転職前の介護施設の見学ポイントを解説!良い施設の見分方とは
介護職の転職活動では、施設見学に参加したり、面接の場で働く条件を確認したりすることで、入職後のギャップを防ぐことができます。数多くの施設から自分に合う施設を見つけるために、さまざまな視点で施設を確認してみましょう。
しかしながら、自分の条件にすべてぴったり!という施設はなかなかないものです。そのため、ご自身で【これだけは譲れない軸】を持つことも重要です。施設のことをしっかり分析することと、自分の軸をもつことが、転職後のギャップを減らすには大切です。今回は、専門家の意見もお伺いしましたので、お役立てください。
【就職・転職前】施設見学のチェックポイントを解説!~後藤先生編~
■執筆者/専門家
・けあぷろかれっじ 代表 ・NPO法人JINZEM 監事 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士 ▶プロフィール 『介護福祉は究極のサービス業』 私たちは、障がいや疾患を持ちながらも、その身を委ねてくださっているご利用者やご家族の想いに対し、人生の総仕上げの瞬間に介入するという、責任と覚悟をもって向き合うことが必要だと感じています。 目の前のご利用者に『生ききって』頂く。 私たち介護職と出会ったことで、より良き人生の総仕上げを迎えて頂ける為のサポートをさせていただく事が、私たちに課せられた使命だと思っています。
介護職員が施設見学をする際に気を付けるポイントについて解説します。
感染症の流行で、一般の方はもちろん、求職者でも施設の見学ができない施設も少なくないと伺っています。そんななか、施設の中を見学できる機会は、貴重な情報収集の機会になるかと思いますので、入職した際に「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、気を付けて見るべきポイントについてお話いたします。
また、過去に介護の求人情報と面接のポイントも解説していますので、少しでも入職先とのミスマッチが減るよう合わせてお役立てください。
無資格・未経験なら必見!介護の求人情報と面接のポイント【無資格・未経験でも大丈夫!はじめての介護職⑦】 | ささえるラボ
https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/204求人情報はどれも同じように見えて困りますよね。未経験の方がチェックすべき求人情報の項目と、面接や見学会で確認すべきポイントを4つご紹介します。介護職による介護職の為の有志団体「けあぷろかれっじ」代表の後藤 晴紀さんが、ご自身の経験をもとに優しく解説しています!
■職場見学で、良い施設を見つけるためのチェックポイント
- 施設の「人や雰囲気を見る」チェックポイント
- 1.スタッフの表情、笑顔、あいさつが多いかどうか
- 2.スタッフのご利用者への言葉遣いが適切かどうか
- 3.スタッフの教育や研修がどのように行われているか
- 4.施設内の掲示物は更新されているか、どのような内容の掲示物があるのか
- 施設の「環境設備」はここをみましょう!
- 5.施設内の清掃や消毒などがどのように行われているか
- 6.施設内の温度や湿度、照明、臭い(換気状況)などがどのように調整されているか
- 7.施設内のレイアウトやデザインがどのようになっているか
1.スタッフの表情、笑顔、あいさつが多いかどうか
まずは、スタッフの表情が殺伐としていないか。笑顔や挨拶が多いかどうかを見て、職場の雰囲気が明るく和やかかどうかを見てくださいね。
人材不足に関しては、介護業界だけではなく、多くの産業の課題でもありますね。ただし、そこで働くスタッフさんの関係が悪化していると、職員間のコミュニケーションも減少して、「なんだか暗い印象」と思うかもしれません。
特に、求職者の案内をしているのに、挨拶もなく、黙々と業務を行っている事業所さんは黄色信号です。その状態が常態化してしまうと、施設の風土や文化が崩れてしまっている可能性があります。
そうなると、ご利用者へのケアにも配慮が欠けてしまう対応となってしまう可能性が考えられます。
2.スタッフのご利用者への言葉遣いが適切かどうか
前述でも触れました、「配慮が欠けている環境となっていないか」のポイントとして、スタッフのご利用者への言葉遣いも大切です。
ご利用者に対して、丁寧語を使っているか?特に第三者が見聞きして、不快な印象を与えないかを見て、施設のサービス精神やご利用者への尊重が高いかどうかを確認しましょう。
3.スタッフの教育や研修がどのように行われているか
面接の際にも確認することはできると思いますが、スタッフの教育や研修がどのように行われているか?定期的にスキルアップや知識更新ができる環境が整っているか?を確認しましょう。
確認方法は、口頭での確認でももちろん大丈夫ですが、ほかの手段としては、施設のホームページや、掲示物でも確認できます。見るべきポイントとして、ぜひ確認してみてくださいね。
特に事業所のホームページは事前に必ず確認しておくようにしましょう。研修のみでなく、サービス形態や法人の特徴などを見ておくこともおすすめです。
4.施設内の掲示物は更新されているか、どのような内容の掲示物があるのか
施設内の掲示物については、さきほども触れましたが、
・掲示物が更新されているか
・どのような内容の掲示物があるのか など
見てみてください。行事の案内や、ご利用者さんの参加された写真や制作物が掲示されている施設は、施設内の研修や行事、催事が定期的に開催され、明るく楽しそうな雰囲気が伝わってくると思います。
これらのイベントが開催されているのかということも大切ですし、その制作物を作成する時間を確保しているとも言えます。生活の場として、ご利用者と向きっている姿勢やそのやり方に触れられる機会となるはずです。
5.施設内の清掃や消毒などがどのように行われているか
・施設内の清掃や消毒がどのように行われているか
・衛生面や感染予防に配慮されているかどうか
上記を確認しましょう。衛生状況はその施設が良い施設かどうか判断するうえでとても重要です。建築年数が長くなるにつれて、経年劣化での老朽化は、どの事業所でも避けては通れないことです。
建物の新しさだけで判断するのではなく、衛生環境をぜひチェックしてみてください。
具体的には…
・ゴミ箱に溜まっているゴミがいつまでも放置されている状況ではないか
・消毒環境
・書類の整理状況
・個人情報の取扱い
・床にたまっている埃 など
以上のようなポイントで、プライバシーの配慮や衛生環境を確認することができるでしょう。
どんなに新しい施設でも、これらの環境が整っていない事業所では、適切にご利用者へのケアが提供できていない可能性が考えられ、お勧めはできません。
ほかにも、
・居室の鏡が汚れていないか
・カーテンのタッセルはしっかりまとめられているか
・離床後のベッドは整えられているか
・離床されているご利用者の背中の衣類がめくれあがっていないか
・ご利用者の車椅子は汚れていないか
・タイヤの空気圧は抜けていないか など
基本的な配慮が欠けていないか?は、見ることができ重要な指標になるかと思います。
6.施設内の温度や湿度、照明、臭い(換気状況)などがどのように調整されているか
施設内の温度や湿度、照明、施設内の臭い(換気状況)などがどのように調整されているか。
利用者やスタッフの快適さや安全性に配慮されているかどうかを確認しましょう。
前述したプライバシーや衛生環境の管理同様、これらの配慮ができず、その環境が常態化している事業所さんは要注意だと思います。
7.施設内のレイアウトやデザインがどのようになっているか
施設内のレイアウトやデザインがどのようになっているか。利用者の自立性や活動性を支援する工夫がされているかどうかを確認しましょう。
特に、
・ご利用者の座席の工夫はされているのか
・テーブルの高さや、福祉用具はどのように使用され管理されているのか
上記は、施設見学の際の見るべきポイントとなるかと思います。
口頭でも質問しながら見学されてみてくださいね。
職場見学は、ご自身にとって良い施設を見極めるためにも重要な機会です。
ぜひ、参考にしてください。
■参加する側のマナーのポイントを解説
次に施設見学に参加する際や就職面接を受ける際に注意するマナーと服装について解説します。
マナーや服装(身だしなみ)は「介護福祉職として」ということではなく、社会人として共通のマナーにもなりますので、振り返りの意味も込めてご確認ください。
まず、マナーについては、以下の点を守りましょう。
- 施設見学・面接の際のマナーで気を付けること!
- 1.当日は、遅刻しないように時間に余裕を持って出発しましょう
- 2.開催場所に着いたら、受付で自分の名前と予約時間を伝えましょう
- 3.携帯電話やスマートフォンは、必ず電源を切るかマナーモードにしておきましょう
1.当日は、遅刻しないように時間に余裕を持って出発しましょう
電車やバスの遅延などがあっても、開始時間の10~15分前には開催場所に到着できるように計画してください。「想定外を想定し、準備しているのか」を評価されることもあります。
特に面接の場合は、面接の前から面接は始まっているという気持ちで臨みましょう!
2.開催場所に着いたら、受付で自分の名前と予約時間を伝えましょう
開催場所に着いたら、受付で自分の名前と約束の時間を伝えましょう。
「笑顔で丁寧な挨拶をすること」で、好印象を与えることができます。
対応いただく事務職員さんは普段、専門職や管理者の皆さんと同じ事務所内で業務を行っています。不適切な服装や非常識な態度は、そのまま採用担当者へ報告が行くことがあります。
特に他のスタッフへの対応も気を緩めず望みましょう。
3.携帯電話やスマートフォンは、必ず電源を切るかマナーモードにしておきましょう
携帯電話やスマートフォンは、必ず電源を切るかマナーモード(サイレントモード)にしておきましょう。面接中に音が鳴ると、非常識だと思われてしまいます。
当然の配慮ができないと判断される前に、電源を切っておくのが安全ですね。
■参加する側の服装(身だしなみ)のポイントを解説
- これだけは押さえたい!服装のポイント
- 1.服装は施設の指定に従いましょう
- 2.髪型は長髪やパーマヘアなど派手な髪型は避けましょう
- 3.アクセサリーや香水などの装飾品は控えめにしましょう
1.服装は施設の指定に従いましょう
服装は、施設の指定に従うようにしましょう。
スーツが一般的ですが、私服やポロシャツなどを求められる場合もあります。
色は落ち着いたものを選び、清潔感のある服装を心掛けましょう。
当日の服装については、見学・面接日を決める電話などの連絡の際に確認ができると思います。シャツにはシワがないように、サイズも体形に合ったものを用意するのが良いと思います。
ズボンやジャケットにも、シワやよれがないことを確認してください。
2.髪型は長髪やパーマヘアなど派手な髪型は避けましょう
髪型は、長髪やパーマなどの派手なものは避け、髪が長い場合は後ろで束ねましょう。
髪型も清潔感がある雰囲気が大切です。
3.アクセサリーや香水などの装飾品は避けましょう
アクセサリーや香水などの装飾品は控えめに、むしろ外していくことをお勧めします。香水も見学会・面接には必要ありませんので、避けるようにしてください。
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■施設見学・面接の際には、採用担当者とどんな会話をすればよい?
- 採用担当者とのコミュニケーションのポイント
- 1.会話を意識しよう
- 2.「〇〇したい」だけではなく「自分は何ができるのか」を伝えよう
- 3.前職の退職理由は、建設的に前向きに伝えよう
- 4.皆さんからは事業所としての新たな時代への方針や備えを聞いてみよう
1.会話を意識しよう
採用担当者や面接官との会話では、会話のキャッチボールをするように心がけてくださいね。
特に面接では、一方的なスピーチでの自己アピールは、独りよがりな印象を与えてしまう可能性があります。面接官の言葉を受け止め、会話ができるように受け答えをしましょう。
2.「〇〇したい」だけではなく「自分は何ができるのか」を伝えよう
・自己紹介
・今までやってきた仕事や経験について
・志望動機や介護の仕事に対する思いについて
上記は、介護施設の採用担当者とのコミュニケーションの中でよく聞かれる質問です。
とくに面接ではこれらは、非常に大切な質問です。
こちらに答える際には、皆さんの「思い」に対して「〇〇したい」だけなく、それを実現するために自分は「何ができるのか」を言語化して説明できるようにしてほしいと思います。
またその時に、入職したい事業所や法人の理念に照らし合わせて、ご自身の価値観と事業所の方向性とがマッチした内容が答えられるとよいと思います。
3.前職の退職理由は、建設的に前向きに伝えよう
・前職を辞めた理由や転職しようと思った理由について
・いつから働くことができるかどうかについて
このようなテーマの会話がでることが予測できます。
とくに採用担当者は、「前職の愚痴や文句、人間関係を聞き出そう」とは思ってはいません。
前職での悪口を言ってしまうと、印象が悪くなってしまう可能性もありますので、前を向いた建設的な表現でアピールをしていきましょう。
4.皆さんからは事業所としての新たな時代への方針や備えを聞いてみよう
・福利厚生や資格取得の支援制度の有無について
・事業所でのキャリアパスについて
・ICT機器の活用状況や導入予定について
こちらについては、事業所としての新たな時代への方針や備えに敏感に対応しているのかが伺えると思います。とくにICT機器の活用に関しては、確認することをお勧めします。介護記録を手書きで行っている事業所もあるとは思いますが、そのような事業所は、新卒の採用率が低ことや定着率が低い可能性があります。「記録物の電子媒体や見守り機器」の導入状況はぜひ確認してみてください。
・仕事をするうえで大切にしていることや得意なことについて
・腰痛や体力の有無について
このあたりは皆さんが聞かれる可能性があると思いますので、答えられるように自己分析をしておきましょう。
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【就職・転職前】施設見学のチェックポイントを解説!~伊藤先生編~
■執筆者/専門家
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 ▶プロフィール 介護福祉士として8年の現場を経験後、33歳で特別養護老人ホームの施設長に就任。現在まで、4カ所の特養の施設長を経験。また、介護福祉士養成校の経営に携わる観点から福祉人材の確保定着をライフワークと位置づけ「茨城から福祉で世界を元気にするプロジェクト(いばふく)」を法人の垣根を超えて横展開している。 令和元年にNPO法人ちいきの学校を設立。元気なシニアが中心となって多世代が笑顔で暮らす新しいちいきをつくることにもチャレンジしている。
■職場見学で、良い施設を見つけるためのチェックポイント
よい施設かどうかを見極めるには「生活の場として適切かどうか」という視点でチェックすることをおすすめします。視覚、嗅覚、聴覚の感覚を利用して、生活の場として適切かどうかを判断してみましょう。
「自分がここに住んだら」という考えに置き換えることは、未経験の方でもできると思います。この視点は、「施設は生活の場」という本来の目的をしっかり果たしているか?ということを見極めることに繋がります。ぜひ、お役立てください。
- 施設が生活の場として適切かを見るチェックポイント
- 1.薄暗い施設ではないか(視覚)
- 2.異臭を感じる施設ではないか(嗅覚)
- 3.シーンとしている施設ではないか(聴覚)
1.薄暗い施設ではないか(視覚)
まずは視覚の情報です。
施設によっては、施設に入った瞬間に薄暗いなと感じる施設があります。
東日本大震災後、社会的に節電が求められた時期もありましたが、今は節電効果の優れているLEDも普及しています。そんな中、エントランスやご利用者が生活する空間が、あまりにも暗い施設は、入職しない方がよい可能性があるでしょう。
暗さの判断基準としては、ご自身が生活する上で必要な明るさを比較対象としていただければと思います。暗い施設は「もしも、自分がこんな暗い場所で生活していたら環境として快適かどうか」という視点がなく、相手の気持ちになることができてないと受け取れます。コストカットばかりに目が行ってしまい、サービスの本質が抜け落ちてしまっている可能性が高いといえるでしょう。
2.異臭を感じる施設ではないか(嗅覚)
新型コロナウイルス感染症が流行してからは、感染対策として換気がより習慣化されました。
しかし、今もなお「異臭を感じる施設」ということは、ご利用者への衛生的配慮が欠けている施設である可能性が高いです。
確かに職場にはその業種に準じた独特の匂いは存在することが多いと思います。
しかし、施設は生活の場であることから、「自分の家だったら」という観点で異臭を感じるのであれば、その感覚を信じて入職しない方が良いと考えます。
3.シーンとしている施設ではないか(聴覚)
次に聴覚に関してです。
もちろん静かな環境も時には大切ですが、生活の場と捉えた時に気味が悪い程の静けさを感じる施設ではないかは確認するとよいでしょう。
まず、ホールにご利用者がいない場合は、居室で横になって過ごすばかりになってる状況が考えられます。これは人手不足が慢性化し、ご利用者の望む暮らしを支えるはずが、日々の業務を行なっているだけが、当たり前の組織風土になっている可能性が考えられます。
もちろん、そうなってしまうと職員同士の会話もありません。
つまりシーンとなっている状況になってしまうわけです。
■組織風土・人間関係を知るための視点とは?
- 組織風土・人間関係を知るための視点とは?
- 1.求職者の話を聞かずに施設のアピールばかりではないか
- 2.良い施設かどうか見極めるには、ご利用者の表情に注目!
- 2.良い施設かどうか見極めるには、生花や観葉植物に注目!
1.求職者の話を聞かずに施設のアピールばかりではないか
とくに面接の場で、求職者の皆さんのお話をあまり聞かない施設は要注意です。
本来、面接は質問をしお互いが会話のキャッチボールを行いコミュニケーションを取ることが大事です。
それは、施設側の理念達成に向けて一緒に働いてくれる仲間を探しているからです。
そのため、ミスマッチがないよう「求める人材像」と「求職者がどのような人か」の擦り合わせをすることが重要となります。
それにもかかわらず、質問もほどほどに自施設のアピールばかりをし、入職日はいつにする?というような話にすぐ焦点がいく場合は、よほど人がいなくて焦っている可能性が高いでしょう。
また、とにかく人数を揃えたいという思いで、誰でもよく採用している施設は、ミスマッチが多く人間関係も良よくない場合があります。辞めた方が良いでしょう。
2.良い施設かどうか見極めるには、ご利用者の表情に注目!
ご利用者のお顔は、職員の顔が鏡となって写ります。
これは、ミラーニューロンという脳の神経細胞の働きが関与しています。施設見学の時は、ご利用者は笑顔の方が多かいかどうかや活気がありそうかどうかに注目してみましょう。
どんなにスタッフが笑顔でも、施設見学の方が来た時だけ、という可能性もあります。
しかし、ご利用者のお顔には、普段の雰囲気が正直にでるでしょう。
職員関係がギクシャクしている施設において、一番辛い思いをされているのはご利用者です。
介護の経験のある方は、介護のプロとして施設見学に参加する際は、ご利用者をしっかり観察してみましょう。そうすることで、ご利用者の心の状態も見えてくるはずです。
未経験者の方も自分なりに観察してみてください。ご利用者のほどんどが、表情固く、ボーッとしているように感じたらちょっと注意したほうが良いかもしれません。
3.良い施設かどうか見極めるには、生花や観葉植物に注目!
生花や観葉植物は、私達の生活空間に当たり前にあるものです。生活に彩りを加える、心をほっとさせるなど心理的効果は非常に高く、私も大好きです。
一方で、生きる上では絶対に必要なものではありません。花がなければ死んでしまうということはないですし、生活空間になければ罰せられるという法律もありません。
では、なぜ生花や本物の観葉植物の有無が施設見学のポイントなのでしょうか。
その理由としては、まず施設がご利用者の生活に対しての「生花や植物の心理的効果を理解できているか」を確認できるからです。
生花や植物は、異食行為のある認知症の方にとってみれば、誤って食べてしまうリスクのあるものと捉えることもできます。しかし、そういう理由で花、植物を排除してしまう施設は、その異食行為の本質的原因(例えば、水分摂取や排便の状況、睡眠、運動、外出など生活習慣など)を考えることをせず、安易にリスク要因の排除をしている可能性があります。
つまり、リスク排除のマイナス面ばかりに目が行き、生花や植物の心理的プラス効果に目が行かないというのは、ちょっと組織マネジメントが心配な組織かもしれないと判断できます。
そして、次の理由に、「生花や観葉植物は、人手が足りているのかを確認できる指標」ともなると思うからです。
生花や観葉植物は、水をあげたり、交換したり、伸びた葉や枝を間引いたりと手間がかかります。生きてますからね。そのため、世話をしなければ当然枯れてしまい、水をあげすぎても根腐れして枯れてしまいます。つまり誰かが気に留めていないといけないのです。
生花や観葉植物の世話を人員的余裕がなくできない施設、または、施設が生活の場だという意識が低い施設、シンプルにお花をきれいだなと思える人材がいない施設は、運営状況が心配な施設かもしれません。
ぜひ、参考にされてみてください。
■まとめ/素敵な施設は、働く人の満足度を考えている施設
ある一流ホテルのお話をしましょう。
そこでの入職面接は、そのホテルの理念達成に向けて、一緒に行動できる人材なのかを見極めるために面接を行っています。
しかし、それだけではなく面接を受けてくださった方、ひとりひとりに対してご縁なく不採用になったとしても、今後お客様となる方かもしれないとして、お客様と同じように丁寧に対応するそうです。素晴らしいですよね。そして、従業員に対しても「働く満足度の向上」を常に目指し続けているそうです。
せっかくホテルに泊まりに行ったのになんだか疲れている無愛想なホテルマンに接客されたらガッカリですよね。従業員の幸せが、素敵なサービスに繋がると心得ており、実践されているんだと思います。
施設も同じように、まずは「生活の場」として問題がなさそうかという視点と、職場として従業員の満足度が高そうかという視点での確認が必要になります。しかし、前述で述べたご利用者の「生活の場」としての質を高めることはそれと同時に、職場環境の改善にも繋がります。その逆も然りです。
スタッフの幸せが、また素敵なサービスに繋がるでしょう。よいサイクルがありそうかぜひ、職場見学で確認してみてください。
・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士