本日のお悩み
管理者をしている者です。
「ワクチン受けなかったらクビ」が話題になりましたが、クビとはいかないまでも、立場上はまあ分かるな…というのが素直な感想です。
ワクチンを受けたがらない職員がいて、公言している場合にはどう対応するのが正解なのでしょうか?
ワクチンハラスメントとは?
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもみじ館施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
ご質問ありがとうございます。
新型コロナウイルス対策としてワクチン接種率向上は政府の取り組みでも一丁目一番地です。
実際、ワクチン接種率(2回)が8割を超えている高齢者の感染率は10%を下回り、感染者はワクチン接種率の低い若い世代へと移行していることも事実。
最近はワクチンを2回接種していても感染するブレークスルー感染も増加していますが、致死率はワクチン未接種者より大幅に低い(5分の1)状況であることを捉えるとワクチンの効果はやはり大きいと考えられます。
■インフルエンザ予防接種の接種率を知っていますか?
さて、ご質問の件、「ワクチンハラスメント」についてですね。
ちなみに質問者さんはインフルエンザ予防接種の接種率がどのくらいだと思いますか?
実は全人口の40%程度です。(厚生労働省統計)
ということは、約6割の人が受けていなくても(一般成人の接種率は30%弱)世の中的には何も言われなかったんですね。
私の記憶をさかのぼってもワクチンハラスメントなんて言葉はコロナ禍以前なかったように思います。
■ワクチンハラスメント(ワクハラ)とは何か?
「ワクチンハラスメント(ワクハラ)」とはワクチン接種を希望しない人への強制や差別を言います。
例えば、ご質問にもあるワクチン未接種での退職勧告、接種したかどうか確認する名簿などの張り出し、接種しない理由をしつこく聞くなどが挙げられます。
確かに、事業所で新型コロナウイルスの感染者がでれば、濃厚接触者に該当した者は2週間の出勤停止、また、感染が広がればクラスターの恐れ、更には、関係者の家族にまで影響が広がります。
もちろん、事業所閉鎖にまでなれば経営にも大きな影響を出しかねません。
■ワクチン接種を強制してはいけない理由
しかしながら、なぜ、ワクチン接種の強制がいけないのでしょうか?
それはワクチン接種が「努力義務」だからです。
努力義務とは予防接種法の第9条に規定され、「接種を受けるよう務めなければならない」という意味合いになります。
つまり、あくまでも国民の皆さまに接種にご協力いただきたいという趣旨であり、自分で選択できるということになります。
また、予防接種法は、日本国憲法下に位置づけられているため、ワクチン接種を強制することは憲法違反にあたることになります。
ということで、ワクチンハラスメントはダメだと国や行政が盛んに呼びかけているということになるんですね。
もちろん、自分で選択する場合、アレルギー等健康上やむを得ない事情で打ちたくても打てない方も入りますので、ワクチン接種は、やはり慎重に取り扱わなければならないと言えるでしょう。
■管理者にできるのは、職員の行動を信じること
では、本題です。
「ワクチンを受けたがらない職員がいて、公言している場合」の対応ですが、受けないという判断、公言することは問題がありません。
すなわち本人の判断を認めることが重要です。
もちろん、非難したり、強要したりすることもいけません。
しかし、心配になる管理者さんの気持ちもわかります。
私達(私も管理者の端くれです)にできることは、緊急事態宣言等、感染症の状況により政府、または各自治体が出している要請に従った行動を職員に促すこと、状況に応じた抗原検査等の協力依頼、そして職員の行動を信じることだと思います。
■最後に
令和3年度の介護報酬改正によりハラスメント対策はより事業者に強く求められることとなりました。
新型コロナウイルス感染への心配、恐怖はありますが、一方でハラスメント対策強化の事実があること、職員に正確な情報を届けることを両輪で運営してはいかがでしょうか?
私もあらためて肝に銘じたいと思います。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)