排せつ介助とは?未経験者がつまづきやすいポイントや、心構えを解説します。
■そもそも排せつ介助とは?
一概に、高齢だから・認知症だからという理由では括れないのが排せつケア
「おしっこが漏れてしまう」「トイレに間に合わない」「便秘で下剤が手放せない」「パッドの中での排せつになっている」など多岐にわたる排せつのトラブルは、いつ誰に起きてもおかしくないんですよね。
認知症だからといって、必ず失禁するわけではなく、100歳だからといって、絶対おむつが必要というわけではないのです。
でも、何十年も休まず動いてきた膀胱や尿道、腸や直腸は、年齢を重ねると支障が出てきます。そんな時、年齢のせいにして考えることを止めるのではなく、どんなトラブルが起きやすいのかを事前に知っておき、適切な対処法をとっていくことで、他者からの援助が必要であっても自分を嫌いにならずに生活を続けていける可能性があります。
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おしっこはどうやって作られるのか、便はどうして体から出ていくのか、という身体のしくみを知った上で、立つことができる~歩行ができる方、座ることができる~立てる方、寝たままの方…と、状況に応じた介助方法を説明しているので見てみてください!
■排せつ介助の具体的な仕事内容4ステップ
その上で、排せつ介助とは何か?というと、「サポートが必要なところがどこかを調べて、人間らしく排せつができるように援助を行うこと」になります。
排せつケアの具体的なアクションとしては、この考え方をベースに
①排尿、排便それぞれどんな障害があるのかを調べる
(排尿・排便日誌、食事日誌、失禁タイプのチェック、残尿測定などの情報を集める)
②どんな対応ができるかを考える
③本人の気持ちを聞きつつ、専門家(医師や看護師)の意見を聞きつつプランを立てたものを実行する
④そこで起こった反応や事柄を伝えてケアに再度生かしていく
という流れで仕事をすすめていきます。
■排せつ介助で未経験者がつまづきやすいポイントと、克服方法は?
現場に入った未経験者の方からは「排せつ介助、トイレ誘導、おむつの交換が速く出来なくて悩んでいる」とお聞きします。
ケアの速さについては慣れの問題も大きいですが、一番大事にしたいのは「介助の早さ」ではなく「利用者さんの気持ち」です。スピードを重視するあまり、利用者さんに嫌な気持ちや恥ずかしさを感じさせる介助を行っていたとしたら、それは本末転倒です。
まずは丁寧にその方に対応することを大事にしていきましょう。
すると、おのずと手際もよくなり、いろんなシーンの想定もできるようになることで、スピードも後からついてきます!
排せつケアのやり方が分からなくて介助が遅くなってしまうのであれば、先輩のやり方を見て真似たりアドバイスをもらった上で、動画などで予行練習をするなどの準備をしてみると、苦手を克服できるのでおすすめです。
■排せつ介助にむかうための心構え
実は、おむつが当たり前の時代はそろそろ終わりになります。
・・・と聞くと、介護職といえば「おむつ交換」がイメージされる人にとっては驚きかもしれませんね。
これは、国の方針として「できるだけトイレで排せつをすることをサポートする施設に加算がつく(=評価する)」ようになったからです。これを、「排せつ支援加算」と言います。
これから介護の世界で仕事をしていこうと思っている方は、ぜひ厚生労働省の情報や、国の動向もチェックしてみましょう。
そして、未来に向けて、自分将来が受けたくなるような介護を一緒につくっていきましょう!
排せつ介助に関するお悩み
介護の仕事について1年目です。排泄介助にどうしても慣れることができません。。。
においとか、その他にもいろいろときついです(察してください…)
本とかネットには「尊厳を大切に!」とか「自分でできることは手伝わない!」とか書いているのを目にするけれど、そんな事を言っていられないのが現実です。
利用者さんと接するのは好きなのに、排泄介助だけがきついです。
苦手と思うことを分解することと、想像力がカギになります
回答者
とても素直なご質問をありがとうございます。
介護職だからといって、物心ついた時から他人の排泄物を好ましいと思う方は少ないと思います。
本当はご質問者さんと同じように思っているけれど、「介護職なんだから」そう思うべきじゃない、と思っている方もいるかもしれないので、ご質問して下さったことに感謝です。
■きついと感じるのは「自我境界」が発達するから
どうして「きつい」と感じられるかなんて考えたことはないかもしれませんが、「慣れないな」と思うのは非常に人間らしい感情です。
というのも、人は成長の過程で、然るべき場所で然るべき方法で排泄する事ができるように
自分の排泄物ですら「汚いもの、自分から遠ざけるべきもの」とインプットされる「自我境界」というものが発達するのです。
ちょっと難しい言葉を使いましたが、人間が人間らしく社会的に生きていく上で排泄物を汚いと思うのは、衛生的に生きていく上では大切な機能なのです。
なので、あなたはとても人間らしく、清潔な意識をお持ちなのです。
これはご質問者さんにとって強みでもあることをまず、受け止めてくださいね。
■利用者さんと接するのが好きなのはなぜですか?
さて、そうは言っても、介護職として働く中で排泄ケアに携わらない訳にはいかないかもしれません。
(実際に介護現場から離れた役職に就くならば別かもしれませんが)
そんなあなたにおすすめの考え方を一つ、お伝え出来たらと思います。
質問者さんは、利用者さんと接するのはお好きとのこと。
一番大切な気持ちかもしれませんが、その「好き」の気持ちも分解してみましょう。
きっと、利用者さんが笑ったり、喜んでくれたり、生きていて良かったと、そう思ってもらったりすると、とっても嬉しくありませんか?
例えば映画を一緒に観て感動を共有したり、美味しいご飯を一緒に食べて「おいしいね」って笑ったり、出来ない事が出来るようになったりして、その喜びを共有したり・・・
ご質問者さんが思い浮かぶ「幸せ」のシーンは、実は全て「あること」が出来ているからなんです。
■利用者さんの幸せの背景にある、適切な排泄
そう、もうお気づきかもしれませんが、それは「気持ち良い排泄」なんですよね。
楽しい映画も、美味しい食事も、何かをやってみよう!と思う気持ちも、全部気持ちよく排泄が出来ていなければ、心の底から楽しい、幸せ!と思うのは実は難しいのです。
お腹が苦しかったり、常にトイレに行きたいと思っていたり、お尻が気持ち悪かったら、何よりもそれを何とかして欲しいと思うのではないでしょうか?
目の前の排泄物にだけ注目してしまうと単に汚いものに見えるかもしれませんが、そこにアプローチ出来るのは介護職なんですよね。
そして、そこを解決できたら、本当の利用者さんの笑顔が引き出せるはずです。
■別の方向から「排泄介助」をとらえてみましょう
大好きな利用者さんが心から笑ってくれる、そんな瞬間を作るベースが、排泄をどう気持ちよくサポートできるかなのです。
詳しい方法論はまた別でお話したいのですが、本来排泄は、出したら気持ち良いものなのです。
その体感は人と共有できないものですから難しいのですが、そこの気持ち良さまで想像できると、介護の仕事全体が変わるかもしれないくらいのインパクトで、もっと介護の仕事が好きになってしまうかもしれません。
そんな風に排泄介助を捉えてみるのはいかがでしょうか?
排せつ介助で注意すべき点は?
ここからは、よく介護現場で目にする具体的な排泄介助の中でも、特に注意したい点について解説していきます。
■①まず立ち止まって考える
まずは立ち止まって、以下のことを確認してみましょう。
・どの部分にサポートが必要なのか?
・どのタイプの失禁なのか?
・この状態が命の危険に繋がっていないか
・その人の生きる力(生命力)を奪っていないか
■②ADL(日常生活動作)に合わせた用具の選択をする
その上で、ADL(日常生活動作)に合わせた用具の選択をしていきます。
ここで押さえておきたいのは「トイレでの排泄が難しくなったのはなぜなのか」ということです。
排泄障害のある方に対して、漏れるからと言って安易におむつを使用してしまうと、本人やご家族、介護者のQOLを脅かしてしまうことにも繋がります。
ADLを考慮した排泄用具の選択チャートなどを参考に、まずはどのような環境が想定できるのかを考えてみましょう。
(ADLを考慮した排泄用具の選択:MOCKY式フローチャート)
※この記事の執筆者、大関さんのブログに遷移します。
※用具によって問題が解決に向かう排泄障害のタイプは主に「機能性失禁」が中心です。
溢流性やその他のタイプではそもそもの解決には至らないので、介入時のアセスメント(排尿日誌や失禁タイプのチェック表など)にて、失禁のタイプの推測、適切な用具の選択、排泄介助の時間の推測をしていきましょう。
社会福祉士、介護福祉士、認定排泄ケア専門員、排泄機能指導士