マイナビ福祉・介護のシゴト
介護職・ヘルパーが知っておきたい介護現場で活かせる薬の知識とは?専門家が解説

介護職・ヘルパーが知っておきたい介護現場で活かせる薬の知識とは?専門家が解説

介護現場で、毎日のように行われる服薬介助ですが、介護職員として知っておくべき知識をもち、安全な服薬介助ができるようにしていきましょう。こちらの記事では、介護職員が業務に活かせる薬の知識を専門家が解説します!【専門家/脇 健仁】


介護職・ヘルパーが知っておきたい介護現場で活かせる薬の知識とは?専門家が解説

介護職・ヘルパーが知っておきたい介護現場で活かせる薬の知識とは?専門家が解説

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

執筆者/専門家

脇 健仁

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/22

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員

薬の知識というと、様々な薬剤名と効能などに意識が向きがちですが、そもそも薬の形や、体の中でどのように取り込まれていくかという前提の知識があることで、介護職員としては、服薬介助などの業務に活かせる知識になると思います。

今回は、介護職員が知っておきたい介護現場で活かせる薬の知識をお話させていただきます。

それぞれの薬剤の与薬方法には意味がある

薬を投与することを与薬と言いますが、与薬にはいくつかの方法があります。
・外用(点眼、点耳、点鼻、口腔内投与、吸入、経皮投与、直腸内投与)
・内用(経口投与)
・注射(皮内、皮下、筋肉、静脈)など

外用薬は、投与された部位の末梢血管内に吸収されます。消化管を通過しないため、初回通過効果を受けずに、局所や全身へ移行します。
内用薬は、経口から摂取し、消化管粘膜から吸収されます。消化管吸収されたものは、門脈へ移行し、肝臓で初回通過効果を受けます。
初回通過効果とは、主に薬剤が肝臓の酵素により代謝され、全身をめぐる前に多くが薬効を失って、体での薬効が低下してしまうことをいいます。
肝臓だけではなく、消化管粘膜により影響を受けることもあったり、薬剤によっては、初回通過効果の影響を大きく受けてしまう薬剤もあります。
例えば、狭心症治療薬のニトログリセリンなどが代表です。これらの薬は投与方法を工夫する(ニトログリセリンの場合なら舌下投与)などして、その影響を最小限に抑えようとしています。

注射の場合は、血管内に薬物を直接ないしは、間接的に入れることで、血管を通じて全身に薬が回っていきます。薬の吸収のされ方にも違いがありますね。

また、内服薬については剤形も色々あります。
主な剤形としては、錠剤、カプセル、顆粒、散剤、液剤、シロップ剤などがあります。
それぞれの薬は、一番狙った効果が出るように、設計されていますので、勝手に剤形を変化させないことが大切です。
剤形を変える必要性がある場合は、必ず医師、薬剤師に確認をとりましょう。

加齢がもたらす薬の効き方の影響は

薬は、吸収→分布→代謝→排泄という流れをたどります。
高齢者の場合、個人差はありますが、吸収は遅延しやすくなり、分布、代謝または排泄の機能が低下し血中薬物濃度が高くなる傾向にあります。
またそれと同時に高齢者は服用している薬の数も多くなっていることが多いため、副作用や薬の相互作用を受けやすくなるということに繋がります。

このことを念頭に入れながら、利用者の状態変化があった際に、処方内容が変わっているか、それぞれの薬の作用と副作用が影響していないかという視点を持つことが大切になります。

介護職が服薬介助時に気にすべきポイント

次に服薬介助時の注意点を解説します。

1.5つのRight

「5つのRight」という考え方があります。

・正しい患者(Right Patient)
・正しい時間(Right Time)
・正しい薬剤(Right Drug)
・正しい量(Right Dose)
・正しい方法(Right Route)

これらの5つの要素をしっかりと確認する仕組みを作っておきましょう。
ダブルチェックによる確認や、薬を薬袋から出すとき、薬袋から取り出すとき、薬袋に戻すときにそれぞれのタイミングでの確認、ネームバンドの確認や、フルネームで名乗っていただくなど、様々な確認方法を知っておき、介護現場に合った方法を考えましょう。

2.介護職が服薬介助をしてもよい状況かどうか

服薬介助時にもう一つ重要な点は、厚生労働省通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」の理解です。

これによると、介護職員が服薬介助を行うときは、
①患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
②副作用の危険性や投薬量の調整のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
③内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

上記3つの条件を満たした場合に、事前の本人または家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し、授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方および薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助することと記載されています。

その上で具体例として、褥瘡を除く皮膚への軟膏の塗布、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用を含む)、肛門からの坐薬挿入または鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助することは医行為ではないと解釈するとされています。

上記を満たすことで、これらの行為が介護現場等において安全に行われるとされています。
だからこそ、先述しました5つのRightなどの考え方が重要になってきます。

また、この通知解釈以外の条件での服薬介助を依頼された場合は、かかりつけ医や看護職などに確認をとってから服薬介助を行うようにしましょう。

※参考:厚生労働省通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」はこちら

安全な服薬介助ができるようにしていきましょう

医薬品の活用において、服薬コンプライアンスを向上させることももちろん大切ですが、服薬アドヒアランスを向上させるという視点も大切です。

服薬コンプライアンスとは、処方された薬を利用者がきちんと服用することを指す言葉で、医師から利用者までが一方的な表現になりますが、服薬アドヒアランスとは、医療者の説明により、利用者が治療や必要性を理解し、同意したうえで、主体的に服薬管理するという考え方です。

利用者への丁寧な説明を行いながら、本人にも納得して服薬してもらえるような努力が大切になります。介護現場で、毎日のように行われる服薬介助ですが、介護職員として知っておくべき知識をもち、安全な服薬介助ができるようにしていきましょう。

\あなたにぴったりの求人が見つかる/
「介護職員」の求人を見る

あわせて読みたい記事

誤薬の怖さを新入職員に伝えるには?3つの方法を解説! | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/653

新入職員に誤薬の怖さを理解してもらい、誤薬を防止するには?研修で伝えるべき3つのことを紹介します【回答者:伊藤 浩一】

ヘルパーがやってはいけないこと一覧をご紹介!判断方法と、具体的な断り方も | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/565

訪問介護(ヘルパー)では、利用者からの依頼にどこまで応えてよいか迷うことがあるかと思います。ヘルパーがやってはいけないこととその理由、また利用者からのよくある依頼と断り方を解説します。【回答者:脇 健仁】

介護職が間違えやすい医療行為4選 その理由も解説 | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/869

介護職が普通におこなっていた仕事の中には、2005年以降、医療行為とされたため実施できなくなったものがあります。 この記事では4つの例をあげ、なぜそれが医療行為となったのか?なぜ介護職が行ってはいけないのか?専門家の経験談を交えて解説します。

専門家へのお悩み相談はこちらから

介護職のお悩み相談はこちら! | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/42

ささえるラボの人気コーナー、専門家が答える「お悩み相談室」では、介護職として働く皆様からの質問を募集しています。

この記事のライター

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事
茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中

介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

関連するキーワード


介護の仕事 介護のお悩み

関連する投稿


住居型有料老人ホームでの老老介護|介護職員ができるサポート方法とは?

住居型有料老人ホームでの老老介護|介護職員ができるサポート方法とは?

住居型有料老人ホームなどの介護施設では、夫婦での入居が認められています。長年連れ添った家族と同じ施設に入れることは安心感がある反面、施設に入居をしているにもかかわらず、老老介護になってしまうというリスクもあります。この記事では、夫婦で入居している方に介護職員ができるサポート方法を専門家が解説します!【執筆者/専門家:伊藤 浩一】


第128話 利用者さんへの声かけ/ほっこり介護マンガ

第128話 利用者さんへの声かけ/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


【2024年最新版】介護職の離職率が過去最低に!|離職率が下がった背景や今後の展望について解説

【2024年最新版】介護職の離職率が過去最低に!|離職率が下がった背景や今後の展望について解説

令和5年度介護労働実態調査によると、介護職の離職率が過去最低の13.1%となりました。この背景には、何があるのでしょうか。考えられる要因と、今後の展望について社労士の山本先生に解説していただきます!【執筆者/専門家:山本 武尊】


第127話 心がけ・・・/ほっこり介護マンガ

第127話 心がけ・・・/ほっこり介護マンガ

「介護職員・並木マイの ほっこり成長日記 ~転職して、介護の仕事はじめました~」 保険会社から介護の仕事に転職した、並木マイさん(31歳)の成長と 介護現場のあるあるを描く、ほっこり癒し系マンガ! 休憩時間、このマンガを読んだあなたが クスっと笑えてちょっと癒され、ほっこりした気持ちになれますように。


訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

訪問介護ができること、できないこと~医療行為との境目を知る~

介護職は医療行為(医行為)にあたるサポートはできないものとされています。しかし、日常生活を支える介護の現場において、この境目の判断は難しいものです。そこで、この記事では改めて、介護現場における医療行為(医行為)について解説し、介護職ができることと、できないことを解説します。【執筆者/専門家:脇 健仁】


マイナビ福祉・介護のシゴト 閲覧ランキング
【北海道・東北】
【関東・甲信越】
【北陸・東海】
【関西・中四国】
【九州・沖縄】

最新の投稿


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(こころとからだのしくみ)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【こころとからだのしくみ】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(医療的ケア)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【医療的ケア】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(総合問題)

第36回 介護福祉士国家試験の試験科目【総合問題】の過去問と解説を用意しました。 力試しや国試対策にご利用ください。


介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

介護職が行う自立支援|4つの基本ケアや実際の取り組みについて解説!

自立支援介護とは、介護が必要になった高齢者が、可能な限り自分の力で生活できるように支援する介護のことです。高齢化が進む日本において、デイサービスなどを提供する介護施設でも近年、自立支援介護は注目されています。この記事では、自立支援介護の4つの基本ケアや実際の取り組みについて専門家が解説します!【執筆者/専門家:古畑 佑奈】


介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

介護施設で年末年始にできるイベント|クリスマス会や忘年会の準備のポイントを解説!

年末年始は、クリスマス会や忘年会などさまざまなイベントが行われる時期です。介護施設でもこれらのようなイベントを実施すると、利用者さんたちの活力を高めたり、親睦を深めたりする良い機会になります。この記事では、年末年始のイベントを企画するにあたって準備したいこと、当日取り入れられるレクリエーションなどを紹介します。【執筆者/専門家:後藤 晴紀】


マイナビ福祉・介護のシゴト
「マイナビ福祉・介護のシゴト」は、福祉・介護職に特化した中途、パート向け求人サイトです。
介護職をはじめ、福祉・介護業界に関連する職種の求人を掲載しています。
本当に自分にあった施設や事業所を、ご自身で手軽に探すことができるよう職場の雰囲気がリアルに伝わる情報を用意することで、適切なマッチングを実現していきます。
【職種から求人・転職情報を探す】