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老老介護の現状や解決策を解説!今後の日本で大切なこととは。

老老介護の現状や解決策を解説!今後の日本で大切なこととは。

50年後の日本人口を紐解き、深刻な超高齢社会によって生じる老老介護・認認介護等、新たな課題にどう日本は立ち向かうべきなのかを専門家が解説します。【コラム:後藤 晴紀】


老老介護の現状や解決策を解説!今後の日本で大切なこととは。

2023年4月26日に厚生労働省より公表された「日本の将来推計人口」によると日本の総人口は50年後に現在の7割に減少し、65歳以上の人口がおよそ4割を占めると予測されています。
平均寿命に関しても男性が約86歳、女性が約92歳に延びると推計されています。

上記を踏まえて、超高齢社会による老々介護をはじめ様々な課題について私たちは何を考え、何をしなければならないのでしょうか。

※出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計) 結果の概要」より(国立社会保障・人口問題研究所のPDFに遷移します)

老々介護・認認介護とは?

老老介護とは、65歳以上の高齢者の介護を65歳以上の高齢者が行うことを指します。
高齢の夫婦や親子、兄弟などのどちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となるケースとなります。
また認認介護とは、認知症のある方の介護を認知症のある方が介護することを指します。
日本社会の高齢化や少子化という問題のみではなく、核家族化や平均寿命の延伸、高齢者の貧困など
様々な要因が重なることで、老老介護や認認介護となる家庭が増えていると考えられています。

老老介護・認認介護となった場合の問題とは?

一般的に高齢者よりも身体的な体力があるとされている中年世代の方が介護を行う場合でも、腰痛などの身体的な負担は大きいものです。

ましてや、高齢者が介護をする側となると、身体への負担は非常に大きくなり、身体的な疲労から外出機会などが減り外部からの刺激が得られないこと等からストレスを抱えてしまい、認知症になるリスクが高まります。
また要介護者に家事のほとんどをしてもらっていた方が介護側になった場合、介護よりも家事の困難さを訴える方もいます。
介護や家事を急にひとりで担うことになってしまった高齢者は、疲れてしまい共倒れとなる可能性が高いといえるでしょう。

認認介護においては、認知症の方が生活を支えることになるため、きちんと食事をしたのかや排泄処理を行ったかなどがわからなくなり、生活環境が悪くなってしまう可能性があります。

このような状況になってしまった場合どのように解決していくのがいいのでしょうか。

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地域包括ケアシステムの深化が急務!

執筆者

後藤 晴紀

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9

けあぷろかれっじ 代表/NPO法人JINZEM 監事/介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員/潜水士

とても深刻なテーマですね。
老々介護や認々介護・ヤングケアラーなど、新たな言葉と共に新たな社会課題も生じてきています。
これらのテーマは福祉業界のみならず、全産業・全国民で考えなければならない社会課題だと感じています。
私としては、このような社会課題への対応として、地域包括ケアシステムの深化が急務であると考えています。
公助に頼りすぎず、その地域での自助・互助・共助のシステムが非常に重要になってくるでしょう。

自助・互助・共助・公助を理解しよう!

自助(個人)・・・
自分の力で住み慣れた地域で暮らすために、自らの健康に注意を払い介護予防活動に取り組んだり、健康維持のために検診を受けたり、病気のおそれがある際には受診を行うといった、自発的に自身の生活課題を解決する力。

互助(仲間/地域)・・・
家族・友人・クラブ活動仲間など、個人的な関係性を持つ人同士が助け合い、それぞれが抱える生活課題をお互いが解決し合う力。費用負担が制度的に裏付けられていない自発的な支え合い。

共助(保険)・・・
制度化された相互扶助のこと。医療、年金、介護保険、社会保険制度など被保険者による相互の負担で成り立ちます。

公助(行政)・・・
自助・互助・共助では対応出来ないこと(困窮等)に対して最終的に必要な生活保障を行う社会福祉制度のこと。

50年後、日本の人口はどうなるのかを把握しよう!

(1)日本の総人口は、約8,700万人へ!そのうち1,000万人が外国人

日本の総人口は50年後に現在の7割に減少し、65歳以上人口がおよそ4割を占めることになります。
前回推計よりも出生率は低下するものの、平均寿命が延伸し、外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和されるとしています。
総人口は、令和2(2020)年国勢調査による1億2,615万人が2070年には8,700万人に減少すると推計しており、日本人人口に限定した参考推計(出生中位・死亡中位推計)では、2070 年の日本人人口は7,761万人と推計されています。
つまりは、残りの約1,000万人は、外国人居住者ということになりますね。

(2)14歳以下の人口は約半分に!

年少人口とも称される0~14歳人口は、2020年では1,503万人ですが、2070年には797万人の規模になる
と推計されています。

(3)働く人口=生産人口は約4割減の予測…。

生産年齢人口とも称される15~64歳人口は、2020年では7,509万人から2070年には4,535 万人まで減少するとされています。

(4)平均寿命が伸び、お年寄りの割合は増える予測

平均寿命は、2020年は男性が約82歳、女性が約88歳です。
2070年には男性が約86歳、女性は約92歳にまで伸びると予測されています。

(5)65歳以上の高齢者人口は増加し、生産人口1.3人で高齢者1人を支える時代に

2020年時点で、65歳以上の人口は約3,603万人で高齢化率(人口に対する高齢者の割合)は28.6%になります。
その後は増加傾向が続き、2043年には65歳以上人口は約3,953万人とピークを迎える見込みです。
これは1971年から1974年に生まれた「第2次ベビーブーム世代」が65歳以上の高齢者になることが影響しています。

2038年時点で高齢化率は33.9%となり、高齢者が3人に1人の水準に達します。

それ以降は高齢者人口は減少に転じ2070年には約3,367万人となりますが、少子化による人口減少もあるため、高齢化率は38.7%と40%近くになる見込みで、2.6 人に1人が65歳以上となることになります。

2070年には「現役世代1.3人で高齢者1人を支える」社会となり、社会保障を含めた不安が国民に広がっているのではないでしょうか。
あくまで推計値ではありますが、私達の子供達に繋ぐ社会としては、いささか心配な人口統計となっていると感じざるを得ない結果です。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計) 推測結果の概要」を加工して作成

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超高齢社会での老々介護をどのように乗り切るべきか

包括的な対策をすることが重要

超高齢社会によって生じる様々な問題に対して、何か一つの対策を重点的に行っていくということでは到底対応できません。
包括的に少子化対策、フレイル予防、外国人材の受け入れ等の対策を行っていくことが重要だと言えます。

地域包括ケアシステムでは、それらの解決策として、
・フレイル予防の活動促進
・問題が発生した際、もしくは発生しそうな時の為に、地域での見守りの強化
・周囲の人への相談
・地域包括支援センターへの相談
・介護サービスの利用
 等ができるように、システムの整備を急いでいます。

まさに自助を中心として、互助、共助を活用し、必要に応じて公助に繋げていくといった包括システムですが、予防的視点での自助や地域での互助の重要性がより大きくなっていくと考えています。

※フレイル(虚弱)…加齢により段々と体の力が弱くなり、活動量が減ることで病気にならないまでも手助けや介護が必要となること

世界からも注目されている人類初の超高齢社会

2070年では、公助や共助の力だけでは支えられない社会を迎える可能性が高いです。
そのため、私達のような福祉に従事している人々が地域に出向きながら、この自助や互助をどのように地域に創っていけるのか、その取り組みが重要になってくると感じています。

昨年度創設された社会福祉連携推進法人も、未来を見据えた新しい社会福祉法人の形を使うことで、地域包括ケアシステムを深化させようとしていると感じています。

・外国人材の活用や地域での互助
・広域地域での共助
・予防としての自助
 など

AIやICT機器を活用しながら、かつてのように人と人との繋がりが深かった古き良き日本の姿を取り戻す必要があるのだと感じています。

他人に興味関心を寄せて助ける精神・見守る心を日本は元々兼ね備えている民族でもありますよね。

そんな社会を創っていくために、私たちから地域に出向き、福祉や介護を特別なものではなくあたり前なものにしていかなければなりませんね!

今後は福祉従事者の価値も求められる役割もより大きなものとなっていくと考えます。
その期待に応えていきましょう!

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この記事のライター

・けあぷろかれっじ 代表
・NPO法人JINZEM 監事

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、潜水士

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