本日のお悩み
今度、はじめてフロアで一人で夜勤に入ります。
すごく不安なので、夜勤のうまい乗り切り方が知りたいです。
自分の体調管理と、日勤との緻密な申し送りが大切
専門家羽吹 さゆり (有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表 アモールファティスクール⻑ 介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員 介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤
初夜勤は緊張しますね。
誰もが初夜勤の時は緊張して不安を抱きますが、少しでも不安を取り除いてから入るように心掛けておけば、それがリスクマネジメントにもなるはずです。
■介護職として夜勤に就く時の心構え
施設の介護職員には、正社員であれば必ず夜勤帯の勤務があります。早番/日勤/遅番/夜勤の交代制勤務が一般的であるため、なかには夜勤専門職員として従事する方もいますが、ほとんどの職員はどの勤務でも柔軟な勤務体制に応じなければなりません。
その上、勤務時間によって提供するケアも異なります。時間帯で提供するケアが違うため、それぞれのサービス内容も覚えなければなりません。
体調と身体のリズムを整えましょう
そこで、まず気をつけたいことが自分の体調の管理。
夜勤帯に一人でフロアーを任されるわけですので、自分以外には頼れる人がいません。
体調を崩さないように健康状態を万全に整えておく必要があります。
施設職員として従事するときに重要なことは、勤務形態に合わせて生活リズムを調整することです。特に、夜勤勤務は日中帯とは体の活動リズムが真逆になります。一般的な生活リズムに逆らって活動をしなければなりません。
どんなに仕事を覚えても、夜勤帯に睡魔に襲われ、業務どころじゃないということもあります。人間は、夜眠り朝起きて陽を浴びることで1日のリズムを整えるようにできているので、仕方がないことではありますが、業務時間に睡魔で仕事に支障があってはなりません。
夜勤前にできる、過ごし方の工夫5選
・夜勤に入る日の昼間は、体力を温存する
・前日の夜は、あえて夜更かしして起床時間を遅らせる
・昼寝をする
・消化の良い食事にする
・自分の排泄管理をする 等々……
夕方からの夜勤か、夜からの夜勤か、入り時間によっても違いはありますが、夜勤中は基本的に睡眠をとることができません。
そのことを前提に、夜勤に入る前に昼寝をしたり、前日は寝る時間を深夜帯にして昼ぐらいまで寝たりと身体のリズムを変えておくなど、夜間帯活動に向けた、ご自分に合った方法を前もって見つけておきましょう。
■不安な時は、感じていることを具体的に書き出してみよう
大丈夫、不安に思うのはあなただけじゃない
不安は、経験を重ねることで自分の対応力にも磨きがかかり、自然と自信がついて取り除かれていくものです。夜勤業務も同じことだと思います。
なので、まずは、「自分だけが夜勤を不安に感じているのではない」「不安に感じていることは恥ずかしいことではない」と思うようにしましょう。経験が少ない方に限らず、ベテランの方でも夜勤に不安を感じる方は多いのです。
夜勤が不安になる4つの理由
なぜなら夜勤は、
・日中帯とは違って人手が少ない。(日中帯よりスタッフの数が少ない/一人でこなす仕事量が多い)
・相談する相手がいない。
・急変時の対応(夜間帯にご利用者の体調の急変等が多い/看護師がいない)
・予期せぬ対応を求められる(転倒/何度も呼ばれる/居室から出て歩き回る) 等々……
場合によっては、日勤以上の集中力が必要になるかもしれません。
不安を取り除く方法は?
また、不安を少しでも取り除く方法としては、「自分が具体的に何に対して不安を感じているのか」を一つ一つ書き出して、それぞれの解決策を考えておくことが挙げられます。
例えば、一人でこなさなければならない仕事量が多く感じられるならば、先輩や同僚はどのような方法で業務をこなしているのかを聞き出してみましょう。介護計画書や、手順書があるかもしれません。それを再確認して見直していくことも大事です。
また、業務に入った時の申し送りもしっかりメモを取っておきましょう。夜間帯に急変しやすそうなご利用者がいる場合は、事前にどのような対応をとれば良いのかを想定しておくことも必要です。このような学びと経験を重ねていけば、不安の度合いもきっと次第に変化していくことでしょう。
■夜勤をひとり立ちするまでの期間はそれぞれ。先輩の失敗談も聞いておこう!
「ひとり立ちは3か月以内」を願う施設が多い
夜勤のひとり立ちは、職員の経験によってまちまちですが、未経験者であれば「社内研修を済ませて、まずは日勤業務をしっかりこなせるようになってから」という施設が多いと聞いています。もちろん施設ごとに差はありますが、「業務に入って3ヶ月以内に夜勤業務にも入ってもらいたい」と願っている施設も多いようです。
先輩によってケアの方法が違うときのとらえ方
また、ひとり立ちするまでの間には、介護に関わる全てのことを先輩から学んでおくつもりでいましょう。ケアの方法、対応の方法、リスクマネジメント、緊急時の対応等、たくさんありますが、実は先輩は、多くの失敗を重ねて、より良いケアの方法を見出していることが多いのです。
「先輩によってケアの方法が違うので、誰のケアが良いのかわからなくて困る」という話を時々耳にしますが、「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」です。先輩のケアの方法を良く観察しましょう。もし、自分がその方法ではできないと不安を感じたら、素直に「難しいので他の方法はないか」と聞くのも良いと思います。
もしかしたら、先輩は他にもたくさんの方法を知っているかも知れません。ただし、それは先輩が苦労して編み出したケアの方法かもしれません。介護者はもちろん、先輩とあなたの体格や手足の長さも違うため、人によって「やりやすい方法」もまちまちです。
夜勤には、「初めから一人夜勤」なんてパターンはないはずです。まずは、それぞれの先輩の方法を観察していきましょう。先輩の失敗談は、実は成功のもとなのです。
■いざ夜勤へ!勤務前にできる準備2つ
急変の予兆がないか確認
夜勤の仕事は利用者の夜間帯部分のケアですが、実は、日中の暮らしを予測した上での連携となります。そのため、日中はどのような過ごし方をしていたのかをしっかり把握しておくことが大前提です。その上で夜間帯にどのようなことが起こり得るのかを予想して準備をしておきます。それがリスクマネジメントにもなります。
夜勤に備えて、日勤のスタッフからの申し送りは大変重要です。
ご利用者のバイタルは勿論のことですが、日中どのように過ごされたのか、活動や発言なども一人ひとり丁寧に確認しましょう。
夜間帯の急変等の予兆が日中からあったということが多くあります。申し送りをしっかりすることで、夜間帯に「起こり得る状況」に備えられます。実際、なにかが起こった際に、慌てず冷静に、一人で対応する準備にもなります。
何も起きずに穏やかな夜間帯であれば良いのですが、起こり得ると予測できることはあらかじめ対策・準備をしておきましょう。
不測の事態への対応は、あらかじめ決めておきましょう
自分一人では大変だと想像する場合は、事前に上司に連絡が取れるように準備をしておきましょう。夜勤の勤務はケアも勿論大切ですが、「予測する力磨き」が鍛えられるシーンでもあります。
また、ご利用者の体調に不安がある場合は、あらかじめ不測の事態を想定して、どのように対応すれば良いのかなどを上司に確認しましょう。
上司がいなければ、引継ぎをした日勤者に相談して決めとくのも良いかと思います。
夜勤者の心構えとしては、いつも予測をたて、事前の準備をすることが大切です。
■専門家が考える、夜勤の魅力2つ
まずは、夜勤手当がつくこと!
夜勤のひとつめの魅力としては、夜勤手当てがつきますので日勤帯の勤務より給与が良いことではないでしょうか。
また、人手は日勤帯よりも少ないですが、不安を感じることもあまりないベテランになってしまえば、自分のペースで準備ができたりします。その為、ストレスをあまり感じることもありません。
夜勤は介護職としての全ての力を発揮できる
利用者の方が安心して安全に夜間帯を過ごしていただけたときは、達成感もひとしおです。夜勤のベテランにもなると、いつも夜間帯にナースコールを何回も押して呼んだり、お部屋から出て歩き回っていた利用者も、ぐっすり良質な睡眠を取れるようになります。
夜勤の業務は、利用者全体を把握しつつ、翌日のエネルギーを補充するために安心安全に休んでいただく大切な時間のケアです。自分の介護職としての力試しの時間とも言えるかもしれませんね。
不安と向き合う方法は?心理学的なアプローチから解説します
ワ☆ノベーション代表 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA) MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士 総合心理教育研究所学術客員研究員
みなさんはどんな不安がありますか?将来の先行きが見通せない、不確実性が高い社会においては不安になりやすいものです。不安を抱えて生活している人が増えています。大きな不安や複数の不安を抱え続けていると心と体にネガティブな反応が起きます。
■そもそも「不安」とは何か?
漠然とした心配や恐怖などの感情(気持ち)のことを指し、危険が迫っているアラーム、落ち着かない状態など、不快な心身の反応です。適度な不安は危険を察知するために必要なものです。
不安の症状は2種類あります。
生理的反応:動悸、発汗、震え、息詰まり、熱感・冷感、腹部の不快感など
心理的反応:緊張、おびえ、不気味、、怖じける、など
不安がなく穏やかに生活したいものですが、適度な不安は必要なものです。何かしらの危険が迫っている可能性を知らせるアラームです。不安があるからこそ危険に備えることができます。危険に対処、回避するために必要なものです。また、不安は人生のスパイスの一つです。たとえば、お化け屋敷やジェットコースター、ホラー映画などはお金を支払って不安や恐怖を体験しています。
■心理学的な観点で、夜勤を不安に思うときの解決方法6つ
心理学的な視点から、夜勤を不安に思うときの解決方法を6つお伝えします。
1.クリアリング・ア・スペース(心の整理術)
不安を考えないようにすればするほど、不安を意識してしまい逆に不安は大きくなっていきます。不安だなぁ~、嫌だなぁ~と考え続けるとネガティブに覆われてしまいます。不安は不安のままでOKなんです。不安な気持ちになった時は、不安を抑圧、回避しようとせずに、不安を認めて、眺める。不安の「置き場所」をつくってください。そのうち距離がとれて気にならなくなります。
クリアリング・ア・スペースは「フォーカシング」の中の1つの方法です。部屋の掃除をするように心の部屋もお掃除をするイメージです。心の部屋を掃除して整理整頓しできると、スッキリして気にならなくなり、楽になります。
不安や心配、モヤモヤなどの気持ちを「認めて、眺める」。認めて眺めていると、自分と「不安や心配」との間におのずと「間」がとれてきます。
自分の内側に意識を向けながら、「どこに置いておけばいいのかなぁ」とやさしく問いかけてみましょう。
机の引き出し、ビンの中、金庫の中、公園のベンチ、山の上、海がキレイな砂浜など、自分が落ちつく場所に置いておきましょう。うまく置けないようなら、場所を変えてみましょう。
※置くことがしっくりこない時は、不安がどこにいきたかっているか問いかけてみてください。
2.心の仕組みモデル(プチ認知行動療法)
不安な場面(環境)を具体的に特定して、その時の自分の反応(思考・感情・行動・身体反応)を書き出してみましょう。書き出す(外在化)ことで体験を整理、理解することができ不安が軽減します。対処をすればさらに効果がでます。
たとえば、夜勤の前日、19時にリビングで横になって1人でテレビのニュースを見ていたとき。
思考:明日は苦手な夜勤だ、やりたくないなぁ・・・。
気分:不安70%、緊張60%、憂うつ50%
行動:お茶を飲む
身体反応:胃がキリキリしてきた。
コーピング(ストレス対処):ぬるま湯でゆっくり15分間入浴する。
コーピングの効果検証:ゆっくり湯船に浸かったからホッとして安心することができた。
不安70%→30% 緊張60%→20% 憂うつ50%→20% 安心50%
自分にとって健康的で建設的なコーピング、ちょっとしたコーピング(質より量)を100個つくりましょう。これが不安から自分をまもるお守りになります。
3.不安ではない例外を探して増やす
四六時中いつも不安であることはありません。夜勤をあまり不安に思わなかった。不安を感じずに夜勤をすることができた。いつもより不安感が少なく夜勤ができた。このような例外を探していきましょう。ここに大切な要素があります。この例外を一つずつ増やしていくことで不安が減少していきます。
4.筆記療法(不安を書き出してみましょう)
何が不安なのかを紙に書き出してみましょう。不安や感情を紙に書き出すだけで効果があります。時間があれば、書き出した不安に不安強度の点数をつけていきましょう。不安を具体化、理解することによって不安への対策しやすくなります。不安への対処ができれば不安が軽減されます。
5.何度も夜勤を繰り返し、慣れる
外的刺激に対する慣れを「馴化」といいます。ざっくり言うと、慣れることによって不安が軽くなります。
夜勤が苦手であっても何度も夜勤を経験し、慣れることで不安感は弱まります。反対に不安なことを回避し続けていると不安が強化されます。
6.職場の同僚や先輩、上司に相談する
自分ひとりで不安を抱える必要はありません。夜勤が不安なことを周囲の人に相談してみましょう。不安に思っているのはあなただけではないかも知れません。みんなも不安であることを知るだけで少し気持ちが落ち着きます。また、不安なときの対処法をアドバイスしてもらえるかもしれせん。
■すぐできる!不安に対処するためのテクニック(Tips)7選
・安心するグッズを身につける 持っていると安心できる、落ち着く、リラックスできるアイテムをお守りとして携帯しましょう。不安がでてきたときに、そのアイテムを眺めてみましょう。
・アロマオイルの匂いで気分を変える
・コーピングワード(ストレス対処の言葉)を言う。たとえば、大丈夫だよ!!なんとかなるよ!!
・不安を吐き出す、安心を吸い込むイメージで深呼吸する。
・体をやさしくさすったり、なでたりする。
・背筋を伸ばして「い~」と声を出します。口角があがり笑顔になります。
・お相撲さんのように四股を踏む。足の裏を床にべったりつけてグランディングすると落ち着きます。
■自信を持って夜勤をこなせるようになるには?
自信をもてると良いですよね。自信を持つためには小さな成功体験を積み重ねていきましょう。気持ちや感情はコントロールしにくいものです。不安で緊張しているときにリラックスと言われても、なかなかリラックスできないように、自信を持てない時に自信を持つことは難易度が高いです。まずは、自分でコントロールできる認知や行動にフォーカスしていきましょう。
できるようになったことも多いはず。少しずつできることを増やしましょう!
夜勤初日と今と比較したら、今のほうができること、覚えたことが多いですよね。業務の流れ、覚えた業務、できるようになったこと、ほめられたこと、感謝されたこと、わからないことなど、こまめにメモをしておきましょう。
仕事が終わったら振り返りをし、次回の夜勤前にイメージリハーサル(イメトレのこと)をしましょう。大切なことは手間や暇がかかります。スモールステップで積み重ねていきましょう。
重要なことはやるべきことにしっかり取り組むことです。不安であろうがなかろうが、自信があろうがなかろうがやるべきことをやることが重要です。やるべき業務を洗い出し、一つずつ着実に取り組んでいきましょう。不安で自信がなくても、できることが増えてくれば自信もついてきます。
■自信がないとき役立つ行動テクニック(Tips)5選
・声を大きくする
・背筋をのばす
・笑顔で話す
・ゆっくり話す
・大きめなジェスチャーをする
専門家・島田さんの場合は…?
余談ですが僕は知力が低いのですが、恥力は高めです笑。不安で自信がなくてもとりあえずチャレンジします。もちろん失敗することが多く、できなくて笑われることもあります・・・。それはそれとして、試行錯誤を繰り返し、コツを覚えて実践し、できることを増やして、自信をつけるパターンです。
・(有)⽻吹デザイン事務所介護事業部アモールファティ代表
・アモールファティスクール⻑
介護福祉⼠/介護⽀援専⾨員/介護技術指導員/⽇本語教員/社会科教員
介護職員実務者教員/社会福祉主事任⽤
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