アフターコロナの介護業界の未来:職場環境、介護サービス、学生の視点から考察
茨城県介護福祉士会副会長 特別養護老人ホームもくせい施設長 いばらき中央福祉専門学校学校長代行 NPO法人 ちいきの学校 理事 介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント 介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員
マスク自己選択時代の到来!音楽フェスも再開へ 介護業界の変化を振り返る
いよいよ、2023年3月14日からマスクが自己選択となりましたね。
私はロック音楽が好きでコロナ前は、音楽フェスが大の楽しみでした。
しかし、ここ数年は足を運ぶことは叶いませんでした。これからは、感染対策を前提としてライブで一緒に歌ったり、歓声をあげることが可能となるとのこと。夏を心待ちにしている方も多いのでは(私もです)。
また、もちろん高齢者施設においては、マスク着用継続が推奨されますが、コンビニエンスストアや電車、飛行機の移動時はマスクを外してもいいことになったのもポジティブな変化と言えるでしょう。
わたくし伊藤も「ささえるラボ」で記事を書き始めて4年が経ちました。
今回はこの4年でどんな事が介護業界で変化したのかを「職場環境」「介護サービス」「学生」の3つの視点で振り返ってみたいと思います。
■職場環境-介護の国際化がもたらす好影響
この4年で大きく進んだのは働く人の多様化だと思います。
ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と包括)という言葉が一般化してきましたが、最近ではそれにエクイティ(公平)がついていることに気が付きました。
私は「多様性と包括」だけでも納得していたんですが、多様な人がいて、多様な方が一体となり、目標達成に向けて動いていくだけではうまくいかないとなったのかなと推測します。
コロナ禍では、ハラスメント問題が頻繁に報道されており、カスタマーハラスメントも増加していることが報じられました。人々は大きなストレスを抱え、自己コントロールできない人も増えたため、多様性やエクイティ(公平)の重要さが増したのではと考えています。
私の職場でも今年2人のベトナム人留学生が介護福祉士の国家試験に合格し、社会人になりました。最近は、ミャンマーからの特定技能ビザの方も一緒に働くようになりました。
4年前には、外国人が介護をすることに反対する人も多かったですが、今では国際化が介護現場にとって重要だと理解されるようになりました。
異国から他言語と介護の専門性を学びながら一生懸命働く彼らの姿は、介護を受ける高齢者にとって愛おしく(涙を流す人を何人も見ました)、同僚である日本人の介護職にとっては自分たちも頑張らなければというモチベーションを産みました。
まさしく「ダイバーシティーエクイティ&インクルージョン」が実現された場だと感じると同時に今後の介護現場の希望にもなると実感しています。
■介護サービス- ICT化とデータ活用による利用者へのサービス質向上
介護サービスにおいて、ここ4年間でICT化が大きく進んだと思います。現在、私たちの生活ではZOOM等のオンライン会話が当たり前のコミュニケーション手段となりましたが、4年前はオンラインでのコミュニケーションに懐疑的でした。
私が勤める法人でも、4年前には導入を試みましたが、「リアルに勝るものなし」と却下されたことを今でも覚えています。しかし、使い始めてみると今や生活必需品です。
このようなオンラインコミュニケーションは、高齢者施設での「面会」においても活躍してくれました。国内だけでなく、海外の家族とも気軽に面会できるようになったことは、大きな発見でした。
今後は感染対策を考慮した上で、リアルでの面会を進めていくことが重要だと考えますが、オンラインとリアルの両方が選択できるようになったことは、ご利用者とそのご家族にとってもメリットがあったと思います。
また、眠りスキャンを始めとするデータを活用した科学的ケアも進んできていると実感をしています。
最近、全国老人福祉施設協議会の全国大会で、眠りスキャンを使って認知症ケアに取り組んでいる施設の事例を聞きました。眠りのデータから、「ここでなぜ起きたのか」「起きた原因は日中にあるのではないか」「日中の気持ちはどうだったのか」などのアセスメントを行い、認知症ケアに役立てていました。
このようなケアは、ご利用者にとって非常に有益であると思われます。それは、以前は夜間に部屋を訪れて、寝ているかどうかをなんとなく顔で判断していたからです。目をつぶってても寝てないかもしれませんもんね。
人間にとって、良質な睡眠は重要です。しかし、従来の方法では、寝ているかどうかがわからないことがありました。しかし、眠りスキャンによって、センサーで眠りの状況を測定できるようになり、ご利用者に対するサービス質の向上につながります。そのため、このような科学的ケアは、特に認知症の方々にとって非常に有益なものであると考えられます。
■学生- 介護職を身近なヒーローとして捉える若い世代の登場
最後に、介護福祉士を目指す学生についてです。
日本の介護福祉士養成コースは減少傾向が続いています。コロナ前には留学生が増加していましたが、海外からの渡航制限により増加は叶わず、閉校した学校も多いと思われます。
また、日本に対する外国人の見方も変化しており、給料面での魅力も減少しているようです。
つまり、待っていても来てくれない時代になり、国際貢献という志を明確にし、迎えに行く必要があると言えます。
そんな中、当校では日本人の学生が少しずつですが増加してきています。
これは、介護職を身近なヒーローとして捉える若い世代が増えたためだと考えられます。
毎年なりたい職業ランキング(小学生)が発表され、保育士さんや看護師さんは常に上位ですが、これは身近なヒーローとして捉えられたということが要因だと思います。
高齢者の増加は課題ですが、若い世代が「介護士不足という社会課題に貢献したい」と入学することが増えており、心強いです。私たちは、若い世代をサポートして、好スパイラルで次の世代につなげていきたいと思っています。
【まとめ】コロナ禍は決してマイナスばかりではない
アフターコロナを介護現場の視点、ご利用者へのサービス視点、これからの介護士を目指す若い世代の視点でその変化を述べさしていただきました。
私はコロナ禍は決してマイナスばかりだったと思いません。コロナ禍で大変だった中、得た糧がこれから大きく変わる明るい未来へとつながっていくと感じています。5月の以降、世界がどのように変化していくのか楽しみでなりません。
茨城県介護福祉士会副会長
特別養護老人ホームもくせい施設長
いばらき中央福祉専門学校学校長代行
NPO法人 ちいきの学校 理事
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
介護福祉士 社会福祉士 介護支援専門員 MBA(経営学修士)