第36回 介護福祉士国家試験 過去問と解説(介護の基本)
■問題1
施設利用者の個人情報の保護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.職員がすべての個人情報を自由に閲覧できるように、パスワードを共有する。
2.個人情報を記載した書類は、そのまま新聞紙と一緒に捨てる。
3.個人情報保護に関する研修会を定期的に開催し、意識の向上を図る。
4.職員への守秘義務の提示は、採用時ではなく退職時に書面で行う。
5.利用者の音声情報は、同意を得ずに使用できる。
■解答
3.個人情報保護に関する研修会を定期的に開催し、意識の向上を図る。
■解説
1.(×)各職員が業務上必要とする範囲に限って個人情報にアクセスできるシステムが望まれます。
2.(×)個人情報が読み取れないよう、焼却や溶解処分すべきです。
3.(○)選択肢の通りです。同時に、職員の意識のみに依存せず個人情報が守られるようなシステムづくりが必要だといえるでしょう。
4.(×)職員の守秘義務は、雇用契約時から明示しておくことが望まれます。
5.(×)利用者の音声情報も、特定の個人の識別につながる場合は、個人情報に該当します。
■問題2
介護福祉士に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1.傷病者に対する療養上の世話又は診療の補助を業とする。
2.喀痰吸引(かくたんきゅういん)を行うときは市町村の窓口に申請する。
3.業務独占の資格である。
4.資格を更新するために5年ごとに研修を受講する。
5.信用を傷つけるような行為は禁止されている。
■解答
5.信用を傷つけるような行為は禁止されている。
■解説
1.(×)看護師の役割です。
2.(×)介護職員等が痰の吸引を行うためには、喀痰吸引等研修を修了して「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受け、その職員が所属している事業者が「登録特定行為事業者」として都道府県知事の登録を受ける必要があります。
3.(×)介護福祉士は、名称独占の資格であり、業務独占の資格ではありません。
4.(×)資格更新のための研修受講は規定されていません。
5.(○)「社会福祉士及び介護福祉士法」第45条において、信用失墜行為が禁止されています。
■問題3
次の記述のうち、介護における感染症対策として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.手洗いは、液体石鹸(えきたいせっけん)よりも固形石鹸(こけいせっけん)を使用する。
2.配膳時にくしゃみが出たときは、口元をおさえた手でそのまま行う。
3.嘔吐物(おうとぶつ)の処理は、素手で行う。
4.排泄(はいせつ)の介護は、利用者ごとに手袋を交換する。
5.うがい用のコップは、共用にする。
■解答
4.排泄(はいせつ)の介護は、利用者ごとに手袋を交換する。
■解説
1.(×)固形石けんよりも、液体石けんや泡石けんを用います。
2.(×)配膳時はマスクを着用すべきです。
3.(×)嘔吐物の処理は、手袋を着用して行います。
4.(○)排泄の介護の際に着用した手袋は利用者ごとに交換し、感染リスクの低下を図ります。
5.(×)うがい用のコップは、紙コップの使い捨てにすることが望ましいといえます。
■問題4
個別性や多様性を踏まえた介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.その人らしさは、障害特性から判断する。
2.生活習慣は、生活してきた環境から理解する。
3.生活歴は、成人期以降の情報から収集する。
4.生活様式は、同居する家族と同一にする。
5.衣服は、施設の方針によって統一する。
■解答
2.生活習慣は、生活してきた環境から理解する。
■解説
1.(×)障害特性も「その人らしさ」を形成する要素の一つですが、それ以外の要素もたくさんあるはずです。
2.(○)その人が生活してきた環境について情報収集することで、生活習慣を理解することができるでしょう。
3.(×)生活歴には、その人が生まれてから現在に至るまでのすべての生活の歴史が含まれます。
4.(×)同居する家族だからと言って生活様式が同じとは限らず、個々の違いを踏まえて関わることが個別性のある介護につながります。
5.(×)安全性などが保たれる範囲で、利用者の希望に沿うことが望まれます。
■問題5
介護福祉士が行う服薬の介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.服薬時間は、食後に統一する。
2.服用できずに残った薬は、介護福祉士の判断で処分する。
3.多種類の薬を処方された場合は、介護福祉士が一包化する。
4.内服薬の用量は、利用者のその日の体調で決める。
5.副作用の知識をもって、服薬の介護を行う。
■解答
5.副作用の知識をもって、服薬の介護を行う。
■解説
1.(×)服薬時間は、医師の指示に従わなければなりません。
2.(×)薬を服用できずに残った場合は、残薬整理(処方日数の調整や飲み忘れ対策の検討など)を行うことがあるため、医療者に報告します。
3.(×)一包化するためには医師の指示が必要です。その指示に基づき、薬剤師が一包化を行います。
4.(×)薬の用量は、医師の指示に従わなければなりません。
5.(○)薬には作用と副作用の両面があり、その知識を介護福祉職も学んでおく必要があります。特に服薬後の副作用発現の有無や程度を、日常の関わりの中で観察する姿勢が求められます。
■問題6
介護を取り巻く状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.ダブルケアとは、夫婦が助け合って子育てをすることである。
2.要介護・要支援の認定者数は、介護保険制度の導入時から年々減少している。
3.家族介護を支えていた家制度は、地域包括ケアシステムによって廃止された。
4.要介護・要支援の認定者のいる三世代世帯の構成割合は、介護保険制度の導入時から年々増加している。
5.家族が担っていた介護の役割は、家族機能の低下によって社会で代替する必要が生じた。
■解答
5.家族が担っていた介護の役割は、家族機能の低下によって社会で代替する必要が生じた。
■解説
1.(×)ダブルケアとは、自身の子どもの世話と親の介護を同時に行っている状態を指します。
2.(×)要介護・要支援の認定者数は、介護保険制度の導入時から増加しています。
3.(×)家制度とは、戸主が家族を統率する家族制度の在り方で、戦後の民法改正で廃止されました。
4.(×)要介護・要支援の認定者のいる三世代世帯の構成割合は、介護保険制度の導入時から年々減少しています。
5.(○)三世代世帯の減少も要因の一つとして、現代では家族機能が低下しているため、介護の役割を社会で代替する必要が生じています。介護保険制度が導入されたのもそのためです。
■問題7
Aさん(48歳、女性、要介護1)は、若年性認知症(dementia with early onset)で、夫、長女(高校1年生)と同居している。Aさんは家族と過ごすことを希望し、小規模多機能型居宅介護で通いを中心に利用を始めた。Aさんのことが心配な長女は、部活動を諦めて学校が終わるとすぐに帰宅していた。
ある日、夫が、「長女が、学校の先生たちにも相談しているが、今の状況をわかってくれる人がいないと涙を流すことがある」と介護福祉職に相談をした。
夫の話を聞いた介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.長女に、掃除や洗濯の方法を教える。
2.家族でもっと頑張るように、夫を励ます。
3.同じような体験をしている人と交流できる場について情報を提供する。
4.介護老人福祉施設への入所の申込みを勧める。
5.介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護サービスの変更を提案する。
■解答
3.同じような体験をしている人と交流できる場について情報を提供する。
■解説
1.(×)「今の状況をわかってくれる人がいない」という訴えの根本を捉えた対応とはいえません。
2.(×)さらに家族での頑張りを促すと、負担が限界を超える可能性が高いといえます。
3.(○)設問の事例の長女のようなヤングケアラーは、特に孤立して相談できる相手がいない悩みを抱えがちです。セルフヘルプグループについて情報提供することが適切です。
4.(×)Aさんは要介護1であり、介護老人福祉施設の入所要件を満たしていません。
5.(×)介護サービスの変更は、サービス担当者会議の場で、多職種で協議して決定します。
■問題8
Bさん(61歳、男性、要介護3)は、脳梗塞(cerebral infarction)による左片麻痺(ひだりかたまひ)がある。週2回訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し、妻(58歳)と二人暮らしである。自宅での入浴が好きで、妻の介助を受けながら、毎日入浴している。サービス提供責任者に、Bさんから、「浴槽から立ち上がるのがつらくなってきた。何かいい方法はないですか」と相談があった。
Bさんへのサービス提供責任者の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.Bさんがひとりで入浴できるように、自立生活援助の利用を勧める。
2.浴室を広くするために、居宅介護住宅改修費を利用した改築を勧める。
3.妻の入浴介助の負担が軽くなるように、行動援護の利用を勧める。
4.入浴補助用具で本人の力を生かせるように、特定福祉用具販売の利用を勧める。
5.Bさんが入浴を継続できるように、通所介護(デイサービス)の利用を勧める。
■解答
4.入浴補助用具で本人の力を生かせるように、特定福祉用具販売の利用を勧める。
■解説
1.(×)自立生活援助は、一人暮らしをする障害者を対象に、生活上の困り事の相談を聞き、独力で解決できるように援助するサービスです。
2.(×)浴室を広げることは、居宅介護住宅改修費の対象にはなりません。
3.(×)行動援護の対象は、知的障害や精神障害で単独での行動が著しく困難であり、常時介護を要する障害者です。
4.(○)Bさんの力を生かすためにも、妻の介護負担を減らすためにも、入浴を補助する特定福祉用具の利用を勧めることが適切です。
5.(×)Bさんは自宅での入浴を希望しており、それを可能にする支援を考えます。
■問題9
社会奉仕の精神をもって、住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める者として、適切なものを1つ選びなさい。
1.民生委員
2.生活相談員
3.訪問介護員(ホームヘルパー)
4.通所介護職員
5.介護支援専門員(ケアマネジャー)
■解答
1.民生委員
■解説
民生委員は、民生委員法に基づき、厚生労働大臣から委嘱された民間ボランティアで、社会奉仕の精神をもって担当区域の住民の生活に関するさまざまな相談に応じ、適切な支援やサービスへつなぐとともに、高齢者や障害者世帯の見守りや安否確認などにも重要な役割を果たしています。近年は民生委員の不足が慢性化しており、対策の必要性が指摘されています。
よって、1.(○)、2.(×)、3.(×)、4.(×)、5.(×)、となります。
■問題10
3階建て介護老人福祉施設がある住宅地に、下記の図記号に関連した警戒レベル3が発令された。介護福祉職がとるべき行動として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1.玄関のドアを開けたままにする。
2.消火器で、初期消火する。
3.垂直避難誘導をする。
4.利用者家族に安否情報を連絡する。
5.転倒の危険性があるものを固定する。
■解答
3.垂直避難誘導をする。
■解説
設問の図記号は「災害種別避難誘導標識システム(JIS Z9098)」において「洪水・内水氾濫」を意味します。警戒レベル3は「避難に時間を要する人(高齢者、障害者、乳幼児等およびその支援者)」は避難すべきとされる状況です。これらのことから、介護福祉職は、対象者を高層階へ避難させる垂直避難誘導を行うことが適切です。
よって、1.(×)、2.(×)、3.(○)、4.(×)、5.(×)、となります。
ささえるラボ編集部です。
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