本日のお悩み
事前の聞き取り通りに掃除をしても、クレームを入れてくる利用者さんがいました。
わずかな拭き残しでもすごい勢いで電話をかけてきます。
掃除はそんなに完璧にならなくてはいけないものでしょうか?
訪問介護の家事支援とは?
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
日々の業務、お疲れ様です。
ご質問いただいた内容、とても共感いたします。
生活援助の家事支援については、掃除に関わらず、調理などでも同じ問題は起こりますよね。
私たちが、同じような問題に直面した際に、どのようにアプローチしているかをご紹介させていただきます。
少しでもご参考になれば幸いです。
■事業者側の立場で考えると
まず、居宅サービス計画書、いわゆるケアプランの目標を確認します。
解決すべき課題と目標を照らし合わせた際に、ケアマネジャーが掃除という行為をどのように位置づけているのかを確認する必要があります。
疾患等の理由により環境整備を行わなくてはならないが、ご利用者様自身で行うことは難しい場合
「疾患等の理由により環境整備を行わなくてはならないがご利用者様自身で行うことは難しいので、訪問介護で掃除を行い、疾病等の悪化や予防を行う」
この場合、掃除はあくまで手段ですので、その課題に見合う程度の掃除を実施すればよいということになります。
介護保険で対応できる範囲は、あくまで「自立支援」であるという考え方です。
その方の生活課題の解決に支障のないレベルの掃除のやり残しであれば、業務としては成立します。
それ以上のレベルをお求めになるのであれば、介護保険以外の自費サービス等での対応をご検討いただくとよいと思います。
また掃除範囲については、あくまで本人だけが使用する範囲のみの対応となります。
同居ご家族がいる場合に強要で利用する場所や、一人暮らしであっても日常的には全く利用しない場所などについては対応できません。
また、屋外の掃除についても原則的に対応できないことになっています。
さらに、「日常的な生活のお手伝い」ですので、年に数回だけ行うような掃除についてもできないことになっています。
詳細については、老計第10号「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」や老振第76号「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」をしっかりと読み込んでおくことが大切です。
「日常的な生活のお手伝い」の場合
要介護状態となる前から、ご自宅の掃除は徹底的にきれいにしていた。
解決すべき課題が「要介護状態になったことで、徹底的にきれいにした自宅で住むという生きがいを続けることができなくなった」という場合。
このプランの場合の目標は「自分で納得ができる掃除ができるようになる。」ということですので、掃除できるようになることが目標となります。
そうなると、わずかな拭き残しがあった場合、それをご利用者様自身で拭けるようになるかどうかが問題となってきます。
拭けない場合は、ヘルパーが拭くことが解決ではなく、拭けない状態にしている原因を考えなくてはならないのです。
拭き残しの場所が浴槽の一番下の部分で、膝が痛くて、その拭き残しを自分で拭くことができないのであれば、浴槽の出入りをしやすくするような福祉用具を活用するとか、膝の治療やリハビリを行えるようにケアプランを作成するなどの方法が考えられるわけです。
そのような状況のときは、拭き残しのある場合は、できるようになるまではヘルパーが拭くことが求められるかもしれませんね。
しかし、それは永続的ではなく期間を区切って行うものだと考えます。
■ご利用者側の立場で考えると
ここまでお話したのは、あくまで事業所側の立場としてのお話です。
ご利用者様の立場として考えるとどうでしょうか?
ご利用者様としては、「金銭的負担をして掃除を依頼して、その掃除が不十分であった。」となれば、いくら事業所側の立場で説明しても、ご納得をいただくことは難しいかもしれませんね。
そんなときは、まず、ご利用者様の希望通りではなかったことに対して謝罪から始めてはいかがでしょうか?
利用する前に期待した訪問介護へのサービス内容と実際のサービス内容に差があったわけですから、その部分についての説明責任を果たせていなかったと考える姿勢も大切だと思います。
そして謝罪の後に、訪問介護で提供する掃除とはどのような考えなのかをご説明いただき、今後の利用方法について、その差を埋めるという作業を行うことが大切だと考えます。
■背景に「寂しさ」がある場合も
また、実は色々な訴えをしている背景に、「寂しさ」を感じている方もいらっしゃいます。
苦情として訴えることで、責任者や誰かが来て、話し相手になってくれることを求めているというケースもありました。
その場合は、反復されると事業所としても困ってしまうので、ケアマネジャーと、情報共有しながら「寂しさ」を少しでも軽減できる方法を模索していくのだと思います。
■最後に
「日常生活」という定義があいまいなのですが、それは当たり前のことで、みんな生活の仕方はバラバラですよね。
価値観もバラバラです。
そのひとつひとつに耳を傾け、心を向けて、寄り添っていくことが訪問介護の醍醐味でもあります。
ぜひ、体に気をつけながら、日々の業務をいっしょにがんばっていきましょう!
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事
茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中
介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級