本日のお悩み
ヘルパーがやっていい事と、やってはいけない事がよく覚えられません。
医療行為かそうでないか、やっていいのかだめなのかを覚えるいい方法はありませんか??
訪問介護の業務について

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
日々の業務お疲れ様です。
施設介護とは違い、訪問介護ではご利用者の自宅が介護現場となるので、本当に色々なことが起こりますよね。
だからこそ、目の前でいろいろな困りごとが出てきたときに、少しでも早く助けてあげたいと思います。
だけど、介護保険として適切かどうかという部分が気になってしまいますよね。
■「介護保険として」「倫理的に」という2つの視点を持つ
まず、大前提の話ですが、ヘルパーがやっていいことと、やってはいけないことは
「介護保険として」なのか、「倫理的に」なのかで分けなくてはなりません。
例えば、介護保険の中で本人以外の利益となるような行為はできないと言われていますよね。
同居家族の食事を用意することや、同居家族も利用する共用スペースの掃除などは、ご利用者本人の保険を利用して、同居家族の利益となるという意味で利用はできないということになります。
■「介護保険として」適切でも、倫理的には不適切な場合も
同居家族が日中不在で、訪問終了後に帰ってくるという場合に、玄関の花瓶が倒れて水びたしになっているとします。
そのときに、「玄関は家族共用スペースで同居家族がいるので、介護保険で掃除をすることは不適切だ」として何もせずに帰ることは
「介護保険」としては適切かもしれませんが(後で話しますが、実は介護保険的にも不適切です。)
「倫理的」には不適切であるということはわかると思います。
転倒リスクが高くなるということもそうですし、訪問していて玄関がそのような状態になっているのにそのままにして帰るのは、ヘルパーでなくてもおかしいことだと思います。
■介護保険は万能ではない
このようなことが起こりうることの原因として、厚生労働省が示した「老計10号」(平成12年3月17日厚生労働省老健局老人福祉計画課長通知)の中にある「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」というものがございます。
ここには、介護保険で算定しても良いサービス行為がしっかりと記載されていて、原則ここに記載されていることが介護保険で訪問介護として算定できるサービスです。
では、記載されていない事象が生じた場合、どうしたら良いのでしょうか?
ぜひ心得てほしいことは「介護保険は万能ではなく、ご利用者の生活を介護保険だけで支えるということはできない」ということです。
■ヘルパーがやっていい事・ダメなことの判断方法5つ
「ヘルパーがやっていいこと・ダメなこと」を判断していく方法は、以下の通りです。
①本人にとってできることかできないことかを見極める
本人ができることは、基本的に「老計10号」に記載されている内容でも支援すべきではないと考えます。
私たちはできない部分をお手伝いすることで、ご利用者様の生活が自立でいるように支援するのが仕事です。
②本人以外の協力者によって、できるか、できないかを見極める
同居家族や、同居していない家族の支援、知人、ご近所の方、ボランティアの方など色々な方のご協力がいただけるか十分に検討してほしいと思います。
③訪問介護として対応できるかどうかを考える
上記①と②を検討した結果、他に手段がない時は訪問介護として、対応できるかどうかを考えます。
「老計10号」に記載されている内容かどうかを判断しますので、この通知は訪問介護業務を行うためには、覚えておかなくてはなりません。
④ケアマネジャーに提案し、担当者会議の開催を要請
①と②の手段も難しく、③でも「老計10号」に記載がない場合は、ケアマネジャーに生活課題として提案し、どのように解決していくかについて担当者会議の開催を要請します。
そこで必要性が高いと認められた場合は、ケアプランにその生活課題を解決する計画が記載され、訪問介護として実施できるようになる可能性があります。
もちろん、保険者への確認も必要になります。
また、ここで、介護保険以外の方法で解決ができないかも再度検討されるとよいと思います。
⑤地域包括支援センターと地域ケア会議を開催し、解決を図る
①~④まで検討した結果、解決が難しいような生活課題は、地域包括支援センターと地域ケア会議を開催し、地域の様々な人々から意見を募り、解決を図ります。
やっていいこと、やっていけないことを判断していくことは大変です。
しかし、ご利用者様が少しでも自立した生活を送れるように、現場からしっかりと声をあげていってほしいと思います。
■医療行為について
次に医療行為についてですが、「医行為ではない行為」と「特定行為」について整理が必要です。
医行為ではない行為
「医行為ではない行為」とは、「場合によっては医行為となることもあるけど、原則は医行為とはしないからヘルパーが対応してもいいですよ」という行為です。
これは平成17年7月26日厚生労働省医政局長通知である医政発第0726005号に記載されており
体温測定や電子血圧計を用いた血圧測定、軽微な切り傷や擦り傷などの対応が示されています。
先述しましたが「場合によっては医行為となることもある」ということを念頭に置いたうえで、実施するときはケアマネジャーや医療従事者に確認しながら実施してほしいと思います。
特定行為
「特定行為」は喀痰吸引や経管栄養法についてですが、研修を受けて、実技試験をクリアすればできるようになります。
特に訪問介護では第3号研修という特定の者に対してだけ特定行為ができるようになる研修がありますので、それを修了すれば特定行為はできるようになります。
事業所としても特定行為事業者の登録も必要になりますので、詳しくは保険者へご確認ください。
■最後に
どちらにしても、とても大切なことは医療従事者との連携が不可欠ということです。
ご利用者様の状態も刻一刻と変化されると思います。
前回訪問では大丈夫だったけど、今回訪問では状態が変化している。
でもそのまま実施して大丈夫かな?という場合に自己判断はしないことが大切です。
ぜひ訪問看護師や主治医と連携を取りながら行いましょう。
「身体介護」の やって良いこと・やってはいけないこと
■「身体介護」の やって良いこと・やってはいけないこと一覧
やって良いこと | やってはいけないこと |
排泄介助 | |
食事介助 | |
清拭 | マッサージ |
部分浴 | |
全身浴 | |
洗面等 | |
身体整容 | |
更衣介助 | |
体位変換 | |
移乗・移動介助 | 散歩・リハビリテーション |
通院・外出介助 | 通院以外の場所への送迎(※1)や病院間だけの送迎 院内介助(※2)、家族受診介助 冠婚葬祭に伴う外出介助、お墓参り |
起床・就寝介助 | |
服薬介助 | 市販薬の投与・貼付など(※3) PTPシートから取り出しての服薬介助 |
自立支援・重度化防止のための見守り的援助 | 具体的目標や評価が伴わない左記の支援 |
爪切り(※4) |
※1
官公庁や日常生活に必要な買い物などは場合によって認められることがあるので、必要性をサービス担当者会議でご確認いただき、保険者にも確認をとるようにしてください。
※2
院内介助については介護保険で算定できる時間は直接介助を実施した時間のみであり、診察までの待ち時間での見守りなどは、特段の理由がない限り算定できないので、介護保険以外のサービス等で対応が望ましいと考えます。
※3
必要性をサービス担当者会議でご確認いただき、保険者にも確認をとるようにしてください。
※4
爪切りは「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」により、医行為ではない行為として介護職で対応できるとされておりますが、「爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合」とありますので、状態確認が必要です。
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員