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ヘルパーがやってはいけないこと一覧をご紹介!判断方法と、具体的な断り方も

ヘルパーがやってはいけないこと一覧をご紹介!判断方法と、具体的な断り方も

訪問介護(ヘルパー)では、利用者からの依頼にどこまで応えてよいか迷うことがあるかと思います。ヘルパーがやってはいけないこととその理由、また利用者からのよくある依頼と断り方を解説します。【回答者:脇 健仁】


目次

ヘルパーがやってはいけないこと一覧をご紹介!判断方法と、具体的な断り方も

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本日のお悩み

ヘルパーがやっていい事と、やってはいけない事がよく覚えられません。
医療行為かそうでないか?やっていいのかだめなのか?などを覚えるよい方法はありますか?

「介護保険として」「倫理的に」という2つの視点を持ちましょう

執筆者

脇 健仁

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/22

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員

日々の業務お疲れ様です。
施設介護とは違い、訪問介護ではご利用者の自宅が介護現場となるので、本当に色々なことが起こりますよね。
目の前でいろいろな困りごとが出てきたときに、少しでも早く助けてあげたいと思います。
しかしながら、やってもいいのか?介護保険として適切か?など迷ってしまうのではないでしょうか。

まず、大前提の話ですが、ヘルパーがやっていいことと、やってはいけないことは
「介護保険として」なのか、「倫理的に」なのかで分けなくてはなりません。

例えば、介護保険の中で本人以外の利益となるような行為はできないと言われていますよね。
同居家族の食事を用意することや、同居家族も利用する共用スペースの掃除などは、ご利用者本人の保険を利用して、同居家族の利益となるという意味で利用はできないということになります。

「介護保険として」適切でも、倫理的には不適切な場合も

同居家族が日中不在で、訪問終了後に帰ってくるという場合に、玄関の花瓶が倒れて水びたしになっているとします。
そのときに、「玄関は家族共用スペースで同居家族がいるので、介護保険で掃除をすることは不適切だ」として何もせずに帰ることは
「介護保険」としては適切かもしれませんが(後で話しますが、実は介護保険的にも不適切です。)
「倫理的」には不適切であるということはわかると思います。

転倒リスクが高くなるということもそうですし、訪問していて玄関がそのような状態になっているのにそのままにして帰るのは、ヘルパーでなくてもおかしいことだと思います。

介護保険は万能ではない

厚生労働省が示した「老計10号」(平成12年3月17日厚生労働省老健局老人福祉計画課長通知)の中にある「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」というものがあります。

ここには、介護保険で算定しても良いサービス行為がしっかりと記載されていて、原則ここに記載されていることが介護保険で訪問介護として算定できるサービスです。

では、記載されていない事象が生じた場合、どうしたら良いのでしょうか?
ぜひ心得てほしいことは「介護保険は万能ではなく、ご利用者の生活を介護保険だけで支えるということはできない」ということです。

ヘルパーができること・できないことの判断方法

ヘルパーができること・できないことの判断方法は、以下の通りです。

本人にとってできることかできないことかを見極める

本人ができることは、基本的に「老計10号」に記載されている内容でも支援すべきではないと考えます。
私たちはできない部分をお手伝いすることで、ご利用者様の生活が自立できるように支援するのが仕事です。

本人以外の協力者によって、できるか・できないかを見極める

同居家族や同居していない家族・知人・ご近所の方・ボランティアの方など色々な方のご協力がいただけるか十分に検討してみましょう。

訪問介護として対応できるかどうかを考える

上記①と②を検討した結果、他に手段がない時は訪問介護として、対応できるかどうかを考えます。
「老計10号」に記載されている内容かどうかを判断しますので、この通知は訪問介護業務を行うためには、覚えておかなくてはなりません。

ケアマネジャーに提案し、担当者会議の開催を要請

上記の手段も難しく、「老計10号」に記載がない場合は、ケアマネジャーに生活課題として提案し、どのように解決していくかについて担当者会議の開催を要請します。

そこで必要性が高いと認められた場合は、ケアプランにその生活課題を解決する計画が記載され、訪問介護として実施できるようになる可能性があります。
もちろん、保険者への確認も必要になります。
また、ここで、介護保険以外の方法で解決ができないかも再度検討されるとよいと思います。

地域包括支援センターと地域ケア会議を開催し、解決を図る

上記すべて検討した結果、解決が難しいような生活課題は、地域包括支援センターと地域ケア会議を開催し、地域の様々な人々から意見を募り解決を図ります。

このようにできること・できないことを判断していくことは大変です。
しかし、ご利用者様が少しでも自立した生活を送れるように、現場からしっかりと声をあげていってほしいと思います。

医行為と特定行為について

次に医行為についてですが、「医行為ではない行為」と「特定行為」について整理が必要です。

医行為ではない行為

「医為ではない行為」とは、「場合によっては医行為となることもあるけど、原則は医行為とはしないからヘルパーが対応してもいいですよ」という行為です。
これは平成17年7月26日厚生労働省医政局長通知である医政発第0726005号に記載されており
体温測定や電子血圧計を用いた血圧測定、軽微な切り傷や擦り傷などの対応が示されています。

先述しましたが「場合によっては医行為となることもある」ということを念頭に置いたうえで、実施するときはケアマネジャーや医療従事者に確認しながら実施してほしいと思います。

特定行為

「特定行為」は喀痰吸引や経管栄養法についてですが、研修を受けて、実技試験をクリアすればできるようになります。
特に訪問介護では第3号研修という特定の者に対してだけ特定行為ができるようになる研修がありますので、それを修了すれば特定行為はできるようになります。

事業所としても特定行為事業者の登録も必要になりますので、詳しくは保険者へご確認ください。

医療従事者との連携が不可欠

大切なことは医療従事者との連携が不可欠ということです。

ご利用者様の状態も刻一刻と変化されると思います。
前回訪問では大丈夫だったけど、今回訪問では状態が変化している。
でもそのまま実施して大丈夫かな?という場合に自己判断はしないことが大切です。

ぜひ訪問看護師や主治医と連携を取りながら行いましょう。

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身体介護のできること・できないこと一覧

やって良いこと やってはいけないこと
排泄介助
食事介助
清拭 マッサージ
部分浴
全身浴
洗面等
身体整容
更衣介助
体位変換
移乗・移動介助 散歩・リハビリテーション
通院・外出介助 通院以外の場所への送迎(※1)や病院間だけの送迎
院内介助(※2)、家族受診介助
冠婚葬祭に伴う外出介助、お墓参り
起床・就寝介助
服薬介助 市販薬の投与・貼付など(※3)
PTPシートから取り出しての服薬介助
自立支援・重度化防止のための見守り的援助 具体的目標や評価が伴わない左記の支援
爪切り(※4)

※1
官公庁や日常生活に必要な買い物などは場合によって認められることがあるので、必要性をサービス担当者会議でご確認いただき、保険者にも確認をとるようにしてください。

※2 
院内介助については介護保険で算定できる時間は直接介助を実施した時間のみであり、診察までの待ち時間での見守りなどは、特段の理由がない限り算定できないので、介護保険以外のサービス等で対応が望ましいと考えます。

※3
必要性をサービス担当者会議でご確認いただき、保険者にも確認をとるようにしてください。

※4 
爪切りは「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」により、医行為ではない行為として介護職で対応できるとされておりますが、「爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合」とありますので、状態確認が必要です。

身体介護のよくあるできない依頼と断り方

よく依頼のあるできないこと/マッサージ

やってはいけない理由・断り方

コリをとる、痛みを緩和するというマッサージは、医療目的のマッサージとなる可能性があり、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に抵触する可能性があります。

不安を軽減するためのタッチングのようなマッサージについては制限はありませんが、その行為のみをもって訪問目的とすることは適切ではないと考えます。「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の趣旨を鑑みて対応をしましょう。

よく依頼のあるできないこと/冠婚葬祭やお墓参りの支援

やってはいけない理由・断り方

介護保険制度は公金を財源としている性質上、特定の宗教等の活動・行為に該当する可能性のある支援は適切ではないとされることがあるため対応は難しいでしょう。
介護保険以外の介護タクシーや自費サービス・インフォーマルサービスをご活用ください。

よく依頼のあるできないこと/散歩・リハビリテーション

やってはいけない理由・断り方

介護保険はケアマネジャーが作成するケアプランに基づき、支援をする必要があります。
ケアプランには目標が記載されており、実施後には定期的な評価により、目標進捗について確認しなくてはなりません。

この評価という点において、訪問介護員には散歩やリハビリテーションに対する評価について専門的知識を有しておらず、評価が適切にできないことから、サービス提供することができません。

よく依頼のあるできないこと/市販薬の投与や貼付・PTPシートから取り出しての服薬介助

やってはいけない理由・断り方

基本的に、訪問介護員が行っても良い服薬等介助は、「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」に示されており、「状態が安定している」「経過観察を必要としない」「使用に専門的な配慮を必要としない」ことが条件とされています。

市販薬の投与や貼付については、主治医にご確認いただいた上で、ご本人やご家族の希望に応じて、ケアマネジャーや関係機関からの確認のもと、利用者様の自己責任の範囲での支援は可能です。
よって、PTPシートから薬を取り出す行為は、薬局で一包化してもらうか、ご本人やご家族で対応してもらうか、訪問看護など医療職に支援してもらう方法をご検討いただきたいと思います。

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生活援助のできること・できないこと一覧

やって良いこと やってはいけないこと
掃除 居室内やトイレ、卓上等の清掃 契約者以外が使用する場所の清掃
ゴミ出し 家電製品を分解するような清掃
準備・後片付け 窓ふき(※)、照明掃除(※)
洗濯 洗濯機または手洗いによる洗濯 庭掃除や草とり
洗濯物の乾燥(物干し) 契約者以外が使用する衣服等の洗濯
洗濯物の取入れと収納 特殊なシミ取り
アイロンがけ
ベッドメイク 利用者不在ベッドでのシーツ交換
布団カバーの交換等
衣類の整理・被服の補修 衣類の整理(夏・冬物の入れ替え等)
被服の補修(ボタン付け、破れの補修等)
一般的な調理、配下膳 配膳、後片付けのみ 契約者以外の分の調理
一般的な調理 時間のかかる調理(※)
買い物・薬の受け取り 日常品等の買い物
(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)
嗜好品(酒、たばこ等)の買い物(※)
日用品以外の買い物(※)
薬の受け取り 預貯金の手続き代行、ATM利用代行

※ 絶対にやってはいけないというわけではなく、原則的に介護保険ではできないと思われる行為。

生活援助のよくあるできない依頼と断り方

よく依頼のあるできないこと/庭掃除や草とり

やってはいけない理由・断り方

訪問介護は原則、自宅内でのサービス提供です。
庭掃除や草取りは自宅の外の扱いとなるので、対応できません。

また、「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」という通知の別紙で「一般的に介護保険の生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例」に「訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為」に例示されています。
介護保険以外のサービス(シルバー人材センターや高齢者の福祉制度など市町村での利用できるサービス)をご検討いただきましょう。

よく依頼のあるできないこと/契約者以外が使用する場所の清掃(家族で利用する範囲の清掃)

やってはいけない理由・断り方

介護保険は利用者様本人との契約によるサービス提供ですので、本人以外への利益が見込まれることについては不適切とされることがあります。
本人は足が悪く階段が上がれない状態であれば、2階の掃除はできないことになりますし、自宅でお風呂が入れない状態の場合は浴室清掃もできないということになります。

また、家族が同居している場合は、家族も利用するトイレや台所・玄関などについては本人以外の利益に該当する可能性があるので、原則はご家族で行っていただくことになります。
ただし、ご家族にその場所の清掃が特段の事情により行うことができず、かつその場所の清掃が本人の自立支援につながると考えられる場合は対応できると考えます。
こちらについては、サービス担当者会議等でその必要性を検討し、保険者にも確認を取りながら進めていく必要があります。

よく依頼のあるできないこと/嗜好品(酒、たばこ等)の買い物・日用品以外の買い物

やってはいけない理由・断り方

介護保険は自立支援を目的としたサービスです。嗜好品については健康を害する可能性があり、介護保険の目的に沿わないことや、日常生活における必要性について、公金を財源にしている以上不適切であると判断されることもあることから原則的には行いません。
ただし、嗜好品を購入することが、本人のQOLに大きく寄与し、主治医や関係機関と検討した上で、必要性があると判断される場合は、保険者に確認の上、実施することがあります。

また、日用品以外の買い物についても、同じ理由で不適切であると判断されることがあります。
ただし、暖房器具や冷房器具など日常的な買い物ではなくても、その買物がないと日常生活に大きく支障が出る可能性があるものを買う場合は、必要性が高いと判断されることもあるので、サービス担当者会議等で関係機関と必要性を検討し、保険者に確認してから実施します。

よく依頼のあるできないこと/窓ふき・照明掃除

やってはいけない理由・断り方

「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」に、別紙で「一般的に介護保険の生活援助の範囲に含まれないと考えられる事例」があります。
その中に「日常的に行われる家事の範囲を超える行為」の例示として、「大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ」という記載があることから原則的には実施できません。

訪問の主な目的がこの通知に該当する内容であれば不適切と判断されるのですが、サービス提供後の時間外にベッドの目の前の汚れた窓を1枚だけ拭くことを制限するわけではないと思っています。
この通知はあくまで「例」を示しているので、利用者様の背景や価値観などによっては、もしかすると例示された行為も必要性の高いものになる可能性があると思います。

「通知に記載があったからできません。」ではなくサービス担当者会議等で、その行為が利用者様にとって必要なことかどうかをしっかりと関係機関で検討し、必要性を保険者に伝えて、実施方法について確認していくという過程がとても重要です。

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この記事のライター

ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社ゆりかご 代表取締役
茨城県訪問介護協議会 副会長
茨城県難病連絡協議会 委員
水戸在宅ケアネットワーク 世話人
茨城県介護支援専門員協会 水戸地区会幹事
茨城県訪問看護事業協議会 監事
水戸市地域包括支援センター運営協議会 委員
水戸市地域自立支援協議会全体会 委員
介護労働安定センター茨城支部 介護人材育成コンサルタント
日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科 在籍中

介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員・FP2級

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