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「羞恥心に配慮した声掛け」とは?声掛けの方法や考え方を解説

「羞恥心に配慮した声掛け」とは?声掛けの方法や考え方を解説

恥ずかしいと思うことは人によって違います。介護の仕事は「すべてがプライバシーに触れる」と理解しておこう。【回答者:古畑 佑奈】


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「羞恥心に配慮した声掛け」とは?声掛けの方法や考え方を解説

古畑 佑奈

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/19

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

そもそも羞恥心とは?

そもそも羞恥心を感じるとはどういったことでしょうか。
羞恥心を辞書で調べると「はずかしいと感じる気持。はじらいの気持」と書いてあります。

人は、どのような時に「恥ずかしい」と感じるでしょうか。
たとえば私だったら、家でゴロゴロしているところを親しくない人に見られたり。
密かに書いている日記を、誰かに読まれたり。
仕事で失敗をしたことを、他の部署の人にも知られたり。
同じことをしても、全然恥ずかしくないと思う方もいるでしょう。

「恥ずかしい」と思うことは人によって違う

人によって恥ずかしい、と感じる度合いは異なりますし、同じ場面であっても、相手によって感じ方も変わってきます。
友達だったら見られても恥ずかしくないけど、家族だから恥ずかしい、とか、逆に他人には恥ずかしくて見られたくない、とか。
いずれにしても、私たちはプライバシーを侵害されたり、プライドが傷つけられられたときに「恥ずかしい」と感じますね。
またそれ以外にも「親しい関係の人に、感謝の気持ちを正面から伝えづらい」といった恥ずかしさもあります。

どうやら恥ずかしさというのは、人間以外の動物は感じないそうです。
ヒトは社会的動物と言われ、社会の中で生きていくためには、人の役に立ち、信頼を得、不愉快な思いをさせないよう気を遣わなければなりません。
恥ずかしさとはつまり、社会的な自分のイメージを守るために必要な心の働きです。自分が思っている周囲の評価や信用とのギャップがうまれたとき、羞恥心は「恥ずかしい!」という警報を送ります。それは、私たちが社会に適応するための働きです。

必要な心の働きとはいえ、その羞恥心を他者から「与えられる」とどうでしょう。
私たち介護職が「お風呂に入らないと汚いですよ!」と伝えたり、「○○さん、お通じ出ましたね!よかったよかった!」などと大声で話したり、といったプライドやプライバシーを傷つける言動は、利用者の方にとって大きなストレスとなります。
特に、認知症の方は、不安や心配を感じやすくなる傾向があります。
これまで出来ていたことが出来なくなった時の不安な感情と、羞恥心とが相まってBPSDと言われる行動・心理症状として表れることも少なくありません。

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羞恥心に配慮した声掛けのコツ

このような心の働きを理解した上でどのように声をかけるか。
私は、プライドやプライバシーに対しての意識は人それぞれであるため、コミュニケーションの中でその方の基準を知ろうと気を付けています。

冒頭、私は密かに書いた日記を読まれるのが恥ずかしい、と言いましたが、利用者さんで、書いた日記を自ら見せてくださる方がいらっしゃいました。その方は日々起きたことを丁寧にメモし、人に伝えるために日記を書いて、いつも楽しそうに話してくださいました。
つまり「プライバシーの侵害になりうるから、配慮して日記を読んではいけない」と一律に考えてしまうということではなくて、「その方にとって、どこまでがパブリック(公に他者に見せている姿)で、どこからがプライバシーを侵害していると感じるのか」を探ることが重要です。

自分だったら、ということを考えるのももちろん大切ですが、自分とは異なる考えの人もいることを念頭に置きます。

介護の仕事は「すべてがプライバシーに触れる」と理解しておこう

生活全般を整える介護の仕事は、すべての情報がプライバシーであるといっても過言ではありません。
1日の過ごし方、生活歴、これまでの既往歴、今の体調のこと、家族のこと、経済状況などなど。
まだ関係性が浅いうちは最大限配慮し、どんなことがその利用者さんにとってプライバシーやプライドを傷つけるのか分からないため、聞く場所や聞き方には十分注意します。

具体的には、他の方に聞こえない場所で話す、クッション言葉(差支えなければ…、答えづらいかもしれませんが…)を使う、といった配慮をしています。
特に、更衣や排泄、入浴といった行為は介護職からすると当然のことと思いますが、利用者さんによっては「人にしてもらう」という行為自体を恥ずかしいと感じる方もいますし、肌が見えるケアを行うときは特に、声掛けだけではなく物理的な配慮(カーテンや扉を閉めて見えないようにする、タオルで隠すなど)に注意します。

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羞恥心に配慮した声掛けについてのお悩み

看護師について相談なのですが、利用者さんに対して羞恥心に配慮しない発言が多く、困っています。
例えば、トイレが間に合わなかった利用者さんのことを大きな声で指摘したり。

何度かやんわり注意をしていますし、施設長にも相談したりしていますが、改善しません。
その看護師は施設で長く働いていて、施設長や他の管理職とも仲が良いから…とか、看護師だから…と遠慮してしまう自分もいます。

私が考えすぎなのかなとも思いますが、どうしたらいいでしょうか?

職場のルールを見直してみてはいかがでしょうか

ご質問を拝見し、質問者さんは利用者の方々の尊厳を守るケアをしている方なのだと感じました。
施設長に相談したり、やんわりと注意をしたりと、実際に行動にも起こしている姿勢は素晴らしい
ですし、決して考えすぎではありません。

いつでも利用者さんと対等でいるために

言葉遣いは、ケアの質に直結します。
そして、伝染しやすいです。

利用者さんからしたら、職種や勤務歴や役職は、まったく関係ありません。
私たち介護職は、利用者さんにとって優位に立ちやすい関係性であるという自覚を持ち、
対等な関係性を保つためには自分たちの使う言葉に常に敏感にいなくてはならないと考えています。

言葉遣いのルールを明確にしましょう

さてご質問に対し、具体的な対応を考えてみました。
質問者さんが感じている違和感を組織全体の認識にするための方法の1つとして、
「ルールを明確にする」ということがあります。

質問者さんの職場には、言葉遣いのルールがありますか?
ルールとは、その組織に属する以上守るべきこと。

もし、なければ、ルールを作るように上長に働きかけてみましょう。
もし、すでにあるようだったら、ルールの徹底や見直しを働きかけましょう。

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言葉遣いを大切にするムーブメントを

個人で対応することももちろん大切ですが、「組織全体で言葉遣いについて考える」という大きな
ムーブメントにするのも1つの手ではないかと思います。

きっと、実は気になっていたけれど言えない人や、その看護師さん以外にも言葉遣いが気になる人、そもそも利用者さんにどう声をかけていいのか分からなくて不適切な声かけになっている人など、
いろんな方が組織にいるのではないかと思います。
ルールが明確であることで、不適切な声かけに対する根拠となります。

最後に

繰り返しになりますが、質問者さんは決して考えすぎではありません。
利用者の方々の尊厳を守る、とても重要な気づきです。

この先も理想のケアを追究し、疑問に対して声を挙げ続けてほしいと思います。

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