第32回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(社会の理解)
■問題1
地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 自助は、公的扶助を利用して、自ら生活を維持することをいう。
- 互助は、社会保険のように制度化された相互扶助をいう。
- 共助は、社会保障制度に含まれない。
- 共助は、近隣住民同士の支え合いをいう。
- 公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。
■解答
5.公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。
■解説
1.(×)自助とは、自身が抱える課題を自らの力で解決することを意味します。
2.(×)互助とは、公的・制度的な裏付けのない自発的な個人間の支え合いです。
3.(×)共助は、社会保険のように相互の支え合いが制度化されたものです。日本には、5つの社会保険制度(医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険)があります。
4.(×)家族、友人、仲間、近隣住民同士の支え合いは、互助に該当します。
5.(○)公助とは、公的機関による援助であり、税金で成り立つ社会福祉制度です。生活保護は、生活困窮者が健康で文化的な最低限度の生活を送れるように必要な保護を行うものであり、公助に該当します。
■問題2
「働き方改革」の考え方に関する記述として、適切なものを1つ選びなさい。
(注)ここでいう「働き方改革」とは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に基づく諸施策の実施のことである。
■解答
3.働く人々のニーズに応じた、多様な働き方を選択できる社会の実現を図る。
■解説
1.(×)長時間労働の是正は最優先の取り組みとなっており、すでに時間外労働の上限規制が導入されています。
2.(×)年10日以上の年次有給休暇のうち、年5日は使用者による時季指定に従って取得させる必要があります。
3.(○)働く人の一人ひとりが活躍し、より良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
4.(×)雇用形態にかかわらず、公正な待遇が求められています。
5.(×)中小企業、小規模事業者における働き方改革の実施を支援する取り組みを行うこととされており、すべての事業所・労働者が対象となっています。
■問題3
Dさん(60歳、女性)は、交通事故で下肢に障害が生じた。現在、入院中のDさんは退院後、在宅での生活を続けるために、「障害者総合支援法」の障害福祉サービス(居宅介護)の利用を希望している。
Dさんが障害福祉サービス(居宅介護)を利用するための最初の手続きとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
- 地域包括支援センターに相談する。
- 医師の診断書を居住する市町村に提出する。
- 障害福祉サービス(居宅介護)を提供している事業所と契約する。
- 居住する市町村の審査会に、障害福祉サービス(居宅介護)の利用を申し出る。
- 居住する市町村の担当窓口に、障害福祉サービス(居宅介護)の支給申請をする。
■解答
5.居住する市町村の担当窓口に、障害福祉サービス(居宅介護)の支給申請をする。
■解説
1.(×)地域包括支援センターは、介護保険法に基づき、高齢者に関する総合的な支援を行う相談窓口です。障害福祉サービスの利用に際しての申請業務は担当外です。
2.(×)市町村に提出するのは、医師意見書です。
3.(×)障害福祉サービスを提供している事業所と契約するのは、サービスの利用開始時です。
4.(×)市町村審査会は、一次判定の結果を原案として、特記事項や医師意見書の内容を総合的に勘案し、障害支援区分認定の審査判定(二次判定)を行います。
5.(○)障害福祉サービス利用時も、介護保険サービスと同様に、市町村の担当窓口で支給申請を行います。
■問題4
2015年度(平成27年度)以降の社会保障の財政に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.後期高齢者医療制度の財源で最も割合が大きいものは、後期高齢者の保険料である。
2.社会保障給付費の財源では、税の占める割合が最も大きい。
3.生活保護費の財源内訳は、社会保険料と税である。
4.国の一般会計予算に占める社会保障関係費の割合は、30%を超えている。
5.社会保障給付費の給付額では、医療費の構成割合が最も大きい。
■解答
4.国の一般会計予算に占める社会保障関係費の割合は、30%を超えている。
■解説
1.(×)後期高齢者医療制度の財源は、公費、後期高齢者保険料、後期高齢者支援金(若年者保険料)であり、最も割合が大きいのは全体の約5割を占める公費です。
2.(×)社会保障給付費の財源で最も割合が大きいのは、被保険者拠出の社会保険料です。
3.(×)生活保護費の財源は、公費のみです。
4.(○)2018年度(平成30年度)において、国の一般会計予算に占める社会保障関係費の割合は33.7%でした。
5.(×)社会保障給付費の給付額で最も構成割合が大きいのは、年金です。
■問題5
介護予防・日常生活支援総合事業に含まれる事業として、適切なものを1つ選びなさい。
1.家族介護支援事業
2.予防給付
3.介護給付
4.権利擁護事業
5.第一号訪問事業(訪問型サービス)
■解答
5.第一号訪問事業(訪問型サービス)
■解説
1.(×)家族介護支援事業は、地域支援事業の任意事業に該当します。
2.(×)予防給付は、要支援者(1、2)に対して、介護保険から給付されます。
3.(×)介護給付は、要介護者(1~5)に対して、介護保険から給付されます。
4.(×)権利擁護事業は、地域支援事業の包括的支援事業に該当します。
5.(○)介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村が中心となる地域支援事業の一つであり、地域の実情に合わせた体制の推進と要支援者に対する効果的な支援を目標としています。第一号訪問事業(訪問型サービス)は、介護予防・日常生活支援総合事業に該当します。
■問題6
生活保護法における補足性の原理の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1.国の責任において保護を行う。
2.全ての国民に無差別平等な保護を行う。
3.健康で文化的な生活を維持できる保護を行う。
4.資産・能力等を活用した上で保護を行う。
5.個人または世帯の必要に応じて保護を行う。
■解答
4.資産・能力等を活用した上で保護を行う。
■解説
生活保護法の基本原理は、国家責任、無差別平等、最低生活保障、補足性の4つです。
1.(×)国の責任において保護を行うことは、国家責任の原理に該当します。
2.(×)すべての国民に無差別平等な保護を行うことは、無差別平等の原理に該当します。
3.(×)健康で文化的な生活を維持できる保護を行うことは、最低生活保障の原理に該当します。
4.(○)資産・能力等を活用した上で保護を行うことは、不足部分を補うという考え方であり、補足性の原理の説明として適切です。
5.(×)個人または世帯の必要に応じて保護を行うことは、生活保護法の規定によるもので、基本原理には含まれません。
■問題7
1.テレビのニュースを見て、新しい出来事を覚えてもらう。
2.利用者それぞれの要求には応えられないので、同じ日課で過ごしてもらう。
3.利用者の、現在よりも過去の身体的・精神的状態の把握が優先される。
4.利用者の、なじみのある人や店との関係は継続していく。
5.環境に慣れるまでは、車いすでの移動を勧める。
■解答
4.利用者の、なじみのある人や店との関係は継続していく。
■解説
2.(×)利用者のこれまでの生活に配慮し、できるだけ個別的に対応する姿勢が求められます。
3.(×)認知症は進行性疾患であるため、過去よりも現在の身体的・精神的状態を把握してケアの方針を決定する必要があります。
4.(○)なじみのある人や店との関係は継続してもらいつつ、住み慣れた地域でその人らしい生活を送れるよう支援します。
5.(×)自立歩行が可能である場合は日常生活動作(ADL)の低下につながる対応であり、画一的に車いすでの移動を勧めることは不適切です。
■問題8
「障害者虐待防止法」の視点を踏まえて、Eさんの気持ちが安定するように、施設の介護福祉職がEさんにかける言葉として、最も適切なものを1つ選びなさい。
(注)「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
1.「決まりですから捨てますよ」
2.「読みたい雑誌はとっておきましょう」
3.「古紙として再生利用しますからね」
4.「Eさんにこの雑誌をあげるわけにはいかないんですよ」
5.「次の新しい雑誌がきますよ」
■解答
2.「読みたい雑誌はとっておきましょう」
■解説
1.(×)Eさんの気持ちに寄り添う姿勢がみられず、不適切な対応です。
2.(○)強いこだわりに配慮した対応であり、Eさんの気持ちが安定する最も適切な対応です。
3.(×)処分する雑誌の用途を説明しても、Eさんの納得や同意を得られるとは考えられません。
4.(×)施設のルールを伝えるだけでは、Eさんに拒絶的な対応ととらえられる可能性が高いでしょう。
5.(×)Eさんは今ある雑誌にこだわりを持っているのであり、新しい雑誌の話をしても混乱を招くばかりです。
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