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高齢者の熱中症対策!夏の介護で介護職が気をつけたいこと

高齢者の熱中症対策!夏の介護で介護職が気をつけたいこと

夏の介護施設での課題の1つが熱中症です。特に高齢の方は熱中症になりやすい特徴があったり、エアコンを使用することを拒んだりと対策にも工夫が必要です。 この記事では、介護施設や自宅でできる高齢者の熱中症対策をご紹介します!【執筆者/専門家:大関 美里】


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本日のお悩み:高齢者の熱中症対策について教えてください!

夏が始まり、特に高齢の利用者さんは脱水や熱中症などが心配な季節となります。

エアコンが嫌いな利用者さんもいるので、夏の対策は非常に難しいです。
利用者さんが、介護施設やご自宅でできる熱中症対策や工夫策を教えてください。

夏本番の介護現場で気をつけたいこと

執筆者/専門家

大関 美里

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/13

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士 介護現場の職員の後、祖父の在宅介護での後悔と、自身の介護うつ経験から、そのきっかけになった排泄の支援を追求すべくおむつメーカーへ転職。 1000人以上の方のおむつ交換に触れ、介護する側もされる側も双方が「シッカリ出して、スッキリ生きる」ことが、より良い人生に繋がる。気持ち良く「出す」ことをサポートすることで良い循環が生まれることを実感する。

ご相談いただきありがとうございます。
このテーマ、まさに今、現場で働く皆さんが日々頭を悩ませているところではないでしょうか?

夏は、脱水・熱中症対策が命に関わる大切なケアの1つ。でも、「暑さが危険」と分かっていても、「電気がもったいない」「寒い」「風がキライ」とエアコンを嫌がる方への対応は、なかなか簡単ではありませんよね。

私自身、これまでのケアの中で、エアコンをつけてほしいこちらの気持ちと、「嫌なのよねぇ」というご本人様の本音との間で、もどかしさを感じることがありました。

しかし、だからこそ、無理に説得するのではなく、「納得できる環境」を一緒につくっていくことが、私たち介護職にできる大切なアプローチだと感じています。 今回は、施設でもご自宅でもすぐに取り入れられる、実践的な工夫をお伝えしていきますね。

なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか?

最初に基礎知識をさらっとおさらいしましょう。
熱中症は、高温多湿な環境下で体の水分・塩分バランスが崩れたり、体温調節がうまくいかなくなることで起こります。

高齢者が熱中症になりやすい理由

高齢の方は、以下のような特徴があるため、症状に気づかないまま熱中症を発症し、重症化しやすくなっています。

・体内の水分量が少ない ・暑さや喉の渇きを感じにくい ・汗をかきにくい ・体温がこもりやすい ・利尿薬や持病による脱水リスク


「大丈夫」「暑くないから」と話されていても、体はすでに水分不足…なんてこともあるので、周囲の私たちが「先手のケア」をすることが何より大切なんですよね。

「社会全体」で熱中症対策!2025年からの新ルール

さて、そんな中、ここ数年の夏の暑さは「命に関わるレベル」だと、多くの人が感じていると思います。
実際に、国もその危機感から動き始めているのはご存知でしょうか?

■新しい法制度と介護現場への影響

2025年6月1日から、労働安全衛生規則の改正省令が施行され、事業所にはWBGT(暑さ指数)の測定義務や、一定値を超えた場合の作業中断・休憩の確保が義務づけられるようになります。

これはつまり、「暑さは労働災害にもなり得る」という認識が社会全体に広がっている証拠です。
介護の現場で働く職員はもちろん、ケアを受ける方々の命を守るためにも、「暑さはリスク」という意識をもって向き合う時代になってきています。
※参照:厚生労働省 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について

実践編:エアコン嫌いな方にもできる暑さ対策

高齢者 エアコン

「嫌い」の背景に寄り添った5つのエアコン活用法

「風が当たると寒い」「乾燥して喉が痛くなる」などご本人の「嫌な理由」をよく聞いて、それを避ける工夫がポイントです。

1.風を直接当てない
風向は天井や壁に向け、好みによってスイング機能を活用。エアコンの風=不快のイメージを変えましょう。

2.ドライ(除湿)モードを活用
除湿モードは、冷房よりもやわらかな体感です。湿度を下げることで、不快感や熱中症のリスクを減らせます。

3.サーキュレーターを併用
冷たい空気を全体に回すことで、体感温度が下がります。ポイントは「風が直接当たらないように」です。

4.隣の部屋から冷やす
どうしても嫌がる利用者さんについては、「この部屋のエアコンは止めますので、となりの部屋のはつけておいてもよいですか?」とお聞きし、廊下や別室の冷気を取り込むのも方法の1つです。

5.視覚で納得!温湿度計を活用
「数字で見ると納得しやすい」のが人の心理です。30℃を超えたら「危険信号」であると温湿度計を用いながら伝えましょう。


「エアコンをつけないと危ないです!」よりも、「風が当たらないようにしますね」「湿気だけ少し取らせてください」と声のかけ方を工夫することで、相手のガードが下がることがよくあります。「信頼関係と伝え方」、ここでも大事になってきます。

飲みたくなる水分補給の4つの工夫

喉が渇いていなくても飲んでもらうには、「楽しく・自然に・ちょこちょこ」が鉄則です。
点滴を少しずつ滴下するのと同じで、水も一口ずつでも飲んでもらえたら大成功です。

1.時間を決める
「レク前後や15時は水分補給タイム」など、生活リズムの中に組み込みます。

2.選べる楽しさを
「お茶、麦茶、甘酒、イオン飲料、スープ、味噌汁、牛乳、ハーブティなど今日は何にしましょう?」と心が動く選択肢が用意できるかが肝です。

3.食べて摂る水分
スイカ、ゼリー、水ようかん、果物など。水分たっぷりのおやつは、実は立派な脱水予防食です。

4.少量ずつおしゃれに
おちょこやお気に入りのカップで「これ一杯だけどうですか?」と気軽に声かけ。透明で横からも見えるようなコップや、ストローやグラスの見た目からのアプローチもとても効果があります。


ある施設さんでは、ドリンクバーのように自分で好きなものを飲める設備を作られたり、屋台のように提供スタイルを工夫したりされていました。

「水分を摂ってもらう」ではなく、「水分を摂りたくなるきっかけをつくる」のが介護の1つの醍醐味です。

暑さを生活の中から避ける3つの工夫

特別な機器がなくても、「気持ちいい」「さっぱりする」という感覚を軸に、少しの工夫で予防につながります。

1.涼しい時間に活動
入浴や外出は、朝や夕方に。正午前後の活動は避けるようにしましょう。

2.衣類で体温調整
吸湿・速乾性のある綿や麻の服を選び、ゆったりとした服装にしましょう。

3.部分冷却で快適に
保冷剤や濡れタオルで首元・脇・太ももの付け根を冷やし、気化熱で体温を下げましょう。

嫌がる気持ちも大事な「本人の声」

私たち介護職がやってしまいがちなこと、それは「安全のために必要だから」と、無理にエアコンをつけたり、水分を飲ませようとしたりすることです。

しかし、「嫌だ」という気持ちには、その人の価値観や生き方、こだわりが詰まっています。 だからこそ大切なのは、「無理に説得する」のではなく、「納得できる方法」を一緒に探すことです。

安全も、快適も、信頼関係の上に成り立っています。 この夏も、利用者さんの想いに寄り添いながら、チームで工夫して乗り切っていきましょう。

最後に:相手の想いを大切にしつつ、リスクを回避しましょう!

介護の現場では、「命を守るケア」と「気持ちに寄り添うケア」の両立がいつも求められますよね。暑さ対策もまさにそのバランス。

「イヤだ」「昔と違う」と言われるなかで、いかに相手の想いを大切にしつつ、リスクを回避できるか。それが私たちの腕の見せどころです。利用者さんご本人が「納得」できる形を一緒に見つけながら、チームで、家族でこの夏を乗り切っていけたら素敵ですね。

熱中症対策はまず自分から!現場のヒーローの皆さま、暑さに打ち勝つ「涼やかな工夫」で、今日も無理なくご活躍くださいね。応援しています!

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この記事のライター

社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士

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