本日のお悩み:利用者さんの名前が覚えられない
人の名前を覚えるポイントやコツを教えてください。
顔と名前を覚えるコツは、「コツコツ・メモ・リハーサル」が重要です!
■執筆者/専門家
ワ☆ノベーション代表 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA) MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士。 総合心理教育研究所学術客員研究員。
利用者さんのお名前が覚えられなくて困っていらっしゃるのですね。そもそも名前を覚えるのは難しいことです。
まず、お伝えしたいことは、名前を覚えられないことを自覚していて、それを解決しようとしていることが素晴らしいです。 名前を覚えるために重要なことは、意図的に覚えようとすることです。
質問者さんは覚えようとしているので、これからお伝えすることを実践できれば、今までより苦手意識を減らすことができると思います。
人の名前を覚えられない理由・原因とは?
その原因や理由から考えていきましょう。以下が、人の名前を覚えることが苦手な主な要因です。
2.覚える必要性を感じていない
3.さまざまな外部要因がある
■1.相手に興味・関心がない
たとえば、学生のころに、好きなゲームの登場人物や技などはすぐに覚えられても、歴史の授業で出てきた人や戦の法令は覚えられない…といった経験はありませんか?
人の名前を覚えるためには、相手のことをよく知り、興味・関心を持つことが大切です。
■2.覚える必要性を感じていない
たしかに、学生時代はお世話になっている先生や、友人の名前がわかれば大きく苦労することはなかったかもしれません。しかし、介護施設では、利用者さん自身も名前を覚えてもらえているだけで、存在を認めてもらえたと感じる可能性があります。
ただ「おはようございます。」と伝えるのではなく、「○○さんおはようございます。」と言ってもらえるだけで小さな特別感が伝わるでしょう。
■3.さまざまな外部要因がある
また、業務内容を覚えつつ、多くの利用者さんと接し、そのうえ仕事にも追われて…となると覚える余裕がない、覚えることが難しいと感じるかもしれません。
職場で人の名前を覚えるメリット
では、名前を覚えるとどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の通りです。
2.業務を円滑に進行できる
3.信頼関係を構築できる
■1.好印象になる
介護をする際に「お風呂に入りましょう」とただ声をかけるのと、「○○さんお風呂に入りましょう」と声をかけるのでは、名前を呼ばれた方がよい印象を持ちやすいでしょう。
小さい気遣いではありますが、対人サービスである介護業界においては非常に重要な心がけです。
■2.業務を円滑に進行できる
また、職員間においても、名前を把握できていると、「この業務に困ったら○○さんに相談をしよう」「○○さん(利用者さん)の事情は△△さん(職員さん)が詳しいはず」などと相談や情報の共有がスムーズになります。
これらのように名前を覚えることで、業務がスムーズに進む場面が増えるでしょう。
■3.信頼関係を構築できる
たとえば、ふとしたときに名前を覚えてくれている人と、いない人では、覚えてくれていた人のほうが第一印象がよくなり、信頼しやすいと認識してもらえます。
そのため、名前を覚えることで信頼関係の構築がスムーズに進み、介護業界で多いと言われている人間関係の悩みを減らすことができるでしょう。
人の名前を覚えるための「記憶」とは何なのか?
記憶は大きく分けて3つに分類することができます。
■1.感覚記憶
感覚記憶の保持期間は1秒ほどで、1秒以内でほとんど消えてなくなります。そこから自分に重要な情報だけが短期記憶として保持されます。
この「何か話している」という感覚から「こう言ったんだ!」と認識するまでの瞬間が感覚記憶の状態です。
■2.短期記憶
これは記憶の保持時間だけではなく、保持できる容量にも限度があり、短期記憶の情報の多くは忘れられていきますが、その一部が長期記憶として保持されます。
※短期記憶に保持できる容量は情報の数は「7±2」とされていましたが、近年の研究では4±1とする説も有力です。
・翌日の単語テストに向けて一夜漬けで対策したもの
■3.長期記憶
それぞれの具体例は以下の通りです。
・ピアノが弾けるようになる
・自転車に乗れるようになる
「宣言的記憶」
エピソード記憶:「昨日Aさんと新宿に遊びに行った」など個人が経験した出来事の記憶
意味記憶:「1日は24時間である」のような知識や概念の記憶
■仕組みを利用して、記憶を定着させよう(エビングハウスの忘却線)
■記憶に定着させたいことは何度も繰り返す
覚えたいことは、スキマ時間を活用してこまめに復習しましょう。
■エビングハウスの忘却線を意識する
この研究によると、早く復習したほうが、早く記憶が復活することがわかりました。試験勉強で覚えたことをすぐに復習すると早く記憶をとり戻すのをイメージしていただくと良いかと思います。
一方で、試験から1ヶ月後に復習してもほとんどの記憶を忘れていて、覚え直すのに時間がかかります。このことから、覚えるためには早く復習をした方が、効率よく長期記憶に転換させることができるとわかります。
■エビングハウスの忘却線(詳細)
1日後には、 66%を忘れて、34%を記憶。節約率34%。
1週間後には、77%を忘れて、23%を記憶。節約率23%。
1ヶ月後、 79%を忘れて、21%を記憶。節約率21%。
※節約率=節約された時間または回数÷1回目に必要だった時間または回数
節約率が高いほど、コストパフォーマンスが良く記憶が定着します。
人の名前を記憶に定着させる方法5つをご紹介します
■1.語呂で覚える
※現在では1185年が有力説もあります。
■2.イメージで覚える
人の名前を覚える際には、○○が好きな人や○○が得意な人のように会話の中で相手の特徴を掴めると覚えやすくなるでしょう。
■3.こまめにアウトプットする
ただし、利用者さんの名前などは個人情報にあたるため、介護記録内で確認をする、職場内のPCにメモをするなどの工夫をしましょう。
■4.体験と感情を紐付ける
たとえば、何か表彰をされた経験などは、基本的には記憶に残りますよね。
このような記憶については、そのときの気持ちも関連づけて覚えると良いでしょう。
人の名前を覚える際は、「○○をして楽しかったとき一緒にいた△△さん」のような覚え方ができるとよいでしょう。
■5.ストーリー(物語)として覚える
たとえば、施設のレクリエーションでクリスマスパーティーをした。利用者のAさんがビンゴ大会で優勝し喜んでいた。のようにエピソードとして覚えると、後日も「クリスマスパーティーのビンゴ大会で優勝したAさん」のように思い出すことができるかと思います。
名前が思い出せず困った時の切り抜けるテクニック
■1.「先生」と呼ぶ
先生じゃないと言われる場合がほとんどだと思いますが、そのような場合は「我以外皆師」と笑顔で伝えつつ、素直に名前をお伺いしましょう。
■2.名前を確認して名字を聞きだす
しかし、あまりに不自然な聞き方や対応をすると、逆に不信感を抱かせてしまうため、相手が疑っていそうな場合は素直に聞いてみたほうが今後の関係構築がスムーズかもしれません。
■3.「名刺交換しましたっけ」と言って、名刺交換をする
■4.自虐ネタで「最近、物忘れがひどくて」と笑いに変えて名前を聞く
■5.一旦、その場を離れて周囲の人に名前を教えてもらう
利用者さんの名前がわからないときは、その場を離れて他の職員さんに確認をすると、間違えることなく丁寧に利用者さんと接することができます。
顔と名前を覚えやすくなるためのトレーニング3つ
即効性はありませんが、コツコツと継続することで覚えることができます。
■1.突然ですが「一昨日の夕食のメニューは?」
しかし、一昨日の夕食のメニューを紙に書いておけば、確認するだけでOKなので思い出す必要がありません。紙に書いてあることを確認することを再認と言います。
■2.お名前ノート(メモ)をつくろう
顔と名前を再認するために利用者さんの顔と名前の特徴や印象をノートなどにメモしておきましょう。キーワードやエピソードも効果的です。
■3.こまめにリハーサル(記憶の定着)をしよう
何度も繰り返してお名前ノートを見返してみましょう。声に出してみることも効果的です。何度も何度も繰り返すことで記憶は定着します。英単語を覚えるのと同じです。
名前を覚えられるまでは、仕事終了後、仕事開始前などのスキマ時間にリハーサル(記憶の定着)をしましょう。心理的にも安心することができます。
最後に:スモールステップで名前を覚えていきましょう
たとえば1日に3人~5人の名前を覚えるなどの目標を立て、その目標が達成できたら5~10人、それも達成ができたら15名などスモールステップで目標を立て、焦らず丁寧に覚えていきましょう。
■マンガでまとめ♪
マンガ監修:望月太敦(公益社団法人東京都介護福祉士会 副会長)
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ワ☆ノベーション代表
グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)
MBA(経営学修士)、公認心理師、社会保険労務士有資格者、社会福祉士。
総合心理教育研究所学術客員研究員。