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「羞恥心に配慮した声掛け」とは?声掛けの具体例や考え方を解説

「羞恥心に配慮した声掛け」とは?声掛けの具体例や考え方を解説

[2025年3月13日更新]恥ずかしいと思うことは人によって違います。介護の仕事は「すべてがプライバシーに触れる」と理解したうえで、羞恥心に配慮した声かけのポイントや具体例を紹介します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


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執筆者/専門家

古畑 佑奈

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/19

社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員 特別養護ホーム生活相談員、訪問介護事業、地域包括支援センターにて介護支援専門員の経験あり。 現在は、デイサービス管理者として勤務。 地域でのネットワーク活動では事務局として「死について語る会」や「3大宗教シンポジウム」など幅広いテーマの勉強会やイベントを企画・運営の経験がある。 すきな食べ物はラーメン。

そもそも羞恥心とは?

そもそも羞恥心とはどのようなものなのでしょうか。

羞恥心とは、自分が他人に対して恥ずかしいと感じる感情のことです。私はたとえば、仕事で何か失敗をしたときや、密かに書いている日記を読まれたとき、プライベートな部分を見られてしまったときなどに感じます。

羞恥心の感じ方は人によって違う

羞恥心は誰にでもあるものですが、感じ方や強さは人それぞれです。同じ場面であっても、相手によって感じ方は変わってきます。 また、友人には見られてもいいけど、家族だと恥ずかしい。今日はなんとなく見られたくない気分だった…のようにそこにいる人や、日時によっても感じ方は変わります。

いずれにしても、私たちはプライバシーを侵害されたり、プライドが傷つけられられたときに「恥ずかしい」と感じます。感じ方の度合いは、個人の性格や過去の経験などといった背景事情も影響しています。

羞恥心は生きていくうえで重要な感情

羞恥心(恥ずかしさ)という感情は、人間なら誰しもが持っている特有の感情で、研究段階ではありますが、動物にはない感情であると言われています。

ヒトは社会的動物と言われており、社会の中で生きていくためには、誰かの役に立つこと・信頼を得ること・不愉快な思いをさせないことなど気を遣って生活をしています。羞恥心(恥ずかしさ)というのは、これらのバランスを保ち、社会的な自分のイメージを守るために必要な心の動きなのです。

自分が思っていたイメージと、周囲の評価や信頼にギャップが生じたとき、人は「恥ずかしい!」という感情を抱きます。これは、私たちが社会に適応するために必要な働きなのです。

過度な羞恥心はストレスに繋がることも

必要な心の働きとはいえ、その羞恥心を他者から与えられたり、過度なものだったりしたらどうでしょうか。

例えば、介護の現場で介護職が「お風呂に入らないと汚いですよ!」と伝えたり、「○○さん、お通じ出ましたね!よかったよかった!」などと大声で話したりといったプライドやプライバシーを傷つける言動は、利用者の方にとって大きなストレスとなります。

特に、認知症の方は、このストレスや不安、心配を感じやすい傾向があります。今までできていたことができなくなったときの不安な感情に、介護職の声かけが原因で羞恥心も芽生えてしまうと、BPSD(行動・心理症状)として暴言や暴力、妄想、抑うつなどの症状が表れることも少なくありません。

羞恥心に配慮した声掛けのコツ

羞恥心 声かけ

このような心の働きや、声かけの重要性を理解したうえでどのように声をかけるか。ここからは、声かけのポイントを紹介します。

1.相手の基準を知る
2.介護職は全てがプライバシーに触れると認識しておく
3.クッション言葉を使う
4.物理的な配慮もおこなう

1.相手の基準を知る

まず私は、プライドやプライバシーに対しての意識は人それぞれであるため、コミュニケーションの中でその方の基準を知ろうと気をつけています。

冒頭、私は「密かに書いた日記を読まれるのが恥ずかしい」と書きましたが、利用者さんの中には、書いた日記を自ら見せてくださる方もいらっしゃいました。その方は日々起きたことを丁寧にメモし、人に伝えるために日記を書いて、いつも楽しそうに話してくださりました。

つまり「プライバシーの侵害になりうるから、配慮して日記を読んではいけない」と一律に考えてしまうのではなく、その方にとって、どこまでがパブリック(公に他者に見せている姿)で、どこからがプライバシーを侵害していると感じるのかを探ることが重要です。その際に、「自分だったら」ということを考えるのももちろん大切ですが、自分とは異なる考えの人もいることを念頭に置くようにしましょう。

2.介護職は全てがプライバシーに触れると認識しておく

生活全般を整える介護の仕事は、すべての情報がプライバシーであるといっても過言ではありません。1日の過ごし方、生活歴、これまでの既往歴、今の体調のこと、家族のこと、経済状況など介護をするうえで重要な情報は、すべてプライバシーに関わるものです。

そのため、まだ関係性が浅いうちは最大限配慮をし、どんなことがその利用者さんにとってプライバシーやプライドを傷つけるのか分からないため、聞く場所や聞き方には十分注意しています。

3.クッション言葉を使う

介護職として声かけを行ううえで、どんなに配慮をしてもプライバシーや羞恥心に触れてしまう場合があります。そのため、もし触れてしまったときでもその影響を最小限におさえるため、クッション言葉(ビジネス枕詞)を活用しています。

クッション言葉には、主に以下のようなものがあります。
クッション言葉

4.物理的な配慮もおこなう

また、更衣や排泄、入浴といった行為は介護職からすると当然のことと思いますが、利用者さんによっては「人にしてもらう」という行為自体を恥ずかしいと感じる方もいらっしゃいます。

そのため、肌が見えるケアを行うときは特に、声掛けだけではなく物理的な配慮(カーテンや扉を閉めて見えないようにする、タオルで隠すなど)に注意します。

羞恥心に配慮した声かけの具体例3選

ケース1:排泄介助

排泄は利用者さんにとって他の介助以上に羞恥心を感じやすいものです。そのため、利用者さんの状況に応じて声かけや環境づくりに配慮する必要があります。
以下でポイントを紹介します。

【排泄介助時の声かけや配慮のポイント】

・トイレに行く際はできるだけ周りに聞こえないように声をかける
・おむつを交換する際はカーテンやタオルで覆って隠す
・においにも配慮する
・「~しますね」のように介助する際は事前に声をかける

このように状況に応じて声かけやそのタイミングを配慮する必要があります。安心できる排泄介助を提供することで、利用者さんも排便をスムーズに行えるようになります。排便がうまくいかないと健康問題にも繋がってくるため、排泄介助を行う際は、いつも以上に羞恥心に配慮する必要があるでしょう。

ケース2:入浴介助

入浴介助では、利用者さんに安心してもらい、心地よい時間と感じてもらうことが必要です。
以下でポイントを紹介します。

・「~してあげますね」という上から目線と捉えられる声かけは行わない
・「汚い」「汚れている」など否定的な言葉は使わない
・「さっぱりしましょうね」「気持ちいいですか」など前向きな言葉を使う
・お風呂の手順はいつも同じにし、安心してもらえるようにする
・「お湯加減はいかがですか」「気になる箇所はないですか」などこまめに声をかける

このように、入浴は楽しみにしている利用者さんも多いため、前向きな声をかけリラックスした雰囲気づくりが大切です。

ケース3:陰部洗浄

陰部洗浄は、1人で陰部を清潔に保つことが困難な方に対する重要なケアですが、他者に陰部を見られ、洗浄されるというのは非常に強い羞恥心を感じる場面でもあります。

以下で陰部洗浄を行う際の声かけや配慮のポイントを紹介します。

・「洗ったら気持ちいいですよ」など前向きな声かけをおこなう
・声色や声の高さも意識をし、高圧的にならないようにする
・「汚いから洗いますね」といった批判的な言葉は使わない

このように、羞恥心を感じやすい場面であるからこそ、前向きかつ明るい声での声かけが大切です。

羞恥心に配慮した声掛けに関するお悩み

お悩み:周囲の職員が羞恥心に配慮しない声かけをしています

介護施設で一緒に働く看護師さんについて相談です。
利用者さんに対して羞恥心に配慮しない発言が多く困っています。例えば、トイレが間に合わなかった利用者さんのことを大きな声で指摘したり、利用者さんの失敗を責めるような声かけをしたりします。

何度かやんわり注意をしていますし、施設長にも相談していますが、改善しません。その看護師さんは施設で長く働いていて、施設長や他の管理職とも仲が良いから…とか、看護師だから…と強く注意することは遠慮してしまう自分もいます。

私が考えすぎなのかなとも思いますが、どうしたらいいでしょうか?

回答:職場のルールを見直してみましょう

ご質問を拝見し、質問者さんは利用者さんの尊厳を守るケアをしている方なのだと感じました。施設長に相談したり、やんわりと注意をしたりと、実際に行動にも起こしている姿勢は素晴らしいですし、けして考えすぎではありません。

言葉遣いは、ケアの質に直結します。そして、1人が誤った話し方をしていると周囲の人にも伝染しやすいものです。また、利用者さんの立場で見ると、職員さんの職種や勤務歴、役職などは全く関係ありません。

私たち介護職は、利用者さんにとって優位に立ちやすい関係性であるという自覚を持ち、対等な関係性を保つためには自分たちの使う言葉に常に敏感にいなくてはならないと考えています。そのために、職場全体のルールを見直していけるとよいでしょう。

言葉遣いのルールを明確にしましょう

では、職場全体のルールを見直すとき、どのようなルールを作成していけるとよいのでしょうか。

最も大切なのは、やはり言葉遣いのルールです。質問者さんの職場には、言葉遣いに関するルールはありますか?ルールとはその組織に属する以上守るべきことです。もし、職場にルールがないようでしたら、上長に働きかけてみる必要がありますし、ルールがあるにも関わらず、守られていないようでしたら、ルールの徹底や見直しの働きかけが必要です。

言葉遣いを大切にするムーブメントを

個人で対応することももちろん大切ですが、組織全体で言葉遣いについて考えるという大きなムーブメントにするのも1つの手段ではないかと思います。

きっと、実は気になっていたけれど言えない人や、その看護師さん以外にも言葉遣いが気になる人、そもそも利用者さんにどう声をかけていいのか分からなくて不適切な声かけになっている人など、さまざまな方が組織にいるのではないかと思います。

これらの方々に適切な指導をするためにも、組織全体としてルールが明確であることで、不適切な声かけに対する根拠となります。

まとめ:羞恥心に配慮した声かけは大切です!

繰り返しにはなりますが、羞恥心に配慮した声かけは利用者さんの尊厳を守るうえで非常に大切な心がけです。どんなに介護の質が高くても、言葉選びが配慮に欠けていると、利用者さんにとっては不満足な介護と受け取られてしまいます。

お互いが気持ちよく関係性を築いていけるよう、今回紹介した声かけのポイントも活かしつつ日々の介護に励んでみてください。

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