本日のお悩み
デイサービスを利用されている、認知症の方の対応に悩んでいます。
ご家族の姿が見えないと不安になってしまい、立ち上がり始めてしまいます。「ここに突然連れて来られて…本当に帰って来るのかしら?」と話されます。
スタッフが常に付き添い会話をしていられればその場に腰かけていることは可能なのですが、人員不足で難しい状況です。
その方が安心して過ごすのはどうしたら良いかと考えていますが、家族写真を見せても人物を認識できず、何かを作ったり、雑誌を読むというのもできない方です。
唯一、お花が好きな方なので簡単なフラワーアレンジメントをしてみたら、花を刺したり、バラをみてご自身の庭にも咲いていたなんて話しをされたことはありました。
が、その時間も長続きはせず、かつ、付き添っていないとその作業もできない状態です。
短時間の利用なので、なんとかその場しのぎの対応はしていますが、不安になられてしまうことが続くと今後利用を拒否されるといったことにならないかと不安です。
ご家族の介護疲れもあるので、利用は継続してほしいという想いがあります。
また、その方は他のデイで受け入れを断られ続けていた方で、私の勤め先のデイには唯一何度か利用してもらえている背景があります。
1人で時間を過ごせる方法はないかと日々悩んでいます。
相談者:みみ さん
利用者さんになりきって考えてみてはいかがでしょうか
毎日のお仕事お疲れさまです。
ご質問を読んで、デイサービスの情景が目に浮かびました。
質問者さんは、ご利用者さんに「職員が声をかけなくても穏やかに、1人で座ったまま時間を過ごしてほしい」と考えていらっしゃると読み取りました。
転んだら怪我をしてしまうから…
他の利用者の方も不安になってしまうから…
職員に話しかけることで業務が止まってしまうから…
他にも理由があるかもしれません。
ここでちょっくら、「もし自分だったら」で考えてみましょう。
■利用者さんの立場になって考えてみると
朝、家に突然迎えの車がやってきた。
優しそうな人だなと思って着いていった。
すると全然知らない場所へ来てしまった。
興味のないイベントに参加しなければいけなくなった。
家族の姿が見えない。知り合いも、友だちもいない……。
そんなことが起きたら、私たちも「早く家に帰りたい」「安心できる人が近くにいてほしい」「なんでここにいるのかわからない」と考えそうです。
それから、どんな人でも同じ姿勢で長時間居続けるのってけっこうしんどいことなのではないかと思います。
私の場合、映画館で映画を観る2時間はとてもじっと座っていられず、いつももぞもぞ動いてしまいます。
加えてその方は、ご家族の姿が見えなくて不安な気持ちでいっぱい。となると、いてもたってもいられず、立ち上がるということは当然の行動かもしれませんね。
同じ出来事でも、「職員の目」でとらえるのか「その利用者の方の目」でとらえるのかによって、見えてくるものが変わってくるのではないでしょうか。
■デイサービスに来ていることの「意味づけ」をする
「なぜここにいるのかわからない」という不安に対して出来ることの1つに、意味づけや役割を作ることがあると思います。
その方の好きなことを生かしてお願いごとを作ったり、ご家族とも相談してそこにいる理由を作ってもらい、一筆お手紙をいただいたり。
方法は無限にあり、それを考えるのが介護のおもしろいところだと思います。
ポイントは、その利用者の方になりきって、その方の目になって考えることです。
ぜひチームで考えて、いろいろな案を試してみてください。
また、環境を整備し、立ち上がりたいときに室内を自由に動いていただくのも1つの手ではないかと思います。
■利用者さんが安心してそこにいられるために、考え続ける
短期の記憶維持が難しく、場所も時間もわかりにくくなるのが認知症という症状です。
毎日、毎時間、毎分毎秒、そこに自分がいていいのか、不安を感じながら過ごしているかもしれない方に対して「そこにいるだけで大丈夫」と思っていただける環境を作り、働きかけること。
考え続けることが私たちの仕事です。
質問者さんの思いが、利用者の方々の安心につながるよう、少しでもヒントになれば幸いです。
社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員