自立支援介護とは?
■執筆者/専門家
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業、地域包括支援センターにて介護支援専門員の経験あり。 現在は、デイサービス管理者として勤務。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営の経験がある。 すきな食べ物はラーメン。
介護者が生活動作を何でも介助してしまったり、利用者の代わりに家事援助を行うといういわゆる「お世話」をしたりしてしまうことは、自立支援介護とは言えません。
自立支援介護では、利用者の残された能力を最大限に引き出し、自立した生活を送れるよう、専門的な知識と技術を持った介護者が寄り添い、要介護状態の改善または悪化の防止を目指しています。
自立支援介護は、単に介護を提供するだけでなく、利用者のQOL(生活の質)向上、介護する側である家族の負担軽減、そして介護保険費や医療費の削減にもつながることが期待されています。
■自立支援介護の目的
身体機能や認知機能の低下を防ぎ、可能な限り自立した生活を維持することを目指します。
2.利用者の意欲を引き出し、潜在能力を発揮
利用者の「やりたいこと」や「できること」を見つけ出し、それを最大限に活かせるような支援を行います。
3.住み慣れた地域での生活
利用者が、自分にとって最も快適な環境である、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援します。
■デイサービスをきっかけに介護保険サービスからの卒業を目指す
これは、利用者の状態が改善し、介護保険サービスを利用しなくても自立した生活ができるようになったことを意味します。
実際に、私の事業所でもデイサービスを卒業し就労に復帰された方がいらっしゃいます。
一度介護サービスを利用しはじめると、サービスを利用し続けないと不安、と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、本来介護保険制度の目的は介護保険法に「要介護状態又は要支援状態の軽減や悪化の防止に資するよう行われる」と記載されています。※
つまり、デイサービスに通うことは、目的ではなく「元気になるための手段」なのです。そのため、要介護状態が軽減したら介護保険サービス以外の地域の取り組みに繋いだり、自主的な活動に切り替えることによって、卒業後も自立した生活を継続していくことを目指しています。
※出典:厚生労働省 介護保険制度の理念等について
自立支援介護「4つの基本ケア」
2.栄養摂取
3.自然排便
4.運動
■1.水分摂取
高齢者の場合、身体に1~2%の水分が足りていないだけで「やる気がなくなる」「うとうとする」といった症状が出てきます。最低でも1日1500mlの水分補給を行います。
■2.栄養摂取
1日1500kcalのエネルギー量を確保することが望ましいです。
■3.自然排便
適切な食事、水分摂取、運動を行うことで、自然な排便を促し、下剤の減薬を目指します。
■4.運動
あらゆる生活動作は歩行と結びついているため、利用者さんの様子はもちろん確認しつつ、積極的に歩行機能訓練を行っていきます。
自立支援介護の取り組み例
■時間の限られたデイサービスでできる自立支援介護
そのため、理解を促す説明や声かけを繰り返し、生活習慣を見直していただくことで状態の改善を促します。特に、水分摂取については経験上ほとんどの方が1日に必要な水分量が足りていません。私たちのデイサービスでは3時間の滞在中に500mlの水分摂取をしていただけるようこまめに声かけ、水分提供しています。
■自治体で行われている自立支援介護
要介護状態の改善やADL維持に貢献をすると、インセンティブを支給する制度を導入している自治体も増えてきました。
自治体によって内容は異なりますが、東京都の要介護度等改善促進事業、品川区の要介護度改善ケア奨励事業、川崎市の健幸福寿プロジェクト、浦安市の要介護改善ケア奨励事業補助金、などがあります。そのほか静岡市、浜松市、名古屋市、川西市、岡山市、福岡市などでも導入されており、今後も増加していくことが予想されます。
最後に:介護が必要になっても自分らしく暮らせる環境づくりを
今後、自立支援・重度化防止に向けた対応がより求められてきますが、ICT技術の活用や、多職種連携による包括的な支援体制の構築など、様々な取り組みを検討していくことで、利用者や家族、介護者、そして地域住民が一体となり、介護が必要となっても自分らしく暮らし続けることができるまちづくりを推進していかなければならないと考えています。
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社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員