施設では毎年の恒例行事として、花火大会を開催しています。手持ち花火から打ち上げ花火まで幅広い種類を用意して、日が沈んだ夜に開催しています。花火をご覧になる利用者さんの優しい笑顔が印象的です。
■ボランティアによる出し物
事前打ち合わせで内容と時間を調整することが大切ですので、実施する場合は早めに打ち合わせを行うようにしましょう。
■ご家族向けのサプライズ
例えば、利用者さんの映像や写真をプロジェクターで投影し、普段の様子や笑顔を見てもらう、利用者さんからご家族にお手紙を読む(代読も可)、ご家族から利用者さんに手紙を朗読するなどです。施設での夏祭りが家族にとっての大切な思い出になるでしょう。
イベント企画時の雰囲気づくりのポイント
2.手作りの飾りつけ
3.写真撮影
■1.衣装の統一
利用者さんも無理のない範囲で、簡単に羽織ることができるハッピなどがあると、より楽しむことができるでしょう。
■2.手作りの飾りつけ
装飾は、イベント当日だけでなく、その前後も行っておけると長く雰囲気を楽しむことができます。
■3.写真撮影
職員側もカメラ係を決めておき、SNSなどに投稿すると、施設の魅力を対外的に伝えることができます。
イベント実施後は振り返りも忘れずに!
また、企画は属人化しがちですが、リストやマニュアルを作成することで、新人職員にも主体的に関わってもらうことができるようにすることができます。日頃のケアとはまた違う形で、イベントに主体的に携われる経験は、仕事のやりがいにも繋がるでしょう。
最後に:夏のイベントは熱中症に要注意!
また、夏に行うイベントについては、その日の業務オペレーションを大きく見直し、夕方から夜にかけての時間帯(17:00〜20:00)に、屋上でビアガーデンと花火を楽しむスタイルにしています。
屋上には電飾を施し、まるで本物のビアガーデンのような雰囲気を演出。ご家族、利用者さん、そして職員が一緒になって、涼しい夜風の中で楽しいひとときを過ごせる空間づくりを心がけています。
ご質問者さんも、ぜひ「安全・安心・ワクワク」をキーワードに、皆さんの笑顔があふれるような夏の思い出をつくってくださいね。
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・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士