本日のお悩み
未経験でヘルパーの仕事をするのはきついでしょうか?
先日資格を取ったばかりなのですが、周りから「ヘルパーはきついからやめたほうがいい」
「最初は施設がいい」と言われます。
ヘルパーが「きつい…」と思ってしまうのはどんな時?原因と対処法を解説します
ゆりかごホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ゆりかご 代表取締役 茨城県訪問介護協議会 副会長 茨城県難病連絡協議会 委員 水戸在宅ケアネットワーク 世話人 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・看護師・介護支援専門員・相談支援専門員
■利用者から自分の能力以上の要求をされるとき(サービスの質)
原因:利用者の要求過多・ヘルパー側の力量不足
対処法①:契約時にきちんと説明する
私たち介護サービスは介護保険法によりサービス内容や範囲が定められています。しかし、それ以上にサービスを求められる場合があります。
この場合、一番の対処法は契約時にきちんと説明をすることです。私たちはどのようなサービスを、どのような範囲・条件で提供できるのか、ケアプランに位置付けられているものかどうか、自分たちの職域について、利用者さまがしっかりと理解でいるような説明を行う必要があります。
対処法②:管理者や責任者、ケアマネジャーから説明する
すでにサービス提供後に、このような問題が起こった場合は、管理者やサービス提供責任者などと同席し、事業所としてできることを説明し、利用者さまに理解を求めます。それでも解決が難しい場合は、ケアマネジャーに協力を依頼し、サービス担当者会議を開催し、サービス利用時の再確認を行います。
このように、利用する側に、ヘルパーができることを理解してもらうように努めることが大切です。
対処法③:力量不足の場合は自己研鑽を
もう一つはヘルパー側の力量不足についてです。私たちの介護サービスは、科学的根拠に基づき、ケアを行わなければなりません。また介護技術も日々進歩しています。きちんと利用者さまの状態をアセスメントし、適切なサービスを、正しい技術で提供するためには、自己研鑽が必要です。
資格を取得するだけでなく、取得後も研修や講習に積極的に参加し、自己成長を目指していきましょう。
■事業所から自分の能力以上の要求をされるとき(労務環境)
原因:雇用契約や労働条件、事業所評価と自己評価のずれ
対処法①:無理せず相談する
自分の限界を超えたり、許容範囲を逸脱する仕事量では、仕事は続きません。働く際に事業所と締結した雇用契約や労働条件は自分に適しているでしょうか?
働いてみて、思っていた状態と違うと感じることもあると思います。このときに、無理をせずに、きちんと上司と相談することをおすすめします。
事業所としては、無理して辞職されるよりは、相談を受けて、その方のできる範囲で仕事を続けてもらえる方が良いのです。自分の心身の許容範囲より負担が大きいと感じたら、すぐに相談しましょう。
対処法②:事業所側も、気軽に相談できる風土の醸成を
また、事業所側では、気軽に相談できる企業風土の醸成も課題の一つです。いかに上司と部下がコミュニケーションを密にとっているかが、離職率低下の鍵です。
私は1on1面談の導入をお勧めします。上司が部下のために時間を作り、定期的に部下の想いを聞く機会を作ります。上司としては部下の悩みをいち早く把握でき、対処できますし、部下としては、我慢することなく働きやすい環境で、自分らしく働くことができるようになります。
1on1面談を導入したいと思った方は、「プロカウンセラーが教える1on1コミュニケーション入門」という書籍をお勧めします。非常にわかりやすく、初めての方でも気軽に導入できるように書かれています。
■自分の努力が報われないと感じてしまうとき(メンタルヘルス)
原因:コミュニケーション不足、人事評価制度
対処法①:自分のがんばりを事業所が把握してくれているか確認する
給与や処遇などが、自分のがんばりや努力とアンバランスな状態だと仕事は続きません。
給与については事業所により差はありますが、私たちは介護報酬という国が決めた基準でサービスの対価をいただくので、給与を上げるとしても限界があります。
よって、自分がどのくらいがんばっているかということを事業所が適切に把握してくれることが大切になります。
対処法②:事業所側は、人事評価や制度の見直しを
こちらも上記「事業所から自分の能力以上の要求をされるとき(労務環境)」に挙げた部分と重なる点もあると思いますが、それ以外に「人事評価」の設計も検討されると良いと考えます。
事業所や会社には理念があります。その事業所や会社が一番大切にしている価値観は何かということです。それぞれの事業所で大切にしていることは違うので、人事評価も違って当たり前なのです。
ヘルパーが会社の理念に則り、良いサービスを提供しても、そのことが評価に反映されない評価制度であれば、当然ヘルパーは報われません。現在は処遇改善加算制度など、キャリアパス制度や人事評価制度を導入することで加算を取得できる形になっています。ただ導入するのではなく、自分たちの事業所に合った評価制度になっているか、ぜひ確認をいただければと思います。
■関係性の悪化・性格の不一致が起こったとき
原因:ヘルパー自身の価値観表出
対処法①:自分の価値観で物事を判断しない
訪問介護ではヘルパーと利用者さまは1対1となります。関係性が悪化すると、訪問継続が困難になるケースが多いと思います。
関係性の悪化については、利用者さまとヘルパーとの相互関係によるものですので、一概に解決方法はお伝えしづらいですが、その原因が性格の不一致にあるときは多くの場合、サービス提供中にヘルパー自身の価値観で物事を判断していることが要因になっていると思われます。
例えば「目玉焼きにかけるもの」は、何でしょうか?塩コショウ、マヨネーズ、ケチャップ、しょうゆなど人それぞれだと思います。何もかけないという方もいるでしょう。しかし、自分で「しょうゆ」が普通と思っている人が、ケチャップをかけられると怒ります。
これはなぜ怒るのかというと、自分の期待している未来と違うからです。自分の価値観のままサービスを提供すると、ときに相手から見ると自分のイメージしていた未来と違うという感情となり不快感を示します。
これに対してサービス提供側は、自分にとっては「普通」の行為をしたにもかかわらず、相手は不快感を示していることから、自分の価値観が否定されたような感情を抱くのです。これにより関係性が悪化します。
対処法②:分からないとき、利用者さんに直接聞く勇気を持つ
自分の価値観で行動する前に、価値観は人それぞれであるということを念頭に置き、利用者さまの価値観はどうだろうと考えましょう。わからなければ直接利用者さまに聞けばよいのです。
「目玉焼きに何をかけますか?」と聞けば、利用者さまは自分の期待した未来になりますし、相手が不快な感情を抱かないので、結果としてヘルパー自身も否定されている感情を抱くことなく関係性は良好に保てるのではないでしょうか?
必ず相手の立場に立って、相手の価値観を確認するという過程を積み重ねていくことで関係性は良好に保ちやすいと考えます。
■疑われてしまったとき
原因:相手への確認不足、または疾病による妄想など
対処法①:利用者様への確認を徹底する
利用者さまから疑われるということを経験したことがあるという方は少なくないのではないでしょうか?多くの場合、利用者さまへの確認不足が原因となっています。
お買い物を頼まれた際に、お釣りを渡したのにもらっていないと言われたり、部屋にあったものが無くなったと言われたりすることがあります。
例えば金銭授受の際は、受け取った金額や金種を確認し、レシートとおつり(こちらも金種を記録)を渡し、それを記録に残しておくことが大切です。部屋のものが無くなったという場合は、例えば掃除をする際に、本人がいないところを掃除しないようにするなども工夫の一つです。
対処法②:利用者様への確認に加え、周囲の理解も得ておく
そもそも生活援助は家事代行ではなく、自立支援です。本人がいない自宅内で家事を実施することは、実は単なる代行作業となっているケースが多いと感じます。掃除の支援をしながら、最終的には本人に掃除ができるようになってもらうという支援をする場合、本人と一緒に家事を行うことが通常の形だと考えます。
とはいえ、もちろん代行として行うことも認められています。具体的な対策としては、必要最小限の私物以外は持ち込まないようにする、自分のポケット等の確認を、その都度利用者さまに確認してもらうなどがあります。
また、色々対策を講じたとしても、そもそも記憶に残らない、妄想を抱いてしまうという方もいらっしゃいます。この場合は利用者さまに関係する方たちが、そのような状況であるとわかっておいてもらうことが大切です。仮に疑われても、周囲に理解を得られていれば、モチベーションを保てることが多いと考えます。
■大切なのは、自分ひとりで抱え込まないこと
その他にも、ヘルパーに転職後きついな、と感じるケースは色々あると思います。大切なことは、「自分一人で抱え込まない」ということです。周囲に相談し、よき理解者を見つけてしっかりと自分の気持ちを伝えてほしいと思います。そして転職されたときの「ヘルパーをやりたい」と思ったときの情熱をときどき思い出してほしいです。また、お住まいに地域の職能団体に相談しても良いかもしれません。
楽しいことばかりではありません。
しかし、訪問介護は利用者さまの生活に深く寄り添い、誰よりもよき理解者となって、その方の生活を支えることができる職業だと思います。大変ですが、やりがいも大きい職業だと思いますので、ぜひこれからもがんばってほしいと思います。
「3つの視点による選択」と「さまざまな経験による見極め」で理想の職場へ!
まずは資格取得、おめでとうございます。
これから存分に介護という仕事の魅力を感じていってください。
早速、ご質問への回答ですが、「どこがきつい」「どこがいい」という問いには正解はありません。
では、何を基準に最初の職場を選べばいいかをお伝えしたいと思います。
■視点1:あなたが目指すものは?
まず大切にしたいのは、ご質問者さんが「目指すもの」だと思います。
資格を取られたのにも、なにか目標があってのことだと思いますし、
将来的に介護分野とどう関わりあいたいかも考えられていることと思います。
現場を続けたいのか、ケアマネや相談員を目指すのか、介護事業所の経営者になりたいのか。
そのプロセスとして、最初の仕事が、ヘルパーであるのか、施設の介護職なのか、
デイサービスの介護職なのか。
はたまた、事業主体は、社会福祉法人なのか、株式会社なのか、
医療法人なのかを選ばれるといいと思います。
■視点2:職場の実際と育成体制は?
そのうえで、次に着目してほしいのは、「職場の実際と育成体制」です。
ここを見極めたうえで、仕事をスタートしないと、介護そのものを嫌いになりかねません。
見学や自主実習などを通じ、しっかりと職場を選び、ここなら、経験が無くても育ててくれそうだ、理想の介護が実践できそうだというところを選んでみてください。
人の声や評判に耳を傾けるのも良いですが、自分の五感をフルに働かせ、
自己決定をすることが大事です。
■視点3:自分自身の特性は?
あとは、「自分自身の特性」も考慮に入れると、更にいいかもしれませんね。
独りで仕事をすることを得意とするのか、チームでの仕事が得意なのか。
あらゆるシフトに柔軟に対応できるのか、決まった時間の労働があっているのか。
そんなことを過去の経験などから照らし合わせ、選択すると、
ミスマッチは起こりにくいでしょうね。
■経験を重ねて見極める
上記で3つの視点を示しましたが、実際は働いてみないとその差を感じにくかったり、
自分と何があっているかに気付きにくかったりすると思います。
最初の何年かはそれを見極める期間として、いろいろと経験してみることも一つの方法です。
3つの視点から選んだとしても、合わないことだってあります。
法人内での異動もあるでしょうし、転職だって労働者の権利です。
さまざまな経験を重ね、しっかりと見極めつつ、自分自身の理想とする職場と巡り合うことを
心より願っています。
福岡福祉向上委員会 代表