介護職は体力勝負なのか?介護現場の実態を確認!
この記事では、「介護職は本当に体力勝負なのか?」という疑問に対して、介護職の実態を確認しつつ、実際に介護現場に携わった経験のある大関先生にも解説いただきます。
労働条件や仕事の負担に関する悩みや不安で、身体的負担は回答者のうちの約3割で3番目に多い悩みであることがわかりました。
また、年齢層別に身体的負担を感じている人の割合を見てみると、20代~40代は各世代のなかの25%前後であるのに対し、50代以降は30%を超えています。このことから、年を重ねるにつれて体力などに対する不安が強まっていることがわかります。
■介護職が腰痛になりやすいは本当?
これは同じ対人サービス業である接客・娯楽業が、負傷に起因する疾病377件のうち約75%にあたる284件が腰痛(災害性腰痛)であることと比較しても、非常に高い数値であることがわかります。※
しかし、これらはあくまで数値上のデータです。実際の現場ではどうだったのか、大関先生に解説いただきます。
出典:厚生労働省業務上疾病発生状況等調査(令和5年)
【コラム】専門家の視点で介護職は体力勝負なのか解説します!
■執筆者/専門家
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。
■介護職は体力勝負?
しかし貧血持ちの私でも、介護の仕事が体力勝負だな!と感じることはあまりありませんでした。
どちらかというと、パワーや握力が必要なのではなく、「どうやったら介護される方が自分の力で自然に動いてもらえるか、動き出したくなるか」を想像して考えていく部分の方が大切だったからです。
ー介護職はチーム戦
また、介護はチームでの仕事になります。そのため、できないところや不安なところは、チームの中で補い助け合うこともできます。逆に体力に自信があるような方にそういったシーンはお任せをするような役割分担も考えることができると思います。
ー夜勤については負担が少ないようにシフト調整が行われている
最近は、夜勤後、朝に帰宅してから次の勤務までには十分な時間をとるシフトを組んでいる施設が多いです。
プライベートな時間を平日休日問わずに活動したい方にとっては、同じ時間帯に勤務が固定しない交代勤務もメリットに感じると思います。
このように、いろいろな面から介護の仕事を見ていただけると可能性が広がってくるのではないでしょうか?
■介護は「力」で行うものではありません!
今ではそんなリアクションをもらうことは少なくなったのは(私が太ったからではないと思いたいのですが)体力勝負とは言い切れないのかも・・・?と思うような「介護方法」や「介護ロボット」がメジャーになってきたからかもしれません。
以前より、明らかに「体力勝負」のイメージが減ってきたのを肌で感じます。
ー最近では幅広い世代の人が、介護業界で活躍しています!
人生経験豊かな方が介護業界に来てくださることで、お互いに信頼しあえる関係で安心して過ごせる利用者さんが増えたら良いなと思います。
ー力任せな介護は利用者さんの「機会」を奪っているかも
実は介護の仕事の面白さがここに1つ隠れています。
介護は「力」でするものではありません。 どっこいしょと力任せで持ち上げる介護では、腰も痛めますし何より利用者さん自身が宙に浮いてしまい、怖かったり痛かったりと、良いことがありません。
しかも、まだ立つことができる利用者さんだったとしたら「立つ機会」すら奪ってしまうことにもなりますよね。 まだできることを減らしてしまうばかりか、間違ったケアで介護職も腰を痛めてしまうので、お互いにとって良くないですよね。
■介護職を救う「介護ロボット」の導入
海外では、40キロよりも重いものは持たないようにするようなケアの流れも出てきています。
これからは日本でも、介護者に負担が少ないケアや福祉用具、介護ロボットと言われる介助をアシストするものを活用する施設も多くなってきました。介護ロボットと言うと身構えてしまうかも知れませんが、触ってみればなんてことありません。利用者さんの体重を機械が支えてくれる、簡単な仕組みのものばかりです。
一度使えば慣れてきますので、気になる施設がどういった介助方法や福祉用具等を取り入れているかなど、事前に聞いておくのも方法の1つですね。
ー自分の身体を思いやるきっかけにしましょう!
ずっと座りっぱなしの仕事より、多少体を動かす介護職の方が、腰部への負担が少ない可能性もあります。ご自身の工夫と、環境の選び方で腰痛対策は可能になると感じています。
皆さんの魅力や能力が、介護現場では必要とされています。
皆様の魅力が、思う存分開花されるような機会が増えることを祈っています。
■【補足】体力以外に不安視されがちな利用者さんからの暴力
それは、介護職から利用者さんへ向かうものだったり、利用者さんから介護職へ向けられるものだったり、どちらのパターンもありますが、その部分だけを見聞きをするととても悲しい気持ちになり、恐怖を覚える方がほとんどだと思います。
介護施設で起こるこの悲しいニュースは、介護職側が行う虐待のニュースの方が取りあげられることが多いですが、今回は介護職員が受ける場合についてお話します。
ー暴力の背景事情を考えましょう
私自身も介護施設で働いているときに、利用者さんから引っ掻かれてしまった経験があります。
こういった経験がある介護職は多いようですが、実はこれの多くは利用者さんの方からの「嫌だよ」「やめてほしい」のサインや表現です。
コミュニケーションの取り方やケアの内容が原因で起こっているとも考えられるため、利用者さんの背景事情を探り、声の掛け方や介助について同意を取る方法を見直すことで改善できる場合もあります。(ただし重傷を負ってしまう場合は別の検討が必要です。)
ー周囲の人に相談するのも大切です!
信頼できる人がいれば、その人に話すだけでもかまいません。チームでケアの方法を一緒に考えて検討し、解決の糸口を見つけていきましょう。
■大関さんからのメッセージ:できないことではなく「できること」に目を向けていきましょう!
一見、介護は「お世話をする仕事」のように見えるのですが、「その人のできない部分を自然にサポートする影武者のような役割」だと、笑顔を引き出す介護をされる方に出会うことで教わってきました。
人が生きていく中で他人の手が必要になったとき、気負いすぎず罪悪感を感じすぎず、互いに自然に助け合えるような空気は、介護の現場からの発信で広がると感じています。
温かい気持ちを持った方が、介護の業界にはたくさんいらっしゃいます。できないことに目を向けるより、できることに目を向けて、少しでも生きていてよかったと思えるような時間を、私たちと利用者さんの両方が過ごせたら良いなと思っています。
介護職でどうしても体力に限界を感じた場合の対処法
とはいえ、体力は人それぞれですから、「どうしても介護職がきつい」「体力の限界を感じている」という方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合にどのような対策をとるのがよいのか、ここからは解説していきます。
考えられる対応方法は以下の通りです。
2.ストレッチや運動で体力づくりに励む
3.福祉用具や介助ロボットを活用する
4.上司に相談をし業務内容の変更もしくは、勤務時間や日数を変更してもらう
5.資格を取得し、管理業務や相談援助業務にを行う
■1.介護技術を再確認する
初めは、基礎基本に忠実に動いていても、慣れてくると独自の方法で実施しがちです。今の介助方法に自信がない方は、改めて介助方法を確認してみるのも、解説に繋がる可能性があるでしょう。
■2.ストレッチや運動で体力づくりに励む
とはいえ、突然運動を始めると、肉離れや半月板損傷などケガをしてしまう可能性もあります。日頃、運動の習慣がない場合は、軽いストレッチなどから始め、少しずつ負荷をかけるようにしましょう。
■3.福祉用具や介助ロボットを活用する
もちろん、人による介護は大切ですが、介助者も被介助者も安全で安心な介護を受けるために、これらの活用は今後も増加していくと思います。
体力に不安がある方は、福祉用具や介助ロボットの導入が進んでいる施設に転職を検討するのも1つの手です。
■4.上司に相談をし業務内容の変更もしくは、勤務時間や日数を変更してもらう
身体介護ではなく、生活介助に業務内容を変更してもらう、勤務時間を短縮してもらう、通所型などの場合は利用者さんの数が少ない曜日に変更してもらうなど、対応方法はさまざまあるはずです。それでも現状維持を提案された場合は、他の事業所やサービス形態への転職も検討しましょう。
■5.資格を取得し、管理業務や相談援助業務を行う
たとえば、管理業務である特別養護老人ホーム(特養)の施設長になる場合は、社会福祉主事の要件を満たすもの(社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持っている・都道府県の講習を受講しているetc.)などのように資格や講習の受講が要件となっているものが多くあります。
また、相談援助業務を行うケアマネージャーを目指すためには指定業務を5年以上かつ900日以上経験したうえで、介護支援専門員実務研修受講試験を受けることが条件となっています。
一方で、有料老人ホームの施設長や、生活相談員などは事業所・施設ごとに要件が定められており、無資格でも挑戦できる場合がありますが、有資格者のほうが有利になることが多いので、資格は取得しておけるとよいでしょう。
体力に自信がない方におすすめの施設形態!
最後に、そのような方に向けておすすめの施設形態を紹介します!
■1.デイサービス
さらに、土日休みの施設などもあるため求人を探す際はこの辺りも確認しつつ、無理なく働くことができる環境であるか確認するとよいでしょう。
■2.訪問介護事業所
ただし、利用者さん宅間の移動が生じるため、真夏や真冬は体力がないとしんどく感じてしまう場合もあるでしょう。
■3.サービス付き高齢者住宅
また、サービス付き高齢者向け住宅には2種類あり、「一般型(介護職員の常駐なし)」の場合は主な業務が「定期巡回による安否確認」と「生活相談への対応」、「介護型」の場合は身体介護や生活援助を行います。
最後に:介護職は体力勝負だけの職種ではありません!
そのような際に忘れないでいただきたいのは、介護職の体調が最優先であるということです。介護職の方が限界の状態で介護をしてしまっては、利用者さんに質の高いものを届けられるわけがありません。しんどいと感じた際には、1人で抱え込まず上司や同僚に相談をし、環境や業務内容などを変えていけないか考えるようにしましょう。
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社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士