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【スピードと質どっちが大事なの?】介護現場での仕事の効率と業務内容の質に関するお悩みに答えます!(専門家:後藤晴紀先生 回答)

【スピードと質どっちが大事なの?】介護現場での仕事の効率と業務内容の質に関するお悩みに答えます!(専門家:後藤晴紀先生 回答)

「仕事のできる人」この定義はなかなか難しいと思います。スピード重視で業務の質にはこだわらない環境に身を置く質問者。利用者に丁寧なサービスを提供したい!そんな想いがあり、立ち振る舞いや転職をするか否かなど多くの悩みを抱えています。そんな質問者のお悩みに専門家が回答します!(回答者:後藤 晴紀先生)


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介護現場に限らず、仕事をするうえでタイムマネジメントは大切です。一方で仕事が早く終わることがすべてなのでしょうか。どこの職場においても時間を優先する人、質を優先する人、どちらもいると思います。

もちろん時間も大切にしたいと思いますが、利用者さんの視点に立つと適切なサービスを受けられるかという点も大切ですよね。この記事では時間重視な職場で質が下がってしまっていることを懸念する介護職員さんのお悩みに後藤先生が回答しています。

本日のお悩み

私の職場では、スピード重視で早く終わることが仕事のできる人だとされています。仕事を早く終わらせるって…結局、お客様に対しての介入が乱雑でしかないんです。

ご利用者の髪の毛がボサボサでも、目脂が付いていても、食事の介助後、口の回りに色々付いていても拭き取らない、義歯も洗わず水に浸けておくだけ。排便があった後も拭き残しが多く陰部が汚れたままなど。

自分自身の年齢を考えると不満があっても、簡単には辞められないと諦めています。
コンプライアンスへ訴えても、人事労務課へ訴えても何の効力もありません。自分や、仕事をちゃんとしている他の職員が丁寧な仕事をしていれば、それでいい…とは思うものの…ストレスが溜まってしまいます。やはり、「職場を変える事、自分の納得出来る職場を探す事」以外に道は無いのでしょうか。

スピードと質どっちが大事なの?

*この記事のポイント*
1.スピードはあってもサービスの質が疎かになることは本末転倒
2.業務改善を行うのであれば3M5Sを意識して日々行動しよう
3.自己ケアが最優先!様々な選択肢を持とう

回答者/専門家

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。

詳細な状況や、つらい心境を教えて頂きありがとうございます。

事業所で行っているケアが正しいのか、自分が提供しているケアが正しいのか、当たり前となってしまっている環境に疑問を持つことは難しいことであると思います。
ご質問者さんにとって、また、ご利用者や共に働くスタッフにとって、つらい環境であることが伺えますね。

もしかするとスタッフ達の中にも、言い出せないつらさや、諦め、申し訳なさや、自分自身が無関心となってしまっていることに、心を痛めているスタッフがいるかもしれません。
現状を整理しながら、今後について一緒に考えられればと思います。

特に今回のご質問で問題だと思うのは、施設に設置されている、コンプライアンス担当者や人事労務課等、業務改善を吸い上げ運営に反映させていく部署への申し出がすでになされているのに、効力がないということです。

事業所である組織としての自浄作用が失われているのは、深刻な問題だと感じます。
事業所に改善の余地がないのであれば退職も一つの選択肢です。退職自体「悪」ではありませんので、後悔することのないご判断ができるよう現状を整理し、いくつかの選択肢を提案できればと思います。
まずは質問内容を少しずつ見ていきましょう。

スピードがあっても質が下がれば本末転倒!ポイントをおさえ一歩ずつ改善を

「スピード重視で早く終わることが仕事のできる人だとされています。仕事を早く終わらせるって…結局、お客様に対しての介入が乱雑でしかないんです。」

仕事が早く終わることは悪いことではありませんね。限られた時間の中で、多くのタスクをこなす介護職員にとっては、ある程度の決められた時間の中で逆算をしながら、効率良く業務を進めることもあるでしょう。

ただし、サービスを提供するご利用者への対応がおろそかになったり、乱雑になることは本末転倒です。そもそもそれではサービスとは言えませんし、報酬を受け取ることもできません。今回のお悩みに関しては、現場の状況に応じてこれらの問題を改善していく必要があると思います。

そもそも介護職員の業務効率化や生産性向上の目的は、人員不足の現場においても、介護職員がご利用者と関わる直接業務に時間を有効に使うためという点で意味合いがあります。
そのため、業務に関する「無理、無駄、ムラ(3M)」を評価し、改善していくことが大切です。

行動や準備時間に関する時間を効率化するための5Sも重要ですね。5Sとは①整理②整頓③清掃④清潔⑤しつけ(教育・育成)のことで、業務量を整理し、量を減らしたり、効率化を図ります。
具体的には一人一人の業務量やシフト毎の業務配分や業務のペースを見直し、業務の効率化を図り、マニュアルやルールを明確にし、日々の進捗状況の可視化をするようにします。

このような取り組みを日々実践し、現場の状況に応じて見直し、改善していくことが、職場環境を改善する第一歩となります。 こちらに関しては、事業所としてスタッフが一体的に取り組んでいく必要があるため、個人主導では実現が難しい状況が伺えます。一つの提案として発言する機会があればご活用いただけると嬉しいです。

転職も選択肢の1つにいれてみましょう

「ご利用者の髪の毛がボサボサでも、目脂が付いていても、食事の介助後、口の回りに色々付いていても拭き取らない、義歯も洗わず水に浸けておくだけ。排便があった後も拭き残しが多く陰部が汚れたままなど。コンプライアンスへ訴えても、人事労務課へ訴えても何の効力もありません。」

こちらについては、運営基準や倫理及び法令順守や虐待防止法の理解が乏しいと言わざるを得ません。こちらについても、個人での改善は難しく、施設内において不適切なケアの文化や慣習が常態化してしまっている状況かと思います。 運営側の問題もありますが、委員会としての機能も失われている状況かと思います。

言葉通りの状況が、日常の中で常態化しているということは、施設サービス計画に基づいているケアも行われていないばかりか、各種法令や基準、規定の違反が伺えます。

具体的には、衛生管理の問題や、個人の尊厳の保持の問題、ネグレクトに該当する恐れもあるので、適正な運営ができているとは言えない現状が見えてきます。 本来ならば、これらの状況を改善していくのが事業所としての当然の責務となり、そのための委員会の設置やそれぞれの役割としての役職があるわけです。

ご質問者さんのお気持ちや心境を考えると、日々大きなストレスの中で働かれているんだと心が痛みます。 この状況を変えようと、これまで声をあげてこられたのでしょう。 法人やご利用者のこと、スタッフのこと、従業員としてこの他に何ができるのか考えると難しいかと思います。 転職も十分考えうる選択肢だと思います。

転職せずに問題を解決できるご提案ができるのが一番良い方法だとは思いますが、個人も事業所も、その人達が変わろうとしなければ、変化は訪れません。
ここまで十分にやり切ったと、ご質問者さんが思われているのであれば、転職も今後の行動を示す選択だと思います。

今できることを考えてみよう

「自分自身の年齢を考えると不満があっても、簡単には辞められないと諦めています。」

継続する気持ちも、もちろん大切です。せっかく継続するのであれば少しでも改善できるよう、今できることを少しでも考えていきましょう。

【コミュニケーションの活用】

上司や施設への意見や要望は、伝え方によっては対立構造を生み出すことに繋がります。 正しいことを原理原則に基づいて伝えることは重要ですが、伝え方については、相手との関係性に左右されることが大きいため、伝え方を工夫したり、日頃からのコミュニケーションが重要になります。

仕事の課題や改善点を共有し、協力して問題を解決できるように、関われれば、変化が生まれる期待もあります。
多くの介護職員が、人間関係の構築という手順を経ずに、原理原則に則った正しい正義を伝えてしまい、トラブルになることも少なくありません。業務内でのコミュニケーションを大切にして関係性を築いていきましょう。

最後に:自己ケアを優先しましょう

今の環境では、何もできずに、ただ決められた手順や業務フローをこなしていくのは、ご質問者さんにとっては苦痛ですし、大きなストレスがかかると思います。それでなくとも介護職は体力的・精神的に非常にハードな仕事です。

自分自身の健康を守ることが最優先です。休息をしっかりと取り、ストレスを軽減するための時間を必ず確保しましょう。

お一人で抱えずに、信頼できる同僚と共有してくださいね。 「自分や、仕事をちゃんとしている他の職員が丁寧な仕事をしていれば、それでいい…」
と質問者様は一人じゃないはずです。 まだまだ想いをもって、疑問に感じている仲間もいると思いますので、その仲間を増やし、利用者さんのため、ご自身のために、改善していける環境が作れることを願っています。

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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